ミラクルナイト☆第148話
水都中学の放課後、寧々は下駄箱で靴を取り出している隆に声を掛けようとした。しかし、隆はいつもの三馬鹿トリオ、慎治と章太郎と一緒にいた。小学生の頃から何かと啀み合ってきた彼らの前で、寧々は「一緒に帰ろう」なんて言えるはずがない。寧々は気まずさを感じつつ、その場を通り過ぎようとした。
だが、寧々の存在に気付いた慎治が、
「あっ、寧々だ。隆と一緒に帰りたいのか?」
と声を掛けてきた。寧々は一瞬足を止めたが、言い返す言葉が見つからない。その隙に、章太郎が
「隆と付き合い始めて寧々も女の子っぽくなったよな」
とからかうように言う。
「私は隆と付き合ってません!」
寧々は思わず否定してしまった。三馬鹿トリオを前にすると、どうしても喧嘩腰になってしまう自分が悔しい。
「そうなのか、隆?」
慎治が隆に確認するように尋ねた。隆は寧々を冷たく見つめ、
「寧々、俺たちはもう小学生のガキじゃないんだぞ。素直になれよ」
と言い放った。その言葉に寧々は戸惑いを隠せなかった。なぜ、隆がそんなことを言うのか理解できない。もしかして、隆は寧々に「付き合ってます」と素直に認めてほしいのだろうか?しかし、もしそうなら、もっと優しい言い方があるはずだ。
次第に隆への怒りが込み上げてきた寧々。何か言い返そうとしたそのとき、校舎を足早に出ていくライムの姿が目に入った。寧々は、カエル男に敗れた奈理子のことが気がかりで、隆に様子を聞こうとしていた。しかし、瞬時に「奈理子の弟である隆より、彼氏であるライムの方が奈理子のことをよく知っているはず」と考えた寧々は、決断した。
「隆のバカ!」
と叫んで隆を押し退けると、寧々は素早く自分の靴を履き、ライムを追って校舎を飛び出していった。寧々の心には、隆への怒りと奈理子への心配が交錯していた。
寧々はライムの後を追い、水都郊外の山中へと足を進めていた。どうやら、奈理子はゾウムシ男に敗れた後、毎日この場所で特訓を続けているらしい。道中、ライムが説明するには、ドリームキャンディは変身すれば、変身前の寧々よりも力が格段に強くなる。しかし、ミラクルナイトは聖なる力を使えるようになるだけで、奈理子自身の力は変わらない。そのため、ミラクルナイトが強くなるには、奈理子自身が強くなるしかないのだと。寧々はドリームキャンディとして何度かミラクルナイトと戦ったことがあるが、彼女の弱さには呆れてしまうことが何度もあった。しかし、ライムの説明を聞いて初めて納得がいった。
森の中に入ると、香丸と共に、水都女学院の制服を着た見知らぬ女性が立っていた。寧々は「奈理子の友達かな?」と一瞬思ったが、ライムが軽くその女性に
「ドリームキャンディの寧々だ」
と紹介した。
「えっ?!」
と女性が驚きの声を上げた。寧々は突然正体を明かされたことに戸惑い、一瞬何が起こったのか理解できなかった。
寧々が頭の中を整理する間もなく、ライムは
「こちらはモンシロ女の菜々美さん」
と女性を紹介した。今度は寧々が驚く番だった。
「えっ?!」
と再び声を上げる。ミラクルナイトと激闘を繰り広げたあのモンシロ女が、なぜ奈理子の特訓に付き合っているのか?思わず疑問が頭をよぎる。そういえば、スライム男のライムも、メロン男の香丸も、もとは奈理子の敵だった。奈理子を取り巻く人間関係は一体どうなっているのだろうか?寧々の頭は混乱していた。
「奈理子はあそこだよ」
と香丸が少し開けた窪地を指さした。そこには、「なりこ」と書かれたゼッケンを付けた体操服、紺色のブルマーを身に着けた奈理子が、丸太を抱えて懸命に走っている姿があった。
「奈理子さん…」
その一生懸命な姿を目にした瞬間、寧々の胸は熱くなり、言葉が詰まった。
