ミラクルナイト☆第122話
放課後、奈理子は校舎の階段を駆け上がり、屋上へと続くドアを開けながら
「ライム!」
と叫びます。塔屋の上から、ライムがだるそうに顔をのぞかせます。
「合格したよ!私、水都女学院に合格した」
と、奈理子が満面の笑顔で伝えます。合格発表はインターネットで行われており、その朝、奈理子は先生に呼び出され、水都女学院高校への合格を知らされたのです。
塔屋から軽やかに飛び降りたライムは、
「奈理子、勉強頑張ってたもんな」
と言って、奈理子をギュッと抱きしめます。奈理子はその幸せな瞬間を噛みしめながら、
「春からは別の学校だね」
と少し悲しげに呟きます。奈理子が高校生になれば、今のように毎日会うことは難しくなるでしょう。
「女子高だから、変な男が寄り付くこともないだろう」
とライムはクールにコメントします。
「浮気はしないよ」
と奈理子が返し、
「ライムもね、新入生に寧々ちゃんって可愛い子が来るからちょっかい出しちゃダメだよ。寧々ちゃんは隆の彼女だから」
と忠告します。ライムは寧々がドリームキャンディであることを知っていますが、奈理子はその事実を知りません。
「体調はどうだ?」
と話題を変えるライム。アメーバ男に敗れた後、奈理子は水都神社へ運ばれ、神泉で浄化されました。
「特に変わったことはないけど、体が軽くなったような気がする」
と奈理子が答えます。
「ふーん」
とライムが言いながら、奈理子のスカートをめくります。
「やだ!」
とスカートを押さえる奈理子。彼女のパンツはリボンとフリルで飾られた純白でした。
「今日も白だな」
とライムがコメントします。
「合格発表だから、勝負パンツ」
と奈理子が返します。2月の陽射しに照らされた校舎の屋上で、奈理子は残りわずかな中学生活を、ライムと共に過ごしたいと思っていました。
潮田渚は零細企業の事務員として、日々の業務に追われながら、他人との距離を保つ生活を送っていた。彼女が職場で親しく交わることはなく、同僚たちからは暗い人物として陰口を叩かれていることも彼女自身よく知っていた。しかし、無口で黙々と仕事をこなす彼女は、仕事の能力だけは評価されていた。
ある日、仕事を終えた渚が自転車を押しながら駐輪場を出ると、突然
「よう、渚」
と声を掛けられた。声の主は牛島、彼の正体はウミウシ男だった。渚は一瞥もせずに彼を無視し、通り過ぎようとしたが、牛島は彼女の自転車を掴んで引き止めた。
「待ってくれよ。まだ落ち込んでいるのか?」
と彼は問うたが、渚は
「離してください。私はいつもこんな感じです」
と小さな声で返した。かつてのシオマネキ女としての強さは、今の渚からは感じられなかった。
その時、スーツにコートを羽織った女性が近づいてきた。彼女の名前は姫野真衣香、水都製薬の社員で入社二年目だが、外見はまだ十代の女子大生でも通用するような美少女だった。しかし、その正体はイチゴ女だ。
見窄らしい見た目の渚とは違い、真衣香は輝いていた。シオマネキ女でなければ、渚とは絶対に縁がなかった人種である。渚は真衣香も無視して通り過ぎようとする。
真衣香は渚を見下しながら、
「一度負けただけでウジウジしちゃて…それでも貴方、シオマネキ女?」
と嘲笑った。渚はその言葉に立ち止まり、過去のミラクルナイトとの戦いを思い出した。ミラクルナイトを苛めて楽しかった日々と、敗戦の痛みが交錯する。
「牛島さん、行きましょ。この人に期待してもムダ」
と真衣香が冷たく言い放ち、彼女と牛島は去っていった。残された渚に、牛島は
「渚、ミラクルナイトと戦う気になったら何時でも呼んでくれ。僕は渚を信じている」
と言って、彼女の背中を押した。
渚は一人残され、自分の今後の道を考えていた。自分は本当にこのままでいいのだろうか、と。ミラクルナイトに再び挑むことは彼女の失われた自信を取り戻す機会になるのかもしれないと、心のどこかで思っていた。
