DUGA

ミラクルナイト☆第130話

ミラクルナイト、野宮奈理子は水都市民が誇る絶対ヒロインである。どんなに辱めを受けても、水都の平和を守るため果敢に敵に立ち向かう可憐で美しい姿に市民は熱狂する。

一方、穢川研究所では、ミラクルナイトにさらなる恥辱を与える新たな怪人が生まれようとしていた。

「エビカブトンの薬だ」

所長の九頭が紗理奈に小瓶を渡した。

「エビカブトン?」

紗理奈が首を傾げる。

「今までの合成薬は、二つの生物の欠点を補う目的で作った…」

九頭は続ける。

「しかし、エビカブトンは違う。海老と兜虫の強靭な装甲、そして圧倒的なパワーを更に強化した。互いの欠点には目を瞑り、互いの長所を掛け合わせ強化した薬だ」

九頭は自信満々に告げる。

だが、紗理奈は納得していない様子だった。

「エビカブトンの薬については承知しました。しかし、なぜ『エビカムトムシ』や『エビカブト』ではなく『エビカブトン』なんですか?エビカブトンの『ン』には何か意味があるんですか?」

紗理奈が疑問を口にする。

「『エビカムトムシ』は長いし、『エビカブト』よりも『エビカブトン』の方が語呂が良いと私は思うが…。違うかい?」

九頭は自信無さげに答えた。

『ン』に特別な意味が無いことを理解した紗理奈は

「薬の開発者は所長です。所長が『エビカブトン』と言うなら『エビカブトン』です」

と微笑み、所長室を出た。「海老と兜虫の合成怪人。奈理子も災難だな〜」と思いながら、鼻歌を口ずさみ廊下を歩く紗理奈。

ミラクルナイト、奈理子に新たな危機が迫っていた。


ニンニク男による美人OL誘拐事件を解決したミラクルナイトとドリームキャンディ。その活躍を報じるマスコミと市民の関心は、ミラクルナイトである奈理子に集中していた。奈理子の家には今日も取材が殺到している。

「姉ちゃん一人の手柄じゃないのにな」

と、弟の隆が取材を終えた奈理子に冷めた目を向けた。

「仕方ないじゃない。ドリームキャンディの正体は秘密なんだから。隆もキャンディの正体は世間に知られたくないでしょう」

と奈理子が言う。

「別に、俺はドリームキャンディの正体がみんなに知られてもかまわないぜ」

と隆は肩をすくめる。

「ドリームキャンディの彼氏として隆も注目されるから、今まで通り寧々ちゃんと仲良く表を歩けなくなるよ」

と奈理子は笑みを浮かべた。

「姉ちゃんはライムと外でイチャイチャしてるじゃないか」

と隆は反論する。

「ライムは私に夢中だから平気なの。隆は耐えられる?デート中もずっと他の人の視線を浴びるんだよ」

と奈理子が自慢気に言った。

隆は考え込む。夢中なのはライムではなく奈理子ではないか。しかし、水都の絶対ヒロインであるミラクルナイト、奈理子の彼氏として注目されることに耐えられるライムは、実は凄い男なのではないか、と隆は思った。しかし、よくよく考えてみると、

「俺も姉ちゃんの弟として注目はされているぞ」

と隆は口にする。

「彼氏と弟じゃ、注目のされ方が違うよ」

と笑う奈理子。隆は弟よりも彼氏の方が重いのか?とライムを羨ましく思った。幼い頃からずっと一緒だった姉が他の男に取られるのは少し癪だ。

その時、謎の怪人出現の町内放送が鳴り響く。

「またか…」

奈理子が立ち上がる。

「行ってくるね」

と言い残し、ミラクルナイトに変身するために部屋を出て行った。隆は奈理子の後姿を見送りながら、

「姉ちゃん、頑張れよ」

と小さく呟いた。


水都タワー前広場は、多くの若者で賑わっていたが、エビカブトンの出現によって一瞬にして静寂に包まれた。広場の中央に腕を組み立つエビカブトンを遠巻きに眺める市民たち。エビカブトンの頭部には長く太い角、両手は巨大な鋏になっている。誰もがミラクルナイトの登場を待ち望んでいた。

「来たぞ!」

市民の一人がミラクルウイングを広げて飛んで来るミラクルナイトを指さす。

「奈理子、待っていたぞー!」

歓声が広がる中、ミラクルナイトがタワー前広場に降り立った。その可憐で美しい姿にさらなる歓声が上がる。ミラクルナイトはその声援を受けて、

「水都の平和を乱す者は…」

と名乗りを上げようとした、そのときだった。

「きゃッ!」

突如背後から四肢を鞭のような腕に絡め取られたミラクルナイト。無数の長い腕を持つウデムシ男が彼女を引き寄せた。

「離してッ!」

と藻掻くが、非力な彼女では抗うことができない。強く抱きしめられたミラクルナイトの前に、撮影機材を手にしたウズムシ男たちが次々と現れる。

「撮らないで…」

と哀願するも、ウデムシ男がキスで口を塞いだ。

「むぅ……」

キスの間に、無数の腕が彼女の身体を弄る。長いキスから解放されたミラクルナイトは戦意を喪失し、怯えていた。

「可愛いぞ、奈理子。このまま俺のものにしてしまいたいところだが、今日の奈理子の相手はあのエビカブトンだ」

ウデムシ男はミラクルナイトの両膝を抱え上げ、広場の中央に立つエビカブトンに向けた。市民の声援に後押しされていたときは気にならなかったが、静かに佇むエビカブトンの強烈な闘気がミラクルナイトに向けられていた。

「あんなのに、私が勝てるはずがない…」

震えるミラクルナイトは、ピンクのパンツクロッチが丸見えになっていることにも気付かなかった。

「安心しろ、奈理子。シナリオ通りにやればいい。ドリームキャンディがエビカブトンに敗れ、ミラクルナイトは捕らえられ、敵のアジトに監禁される。それが今日のシナリオだ」

ウデムシ男がミラクルナイトの耳元で囁く。

そのとき、黄色い光とともにドリームキャンディがタワー前広場に降臨した。ドリームキャンディはエビカブトンとウデムシ男、どちらに向かうか迷ったが、ミラクルナイトを弄ぶウデムシ男に向かい、