水都の街で、C国マフィアとされる人物が次々と襲撃される事件が発生していた。連続するその事件に、市警はマフィア同士の抗争と判断し捜査を進めていたが、捜査官の蒼菜には違和感があった。C国マフィア側も発砲してはいるものの、襲撃した側に被害が及んだ形跡は一切ない。事件現場に残されたのは、何かで貫かれたC国マフィアの死体だけだった。槍のような刃物による傷ではなく、まるで棒で突かれたかのように体が貫かれていた。
蒼菜は、その不気味な犯行にゾウムシ男の仕業ではないかと疑念を抱いたが、確証が得られないため、真相に迫ることができずにいた。この街に潜む新たな脅威が、水都の平和を揺るがそうとしているのかもしれない。
蒼菜は、同僚の刑事と共にC国マフィアの重要人物が住むマンションを張り込んでいた。相棒の山田は、水上山公園で負った傷がまだ完全に癒えていないため、今日は別の刑事が蒼菜と共にいた。彼は年上で、経験豊富な叩き上げの刑事。山田よりもずっと優秀で信頼できる刑事だった。
「殺人犯はC国マフィアを狙っている。他のマフィアの人物も他の刑事が見張っている。だが、もし犯人が怪人だったら、市警では太刀打ちできないだろう…」蒼菜がそう考えていると、部下が静かに告げた。
「柏原さん、男が入っていきます。」
部下が示した先には、マンションに入ろうとしている男がいた。鍔付きの帽子にサングラス、そしてマスクで顔を隠し、スーツを纏ったその姿は一見ダンディな風貌だが、蒼菜には防犯カメラを意識した不自然な格好に見えた。
しばらくすると、男がマンションから出てきた。蒼菜は直感的に感じた。
「私は男を追います。あなたは部屋を確認してください」
と即座に指示を出し、男の後を追い始めた。
住宅街の中、蒼菜は慎重に男を尾行していた。その時、無線が入る。
「柏原さん、マークしていたC国マフィアの人物が殺害されていました。」
蒼菜は一瞬迷った。男は怪人である可能性が高い。もしそうなら、応援に来た警官たちを巻き込んでしまう恐れがある。蒼菜は深く考えた末、自らの判断で一人で決着をつけることを決意した。
彼女は足を早め、男の背後に近づいた。そして、警察手帳を掲げながら毅然とした声で男を呼び止めた。
「警察です。少し話を聞かせてください。」
「ほう。刑事さんが何の用だい?」
と、男は蒼菜を見下ろしながら笑った。その視線は蒼菜の足元から頭の先までを舐め回すように移動し、明らかに彼女を軽んじていることを示していた。蒼菜は内心ムッとしながらも、顔には出さず淡々と職務質問を始めた。
予想に反して、男はあっさりと犯行を認めた。
「所まで同行願います」
と蒼菜が一歩踏み出したその時、男は悪びれもせずに言った。
「市警が余所者に好き勝手にやらせるから、俺が市警の代わりに始末してやったんだよ。」
「だからって、殺していい理由にはならないわ」
と蒼菜は冷静に返す。
「大麻は必要悪だ。適正に管理しなければならない。奴らはルールを破ったんだ」
と男は淡々と述べる。
「違法薬物は必要ではないわ。ただの悪よ」
と蒼菜が言い返すと、遠くからパトカーのサイレンが近づいてくるのが聞こえ始めた。蒼菜の無線からも、応援が向かっている旨が次々と伝えられていた。
男は一瞬目を細め、
「市警とは戦いたくないんだよ。女刑事さん、見逃してくれよ」
と言った。
「人が死んでいるのよ。見逃せるはずないでしょ」
と蒼菜は毅然とした態度を崩さない。
「俺の姿を見た奴は殺すしかないんだが、それでもいいのか?」
男の目が鈍く光り、その体が膨らみ始めた。
「やはり、貴方は…」
蒼菜が呟いた瞬間、男の姿はゾウムシ男へと変貌していた。
蒼菜は無線を切り、すぐに走り出した。住宅街の狭い路地を駆け抜け、角を曲がる。後ろからは
「待て!殺すと言っただろうが!」
とゾウムシ男の怒声が響き、彼も蒼菜を追いかけて角を曲がった。
しかし、そこには蒼菜の姿がなかった。
「何処へ逃げやがった!」
とゾウムシ男が苛立ち、辺りを見回す。
その時、不意に龍舌蘭の鋭い葉がゾウムシ男を襲った。しかし、彼は素早く反応し、口吻でその攻撃を弾き返した。
