DUGA

ミラクルナイト☆第162話

ミラクルナイトたちが麻薬密売組織のアジトを壊滅させたニュースは大々的に報じられ、水都女学院高校一年二組の教室でもその話題で持ちきりだった。

「奈理子さん、本当にすごいわね」

と、すみれが微笑みかけると、他の女子たちも奈理子の周りで楽しそうに話しかけていた。

しかし、そんな雰囲気を冷ややかに見つめる一団がいた。菜々美とその取り巻きである。

「学校の周りにマスコミがうじゃうじゃいて迷惑なんだけど」

と、菜々美はわざと奈理子に聞こえるように呟いた。取り巻きたちもそれに同調するようにうなずく。

「でも、菜々美さんだって奈理子さんを応援してたじゃない」

とすみれが反論すると、

「応援なんてしてないわ。ただ、うちの生徒である奈理子さんには負けてほしくないだけ」

と菜々美が言い返す。

「それを応援って言うのよ」

とすみれも負けずに応じる。

「私のせいでみんなに迷惑をかけてごめんなさい」

と、奈理子が二人の争いをなだめるように話すと、

「だったら外のマスゴミを追い払ってくれない?」

と菜々美が皮肉混じりに返す。

「それは…」

と奈理子は言葉に詰まる。水都の絶対ヒロインである奈理子は、メディアとの関係を良好に保つ必要がある。マスコミを拒絶するような行動はとれなかった。実際、今回の強いカエル男を倒したのはセイクリッドウインドとドリームキャンディであり、奈理子は彼女たちの技が確実に当たるように強いカエル男の気を引いただけだった。市警が戦いの詳細を公表していないため、奈理子が注目を集める状況は心苦しくもあった。

その時、

「奈理子さん、そんなに気にしなくていいのよ」

と、現れたのは上級生の一花だった。

「どうして一年の教室に…」

と驚く菜々美に、

「一年二組が賑やかだったので様子を見に来たの」

と一花が微笑んで答える。菜々美は三年の教室まで届くような騒ぎには全くなっていないはずと思ったが、何も言えなかった。

「敵を倒せたのは奈理子さんの協力があってこそ。堂々と振る舞えば良いのです」

と一花は優しく奈理子に告げた。

「一花さん…ありがとうございます!」

と奈理子が感謝を伝えると、

「奈理子さん、悩み事があればいつでも生徒会長室にいらっしゃい」

と一花は微笑み、教室を後にした。

「奈理子さん、すごい! 一花さんに生徒会長室に招待されたよ!」

と女子たちは興奮気味にはしゃぐ。一花は下級生の憧れの存在なのだ。その一方で菜々美は、

(一花さんが奈理子に優しいのは何か理由があるはず…もしかして、一花さんは奈理子のことを…?)

と、よからぬ展開を妄想していた。


「一花さんが誘ってくれたんだから、生徒会室に行ってみよう!」

と放課後、奈理子は心を弾ませながら校舎を出た。水都女学院の生徒会本部は、校舎とは別の建物にあり、杜の中に佇むその場所は一般生徒にはほとんど立ち入ることのない秘密の領域だった。奈理子は期待に胸を膨らませて、その静かな建物へと向かっていた。

ところが、その前に菜々美が立ち塞がる。

「菜々美さん、どうしたの?」

と奈理子が尋ねると、

「生徒会は魑魅魍魎の集まりよ!世間知らずの奈理子さんが行ったら、酷い目に遭うわ」

と菜々美が警告した。彼女は、一花が奈理子に優しくするのは何か裏があると考えていたのだ。実は一花の正体は、昨年ミラクルナイトを打ち負かしたアゲハ女──しかし奈理子はそのことを知らなかった。

しかし、「世間知らず」という言葉に奈理子は少しカチンとくる。水都のヒロインとしてマスコミや大人たちと話す機会も少なくなく、普通の女子高生よりも世間を知っているつもりだったのだ。