「奈理子さんを苛める者は私が許さない!」

と宣言する。

「役者が揃ったな。ほれ、奈理子を返してやるぜ!」

ウデムシ男がミラクルナイトをドリームキャンディに投げつける。

「奈理子さん、大丈夫ですか?」

ドリームキャンディがミラクルナイトの肩を抱く。

「エビカブトン、後は任せたぞ。ウズムシども、準備はいいな!よーい……スタート!!」

ウデムシ男の掛け声とともに、ミラクルナイト、ドリームキャンディとエビカブトンの戦いが始まった。


エビカブトンの姿を見たドリームキャンディは、瞬時にそのただならぬ存在感を感じ取った。周囲でウズムシ男たちがカメラを回しているが、撮影に気を取られている場合ではない。彼女はミラクルナイトに告げる。

「奈理子さんは大人しくここで見ていてください」

どう見ても、エビカブトンはミラクルナイトが勝てる相手ではない。ミラクルナイトを守ることがドリームキャンディの使命だった。また、寧々として、隆の姉である奈理子を危険な目に合わせたくはない。

ドリームキャンディは腰のキャンディベルトを外し、愛用の鞭であるキャンディチェーンに変えた。

「私が相手よ!」

と宣言し、エビカブトンを睨みつける。しかし、エビカブトンは腕を組んだまま動かない。ドリームキャンディはキャンディチェーンを振り翳し、エビカブトンに飛び掛かった。次々とキャンディチェーンを叩きつけるが、強靭な装甲を持つエビカブトンは微動だにしない。