「まさか、市警にも薬の使用者がいるとはな。しかも、女刑事とは」
とゾウムシ男はニヤリと笑い、リュウゼツラン女に向き直った。その顔には、相手を侮るような冷笑が浮かんでいた。
住宅街に響く衝撃音と叫び声が、リュウゼツラン女とゾウムシ男の激しい戦闘を物語っていた。水都市内には、二体の怪人が出現したとの警報が鳴り響き、緊張感が街中に広がっていく。
その頃、奈理子の特訓を見届け、感動を胸に帰宅途中だった寧々は、その警報を耳にした。ゾウムシ男と謎の怪人が戦っているらしい。だが、その謎の怪人が敵なのか味方なのか、寧々には判断がつかなかった。
ミラクルナイトである奈理子が前回の戦いでゾウムシ男に完膚なまでに叩きのめされた。奈理子は今も特訓に励んでいるが、寧々には彼女がゾウムシ男に勝てる姿が想像できなかった。
「私がゾウムシ男を倒すしかない…」
寧々はそう決意すると、心を決めて
「キャンディスイーツ、ドリームキャンディ」
と唱えた。
瞬間、寧々の身体は鮮やかな黄色い光に包まれ、中学生戦士ドリームキャンディへと変身した。彼女の心には、友であり、仲間である奈理子を守る決意が燃え上がっていた。
リュウゼツラン女とゾウムシ男の戦いは、住宅街の一角で激しく繰り広げられていた。
リュウゼツラン女は、鮮やかな緑色の葉を鞭のようにしならせ、ゾウムシ男に向かって鋭く繰り出した。葉の先端は鋭利なトゲとなり、ゾウムシ男の身体に何度も突き刺さる。しかし、ゾウムシ男の外骨格は驚異的な硬さを誇り、リュウゼツラン女の攻撃をことごとく弾き返す。
「これでも効かないなんて…」
リュウゼツラン女は息を切らしながら、ゾウムシ男を睨んだ。彼女の目の前には、外骨格に守られた冷酷な怪物が立ちはだかっていた。
「どうした?それが全力か?」
ゾウムシ男は不敵に笑い、さらに攻勢を強める。彼の口吻が閃光のように鋭く伸び、リュウゼツラン女の身体を狙った。咄嗟に避けたものの、僅かに遅れた足元に口吻が当たり、地面に深い傷を刻んだ。
「ちっ…」
リュウゼツラン女は素早く距離を取るが、ゾウムシ男は彼女に隙を与えなかった。彼の強靭な脚が地面を踏みしめるたび、周囲の住宅が震えるほどの威圧感が伝わる。
リュウゼツラン女は次々と攻撃を繰り出すが、ゾウムシ男の硬い外骨格には全く歯が立たない。住宅街では龍舌蘭の毒は使えない。十分に能力を発揮できないこの状況では、この怪物を倒すことは難しいのかもしれない――そう思い始めた瞬間、ゾウムシ男の口吻が再び伸びてきた。リュウゼツラン女は防御を試みるが、その強力な一撃は彼女の肩を掠め、青い血が滴り落ちた。
「ぐっ…」
リュウゼツラン女は痛みをこらえながら、体勢を立て直そうとするが、ゾウムシ男はすかさず彼女に迫る。
「終わりだ、リュウゼツラン女…」
ゾウムシ男が低い声で告げた。リュウゼツラン女は追い詰められ、次の一撃が致命傷となることを悟った。
だが、その瞬間――
「キャンディシャワー!」
空から響く声と共に、色とりどりの虹色の光がゾウムシ男を襲った。驚きに振り返ったゾウムシ男の前に現れたのは、黄色い光に包まれたドリームキャンディだった。
「ここからは私が相手よ!」
ドリームキャンディが、力強く宣言しながらゾウムシ男の前に立ちはだかる。リュウゼツラン女は、ドリームキャンディの登場に一瞬安堵の表情を浮かべた。
ゾウムシ男はドリームキャンディに目を向け、舌打ちをするように言った。
「また厄介な小娘が出てきたか…だが、この硬い外骨格を破れるものか!」
次の戦いが、より苛烈なものになることを予感させながら、ドリームキャンディとゾウムシ男は再び対峙する。リュウゼツラン女もまた、決して諦めずに戦い続ける覚悟を決めた。
