DUGA

ミラクルナイト☆第183話

「奈理子さん、見た!?昨夜のSNS!もうすごいバズってたよ!」

「う、うん……ちょっとだけ、見たよ……」

すみれにスマホの画面を突き出され、奈理子は苦笑いを浮かべた。
昼休みの教室。水色のセーラー服の裾をそっと直しながら、奈理子は窓の外を見つめる。

白き天使、再臨》
パンチラの守護神》
《尊い生脚
恥じらいに宿る正義》

──称賛されてるのは、たしかに“ミラクルナイト”のはずなのに。

「……なんでみんな、“そこ”ばっかり見てるのかな……」

スカートを奪われ、下着を晒しながら戦っている自分。
“恥ずかしい”という気持ちは本物なのに、
それを“尊い”“可愛い”と笑顔で言われるたびに、心の中で複雑な波が揺れた。

(……でも、誰かを守れたなら。
恥ずかしくても、怖くても……意味は、あったんだよね)

ふと、ポケットのスマホが震えた。

「えっ……?」

奈理子が画面を見た瞬間、凍りつくような通知が目に飛び込んできた。

《速報:水都公園噴水広場に謎の粘液跡と警告文、再び“あの怪人”か?》

《現地で発見されたメッセージ》

「白き偶像へ告ぐ。次の実験地は、陽の下で。
多くの目が見守る中、お前の“羞恥の限界”を確かめる」

「……うそ……また……来るの……?」

奈理子の胸が、ズキリと締めつけられる。

教室の窓から見える、賑わう噴水広場。
放課後になれば人通りは更に増え、まさに“注目される場所”。

(……逃げたくなる。でも……)

「……行かなくちゃ。わたしが、行かなくちゃいけないんだ」

小さく呟いた奈理子の瞳には、ほんの少しだけ迷いのない光が宿っていた。


水都神社に隣接する凜の部屋──

「……噴水広場に来い、って……書かれてた」

白湯を手に、奈理子はぽつりと呟いた。

目の前のちゃぶ台には、風間凜と杉原寧々。
二人とも私服のまま、神妙な面持ちで彼女を見つめている。

「わざわざ市民の目が集まる場所を指定するなんて……
今回は明確に“奈理子”を狙ってるってことだね」

凜の声は低いが、冷静さを保っている。
かつて敵幹部だった彼女だからこそ、敵の狙いのいやらしさを察していた。

「……やっぱり、私が、行かなきゃ……」

「でも、私たちも一緒に行きます。
だって、今回は明らかに“戦い”じゃなくて、“見世物”にしようとしてるんですから」

寧々がきっぱりと言い切る。
その強さに、奈理子はほんの少しだけ目を潤ませた。

「……ありがとう。寧々ちゃん、凜さん……
わたし、今まで、守られるばかりだったけど……
もう、泣きながらじゃなくて、ちゃんと立って、前を見て……“守る側”になりたいんだ」

凜は微笑み、寧々は黙ってうなずいた。

「じゃあ、準備だね。
装備、周囲の地形、避難導線、スカートを脱がれたときにパンツを隠すもの……できる限りサポートするよ。
私も巫女のコネで、現場に“偶然居合わせる”ようにしておく」

「私も制服の下に変身アイテムを隠しておきます。
いつでも出られるように、早めに現地入りします」

仲間たちの言葉に、奈理子はふっと息をついた。

「……うん。ありがとう。
どんなに恥ずかしい目に遭っても、今度は――
“誰かに見られてる”ことを、怖がらないでいたいから」

水都大学構内・水都大学奈理子私設ファンクラブ本部──

「緊急作戦会議だ!」

手をバンッと叩いたのは、水都大学奈理子私設ファンクラブ会長・成好
周囲にはTシャツやペンライトを構えた精鋭たちが20名以上、奈理子への愛を胸に集結していた。

「中央広場に敵が出るっていうなら、我々も現地入りする!
警察より早く動けるよう、ルート確保、交通手段、連絡網は整備済み!
“白が風に舞うその瞬間”を護るのが、俺たちの誇りだ!!」