焦るドリームキャンディ。エビカブトンが微かに動いた。

「何か来る?!」

と危険を察した瞬間だった。

「エビカブトン角えぐり!」

エビカブトンの兜虫の角がドリームキャンディを弾き飛ばした。

「キャンディ!」

ミラクルナイトの悲痛な悲鳴が響く。ドリームキャンディはタワー前広場の石畳に激しく叩きつけられた。

「可愛いだけが取り柄のミラクルナイトとは違い、ドリームキャンディは少しは骨がある奴と聞いていたが、その程度か?」

エビカブトンが冷たく見下す。

「うぅ…奈理子さんは、私が守る……」

全身の痛みに耐え、必死に立ち上がろうとするドリームキャンディ。

「私も戦うわ!」

ミラクルナイトも勇気を振り絞り、立ち上がる。彼女の決意と勇気が再び広場に満ち、二人のヒロインは力を合わせてエビカブトンに立ち向かうのだった。


「えい!」

ミラクルナイトが水色の光弾を連射する。しかし、エビカブトンの装甲に弾かれるだけだ。

「何だそれは?」

光弾をものともしないエビカブトンが不敵に笑う。

「これならどう?キャンディシャワー!」

ドリームキャンディから放たれる虹色の光線がエビカブトンに直撃する。

「やった?」

ドリームキャンディが半信半疑で呟くが、エビカブトンはキャンディシャワーに耐えきった。

「ミラクルナイトの攻めよりはマシだが、俺を倒すには力不足だな」

と嘲笑するエビカブトンにはダメージがない。

「それならば…ロリポップハンマー!」

ドリームキャンディはキャンディチェーンをロリポップハンマーに変形させる。そして、

「ロリポップ凄い突き!」

と全力の突きを繰り出す。唸るロリポップハンマー。しかし、エビカブトンは慌てもせずに右手の鋏を前に構え、ガシーン!とロリポップハンマーと激突した。

「うぅ…」

全力の突きを片手で止められたドリームキャンディが呻く。エビカブトンの鋏にガッシリと掴まれたロリポップハンマーは押しても引いても微動だにしない。

「強すぎる…」

ミラクルナイトの口から絶望の言葉が漏れたそのとき、緑色の光とともにセイクリッドウインドがタワー前広場に降臨した。

「奈理子、キャンディ、諦めないで!私たちが力を合わせれば倒せない敵は無いはずよ!」

セイクリッドウインドがミラクルナイトとドリームキャンディを叱咤する。

「風間凜はシナリオに無いが、構わん。エビカブトン、三人まとめてやっちまえ!だが、奈理子の身体には傷を付けるなよ」

ウデムシ男がエビカブトンに注文する。それに頷き、ロリポップハンマーから手を離すエビカブトン。

「アンタなんか、吹き飛ばしてやるわ!」

セイクリッドウインドがガストファングを仰ぐ。強風がタワー前広場に吹き荒れる。

「きゃぁ~!」

「凜さん、やめてください」

ミラクルナイトとドリームキャンディのスカートが舞い上がる

「奈理子とキャンディのパンチラだ!しっかり撮れよ!」

「おう!お頭、任せてくれ」

ウズムシ男の指示にウズムシ男たちが応える。

「奈理子さんと違って、私はパンツじゃありません!私のは黄色いブルマーです!!」

必死にパンチラではないことを主張するドリームキャンディ。

「撮らないで〜」

スカートを抑えるミラクルナイト。

大混乱のタワー前広場の中で、エビカブトンは強風に煽られても微動だにしない。

「兜虫の強靭な脚力を持つ俺を飛ばすことはできないぜ」

しっかり地に足を付け、エビカブトンがニヤリとする。

「それなら、これでどう?」

セイクリッドウインドは更にガストファングを扇ぐ。

しかし、

「きゃぁ~!」

「うわー!」

と悲鳴を上げて吹き飛ばされたのは、エビカブトンではなく、ミラクルナイトとドリームキャンディ、そして戦いを撮影するウズムシ男たちだった。


「余計なことしやがって!」

ウデムシ男が腕を伸ばし、セイクリッドウインドの背後から攻撃する。

「あっ!」

エビカブトンの前に押し出されたセイクリッドウインドをエビカブトンがアッパーカットで殴り飛ばす。

「あ~〜ッ!」

遥か遠くに飛ばされるセイクリッドウインドの姿が見えなくなると、

「奈理子が飛ばされたのは水都公園の方だな。行くぞ!」

とウデムシ男はエビカブトンと残りのウズムシ男たちを引き連れ水都公園ヘ向かう。

カップルたちがボートを楽しむ水都公園の静かな池に、ミラクルナイトとドリームキャンディ、そして三人のウズムシ男が空から降ってきた。

「何だ?!」

驚くカップルたちはミラクルナイトたちが沈んでいった水面を見つめていた。最初に浮かび上がったのはドリームキャンディ。

「お騒がせしてすいません」

とカップルに謝るドリームキャンディ。ミラクルナイトとウズムシ男は上がってこない。

「まさか…」

嫌な予感がしたドリームキャンディは再び池に潜る。池の中では、ウズムシ男たちに取り憑かれて藻掻くミラクルナイトの姿があった。

「奈理子さんから離れなさい!」

と叫ぶドリームキャンディだが、水中では言葉にならない。ミラクルナイトの身体を弄ぶウズムシ男たちをミラクルナイトから引き剥がす。

池の畔では、

「奈理子はあそこだ!エビカブトン、お前の水中戦闘能力を見せてやれ!ウズムシども、水中カメラの用意はできたか?」

次々と指示を出すウデムシ男。

「お頭、水の中の奈理子をしっかり撮ってやりますぜ!」

喜々として応えるウズムシ男。ボートを楽しむカップルやボート乗り場の人々が騒然とする中、エビカブトンとウズムシ男たちは次々と池に飛び込んだ。


水中で抱き合うミラクルナイトとドリームキャンディ。二人は水中でも息はできる。池の水は澄んでいるために視界は良好だ。しかし、水の浮力には抗えない。ポニーテールで髪をくくり、重厚なドレスと幾重ものペチコートを着用しているドリームキャンディはそうでもないが、ミラクルナイトの髪とミニスカートは水面へ吸い寄せられるように舞い上がり、奈理子のピンクのパンツはおろかまでも露わになっていた。しかも、ある程度は水を弾くミラクルナイトのコスチュームと違い、奈理子の木綿のパンツは水を吸いすぎている。パンツが脱げないか、ミラクルナイトは気が気でなかった。

ドブン!ドブン!ドブン!水面が乱れ、エビカブトンとウズムシ男が沈んでくる。ミラクルナイトがドリームキャンディにしがみつく。ミラクルナイトを強く抱きしめるドリームキャンディ。しかし、ここ水都公園のボート池には、オケラ男に敗北した嫌な思い出がドリームキャンディにはあった。それでも、逃げるわけにはいかない。

「奈理子さんは、必ず守る!」

エビカブトンを睨みつけるドリームキャンディ。

「海老の能力を持つ俺に水中戦で勝てるかな」

余裕のエビカブトン。

「私だってキャンディに守られるだけじゃないわ。どんなに恥ずかしい動画を撮られても、私は戦う!」

ミラクルナイトも戦う決意を決めた。

ウズムシ男たちが水中カメラで撮影する中、ミラクルナイト、ドリームキャンディとエビカブトンの水中戦が始まった。

ミラクルナイトが水色の光弾をエビカブトンに向けて放つ。水中でもその威力は衰えない。しかし、エビカブトンの強固な装甲には全く効かない。

「やはり、この程度か」

エビカブトンが不敵に笑う。

ドリームキャンディはキャンディチェーンを振り回し、エビカブトンに攻撃を仕掛ける。鞭のようにしなるチェーンはエビカブトンの周りを巻きつくが、エビカブトンは一瞬の動きでチェーンを引きちぎる。

「そんな攻撃は無駄だ」

エビカブトンが嘲笑う。

「くっ…」

ドリームキャンディは焦りを感じながらも、何とか奈理子を守ろうと必死だった。エビカブトンがドリームキャンディに向かって突進してくる。その速さと力強さは圧倒的で、ドリームキャンディは防御の体勢を取る。

「キャンディ、気をつけて!」

ミラクルナイトが叫ぶ。しかし、エビカブトンの一撃がドリームキャンディに炸裂する。ドリームキャンディは一瞬で吹き飛ばされ、痛みと共に池の底に叩きつけられる。

「キャンディ!」

ミラクルナイトが駆け寄るが、エビカブトンは追撃を仕掛ける。

「もう逃がさないぞ、奈理子!」

エビカブトンが強烈な一撃を放つ。ミラクルナイトはそれを回避し、ドリームキャンディと協力して反撃の機会を伺う。

「絶対に負けない…!」

二人のヒロインの決意が一つになり、エビカブトンとの死闘が続く。

ウズムシ男たちのカメラは、その壮絶な戦いを一瞬たりとも逃さず捉えていた。水都タワー前広場の大型ビジョンビにも激しい水中の戦いの模様は映し出され、市民たちは息を呑んでその映像を見守り、ミラクルナイトとドリームキャンディに熱い声援を送り続ける。

「頑張れ、奈理子!」

「負けるな、キャンディ!」

ミラクルナイトとドリームキャンディの心は一つとなり、エビカブトンに立ち向かい続ける。その姿は、市民たちの希望と勇気を象徴していた。


池の畔では多くの市民が水面を見つめていた。

「あっ、上がってくるぞ!」

水面に浮き上がる泡が増えてくる。

ザバーン!

と水面から飛び出したのは、両肩にミラクルナイトとドリームキャンディを担いだエビカブトンだった。水をたっぷり吸った奈理子の木綿パンツは太股まで下がっている。続いて戦いを撮影していたウズムシ男が次々と池から出てくる。