牛島と別れた後の真衣香は、心なしか孤独感を感じていた。牛島に誘われて仕方なく渚に会いに行ったが、真衣香にとっては渚のことなどどうでもよかった。かつての上司であった柏原がいた頃が懐かしく思えた。柏原は戦略的な思考を持ち合わせた人物で、真衣香を戦場に立たせることなく保護していた。しかし、柏原がいなくなり、その後を継いだ勅使河原は全く異なるタイプだった。出世を重ね、現在は水都製薬の役員にまで登り詰め、子会社の穢川研究所の社長も務めている勅使河原は、真衣香にとって計り知れない恐怖の対象だった。
真衣香は、自身が持つイチゴ女としての能力、人々に愛される甘くて魅力的な苺の力を好んでいたが、それが悪のために使われる現状に苦しんでいた。彼女は勅使河原のもとから離れたいと常日頃から考えていたが、それが叶うかどうかは未知数だった。
そんな彼女の脳裏には、常に
「なぜこうなったのか?」
という問いが浮かんでいた。その問いを抱えながら街を歩いているとき、突然の殺気を感じて
「誰?!」
と声を上げた。しかし周りには誰もおらず、次の瞬間、彼女の足元から異形の触手が伸びてきた。
「あぁっ!」
と叫び声を上げる真衣香。彼女を絡め取る触手の主、イカ男が現れた。
「イチゴ女の姫野真衣香だな」
という声に、真衣香は恐怖で顔を歪めた。
「イカ男!」
ストッキングに絡みつく触手の形から自身の身体を弄る者の正体を察する真衣香。イカ男は勅使河原の配下ではない。それは、真衣香の味方ではないことを意味していた。
「良い匂いに良い身体だ。柏原が目を掛けていただけのことはある」
とイカ男がささやくと、真衣香は
「柏原さんを知ってるの?」
と問い返した。イカ男は
「柏原は同士だった。姫野真衣香、勅使河原の元を離れて、俺たちと組まないか?可愛い苺ちゃんをこのまま悪役にしておくのは惜しい」
と提案した。
勅使河原の元から離れる、その言葉に真衣香の心は揺れたが、イカ男の触手はストッキングの受けから太股を伝い、スカートの中まで侵入してきた。
「ひいぃ!」
恐怖に駆られ悲鳴を上げる真衣香。突然
「女性が怪人に襲われてるぞー!」
という市民の叫び声が周囲を騒がせた。その隙にイカ男は
「考えておいてくれ」
と言い残して姿を消した。市民に囲まれながら保護される真衣香は、イカ男の言葉を胸に刻みつつ、どう行動すべきか深く考え込んだ。
水都公園の運河に架かる橋の隠れた場所で、放課後、奈理子はライムに跨りながら寄り添っていた。卒業が迫る中、できるだけ多くの時間を彼と共に過ごしたいと願う奈理子。だが、そんな二人だけの時間は、現実の流れに押し流されるが如く、いつも短く感じられた。
突然、遠くの噴水広場から人々のざわめきが聞こえてくる。
「また、敵?」
と奈理子が心配そうに顔を上げた。
「ドリームキャンディに任せておけ。奈理子はここにいるんだ」
とライムが優しく言いながら、奈理子の唇を自分のもので塞いだ。
「…んッ」
その甘いキスに、奈理子の体が熱くなる。
キスを終え、奈理子はライムから離れて立ち上がる。
「行かないと。私は水都の守護神ミラクルナイト。水都の平和は私が守る」
と決意を新たに宣言し、橋の下を後にした。
その時、噴水広場から
「奈理子、出て来い!」
とウデムシ男の怒号が響く。逃げ惑う市民たちを背に、水都の守護神ミラクルナイトが場に現れ、
「水都の平和を乱す者は私が許しません!」
と高らかに宣言した。その勇ましい姿に、市民からは歓声が上がる。
しかし、ウデムシ男はニヤリと笑い、
「遅かったな、奈理子。お前の動画撮影の迎えに来たぜ」
と挑発する。
「動画?」
と戸惑うミラクルナイト。
「そうだ。奈理子の動画は人気があるからな。ちょっとした収入にもなるし、新着の動画を撮ろうと思ってな」