閑静な住宅街には、異様な雰囲気が漂っていた。大勢の野次馬が警戒線の外に詰めかけ、ざわめきが広がる。警官たちはその対応に追われながらも、姿を見せない蒼菜を探していた。彼女が姿を消してから、怪人の存在が確認され、現場はますます緊迫していた。
リュウゼツラン女は、目の前に立つドリームキャンディを見つめながら、次の行動を迷っていた。彼女は自分が市警の蒼菜であることを隠しつつ、ドリームキャンディと共にゾウムシ男に立ち向かうべきかどうか悩んでいた。自分が敵なのか味方なのかを明らかにしないまま戦い続ければ、ドリームキャンディを迷わせることになるかもしれない。
ゾウムシ男は、ドリームキャンディが放つキャンディチェーンを容易く弾き返し、まるで玩具のように扱っていた。ミラクルナイトのミラクルヒップストライクさえも歯が立たなかったゾウムシ男に対し、ドリームキャンディは必死で対抗策を模索する。
「貴方は敵なの?」
ドリームキャンディがリュウゼツラン女に問いかけた。だが、リュウゼツラン女は答えず、ただ一言
「ドリームキャンディ、後は任せたわ」
とだけ言い残し、静かにその場を去っていった。
「チッ、逃げやがったか…」
ゾウムシ男は舌打ちし、リュウゼツラン女の後ろ姿を見送る。しかし、その一瞬の隙を突いて、ドリームキャンディはキャンディチェーンをロリホップハンマーに変形さると、一気に振り下ろした。
「隙あり!」
彼女の声と共にハンマーがゾウムシ男に直撃するが、彼はまるで何事もなかったかのように立っていた。
「それがどうかしたのか?」
と嘲笑するゾウムシ男。全くダメージがない様子に、ドリームキャンディは焦りを感じた。
「どうすれば…」
ドリームキャンディの心に、不安が忍び寄る。ロリポップハンマーも通用しない敵に、彼女はどう立ち向かえばいいのか。頬を伝う冷や汗が、彼女の動揺を物語っていた。
ゾウムシ男はドリームキャンディを睨みつけ、じわりと距離を詰めてきた。彼の足音が、重く、そしてゆっくりと響く。その圧倒的な威圧感に、ドリームキャンディは一瞬足がすくむ。しかし、彼女はすぐに心を奮い立たせた。奈理子や他の仲間たちの顔が脳裏に浮かぶ。
「負けられない…絶対に負けられない…!」
ドリームキャンディは自分に言い聞かせ、必死に次の攻撃の策を考え始めた。まだ勝機はある、そう信じて。
防戦一方のドリームキャンディ。ゾウムシ男の鋭い口吻が彼女のドレスを引き裂き、裂け目からは素肌と黄色いハーフトップ、そしてブルマーが覗いていた。
「中学生になって身体も成長したようだな」
その様子を見たゾウムシ男が、卑劣な笑みを浮かべる。
「くぅ…」
ドリームキャンディは悔しさと屈辱に苦悶の表情を浮かべた。
そのとき、突然緑色の光が閃き、風の戦士セイクリッドウインドが住宅街に降臨した。
「お待たせ!」
明るい声でドリームキャンディに声を掛けるセイクリッドウインド。
「ゾウムシ男は予想以上の強敵です。普通の攻撃は通用しません。注意してください」
「分かってるよ。奈理子の尻パンチが効かなかったからね」
セイクリッドウインドがミラクルヒップストライクを『尻パンチ』と表現するのに、ドリームキャンディは思わず呆れた。しかし、セイクリッドウインドの表情はすぐに引き締まった。住宅街では竜巻を起こすことができない。風を操る彼女にとっては不利な戦場であることを理解していたのだ。
「風間凜でやって来たか。こうなったら、二人まとめて始末してやる!」
ゾウムシ男がセイクリッドウインドとドリームキャンディの前に立ちはだかる。
その瞬間、
「もう一人いるわ!」
という声とともに、水色の光弾がゾウムシ男に降り注いだ。空には、白い翼、ミラクルウイングを広げたミラクルナイトの姿があった。
「奈理子だー!」
「今日も奈理子は白パンツ!」
野次馬たちが、ミラクルナイトという水都の絶対ヒロイン、絶対アイドルの登場に歓声を上げる。
ミラクルナイトはゆっくりと地上に舞い降りると、毅然とした態度でゾウムシ男を指さし、