「ご苦労だった、エビカブトン」

ウデムシ男がエビカブトンを労う。

「こんな小娘ども、どうということはない」

エビカブトンがミラクルナイトとドリームキャンディを地面に投げ捨てる。二人とも既に立ち上がる気力は無い。

「ごめんなさい…私、奈理子さんを守れなかった……」

ドリームキャンディが涙を流す。

「キャンディ…」

ミラクルナイトは再び勇気を出して立ち上がろうとする。しかし、脚にも腕にも力が入らない。よろめき、膝を付く。

「奈理子、もう戦いの撮影は終わったんだ。パンツをちゃんと穿け。次は敵のアジトに捕らえられた奈理子が凌辱されるシーンだぞ」

ウデムシ男がミラクルナイトを嘲笑う。

「私はどんなに辱めを受けてもいい…でも、キャンディを泣かす人は許さない……ミラクルパワー!」

パンツを穿き直したミラクルナイトの身体が水色に輝き始まる。

「エビカブトン、貴方だけは許さない!ミラクルパ〜ンチ!」

水色に輝くミラクルナイトの拳。

「無駄だ。ミラクルナイト」

エビカブトンもミラクルナイトに向かって行く。ミラクルナイトの拳が空を斬る。その上から、エビカブトンの鋏が迫る。

「な…」

拳を交わされたミラクルナイト。

「おお、カメラ回せ!これはクロス…」

ウデムシ男がウズムシ男たちに指示を出す。エビカブトンの鋏で殴りつけられたミラクルナイト。

「…カウンター!」

ウデムシ男の声。

「そんな…」

必殺のミラクルパンチを躱されたミラクルナイトは錐揉み状に高速回転しながら空高く舞い上げられる。

「あ〜う〜」

力の無い悲鳴を上げながらミラクルナイトは地面に叩きつけられた。

「奈理子さん!」

ドリームキャンディの悲痛な叫び。

「ミラクルパンチが打ち負けた!」

戦いを見守る市民にも衝撃が走る。

「これが俺の力だ。可愛いだけで皆からチヤホヤされるミラクルナイトなど所詮この程度だ」

勝ち誇るエビカブトン。

「うッ…ううッ、ぐすッ」

項垂れて涙を流すミラクルナイト。

「よっしゃ、奈理子を拉致るぞ」

ウデムシ男が腕を伸ばし、ミラクルナイトを捕まえる。

「いやぁ!」

涙を流しながら抵抗するミラクルナイト。

「さっき、どんな辱めを受けてもいいと言ったよな。望み通り、奈理子の恥ずかしい動画を撮らせてもらうぜ」

ウデムシ男がミラクルナイトを引き寄せる。

「あぁッ、奈理子さん!」

ドリームキャンディが手を伸ばすが、届かない。

「撤収するぞ。アジトに帰って敵に捕まった奈理子の撮影だ」

ウデムシ男がウズムシ男たちに指示を出す。

「お頭、俺たちも奈理子に悪戯してもいいですかい?」

ウズムシ男が問う。

「おう、俺たちみんなで奈理子を喜ばせてやろうぜ!」

とウデムシ男。

「恥ずかしいことをされるのはいやぁ〜〜!」

ミラクルナイトの悲鳴が遠退く。ミラクルナイトはウデムシ男に抱き抱えられたまま、連れ去られてしまった。


「奈理子さん…」

池の畔でうなだれるドリームキャンディ。

「心配するな。奴らはミラクルナイトの身体を楽しんで、その動画で利益を得ようとしているだけだ。撮影が終われば解放される」

エビカブトンがドリームキャンディに告げる。

「そんなことをされるから、奈理子さんが心配なんでしょ!」

ドリームキャンディがエビカブトンを睨みつける。

「ウデムシ男たちにとって、ミラクルナイトは大切な玩具だから壊したりはしないという意味だ」

エビカブトンが答える。

「玩具だなんて酷い…奈理子さんは今頃……」

どんな辱めを受けているのかと思うと胸が苦しくなるドリームキャンディ。しかし、何故エビカブトンはウデムシ男と一緒に行かなかったのだろう?と思った。

「貴方はウデムシ男の仲間じゃないの?」

「俺は俺のノルマを果たしただけだ」

「ノルマって何?」

「新しい薬の能力を試しながらミラクルナイトとドリームキャンディを痛めつける。そして、ミラクルナイトをウデムシ男に引き渡す」

エビカブトンが答える。

「はいはい。私も奈理子さんも何もできないまま貴方に一方的に痛めつけられましたよ。凄い能力で良かったですね」

投げ槍に口にするドリームキャンディ。

「風間凜がお前たちを池に落としてくれたおかげで、水中戦も試すことができた。物足りなかったが、結果には満足している」

その言葉にムッとしたドリームキャンディ。

「次はそう簡単にいかないわ。私も奈理子さんも、次は負けない」

エビカブトンを睨むドリームキャンディ。だが、ふと疑問が湧いた。

「凜さんはどうしたの?」

「撮影の邪魔をしたから殴り飛ばしてやった」

絶句するドリームキャンディ。

「凜さんまで…」

奈理子の心配よりも、どうやったらエビカブトンに勝てるのか真剣に考えなければならない。今のままでは、エビカブトンを倒すことはできない。

エビカブトンは去って行った。池の畔に一人残されたドリームキャンディは新たな闘志を内に秘め立ち上がった。

「絶対にエビカブトンを倒す。そのために、もっと強くならなければ…」

ドリームキャンディの瞳には決意の光が宿っていた。


ウデムシ男とウズムシ男たちに散々凌辱された挙句、駅近くに路上駐車していた車のボンネットに大の字に逆さ磔にされ放置されたミラクルナイト。幸い、市民に救出されたものの奈理子の気分は晴れなかった。

「私はどうしてこんなに弱いんだろう…」

と溜息をつく奈理子。水都の平和を守ることがミラクルナイトである奈理子の使命だ。しかし、敵は水都の平和を乱すことよりも、奈理子を辱めることが目的のようにも思える。ショートパンツを脱ぎ、ウズムシ男たちに嬲られたことを思い出す。