とウデムシ男が言った。ネットにはミラクルナイトの動画が多数アップされており、奈理子もその事実を知っていたが、彼女の許可なしに動画で金儲けされるのは到底受け入れられなかった。
「そんなの絶対に認めない!私の許可なしに私の動画を売るなんて…。非公認の動画販売は著作権の侵害よ!」
と憤るミラクルナイト。
「でも、トリモチ男が撮った時はお前も楽しんでいたじゃないか。それは公認じゃないのか?」
とウデムシ男が更に挑発する。
「くッ…」
奈理子は、自分が知らないうちに公開されていた過去の動画の存在に動揺し、
「絶対に許さない!」
と闘志を燃やすのだった。
水都公園の喧騒を背に、ミラクルナイトはウデムシ男と対峙していた。彼女は冷静に距離を取りながら、敵の次の一手を予測していた。しかし、その瞬間、ウデムシ男の驚異的に長い腕が、不意にミラクルナイトの方へと伸びてきた。彼女は素早く後方に跳ね退き、その攻撃をかわそうとしたが、ウデムシ男の腕はまるで生きているかのようにさらに伸び、彼女を容易く弾き飛ばした。
「嫌ならば、奈理子を拉致してでも撮影するまでだ。」
ウデムシ男は、地に打ち付けられたミラクルナイトを見下ろしながら嘲笑った。ミラクルナイトはよろめきながらも立ち上がり、再び戦闘態勢を整える。ウデムシ男は動じることなく、その場に立ち尽くしていた。彼の腕が十メートル以上も伸びていることに気が付いたミラクルナイトは、懐に飛び込むことが勝機につながると判断した。
ミラクルウイングを広げて空中へ舞い上がるミラクルナイト。ウデムシ男も複数の腕を伸ばし、空中のミラクルナイトを捕らえようと迎撃の構えを取る。二人の間で繰り広げられる攻防は、ミラクルナイトのスカートを舞い上げ、彼女の純白のショーツが見え隠れする。その可憐な姿に、市民たちは一層の熱狂を見せる。
「今日も白だ!」
「奈理子の生パンサイコー!」
「今日の奈理子も可愛いぞー!」
と歓声が上がる。
「みんなの期待を裏切るわけにはいかない!」
ミラクルナイトは、ウデムシ男の無数の腕を掻い潜りながら、彼の懐に飛び込む。一瞬の勝利を確信した彼女だったが、その思いも束の間、ウデムシ男の鞭のような腕に捕らえられ、激しく地に打ち付けられた。
「きゃぁ!」
という彼女の悲鳴が公園中に響き渡る。
「奈理子が俺に勝てるはずがないだろ。さあ、楽しい撮影に来てもらおうか。」
ウデムシ男はミラクルナイトの美しい生脚に目をやり、ニヤリと笑う。打ちのめされたミラクルナイトだったが、
「負けないわ…!」
と力なく呟きながら、何とかして立ち上がろうとする。
「奈理子、頑張れー!」
と市民たちが声援を送る中、ミラクルナイトは再び戦いの準備を整えた。
その時、黄色い光が煌めき、ドリームキャンディが噴水広場に姿を現した。
「奈理子さん!」
と叫びながら、地に倒れていたミラクルナイトをそっと抱き起こす。その動作から、ミニスカートから覗く太股が眩しく輝いていた。奈理子の太股とスカートの下に見え隠れする純白のショーツは、市民だけでなく敵の目にも楽しみとなってしまっている。美少女奈理子の太股に、ドリームキャンディ自身も思わず見とれそうになる。その視線をウデムシ男に向けると、彼の多様な腕の姿が目に入った—鎌のようなもの、鞭のようなものが交錯する。ドリームキャンディはすぐに判断した。これほどの敵にミラクルナイトが勝てるわけがない。普通ならば、ウデムシ男の鎌のような腕がミラクルナイトのコスチュームを一瞬で引き裂いてしまうはずだ。
しかし、ドリームキャンディはあることに気付く。今日、ミラクルナイトのコスチュームは一切の損傷がない。
「なぜ、奈理子さんのスカートを脱がさないの?」
とウデムシ男に問うた。ドリームキャンディの言葉に戸惑うミラクルナイトが
「キャンディ…?」
と声を上げるが、ウデムシ男は誇らしげに答える。
「教えてやろう。ミラクルナイトのコスチュームは重要なアイテムだ。動画撮影前に傷つけるわけにはいかないんだ。」