「隊長!万が一、ミラクルナイトのスカートが脱がされそうになったら――!?」

「スマホは下げろ。目に焼き付けろ。
だが最優先は、彼女が一人じゃないと“感じさせること”だ!」

「了解ッッ!!」

それは、熱狂ではない。守護だった。

“可愛いから好き”から、“彼女の戦いに心動かされた”へ。
成好たちの想いは、確かに変化していた。

野宮家・夜──

「……本当に行くのかよ?」

隆の声は、奈理子の背中越しに届いた。
自室の鏡の前で、ミラクルナイトの変身アイマスクを見つめていた奈理子は、微かに頷いた。

「うん。あの広場に立つのは、怖いよ。
たくさんの人が見てて、きっとまた……いやな目にも遭うかもしれない」

「じゃあ、やめてもいいじゃん。誰も責めないよ。
姉ちゃん、いつも恥かいてるし、泣いてるし、悔しそうにしてるし――
それ見てるこっちだって、辛いんだから」

奈理子はくるりと振り返った。
弟の顔を見て、ほんの少し笑った。

「でも、守りたいの。
……隆のことも、街の人も、ファンクラブの人も、寧々ちゃんも、凜さんも、みんな……」

「…………」

「だから、見ててね。
今度は、私が“守る”側なんだよ」

隆はそれ以上何も言わず、
ただ頷いた。

その姿が、少しだけ大人びて見えた。

嵐の前の静けさ。
水都の街に、様々な想いが満ちていく。
誰かが誰かのために、覚悟を決める夜。

やがて、時は来る――

白き偶像の試練の舞台が、始まる。


噴水広場の周囲はすでに人だかりに包まれていた。
市民、報道クルー、警備員、そして……
水都大学奈理子私設ファンクラブの面々が、最前列にて静かにその瞬間を待っていた。

中央の噴水は止められ、代わりにその縁にはねっとりとした粘液がこびりついている。
その上に立つ異形の男――ナメクジウオ男が、冷ややかな瞳で空を見上げた。

「来る。もう間もなく……」

――そのとき。

広場の大階段の上に、一筋の光が走った。

「お待たせしました!」

軽やかに、そして確かに響く声。
セーラー服姿の野宮奈理子が、広場を見下ろす位置に姿を現した。

観客席から一斉に歓声が上がる。

「奈理子ちゃんだ!」
「今日も可愛いぞ!」
「がんばれーー!!」

その声に背中を押されるように、奈理子は胸元から小さなアイマスクを取り出す。
そして、目元にそっと重ねた。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しませんっ!!」

光が弾ける。
制服が舞い、光に包まれながら、彼女の姿は清廉な戦闘衣装へと変わっていく。

白と水色のコスチューム、風にたなびくプリーツスカート、凜と立つ姿――

ミラクルナイト、参上。

ナメクジウオ男は、その姿を見上げて口角をわずかに上げた。

「実に象徴的だ。
“皆の視線”の中、貴様がどこまで崩れずにいられるか――
本日、“羞恥実験”を開始する」

粘液が広がるように、広場全体に新たな罠が張り巡らされていく。

ミラクルナイトは深く息を吸い、足元の石畳に一歩踏み出した。

(怖い。でも、もう逃げない。
みんなが見てる今こそ、“ヒロイン”として……負けられない!)


「ミラクルシャインブラスト!!」

戦闘の口火を切ったのは、ミラクルナイトのまっすぐな一撃だった。
光の弾が噴水の縁を砕き、火花のように弾ける!

だが、その中央に立つナメクジウオ男の身体には、ひとつの傷もない。

「無駄だ。“表層”では、我が肉体は崩れぬ。
君の放つ光の温度と構成、すでに把握している」

「そんな……!」

ミラクルナイトはすぐさま距離を取り、再び掌を構える。

「ミラクルアクアティックラプチャー!!」

水流が巻き上がるように発射され、粘液の道を洗い流す!