「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」
と高らかに宣言した。
「懲りずに主役までお出ましか。奈理子は真性のマゾっ子だな」
ゾウムシ男はミラクルナイトを嘲笑う。しかし、その言葉にもひるむことなく、ミラクルナイトは敵に立ち向かう覚悟を決めていた。
三人の戦士が揃ったことで、今度こそゾウムシ男を倒すことができるのか。決戦の火蓋が切って落とされた。
「ミラクルナイトを守ることが私たちの使命!」
「奈理子には手出しはさせない!」
ドリームキャンディとセイクリッドウインドが、ミラクルナイトを守るように前に出た。二人は、ミラクルナイトが前回の戦いでゾウムシ男に惨敗したことを知っている。水都の守護神ミラクルナイトが、同じ相手に二度も敗北するわけにはいかない。ゾウムシ男を睨みつけるドリームキャンディとセイクリッドウインドの目は鋭い。
しかし、ミラクルナイトは二人の背中に向かって毅然とした声で言った。
「私も戦うわ。ゾウムシ男は私が倒さなきゃならないの」
「でも、奈理子さんはまだ特訓中なんでしょう?」
と、ドリームキャンディは心配そうに返した。前回のミラクルナイトの負けっぷりを動画で確認していたドリームキャンディには、短期間の特訓でミラクルナイトがゾウムシ男に勝てるとは思えなかった。
「うん、三人で戦おう」
とセイクリッドウインドが言った。彼女はミラクルナイトの真剣な表情に、決意の固さを感じ取っていた。
「凜さん、ありがとう。キャンディ、私が弱すぎて迷惑ばかりかけてごめんね。でも、私は水都の守護神。だから、同じ相手に二度も負けない」
と、ミラクルナイトは二人に強い口調で告げた。
その言葉を聞いたドリームキャンディは、心の中で何かが変わるのを感じた。
「分かりました。三人でゾウムシ男を倒しましょう」
ドリームキャンディはロリポップハンマーをゾウムシ男に向け、決意を新たにした。
セイクリッドウインドもガストファングを手に構える。彼女は、住宅街では無闇に風を起こせないため、ガストファングをハリセンのように鈍器として使うつもりだ。ミラクルナイトは白い翼、ミラクルウイングを広げて、空へと舞い上がる。
「私とキャンディは地上から、奈理子は空から。ゾウムシ男の守りが堅くても、攻め続ければ勝機はあるはず」
とセイクリッドウインドが冷静に指示を出す。
「私たち三人揃えば無敵だってことを教えてやりましょう!」
とドリームキャンディが力強く宣言する。
ミラクルナイトが高く舞い上がり、彼女の白い翼が水色の光を放つ。下で構えるドリームキャンディとセイクリッドウインドも、それぞれの武器を握りしめ、戦いの準備を整えた。
こうして、三人のヒロインとゾウムシ男との激しい戦いが幕を開けた。
ドリームキャンディとセイクリッドウインドが、それぞれの武器を手に一斉にゾウムシ男に襲いかかった。ドリームキャンディはロリポップハンマーを振り下ろし、セイクリッドウインドはガストファングを一閃させる。二人の攻撃は連携が取れており、ゾウムシ男を翻弄するかのように見えた。
その上空では、ミラクルナイトがミラクルウイングを広げながら、次々と水色の光弾を放っていた。光弾は精確にゾウムシ男を捉え、地面に爆発を引き起こす。しかし、ゾウムシ男はその頑丈な外骨格に守られており、彼女たちの攻撃は全て弾かれてしまう。
「この硬さ…どうすれば…」
ドリームキャンディは焦りを隠せなかった。ロリポップハンマーで全力を込めた一撃も、ゾウムシ男の外骨格には傷一つつかない。
「こんなもので倒せると思ったか?」
ゾウムシ男が嘲笑いながら、長く鋭い口吻を素早く突き出した。その一撃は、ドリームキャンディのスカートを引き裂き、黄色いブルマーが露わになる。
「ああっ!」
彼女は驚きと共に後退りしたが、次の瞬間、セイクリッドウインドにもゾウムシ男の口吻が襲いかかった。
