ミラクルナイト☆第223話
トタン屋根を叩く小雨の音が、夜の鄙野を包んでいた。
築古の1Kアパート。その一室――散らかった床の上には、魔法陣の焦げ跡。
「ナメクジスプレーも消えちゃって……次はどうしよう?」
ミラクルナイト☆第221話
下駄箱の前。昇降口から差し込む夕陽が、制服姿の生徒たちを赤く染めていた。
寧々は靴を履き替えている隆に声を掛けた。
「奈理子さんの様子はどう?」
隆は顔をしかめ、ため息をついた。 ...
ミラクルナイト☆第220話
無機質な白い壁に囲まれた研究室。机に広がる数々のデータシートを前に、篠宮=ブナシメジ男は項垂れていた。
「……私の策が……。トウモロコシ男まで失ってしまうとは……」
深い落胆の声を漏らす篠 ...
ミラクルナイト☆第209話
🥖魔界パン工房「クネクネベーカリー」――
地鳴りとともに、黒紫の煙が立ちこめる奇怪な空間。
天井から吊られた無数の発酵生地袋が、グルグルと揺れながらふくれ上がっていた。
壁という壁には、小麦粉とバターが ...
ミラクルナイト☆第194話
「……また、負けちゃったのね……」
畳の上に正座して、プリンセス・コマリシャスは小さな手にハンカチを握りしめていた。魔法陣の水晶玉が、ミラクルナイトのドヤ顔とミラーグモダンの爆散シーンを映し出している。
「み、 ...
ミラクルナイト☆第193話
黄昏が落ちきった鄙野の外れ、苔むした鳥居がぽつんと立つ旧神社の奥――
そこには、コマリシャスが描いた六芒星の魔法陣が青白く脈打ち、まるで心臓のように波打っていた。
「……いよいよ、ね」
魔法陣の縁にしゃ ...
ミラクルナイト☆第188話
——鄙野・魔界本拠地にて
ぺたり。
冷えた畳の上に、大きなクッションと抱き枕。
その中心で、魔界の主がぐで〜んと寝転がっている。
「むぅ〜〜〜……なんで“可愛さ比べ”に勝てなかったの〜……あ ...
ミラクルナイト☆第187話
鄙野町外れ、かつて旅館だった古びた建物。その一室、畳の上に描かれた複雑な魔法陣が淡く光を放ち、空気が湿り気を帯びる。
「紗理奈ぁ〜!今日もカワイイお茶お願い〜」
子どものような声と共に、床にあぐらをかく幼女の姿 ...
ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第27章「再起の蹴撃(キックオーバー)」
砕けたコンクリ瓦礫の中、膝をついたミルキーナイトは、呼吸を整える間もなく立ち上がった。
「私……まだ、倒れてる場合じゃない……」
遠くで、プリティ・ストームが鉄球の直撃を受けたのか、建物の壁に叩きつけられ ...
ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第19章「ナメクジロー将軍、粘着の美学」
「ちょっとタンポポタイ。あのミルキーちゃん、最近ちょっと頑張ってない?」
魔界の玉座にて、プリンセス・コマリシャスは長い足をぷらぷらと揺らしながら呟いた。
「ええ、確かに。以前はパンチ一発で沈んだのに、い ...
ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第12章「風は、再び」
空は晴れていた。けれど、胡桃の心は曇っていた。
「ミルキー・シュート!」
無数の光弾が、町はずれの斜面に群がっていた小型魔物を一掃する。その光の中心に立つミルキーナイトの表情は、冷たい。
「…… ...
ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第2章「魔界の残響」
魔界の夜は、地上のそれとは違う。天と地の境が曖昧で、空は永遠に沈んだ茜色を保ち続け、地は鼓動のように微かに揺れていた。古びた玉座の間、ひときわ高く積まれた絨毯の上に、幼い少女の姿が一人、座していた。
プリンセス・コマリ ...