しかし、ナメクジウオ男は後方へ滑るように回避しつつ、広場全体を包むように両手を広げた。

「観客たちよ。
今から始まるのは“闘争”ではない――“観察”だ」

ザァアア……ッ!

広場の石畳から粘液が染み出し、ミラクルナイトの足元を絡め取るように広がっていく!

「うっ……くっ……足が……!」

瞬く間に、足首が沈み、動きが鈍る。
観客席からどよめきが広がる。

「奈理子ちゃん!?」
「動けないのか!?」
「がんばれ、ミラクルナイト!」

「その表情……羞恥と焦り……とてもよい。
だが、まだ“観察値”としては低い。もう一段階、刺激が必要だ」

にゅる……ッ!

ナメクジウオ男の触手が伸び――ミラクルナイトの背後から、スカートへと伸びる!

「だ、だめっ!!」

翻る布地、風と共に――

「きゃあああっ!」

スカートが剥がれた

歓声、悲鳴、フラッシュの嵐。
ミラクルナイトは顔を真っ赤に染めながら、足を閉じ、懸命に立っている。

「見られても……笑われても……わたしは……!
みんなの前で、絶対に……諦めないから!!」

粘液に沈みながらも、ミラクルナイトはまだ、倒れてはいなかった。


「奈理子さん!!」

橙のドレスが地を駆ける。
キャンディチェーンを手に、広場に飛び込んできたのはドリームキャンディ。

「よくも……よくも、奈理子さんのスカートをっ!!」

その後方、銀と緑の光が風と共に舞い降りる。

「“羞恥実験”? ふざけるのもいい加減にしなさい、ナメクジウオ!!」

セイクリッドウインドがガストファングを広げて構える。

ナメクジウオ男は二人の登場を一瞥し、微かに首を傾げる。

「数値が乱れる。
外部介入は、観察結果を歪める要因となる」

「だったらやめればいいでしょ!!」
「二対一でぶっ飛ばしてあげるわよ!!」

だが、震える声が、ふたりを制した。

「やめて……っ!」

スカートを奪われ、粘液に足を取られながらも――
ミラクルナイト=奈理子は、顔を上げて言った。

「これは……私の戦い。
私が、みんなに“守られてるだけ”じゃないって……証明したいの……!」

ドリームキャンディが息を飲む。セイクリッドインドも目を見開く。

「奈理子さん……」

「だから……見てて。
ぜったい、負けないから」

立てないはずの足に、力を込める。
粘液が軋み、光がわずかにその身体を包む。

──その姿を見て、周囲の群衆が湧き始めた。

「ミラクルナイトーッ!!」
「奈理子ちゃーん!!」
「負けるなーッ!!」
「うぉぉぉっ!!! 純白の天使、奈理子最高ーーーッ!!!」

ファンクラブの成好もペンライトを振りながら叫ぶ。

「その白いパンツは誇りだーッ!! 清らかさの証明だーッ!!」

ミラクルナイトは、顔を真っ赤にしながらも微笑んだ。

(ほんと、変な人たちばっかり……でも、ありがとう)

ナメクジウオ男は静かに構える。

「興味深い。“羞恥”に耐え、なお“自我”を保つ。
今こそ、観察を最終段階へ移行する」

粘液が渦を巻き、触手が無数に広がる――
真のピンチは、これから。

ミラクルナイトは、拳を握りしめた。

「こっちだって……覚悟、決めてるんだから!!」


粘液に絡まった足を、ひとつずつ外しながら、
ミラクルナイトは確かな意志で、前へ進む。

ナメクジウオ男の触手が空気を切り裂いて迫るが、
ミラクルナイトは迷いなく手を突き出した。

「ミラクルパワー、今こそ……ッ!」

白い光が、その手から瞬いた。

――バァン!