「くぅっ…」
セイクリッドウインドはガストファングで防ごうとしたが、鋭い口吻が彼女のスカートの裾を切り裂き、足元にまで達した。
「このままでは…」
セイクリッドウインドの心には焦燥が広がる。
ゾウムシ男は二人のヒロインを見下ろしながら、更に攻撃を加えてきた。口吻が勢いよく閃き、ドリームキャンディのドレスを更に引き裂く。彼女の素肌が露わになり、ブルマーがちらちらと見えるたびに、ゾウムシ男の嘲笑が響き渡った。
「奈理子さん!何とかして!」
ドリームキャンディが叫んだ。
その声を聞いたミラクルナイトは、一層力を込めて光弾を放ったが、それでもゾウムシ男の外骨格には有効なダメージを与えられない。ミラクルナイトの顔には焦りと不安が浮かんでいた。
「どうして…どうして効かないの?」
彼女の声には苛立ちがにじんでいた。
ゾウムシ男は再び口吻を振りかざし、今度はセイクリッドウインドの肩を切り裂いた。彼女のコスチュームは引き裂かれ、血がにじむ。
「…負けられない!」
セイクリッドウインドは痛みに耐えながらも必死に立ち向かう。
だが、ゾウムシ男の圧倒的な防御力に、彼女たちは次第に追い詰められていく。立ち向かうたびにコスチュームが裂かれ、身体が傷つき、彼女たちの力が削られていく。
ミラクルナイトも焦燥に駆られながら、仲間たちのために何か打開策を見つけ出さなければならないと必死だった。しかし、ゾウムシ男の強靭さに、彼女たちの希望は次第に薄れつつあった。
「何とかしなきゃ…!」
ミラクルナイトは心の中で必死に叫んだが、その声は虚しく空に消えていった。
ゾウムシ男に追い詰められ、絶体絶命の危機に陥るセイクリッドウインドとドリームキャンディ。上空から見守るミラクルナイトの心には焦りと決意が交錯していた。自分が何とかしなければ、仲間たちは負けてしまう——そう強く思い、ミラクルナイトはゾウムシ男に向かって急降下を始めた。
「ミラクルキック!」
彼女は叫び、全力を込めてゾウムシ男に蹴りを放つ。その瞬間、硬い鞘翅にミラクルキックが炸裂した。しかし、次の瞬間、
「あぁ~ッ!」
と吹き飛ばされたのは、攻撃を仕掛けたはずのミラクルナイトだった。強烈な反動で地面に叩きつけられた彼女は、痺れる右足を押さえながら必死に立ち上がろうとしたが、痛みが体中に広がり、思うように動けない。
「ミラクルキックも効かないなんて…」
ミラクルナイトは愕然としながら、ゾウムシ男の冷酷な笑い声を耳にした。
「そんな蹴りじゃ俺には通用しねえよ。ようやく地面に降りてきたな、奈理子」
と、ゾウムシ男は彼女の無力さを楽しむかのように、ミラクルナイトのプリーツスカートから覗く太ももに目を光らせた。
身の危険を感じたミラクルナイトは、再び空へ飛び立とうとミラクルウイングを広げたが、痛む右足に力が入らず、思うように飛び上がることができない。その様子を見て取ったゾウムシ男は、鋭い口吻を彼女の太ももへと狙いを定めた。
「きゃあ!」
咄嗟に股を開き、口吻をかわすミラクルナイト。しかし、その動きが裏目に出てしまい、ゾウムシ男の口吻は彼女のプリーツスカートを貫き、地面に突き刺さる。
「うぅッ…」
ミラクルナイトは苦しげにうめきながら、スカートを地面に縫い付けられ、身動きが取れなくなってしまった。
「奈理子さんに手出しはさせない!」
ドリームキャンディが叫び、
「奈理子から離れなさい!」
とセイクリッドウインドが続けて声を張り上げた。二人は、ロリポップハンマーとガストファングを手に、ゾウムシ男に攻撃を仕掛けたが、彼の硬い外骨格はまるで鉄壁のごとく、どんな攻撃も通じない。
「奈理子、楽しませてもらうぜ」
と言い放ったゾウムシ男は、無力なミラクルナイトのスカートを無理やり剥ぎ取った。白昼の下、奈理子の清純さの象徴である純白のパンツが晒される。しかし、その瞬間、ミラクルナイトにとっては幸運が訪れた。スカートが外れたことで、身動きが取れるようになったのだ。