「動画撮影?」
ドリームキャンディはミラクルナイトが襲われている事情を知らなかった。ウデムシ男は続ける。
「ドリームキャンディ、お前がミラクルナイトを苛める動画もなかなかの人気だぞ。」
「私は、奈理子さんを苛めたりはしていません!」
ドリームキャンディが激しく反論する。
「分かってる」
ミラクルナイトはそんな彼女を制して立ち上がった。
「キャンディが私に厳しいのは、私が弱いから。ウデムシ男は私が倒すから、キャンディは見ていて。」
と前へと進み出た。そのとき、風がミラクルナイトのスカートを優しく揺らし、純白のショーツがちらりと覗いた。
「奈理子の清純の証、純白パンチラ!」
と市民が歓声を上げる。
「綺麗だぞ、奈理子!」
市民の声がミラクルナイトに勇気を与えた。ドリームキャンディは見ていて思った、今日のミラクルナイトはいつもと違う、もっと強い。
姫野真衣香は、市民たちと共にミラクルナイトの勇姿を見守っていた。市民から愛される絶対的なヒロイン、ミラクルナイト。イチゴ女もいつかはそんな存在になりたいと心から願っていた。その一方で、中学生の奈理子の動画を撮影し、それで金儲けをしようとするウデムシ男の卑劣さには腹が立った。悲しいことに、真衣香はウデムシ男と同じ側にいるのだった。イカ男からの誘いが頭をよぎるが、今はそれを振り払い、ただミラクルナイトの戦いに集中する。
「奈理子、頑張れ!」
真衣香も市民と一緒に、ミラクルナイトに力強い声援を送っていた。
その時、ウデムシ男が大声で命令する。
「せっかくだから、戦闘シーンも撮影しておくか。出て来い、ウズムシども!」
すると、突如、カメラ機材を抱えた三体のウズムシ男が現れた。
「へへへ、可愛く撮ってやるぜ、奈理子。いい声で鳴けよ」
と彼らが下品に笑いながらミラクルナイトを挑発する。
「奈理子さん、ウズムシ男は私が引き受けます」
と、ドリームキャンディが前に出てウズムシ男たちに対峙する。しかし、ウデムシ男はそれを許さない。
「そうはいかねぇよ」
と言いながら、彼の鞭のような腕が空中を舞う。
「キャンディ!」
とミラクルナイトが心配そうに叫ぶ。しかし、ドリームキャンディは紙一重で鞭腕をかわし、無事だった。
「ウズムシ男は無視して、二人でウデムシ男を倒しましょう」
と彼女が提案する。ウデムシ男の鞭攻撃を見て、ミラクルナイト一人に任せては危険だと判断したのだ。
「分かったわ」
とミラクルナイトが応じる。カメラが回っていようと何であろうと、彼女たちはただひたすらに戦いを挑む。ミラクルナイトは再びミラクルウイングを広げ、戦闘の準備を整えた。その姿はまさに市民たちが熱狂するヒロインのそれだった。
ミラクルナイトが空高く舞い上がり、手から水色の光弾を放つ。その一方で、ドリームキャンディはその信頼のキャンディチェーンを振り回し、激しく攻撃を仕掛ける。しかし、ウデムシ男はその多数の腕で彼女たちの攻撃を巧みに捌き、一切の隙を見せない。カメラを抱えたウズムシ男が、戦場を飛び回るミラクルナイトを執拗に追い、彼女の勇姿を撮影し続ける。
噴水広場の端で、凜と大谷もその戦いを見守っていた。
「私も参加する!」
と凜が闘志を燃やすも、大谷が彼女の肩を抑える。
「ミラクルナイトは新しい力を手に入れたはずだ。それを見届けるんだ」
と彼が静かに言い、凜を落ち着かせた。戦場ではミラクルナイトとドリームキャンディが、ウデムシ男の異常な腕の長さに翻弄されていた。
「奈理子と寧々が戦っているのに…」
と、凜はもどかしさを隠せずにいた。
「鞭一本で俺に勝てると思うなよ!」
とウデムシ男が豪語し、その鞭状の二本の腕でドリームキャンディを容赦なく打ち付ける。ミラクルナイトが駆けつけようとするも、彼女自身もウデムシ男の鎌状の腕をかわすのに精一杯で、
「キャンディ!」