突如として、触手がひとつ爆ぜ飛ぶ。

「ほう……前回には見られなかった反応。
観察により、成長の兆し……」

「違う……!
あなたの“観察”じゃない! これは――わたしの“答え”よ!!」

ミラクルナイトが両手を広げ、跳躍する。

夕陽を背に、白と水色が描く円――

「ヒップストライク!!」

弾丸のようなヒップアタックが、ナメクジウオ男の胸元に激突!

ぬるっ、と粘液を散らしながら、その巨体が一歩だけ後退する。

「……なるほど。羞恥を“力”に変換したか。
これは、次の観察段階が必要だ」

そう呟くと、ナメクジウオ男は粘液の波を引かせ、
風のように滑りながら、噴水の裏手へと姿を消した。

「逃げ……た?」

「逃げたんじゃない。“次”のために引いたのよ」

背後から、凜の声がする。
そして、寧々が奈理子の肩をそっと抱いた。

「でも、今日は……勝ったよ、奈理子さん」

「うん……」

スカートはない。髪も乱れ、脚も泥だらけ。
それでも奈理子は、夕暮れの中、微笑んだ。

周囲には、拍手と歓声が広がる。
その音の中で、奈理子は小さく呟いた。

「わたし、ちゃんと……“守れた”かな」


翌日、グフグフハンバーガー店内──

「……それにしてもさ、ナメクジウオ。あいつ、“見せ方”がいやらしすぎるよね~」

凜はテーブルに肘をつきながら、カリッと揚がったポテトをひとつ摘まみ、口に放り込む。
制服ではなく、カジュアルな私服に身を包んだ彼女は、いつもの巫女姿とは違うリラックスモード。

寧々は向かいに座って、ストローでミルクシェイクを吸いながら、小さく頷いた。

「……凜さんの言う通りです。
あいつの“目的”って、倒すことじゃないんですよね。奈理子さんを“見せ物”にして、じっくりと追い込んで……」

「でしょ~?
“戦って倒す”んじゃなくて、“崩れていくのを見る”のが目的って感じ。
たち悪いよ、あれはほんと」

ポテトをふたつ取って口に入れた凜が、寧々をじっと見つめる。

「でもさ、寧々……あんた、だいぶ変わったよね。
奈理子を“庇う”ってより、“支える”顔になってきたっていうか」

寧々は少しだけ頬を赤らめた。

「そりゃ……見てられませんよ、毎回スカート脱がされて。
あんなに恥ずかしい目に遭ってるのに、絶対逃げないんですから」

「奈理子、あの根性だけは本物だからなぁ……」

凜がポテトを指でいじりながら、ニヤリと笑った。

「でもさ。
あんた最近、“もうひとり”見てる目つきが柔らかくなったんじゃない? ほら、隆くん」

「なっ……!」

寧々が反射的に背筋を伸ばした。
少し離れた席の老夫婦が、こっそりこちらを見てニヤついている。

「商店街の人たち、けっこう言ってるよ?
“あの寧々ちゃんと奈理子ちゃんの弟くん、最近いい雰囲気だね~”って」

「……そ、そんなわけないです……」

「へぇ?じゃあ、なんでこの間一緒に果物屋でジュース飲んでたの?」

「そ、それは隆が……いや、私がたまたま通りかかって……っ!」

「ふふん。否定しないってことは、だいぶ来てるな~」

からかうように笑う凜。
だがその目は、どこか優しかった。

寧々は頬を赤らめたまま、小さな声で呟く。

「……もし隆が、私のことを少しでも“女の子”として見てくれてるなら……
それだけで、今の戦いだって、もうちょっと頑張れる気がするんです」

「……そっか」

凜は一拍おいて、軽くポテトをひとつ放り投げ、笑みを浮かべながら言った。

「いいね。
恋する乙女は強い、ってやつ?」

「ち、違います……!」

寧々は口をとがらせ、スプーンでシェイクをかき混ぜる。だがその頬はほんのり赤いままだ。

「でも、わかるよ。
私だって、昔は“誰かのために強くなりたい”って思ったこと、あったから」

凜は窓の外に目をやる。商店街を行き交う人々の中に、遠く奈理子の姿が重なった。

「……奈理子はね、たぶんずっと、“誰かのために弱くていい”って思ってた子なのよ。
自分が無様でも、誰かのために立ち上がれるならそれでいいって。
でも最近、ほんの少しずつ、自分の足で踏ん張ろうとしてる」