痛む右足をかばいながらも、ミラクルナイトは転がるながらゾウムシ男から距離を取る。そして、片膝をつき、必死に身を起こしながら宣言した。
「勝負はこれからよ!」
ミラクルナイトの瞳には決意の光が宿り、ゾウムシ男に対する恐怖を押し返していた。彼女の言葉に、ドリームキャンディとセイクリッドウインドも再び気を引き締め、三人は再度戦闘態勢に入った。ミラクルナイトの意志が戦いの流れを変えることを信じて。
ゾウムシ男には物理的な打撃攻撃が通用しない。これまでの戦いでそれは明らかだった。だが、ミラクルナイトにはまだ希望が残されていた。彼女は目を閉じ、周囲に水色に輝く水のオーラを纏い始めた。このオーラこそが彼女の武器となる。ゾウムシは水棲昆虫ではない。水は彼にとって苦手なはずだ。
「奈理子ちゃん、綺麗だよ!」
「奈理子、頑張れ!」
水のオーラに包まれたミラクルナイトの姿は、まるで神秘的な女神のようで、集まった野次馬たちから感嘆の声が次々に上がる。だが、ミラクルナイトはその声を聞き流し、集中力を高めていた。
ゾウムシ男が再び口吻を彼女に向ける。今度こそ、致命的な一撃を与えるつもりだ。その瞬間、
「キャンディチェーン!」
というドリームキャンディの声が響き、彼女の武器がロリポップハンマーから変形してゾウムシ男の口吻に巻き付いた。しかし、ゾウムシ男は
「邪魔だ!」
と叫び、口吻を激しく振り回すことで、ドリームキャンディを遠くに吹き飛ばしてしまった。彼女は
「あ~ッ!」
と悲鳴を上げながら地面に叩きつけられる。
だが、その瞬間、ミラクルナイトの決意が揺るがなかった。
「アクアティックラプチャー!」
彼女は水のオーラを水流に変え、ゾウムシ男に向かって放った。水の力が渦巻くようにゾウムシ男を包み込み、激しい水流が彼を締め付ける。
「うぉぉ…」
ゾウムシ男が苦しそうに呻く。ミラクルナイトは、自分の力が彼にどこまで通用するのかはわからなかったが、少なくともその動きを止め、力を削ぐことはできるはずだと信じていた。
痛めた右足に目をやり、彼女は一瞬だけ考えた。まだ踏ん張れる。力ではゾウムシ男に勝てなくても、彼女には水都の街と人々の願いがある。これが、彼女が守るべきものだ。この思いが、彼女に無限の力を与えるはずだ。
「私は負けない…!」
ミラクルナイトは心の中で叫び、ゾウムシ男に再び挑みかかる。彼女の水色のオーラはますます輝きを増し、まるで水都そのものが彼女に力を貸しているかのようだった。
ゾウムシ男の強さは凄まじい。しかし、ミラクルナイトには彼女だけの力がある。水流がさらに強まり、ゾウムシ男の体を締め付け、動きを封じていく。彼女の目には、強い意志と決意が宿っていた。勝利を信じ、戦い続けることを決して諦めない。
この瞬間、ミラクルナイトはただのヒロインではなかった。彼女は水都を守るために戦う、真の守護神となっていた。
「こんなものでは俺を倒すことはできないぞ!」
ゾウムシ男は水のオーラに包まれながらも、必死に藻掻き叫ぶ。だが、ミラクルナイトはその声に怯まなかった。
「アクアティックラプチャーで倒せるとは思っていないわ!」
彼女の目に宿る決意は揺るがない。
その時、ミラクルナイトの股間が水色に輝き始めた。
「ケツパンチか?」
「いや、幸せ絞めだ!」
野次馬たちがざわめき始める。ミラクルナイトが次に繰り出す技に期待を寄せていた。
ミラクルナイトは、力強くゾウムシ男に向かって飛びかかる。
「ミラクルハピネスシザース!」
彼女の太股がゾウムシ男の顔面を挟み込む。ミラクルナイトは太股でゾウムシ男の首を絞めつけ、股間で彼の顔面を塞いだ。しかし、ゾウムシ男の外骨格は堅く、彼を完全に封じるには至らない。それでも、奈理子の芳しい香りがゾウムシ男の心を乱し始めていた。
「うぉ!奈理子の匂いは最高だー!」