と叫ぶのがやっとだった。
「奈理子のパンチラを一杯撮ってやるぞ」
とウズムシ男は興奮しながらミラクルナイトを撮影し続ける。そして、別のウズムシ男がドリームキャンディにもカメラを向け、
「こっちもいい動画が撮れそうだ」
とニヤリと笑う。
ウズムシ男の鞭状の腕が、ドリームキャンディのコスチュームを切り刻む。彼女が倒れそうになるのは時間の問題だった。
「私がもっと強かったら…」
と、ミラクルナイトは自分の力不足を嘆きながらも、どうにか攻撃の糸口を掴もうと必死に考えていた。しかし、決して諦めるわけにはいかない。ミラクルナイトは必死の抵抗を続け、何とか逆転の一手を見出そうとしていた。
「もうダメ…」
ドリームキャンディの弱々しい声がか細く響いたその瞬間、ウデムシ男の鞭のような腕が彼女を容赦なく吹き飛ばした。
「キャンディ!」
とミラクルナイトが絶叫するが、すでにドリームキャンディは意識を失い、動かなくなっていた。ミラクルナイトが味方の無念を見ている隙に、ウデムシ男の長い腕が彼女自身をも捕らえてしまった。
「あぁッ…離して!」
ミラクルナイトが必死に抵抗するものの、ウデムシ男はその無数の腕を巧みに操り、彼女の四肢を完全に拘束してしまう。
その間に、意識を失ったドリームキャンディのもとに三人のウズムシ男が群がった。彼らの手によって、彼女のコスチュームが切り裂かれ、ハーフトップとブルマーだけの無防備な姿にされてしまう。
「生意気なガキだと思っていたが、こうして見るとなかなか色っぽいな」
と一人が言う。
「貧乳の奈理子よりも発育いいよな」
と別のウズムシ男が笑う。
「ゴーグルを取って素顔を拝ませてもらおうぜ」
とカメラを構えるウズムシ男が迫る。
「やめて!キャンディから離れて!」
ミラクルナイトがウズムシ男たちに向かって叫ぶが、ウデムシ男の冷たい声が彼女を制する。
「お前は自分の心配をしていろ」
と言いながら、その長い腕がミラクルナイトの生脚を這い回る。助けを求めるドリームキャンディに手を差し伸べたいミラクルナイトだが、彼女自身がウデムシ男の強大な力に完全に制されていた。
ウデムシ男の手がドリームキャンディのゴーグルに触れようとしたその瞬間、
「キャンディ!」
とミラクルナイトが叫ぶ。彼女の体が水色に輝き、
「ミラクルパワー!」
と叫びながら全ての力を解放する。その光が弾ける瞬間、ミラクルナイトの周りの空気が震え、彼女の絶望的な状況に一筋の希望が灯されるのだった。
「うわ!何だ?!」
ウデムシ男が叫び声を上げると同時に、彼の腕が弾け飛んだ。その驚きはミラクルナイト自身にも及んでいた。通常、ミラクルパワーを発動させた後は力尽きてしまうが、今回は異なる反応を見せていた。ミラクルナイトの周囲には水のオーラが輝き、いつになく強い力が彼女から漲っていた。この変わった光景に、市民もウズムシ男も思わず見とれていた。
「キャンディは絶対に守る!」
ミラクルナイトの決意が、まるでオーラから力を引き出すかのように、その身から無数の水流が発生した。
「ミラクルアクアティックラプチャー!」
彼女が叫ぶと、激しい水の渦が三人のウズムシ男を一気に包み込んだ。水の渦の中でウズムシ男たちは叫び、
「ドリームキャンディの動画を取りたかったー!」
と悔しがりながら、カメラごと消滅していった。
「次は貴方の番よ!」
ミラクルナイトがウデムシ男を睨みつけ、その挑戦的な眼差しで一歩も譲らない姿勢を見せた。
「カメラがなくなっちゃ撮影はできねぇ。次こそは世界中の皆が喜ぶ奈理子の動画を撮ってやるぜ」
とウデムシ男は未練がましく言い残すと、その場を去ることを決めた。
「待ちなさい!」
とミラクルナイトがウデムシ男の背中に向かって叫んだが、彼女の目の前には倒れているドリームキャンディがいた。戦友を見捨てるわけにはいかない。やむを得ず、去って行くウデムシ男の背中を見送るしかなかったミラクルナイトは、ドリームキャンディのもとへ急いで駆け寄り、その安否を確かめた。