「……うん。わかります。
奈理子さん、本当はすごく怖がりなのに、目の奥が、変わってきました」

寧々はまっすぐな目で凜を見る。

「だからこそ、守りたいんです。
あの人が“恥を晒してでも守ろうとしてるもの”を、今度は私たちが守らなきゃって」

「頼もしいなあ、もう。
でも……そのためにも、“あいつ”の正体、ちゃんと探っていこうね」

「ナメクジウオ男……ですよね」

「うん。あいつは“戦闘”じゃなくて、“実験”をしてる。
奈理子をデータで解析しようとしてる……やっぱ、ただの怪人じゃない。
裏に何かいるかもね」

ふたりの視線が、自然とひとつの方向を向く。

穢川研究所。

あの研究所の存在が、すべての裏にあるとしたら――
この戦いは、まだほんの入り口に過ぎない。

「……次に来るときは、もっと悪質な“仕掛け”があると思う。
だから寧々、油断しないで。
そして――隆くんのこと、大切にね」

「……はい」

恥ずかしげに笑う寧々と、ニヤリと笑う凜。

テーブルのポテトがすっかり冷めていることに、ふたりはようやく気づいて、同時に吹き出した。

「……じゃ、そろそろ帰ろっか。
奈理子、またどこかで脱がされて泣いてるかもだし」

「もう……凜さん!」

和やかな午後の風。
だが、ふたりの胸には確かに、“次”への決意が燃えていた。


某所・地下排水路跡──

ぬる……と水音を立て、ナメクジウオ男の巨体が暗がりを滑る。

古びた水路の壁一面に映し出されたのは、監視カメラから抜き取った市街地の映像。
その中心には、スカートを奪われながらも立ち続けるミラクルナイト=野宮奈理子の姿が、何度も再生されていた。

「羞恥への耐性は高くない。
だが、その“耐性の低さ”こそが、観客の共感を呼び、偶像としての価値を高めている」

ナメクジウオ男はぬめった手で記録用端末を操作する。

観察記録001:羞恥刺激に対する回復挙動

  • スカート剥奪→顔面紅潮→一時的硬直
  • 声援入力→羞恥状態維持のまま動作再開
  • 恥と“守る意思”が同時並行で強化される傾向

「情動による行動制御は不安定。
だが、観客との“心理的相互リンク”によって、彼女は行動を最適化していく」

彼は続けて、仲間ヒロインたちの映像に切り替える。

セイクリッドウインド:戦術介入型。羞恥刺激に対して無反応。観察価値:低
ドリームキャンディ:感情表出は激しいが、羞恥反応希薄。観察価値:限定的
ミラクルナイト:羞恥反応と使命感が極端に交錯。観察価値:極高

ナメクジウオ男はふっと声を漏らすように呟いた。

「彼女の“羞恥による自己否定”と“守護者としての義務”が、もっとも深く交差する瞬間――
それを、次こそ引き出す」

指先が、端末の地図データを操作する。

水都のマップの上に、光が走る。

【次回実験候補地案】
・水都大学学園祭トークショー(目撃密度:極高)
・水都タワー前広場ラジオ公開生放送(広域粘液展開可能)
・水都TV公開中継番組スタジオ前(報道刺激による反応上昇)

「“正義の象徴”を、祝福の場で崩す――
それが“観察価値の最大化”だ」

モニターに映る、奈理子の笑顔。
その裏にある怯えと、それを超えようとする勇気。

ナメクジウオ男の声は、粘液の奥からこだました。

「白の偶像よ。
貴様がどこまで崩れても、なお立ち続けられるか――
それを、私は見たい」

暗がりに粘液が蠢く。
次なる“観察”は、すでに始まっていた。

第184話へつづく)