「ミラクルナイトはもっと強いはずなのに…」

自分の不甲斐なさを嘆く奈理子だった。

「姉ちゃん、寧々が用があるってよ」

突然、弟の隆が奈理子の部屋のドアを開けた。自分を慰めていた奈理子が一瞬固まる。

「勝手にドアを開けないで!」

奈理子は枕を隆に投げ付け、部屋から追い出した。

「寧々ちゃんが、どうしたんだろう?」

とショートパンツを穿いて部屋を出る奈理子。

「奈理子さん、打倒エビカブトンの作戦会議しましょう!」

玄関先に立つ寧々は闘志に燃えていた。ドリームキャンディもエビカブトンに完敗したのに、自分を慰めていた自分とは全然違うなと奈理子は思った。

「奈理子さん、落ち込んでないで元気出してください!」

寧々の前向きな笑顔が眩しい。

「私の恥ずかしい動画がネットに拡散されているし、私は…どうしたらいいか分からない……」

奈理子は寧々を正視できずに顔を背けた。

「このままでは、またウデムシ男に捕まって恥ずかしい動画を撮られますよ。力を合わせてエビカブトンを倒しましょう!」

「どうやって倒すの?寧々ちゃんもエビカブトンの強さはよく知ってるでしょ」

「今からエビカブトンを倒す方法を考えるんですよ。行きましょう!」

寧々が奈理子の腕を引っ張る。慌ててサンダルを履く奈理子。

「行くってどこへ?」

「水都神社です。凜さんと私と奈理子さん、三人で力を合わせればエビカブトンに勝てるはずです」

「あっ、待って。水都神社に行くならこの格好じゃ…」

奈理子はパーカー、Tシャツ、ショートパンツの出で立ちだった。

「別に変じゃないですよ。今日も可愛いですよ、奈理子さん」

寧々が首を傾げる。

「靴下くらい履かせてよ」

奈理子は部屋に戻る。

「面白そうだから、俺も行くぜ」

隆も一緒に水都神社に行くことにした。

神社への道中、奈理子は再び自分の無力さを感じつつも、寧々と隆の存在に少しずつ勇気を取り戻していくのだった。

「力を合わせれば、きっとエビカブトンにも勝てるはず…」

奈理子は心の中で決意を新たにし、水都神社へと向かう。


水都神社に隣接する大谷家。そこに凜は下宿している。凜の部屋で先の戦いの反省会を始める。奈理子、寧々、凜が集まり、大谷と隆はその話を黙って聞いていた。海老と兜虫の能力を併せ持つエビカブトン。頭には強力な角に両手には巨大な鋏、圧倒的なパワー。キャンディシャワーも通用しない強靭な装甲。ガストファングの強風にも耐える力強い足腰。海老の能力を持つため、水中戦では圧倒的な強さを発揮する。兜虫の能力を持つため、空をも飛べるはずだ。考えれば考えるほど、勝ち筋が見いだせない奈理子、寧々、凜。

「どうすればエビカブトンに勝てるんだろう…」

奈理子が溜息をつく。

「ガストファングも効かないし、水中でも陸でも強いなんて…」

凜も悩む。

「私のキャンディシャワーも全然通じなかったし、ロリポップハンマーも…」

寧々も肩を落とす。

隆は黙って話を聞いていたが、ふと顔を上げて口を開いた。

「姉ちゃんたちが今まで戦ってきた相手も、最初は無敵に見えたけど、最後には必ず倒してきたじゃないか。今回もきっと勝てるはずだよ」

その言葉に奈理子、寧々、凜は少しずつ顔を上げる。

「そうだね…諦めちゃいけないよね」

凜が微笑みを浮かべる。

「そうですよ、今までだって何度も乗り越えてきたんだから」

根ねも頷く。

「でも、どうやって?」

奈理子が再び不安そうな表情を見せる。

「今度の敵は本当に強い。何か特別な作戦が必要だと思う…」

奈理子のその言葉に、大谷は真剣な表情で考え込む。

「うん、確かに普通のやり方じゃ勝てない相手だ。でも、三人が一緒なら、何か方法が見つかるはずだ」

奈理子、寧々、凜の三人はその言葉に力を得て、再びエビカブトンに立ち向かう決意を固めた。大谷家の静かな部屋の中で、彼女たちは新たな作戦を練り始めるのだった。


彼女たちが夜まで作戦を練り続ける中、部屋の中は真剣な雰囲気に包まれていた。何度も作戦を試行錯誤し、考えをまとめようとするが、なかなか具体的な突破口が見つからない。

「やっぱり、エビカブトンの強力な装甲が一番の問題よね」

と凜が頭を抱える。

「うん、何をしてもダメージが通らない…」

寧々も同意する。

「でも、無敵じゃないはずよ」

奈理子がふと閃くように言った。

「きっと、どこかに弱点があるはず」

その言葉に、凜と寧々は顔を上げる。

「確かに…でも、どこを攻撃すればいいのかしら…」

凜が悩む。

「エビカブトンの動きをよく観察しないとダメですね」

と寧々が冷静に言った。

「待って、思い出した。エビカブトンが攻撃を受けた時に、一瞬だけ動きが鈍くなった瞬間があった。あの時がチャンスかもしれない!」

奈理子が興奮気味に話す。

「それだ!動きが鈍る瞬間を見逃さず、一斉攻撃を仕掛けるのよ」

と凜が頷く。

「だけど、どうやってそのタイミングを見つけるの?」

寧々が不安そうに聞く。

「私たち全員が連携して、エビカブトンを一時的にでも動きを止めるように攻撃する。その瞬間に、私がリボンストラクを決めるわ」

と奈理子が決意を固める。

「それなら、奈理子さんが先にエビカブトンを挑発して、隙を作る。私はその隙をついてキャンディシャワーで攻撃して、凜さんは風で動きを封じる。最後に奈理子さんがミラクルパワーでとどめを刺す!」

寧々が提案した。

「いいわ、それで行きましょう!」

凜が同意する。

「これで、エビカブトンを倒せるかもしれない」

奈理子が力強く頷いた。

作戦が決まり、三人は深夜まで練り続けた計画に自信を持って立ち上がった。今度こそ、エビカブトンを倒して、水都の平和を取り戻すために。三人のヒロインは再び力を合わせ、次の戦いに挑む準備を始めたのだった。

そして、作戦会議が終わる頃、奈理子は隆の方を見て微笑んだ。

「ありがとう、隆、大谷さん。あなたたちの言葉がなかったら、ここまで考えをまとめられなかったわ。」

隆は照れくさそうに頭をかきながら、

「俺もみんなの力になれてよかったよ」

と答えた。大谷は微笑んでいる。三人のヒロインと隆は、固い絆を胸に、再びエビカブトンとの戦いに向けて歩み出すのだった。


「それでは、水都タワー前広場からの中継です。なんと、今日は特別ゲスト、水都の絶対ヒロイン、ミラクルナイトの野宮奈理子ちゃんがタワー前広場に来ています!奈理子ちゃ~ん!」

「はい。おはようございます。野宮奈理子です。……きゃぁ~!」

水都神社の応接室のテレビ画面には、水都テレビの朝の情報番組が映し出されていた。タワー前広場の奈理子に画面が移った瞬間、突然の強風に青いスカートが捲り上がり、奈理子の白いパンツがハッキリと映ってしまった。