ゾウムシ男が叫ぶが、その言葉には焦燥が滲んでいた。
ミラクルナイトの股間の輝きがさらに増し、彼女の力が高まる。ミラクルナイトはゾウムシ男の口吻を掴み、さらに力を込めて太股で首を絞め続けた。そして、その瞬間、野次馬たちから歓声が上がる。
「幸せ投げだー!」
「ミラクルハピネスホイップ!」
ミラクルナイトはゾウムシ男の口吻を掴んだまま体を捻り、彼を地面に叩きつけた。高速のフランケンシュタイナーのような動きで、ゾウムシ男の口吻は地面に叩きつけられ、衝撃で折れてしまった。華麗に着地するミラクルナイト。その姿はまさに水都の守護神だった。
「この俺が、奈理子の匂いに惑わされるとは…」
よろよろと立ち上がるゾウムシ男。だが、その誇り高い口吻は、ミラクルナイトの技の前に無惨に折れ果てていた。
「これで最後よ」
ミラクルナイトの股間の輝きがさらに強まり、彼女の全身を覆う。観客たちは息を呑んだ。
「リボンストライクだ!」
「いや、次こそケツパンチだ!」
野次馬たちの期待が彼女に集中する。
「貴方を倒す技は、この技しかない。今日は決める!」
ミラクルナイトは静かに宣言すると、輝きを増した体でゾウムシ男に向かってジャンプした。
「ミラクルヒップストライク!」
彼女の渾身のヒップアタックが、ゾウムシ男にクリティカルヒットする。
「やっぱりケツパンチだ!」
「奈理子、かっこいいぞ!」
熱狂する野次馬たちの歓声が轟く中、ゾウムシ男は衝撃を受け、ついに倒れ込んだ。水都の平和を守るために戦うミラクルナイトの姿は、再び市民たちに勇気と希望を与えたのだった。
「これが、私のミラクルヒップストライクよ!」
ミラクルナイトが気合いを込めて叫ぶ。彼女の一撃を受け、ゾウムシ男はたまらず吹き飛ばされた。しかし、彼は最後の力を振り絞り、消えゆく瞬間に叫んだ。
「見事だ、奈理子!だが、俺がミラクルナイトに負けたのではない。奈理子、お前の芳しい匂いに負けたのだ!」
その言葉を聞いて、ミラクルナイトは一瞬、戸惑いを見せる。
「何なのよ、それ…?」
と呟きながら、消えゆくゾウムシ男を見つめる。
その時、彼女を取り囲んでいた野次馬たちから歓声が湧き上がる。
「やった、奈理子!」
「奈理子の匂いがゾウムシ男を倒したぞ!」
「俺にも奈理子の匂いを嗅がせてくれー!」
彼らはミラクルナイトの勝利を祝福し、その勇姿を讃える。
「奈理子さん、特訓の成果が出ましたね」
とドリームキャンディが微笑みながら言った。短期間の特訓で急激に身体能力が向上することはないが、奈理子が鍛えたのは、守護神としての強い心だったのだ。
「奈理子ならやれると思ってたよ」
とセイクリッドウインドも頷き、彼女の白いパンツを優しく撫でる。そして、
「ファンに応えなきゃ」
と彼女を促す。
ミラクルナイトはその言葉に応え、観衆に向かって声を張り上げた。
「皆さん、今日は声援ありがとうございました!来週、私、野宮奈理子の新しい写真集が発売されます!発売日には潤栗堂書店水都タワー店でサイン会が行われますので、皆さん是非お越しください!」
と、笑顔で宣伝をする。
彼女たち三人は、戦いの中でコスチュームを引き裂かれ、ミラクルナイトに至ってはスカートを剥ぎ取られた痛々しい姿であったが、それでも観衆は熱い声援を送り続ける。彼らにとって、三人のヒロインたちは希望の象徴であり、その存在自体が勇気を与えていたのだ。
そんなミラクルナイトたちを遠くから見つめる市警の蒼菜は、小さく呟く。
「怪人退治は、ミラクルナイトたちに任せて大丈夫かな…」
そう言いながら、彼女はゆっくりと仲間たちの元へと戻っていった。彼女の心には、ミラクルナイトたちへの信頼と共に、これからの戦いへの決意が刻まれていた。
(第149話へつづく)














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