市民の大歓声に包まれながら、ミラクルナイトはその輝かしい姿から普段の中学三年生、野宮奈理子に変身を解いた。ドリームキャンディは隆に抱かれて、彼のジャケットに包まれていた。無防備な状態の彼女は隆にしがみついており、その姿は何とも弱々しかった。
「隆、いたの?」
奈理子が弟に問いかけると、隆は何故かドリームキャンディと親しげにしていた。
「合格したのか?」
隆は突然、奈理子に学業の結果を訊ねた。奈理子の受験の結果はまだ彼には知らされていなかった。
「もちろん」
と奈理子は自信満々に答えた。
「おめでとうございます、奈理子さん」
とドリームキャンディが優しく笑いかける。
「ありがとう。キャンディが笑ってくれて嬉しい」
と奈理子も笑顔を返した。
噴水広場は依然として市民の歓声で賑わっていた。
「奈理子、合格おめでとう!」
「女子高生になった奈理子も応援するぞ!」
「キャンディも可愛いよ」
と連なる声援が飛び交う。
その一方で、大谷はミラクルナイトの新しい技、
「ミラクルアクアティックラプチャー」
について冷静に分析を加えていた。
「リボンストライク程の威力はないが、使い勝手が良さそうな技だ」
と評価する。
「そんなことより、合格したんだから喜んであげなよ」
と、凜は大谷に促す。彼女自身、直接奈理子に祝福の言葉をかけることができずにもどかしさを感じていた。
「高校受験なんてミラクルナイトの使命と比べたら些細なことさ。さあ、仕事に戻るぞ」
と大谷が言うと、凜は素直に従った。
一方、真衣香はその場にいた。奈理子が市民に愛される姿を羨ましげに眺めていた。その時、背後から冷たい声がした。
「薬の臭いがするな」
と。振り返るとそこにはライムが立っていた。彼は奈理子の彼氏として知られる美少年であり、その正体はスライム男だった。
「奈理子が羨ましいのか?」
とライムが問う。
「別に…」
と真衣香は答えた。
「イカ男は俺の知り合いだ」
とライムが言い残し、去って行った。それを聞いて真衣香は思い悩んだ。スライム男がイカ男のなかまであれば、イカ男もミラクルナイトの仲間なのだろうか?イカ男の誘いを受けるか、それとも勅使河原の手下として残るか。水都製薬の社員としての立場も考えると、決断は容易ではなかった。勅使河原を裏切れば、自分の職を失う可能性も高い。イカ男の提案がどれほど魅力的であっても、真衣香にとってはリスクが伴う選択だった。
噴水広場での歓声は次第に遠ざかり、真衣香の心は葛藤でいっぱいだった。奈理子との違いを痛感しながら、彼女が羨ましくもあり、同時にその純粋なヒロインとしての立場に対する責任の重さも感じていた。奈理子は市民から愛され、支持されている。一方で真衣香は、勅使河原の下で暗躍するイチゴ女としての秘密の生活を送っている。
「私もいつかは、あんなふうに誰からも愛される存在になりたい…でも、今の私にはそれが叶わない」
と心の中でつぶやいた真衣香。彼女は深くため息をつき、一人の女性としての幸せとヒロインとしての義務の間で揺れ動いていた。
その時、彼女の携帯電話が震えた。画面には勅使河原からの呼び出しの通知が表示されていた。彼からの命令を無視するわけにはいかない。重い腰を上げ、勅使河原のもとへと向かう足取りは、まるで自分の運命を背負っているかのように重かった。
「今の生活から脱出する方法はあるのだろうか?」
と真衣香は考えながら、複雑な思いを抱えて夕暮れの街を歩き始めた。未来は霧の中、彼女自身も何を望んでいるのか、その答えが見つからずにいた。
(第123話へつづく)
(あとがき)













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