「奈理子さんらしい登場の仕方ですね……」

「扇風機で煽ってわざとパンツ見せたんじゃないの?」

寧々と凜が画面に向かって口にする。

「奈理子ちゃん、大丈夫?白いものが画面に映っちゃったけど…」

「…はい、大丈夫です」

スタジオのMCの問いかけに、頬を赤らめはにかむ奈理子。

「奈理子さん、可愛い〜!」

「これで奈理子のファンはまた増えるね」

寧々と凜は楽しそうにテレビ画面を見ている。

「今日は、テレビの画面を通して、私の想いを伝えたい人がいます。……あぁぁ……もぅ、やだぁ…」

じっくりと見つめながらモジモジと語りかける奈理子に再び風が下から吹き上がる。パンツのリボンどころか、下腹までもがガッツリと画面に映し出されてしまった。

「絶対わざとだよね」

「奈理子さん、パンツ見せすぎ……」

凜と寧々は溜息をする。

「姉ちゃん、緊張しているな」

黙ってテレビに映る奈理子を見ていた隆が口にした。

「エビカブトン、私は再び貴方と戦いたいです。明日、朝10時に水都公園の噴水広場で待っています!……あっ、私一人じゃありません。セイクリッドウインドとドリームキャンディも一緒です。必ず来てください」

「これ、エビカブトンに告白しているみたいですね…」

と寧々。

「とにかく、明日は気合入れて行くよ。私たち、三人の力を見せてやろう」

凜の言葉に熱が入る。

「でも、三対一で勝負を挑むって、私たちちょっと卑怯じゃないですか…?」

寧々は不安を口にする。

「卑怯だなんて思わないで、寧々。エビカブトンは強敵だし、私たち三人の力を合わせないと勝てないわ」

と凜が優しく言った。

「そうだよ、寧々。敵は強いけど、君たちなら必ず勝てるはず」

と大谷が力強く言った。

「でも、奈理子さんはどうしてテレビで挑戦を宣言したの?秘密にしておいて奇襲を仕掛けた方が有利だったんじゃない?」

寧々が疑問を口にする。

「それはね、寧々。私は市民のみんなに私たちの戦いを見てもらいたいの。私たちがどれだけ頑張っているか、どれだけ強いかを見せることで、みんなに勇気を与えるの」

と凜が答えた。

「そうだ。寧々たちはただのヒロインじゃない。市民のみんなの希望なんだ。だからこそ、正々堂々と戦うんだ」

と大谷が同意した。

「わかった。私も全力で戦う」

と寧々が決意を固めた。

「きゃぁ~!もう風はやめてください。送風機を止めてください!画面に動きが欲しいからスカートを揺らすくらいの風って言っていっていたじゃないですか!!」

テレビの画面に映る奈理子がスカートを抑えてしゃがみ込み、誰かに何かを言っている。

三人のヒロインは、エビカブトンとの決戦に向けて気持ちを新たにした。明日の戦いに向けて、彼女たちはそれぞれの力を磨き、互いに励まし合いながら準備を進めていった。


翌日の水都公園の噴水広場には、大勢の市民が詰めかけていた。ミラクルナイトが出演した水都テレビでは、生中継が行われており、期待と興奮が広場に満ちていた。噴水広場の中央には、水都が誇る三人のヒロイン—ミラクルナイト、セイクリッドウインド、ドリームキャンディがエビカブトンを待ち構えていた。

「本当にエビカブトン来るのかな?」

ドリームキャンディが不安そうに呟く。

「奈理子の誘いを断る男なんて、水都にはいないよ」

とセイクリッドウインドが自信たっぷりに答える。

「ライムは私の誘いを平気で断るけど…」

ミラクルナイトが少し寂しげに言う。

そのとき、

「あっ、来ました!」

ドリームキャンディが空を指さした。エビカブトンが空を飛んでくるのが見える。

エビカブトンを見たミラクルナイトの瞳がキラリと光った。

「私は空から攻めます!」

兜虫の特性を持つエビカブトンの飛ぶ姿は鈍臭い。空中戦なら勝てると確信し、ミラクルウイングを広げた。

「あーっ!ミラクルナイトが飛び上がりました。水都の絶対ヒロイン、ミラクルナイトが美しい白い翼を羽ばたかせ、エビカブトンに挑みます!今日も奈理子ちゃんのパンツは白です!!」

実況アナウンサーが絶叫する。

「奈理子、頑張れー!」

市民もミラクルナイトへ声援を送る。

こうして、噴水広場の決闘はミラクルナイトとエビカブトンの空中戦から始まった。両者は空中で激しい戦いを繰り広げ、その光景に市民たちは息を呑んだ。ミラクルナイトの勇姿は、まさに水都の絶対ヒロインにふさわしいものだった。


噴水広場の上空、撮影用ドローンが飛び交う中、対峙するミラクルナイトとエビカブトン。

「まずは、私が相手よ」

とミラクルナイトが宣言する。

「ミラクルナイトか。空中なら俺に勝てるとでも思ったか?下からはパンツが丸見えだぞ」

エビカブトンが嘲笑する。

エビカブトンの言葉に応えるように、ドローンが下に回り込み、煽るような位置に移動した。

「えい!」

ミラクルナイトはエビカブトンの言葉を無視し、両手から水色の光弾を連射する。光弾は直撃し、エビカブトンが一瞬よろめく。やはり、エビカブトンは空中戦が得意ではない。そう確信したミラクルナイトは、エビカブトンを中心に回旋しながら光弾を放ち続けた。

「いつまで続けるつもりだ。こんなもの、俺には効かん!」

エビカブトンが叫ぶ。光弾は全て鎧のような外骨格に弾き飛ばされている。

「貴方が落ちるまでよ!」

ミラクルナイトはそれでも光弾を放ち続けた。

「落ちるのはお前だ!」

痺れを切らしたエビカブトンは、光弾をものともせず、両手の鋏を唸らせてミラクルナイトに迫る。思った以上にエビカブトンの動きが速い。光弾を放ちながらでは機動力が落ちてしまう。ミラクルナイトは右の一撃目を軽やかに避けた。返す左の二撃目も躱すと思われたが、スカートを斬り裂かれてしまった。

「あぁ!」

ミラクルナイトのスカートがひらひらと地上に落ちてゆく。近寄られたら危ない。ミラクルナイトは再び距離を取ろうとミラクルウイングを羽ばたかせようとした。しかし、それよりも先に

「落ちろ!」

エビカブトンの角が、ミラクルナイトに叩きつけられた。

ミラクルナイトは衝撃を受けて空中で体勢を崩し、無防備に地上へと落ちていく。呻き声を上げながら、彼女は必死に翼を広げ、なんとか落下の勢いを減らそうとしたが、エビカブトンの圧倒的な力には太刀打ちできなかった。

「奈理子!」

「奈理子さん!」

セイクリッドウインドとドリームキャンディが地上から叫ぶ。市民たちの声援も届くが、エビカブトンの冷酷な笑みが浮かんでいた。

「次は地上戦だ。三人まとめて相手をしてやる!」

エビカブトンが宣言する。ミラクルナイトは痛みを堪えながら、地上に立つ仲間たちの元へと戻った。

「私たちの力を合わせて、この怪物を倒しましょう!」

ドリームキャンディが鼓舞する。

「そうよ、奈理子。諦めないで!」

セイクリッドウインドも力強く言った。

三人のヒロインたちは、再び立ち上がり、エビカブトンに立ち向かう決意を固めた。水都公園の噴水広場は、再び熱い戦いの舞台となる。


「おーっ!ミラクルナイトが立ち上がりました。スカートを剥ぎ取られようと、我らの絶対ヒロイン、ミラクルナイトは負けません!奈理子ちゃんの清純の証、純白のパンツが輝いて見えます!!」

実況アナウンサーが絶叫する。市民もやんややんやの大興奮だ。

「大人しく寝ていた方が楽だったのにな」

と、フラフラのミラクルナイトをエビカブトンが嘲笑う。

「奈理子さんはスカートを脱がされてからが本番なのよ!」

ドリームキャンディは反論する。

セイクリッドウインドは扇型の武器ガストファングを構え、ドリームキャンディは鞭状の武器キャンディチェーンを手にする。ミラクルナイトは痛みに耐えながらも立ち上がった。三人のヒロインはエビカブトンに立ち向かう決意を新たにする。

「行くわよ!」

セイクリッドウインドが先陣を切る。ガストファングを振りかざし、強力な風の刃をエビカブトンに向けて放つ。

「エアリアルダンスブレード!」

「そんな風じゃ、俺には通じないぜ!」

エビカブトンは鋏で風の刃を受け止め、次の瞬間、セイクリッドウインドに向かって突進する。だが、その背後にドリームキャンディが飛び込んだ。

「キャンディチェーン!」

鞭のような動きでエビカブトンの足元を狙い、動きを封じようと試みる。

「甘い!」

エビカブトンは鋏を振り下ろし、キャンディチェーンを一撃で切り裂く。

「次はお前だ!」

と、鋏を振り上げ、ドリームキャンディに迫る。

「そうはさせないわ!」

ミラクルナイトがエビカブトンの背後から叫び、

ミラクルヒップストライク!」

強烈なヒップアタックがエビカブトンの背中に直撃した。その勢いでエビカブトンが一瞬バランスを崩したが、倒れはしなかった。

着地しようとするミラクルナイトに対し、エビカブトンが巨大な角で投げ飛ばす。

「エビカブトン角えぐり!」

ミラクルナイトはグルングルンと激しく回転しながらぶっ飛んでいく。

「あ~~ッ」

高速回転によって真空状態が作り出され、受け身が取れずに地面に叩きつけられ大きくバウンドする。さらに背中から地面に叩きつけられたミラクルナイトは、その衝撃に失神してしまった。そして、奈理子のパンツから液体が溢れ出す

「ミラクルナイト失神…。そして、奈理子ちゃん…失禁……」

実況アナウンサーが絶句する。動かないミラクルナイトの姿に、市民も静まり返る。

「よくも奈理子を!」

セイクリッドウインドとドリームキャンディが同時に動き出す。それよりも先に、エビカブトンが海老のように体を丸めた。

「エビカブトン棘車!」

体を丸めて棘だらけになったエビカブトンの体当たり攻撃を喰らったセイクリッドウインドとドリームキャンディが吹き飛ばされる。

「お前たちが束になって掛かって来ようが、俺を倒すことはできん!」

勝ち誇るエビカブトン。

「つ…強すぎる……」

「私たちが力を合わせても勝てないなんて…」

セイクリッドウインドとドリームキャンディも力が尽き倒れた。

「奈理子ちゃん、目を覚ますんだ!」

水都大学奈理子私設ファンクラブ会長の成好が叫ぶ。

「奈理子、しっかりさなさい!」

路地裏の占い師の鈴も叫ぶ。

「奈理子ちゃん、頑張れ!」

「野宮負けるな!」

商店街の蕎麦屋の店主が、水都中学を卒業した同級生たちが、奈理子に声援を送り続ける。それは他の市民も巻き込み、噴水広場を揺らす盛大な奈理子コールに発展した。

撮影用ドローンがお漏らししながら気絶したミラクルナイトを映し出す。水都の守護神ミラクルナイトは市民の期待に応えることができるのだろうか?


ブーンと音がする。撮影用ドローンだ。

「ウデムシ男に撮影されてる…私は、また負けたんだ……」

奈理子は夢を見ていた。

「私の動画でみんなが喜んでくれるなら、私は嬉しい…。私の恥ずかしいところ…可愛く撮って、ウデムシ男……」

撮影される快感に奈理子は酔っていた。しかし、それでいいの?と疑問が頭をよぎる。外が騒がしい。耳を澄ます。大勢の人たちが声を揃えて何かを言っている。

「私を呼んでるの?」

ミラクルナイトはゆっくりと目を開いた。

撮影用ドローンが目に入った。自分が撮影されている。スカートを穿いていない。股間が暖かい。

「ハッ!」

目を大きく開くミラクルナイト。市民が呼んでいる。盛大な奈理子コール。ミラクルナイトはエビカブトンに倒されたことを思い出した。噴水広場の中央にエビカブトンが勝ち誇ったように立っている。気を失っていたのは長い時間ではないようだ。手も足も動く。ミラクルナイトは、自分がまだ戦えることを確認した。この声援に応えなければ、ミラクルナイトではない。

「奈理子!」

大声援の中で、何故か、ライムの声がハッキリと耳に入ってきた。ライムが見ている。負けられない。ミラクルナイトの身体が水色に輝きはじめた。

「エビカブトン!勝負はこれからよ!!」

「おー、ミラクルナイトが立ち上がりました!輝いています!スカートを脱がされ、失禁までした奈理子ちゃんが水色に輝いています!!」

実況アナウンサーが興奮する。大声援を受け光り輝くミラクルナイトの姿に絶叫する。

ミラクルナイトが高らかに宣言する。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

エビカブトンはその言葉に眉をひそめる。

「まだ諦めないとは、愚かな女だ。」

ミラクルナイトは力強く立ち上がり、両手を広げると、水色のオーラが体全体に広がっていく。

「私の使命は、水都を守ること!そのために、何度でも立ち上がる!」

市民たちはその姿に再び歓声を上げ、ミラクルナイトへの応援が一層強くなった。彼女の決意が伝わり、その場の全ての人々の心を揺さぶった。

「エビカブトン、覚悟しなさい!今度こそ、あなたを倒す!」

ミラクルナイトの声が、噴水広場に響き渡る。

エビカブトンは構えを取り直し、冷たい視線でミラクルナイトを睨みつける。

「どれほどの力を持っているか見せてもらおうか、ミラクルナイト。」

ミラクルナイトは水色の光を全身に纏い、再び戦いに挑む。市民の声援を背に、彼女の決意はさらに固くなり、エビカブトンに立ち向かっていった。


鋏を振り下ろすエビカブトン。ミラクルナイトは瞬時に躱し、ミラクルウイングを広げ飛び上がる。

「フン!」

と角でミラクルナイトを叩き落とそうとするエビカブトン。ミラクルナイトは素早く脚をエビカブトンの首に巻きつけ、

ミラクルハピネスシザース!」

とエビカブトンの首を太股で締め付けた。

「鋏とはこういうものを言うのだ!」

右腕の鋏でミラクルナイトを挟み込もうとするエビカブトン。しかし、キャンディチェーンが鋏に巻き付いた。

「私がいることを忘れないで!」

とキャンディチェーンを引くドリームキャンディ。

「俺と力比べするつもりか!」

エビカブトンが右腕の鋏に力を入れる。

「負けないわ!キャンディパワー!!」

ドリームキャンディが黄色に輝き始める。黄色い光はキャンディチェーンにも伝わり、エビカブトンの鋏の動きを止めた。

「鋏は左にもあるんだぜ!」

エビカブトンは左腕の鋏をミラクルナイトに向ける。

「させない!」

セイクリッドウインドが飛び込み、左の鋏にガストファングを噛ませる。

「鬱陶しい奴らだ!」

エビカブトンはパンプアップで体を膨らませ三人のヒロインを弾き飛ばす。

しかし、ミラクルナイトはエビカブトンの角を掴み、再び脚をエビカブトンの首に巻きつけた。

ミラクルハピネスホイップ!」

そのままバック宙をする要領で回転し、舗装された地面にエビカブトンの角を叩きつけた。高速のフランケンシュタイナーだ。

「お前ら…もう許さんぞ……」

頭を抑え、ゆっくりと立ちあがるエビカブトン。しかし、自慢の角はミラクルハピネスホイップで叩き折られていた。

「次はもうないわ。エビカブトン!」

ミラクルナイトが息を切らしながらも毅然と立ち上がる。彼女の背後には、キャンディチェーンを握りしめるドリームキャンディと、ガストファングを構えるセイクリッドウインドの姿があった。三人のヒロインが力を合わせ、エビカブトンとの最後の決戦に挑む。


初めてエビカブトンにダメージを与えたことに歓喜する噴水広場。ミラクルナイトはさらに輝きを増し、両手で水色の光を集め始めた。その美しい舞に水都市民が熱狂し、広場は熱気に包まれる。これはミラクルナイト最大の必殺技の発動モーションだ。

「キャンディ、エビカブトンを抑えるよ!」

セイクリッドウインドが声をかける。

「はい!」

ドリームキャンディも力強く頷き、二人は動き出した。

「キャンディチェーン!」

ドリームキャンディがキャンディチェーンでエビカブトンをグルグル巻きにする。

「こんなもんで俺は止められん!」

エビカブトンが力を溜め、キャンディチェーンを引き千切ろうとする。

「ウィンドサイクロンスラッシュ!」

セイクリッドウインドがガストファングで巨大な竜巻を発生させ、エビカブトンを取り込んだ。だが、エビカブトンは強靭な脚を地面に食い込ませ、耐える。

「こんな風など無駄だ!」

エビカブトンが勝ち誇る。

その時、既にミラクルナイトは両手に集めた水色の光を天に掲げていた。

「奈理子、時間は稼いだよ」

「トドメは奈理子さんです!」

セイクリッドウインドとドリームキャンディがミラクルナイトに笑顔を向ける。

「みんなの想いを込めて、これが私の最高の技…リボンストライク!」

ミラクルナイトが両手に集めた水色の光をエビカブトンに向けて放つ。水色の光線は柔らかなリボンに形を変え、エビカブトンを包み込む。

「ミラクルナイトが…これほどの力を…」

エビカブトンは呟きながら、その姿が光に包まれ消滅していった。


「リボンストライク決まったー!ミラクルナイトが、セイクリッドウインド、ドリームキャンディと力を合わせ、難敵エビカブトンを倒しました!!」

実況アナウンサーが絶叫する。

「勝った…!」

ミラクルナイトが息を切らしながらも、勝利を確信する。

「奈理子さん、お疲れ様です!」

ドリームキャンディが駆け寄り、ミラクルナイトを支える。

「これで、水都の平和は守られたわね」

セイクリッドウインドが微笑む。

市民たちは歓声を上げ、ヒロインたちの勇姿に拍手を送る。

「奈理子!」

「凜ちゃん!」

「キャンディ!」

ドリームキャンディの正体を市民は知らないが、三人の名前が次々と叫ばれる。

「これからも、水都の平和を守り続けるわ!」

ミラクルナイトが決意を新たにし、仲間たちと共に手を取り合う。市民の声援がさらに高まり、噴水広場は一つの大きな感動に包まれる。

「ありがとう、皆さん!」

ミラクルナイトが手を振り、市民たちに応える。

「私たちがいる限り、水都は安全よ!」

セイクリッドウインドも力強く宣言する。

「次の戦いがあっても、負けません!」

ドリームキャンディも笑顔で続ける。

市民たちはヒロインたちに感謝の言葉を送り、涙を浮かべながら拍手を続けた。こうして、水都の平和は再び守られた。ミラクルナイト、セイクリッドウインド、ドリームキャンディの三人は、これからも市民のために戦い続けることを心に誓い、固い絆で結ばれていた。

ミラクルナイトたちの勇姿が春の日差しに照らされる中、平和な水都の未来が再び輝き始めた。

(第131話へつづく)

(あとがき)