「この学校の生徒会は、奈理子さんが想像もつかないような上流階級の集まりよ。奈理子さんとは住む世界が違う」

と菜々美が言う。

「でも菜々美さんもお嬢様でしょ?口は悪いけど、いつも私を心配してくれているじゃない」

と奈理子が微笑む。

「私は…本物のお嬢様じゃない」

と菜々美は小さく呟いた。

その時、眼鏡をかけた女生徒が近づいてきた。

「菜々美さん、こんなところでどうしたの?」

生徒会副会長の福永和香だった。彼女は次期生徒会長の有力候補で、菜々美とは中学時代、生徒会活動をともにしていた。

「三年生が引退したら生徒会に入るんでしょう?今日はその見学?」

和香が菜々美に微笑んで尋ねると、

「いえ、奈理子さんが道に迷ったから連れ戻しに来たんです!」

と菜々美は言い、奈理子の腕を掴む。

「ちょっと、菜々美さん!」

奈理子は引っ張られながら言った。

「奈理子さんを招待したのは一花さんです。私は奈理子さんをお迎えに来たのです」

と和香が穏やかに告げる。

「ほら、副会長さんもそう言っているじゃない」

と奈理子が菜々美をなだめると、菜々美は

「どんな酷い目に遭わされても知らないから」

と、和香に聞こえないようにささやいた。

「一花さんはそんな人じゃないわ」

と奈理子が毅然とした声で言う。

「生徒会長室で一花さんがお待ちしております」

と和香が丁寧に誘導する。

「菜々美さんも一緒に行く?」

と奈理子が優しく誘うが、

「私は遠慮しておくわ」

と菜々美は目を伏せた。

「行きましょう、奈理子さん。菜々美さん、またゆっくりお話ししましょうね」

と和香が微笑みながら奈理子の手を取り、二人で生徒会本部へと向かう。菜々美は去りゆく和香を見つめ、その瞳が一瞬妖しく光ったように感じた。


放課後、寧々は水都神社へ向かった。凜に会いに来たのだが、彼女はマスコミに囲まれている。それだけでなく、ファンらしき人たちも混じっていた。洋館の事件については市警が公表した内容しか話せないせいか、どうやら巫女装束の凜を撮影する会のようになっている。カメラに囲まれた中心で、凜が得意げにポーズを決めている姿が見えた。

「凜ちゃん、すごい人気だな」

と感心する隆が寧々の隣に立つ。

「はぁ…」

寧々は少し溜息をついた。

「寧々もテレビに出たいのか?」

と隆が尋ねる。今朝、隆の家の前にもマスコミが来ており、奈理子の弟として少しだけインタビューを受けた。だが、寧々の家にはマスコミが来ていない。彼女がドリームキャンディであることを秘密にしているためだ。

「カエル男にとどめを刺したのは寧々なのにな」

と隆が慰めるように言う。彼は、洋館での戦いについて奈理子から聞いていたのだ。

「違うの。あの戦いで、私は奈理子さんには絶対に勝てないなって思ったの」

と寧々が小さく呟いた。

「でも、寧々は姉ちゃんより強いだろ?正体を明かしたら、きっと姉ちゃん以上に人気が出るはずだ」

と隆は励ます。魔法少女アニメのヒロインが女子中学生であることが多いせいもあり、中学生の寧々の方が、高校生の奈理子よりもオタク層に喜ばれるだろうと考えていたのだ。

「人気なんてどうでもいいの」

と寧々は強く言った。その脳裏に、強いカエル男に挿入されながらも、セイクリッドウインドとドリームキャンディが攻撃する隙を作るために耐え忍ぶミラクルナイト、奈理子の表情が浮かぶ。あの献身的な姿は神々しく、美しさすら感じさせるものだった。寧々には、水都の平和を守るために、あそこまでの覚悟はまだ持てない。

「奈理子さんって、本当にすごいね」

と、しみじみとした声で寧々が言った。

「でも、弱いぞ」

と隆が少し笑う。実際、ミラクルナイトは時に信じられない力を見せるが、いつもそうとは限らず、無様に敵に倒されることも多いのだ。

「だから、私が奈理子さんを守らなきゃ」

と寧々は決意を新たにした。主役は奈理子であり、自分はあくまでも脇役。その分をわきまえ、正体を明かさずに戦い続ける覚悟を心に刻む。もっと強くならなければ──ドリームキャンディも近頃は敗北が続いているのだ。

「姉ちゃん、今日もまた敵に襲われるかな?」

と隆が心配そうに呟く。

「奈理子さんは私が守るわ」

と寧々は力強く答えた。


奈理子が生徒会長室に入ってから、一時間が過ぎていた。生徒会本部のリビングルームには、三年生で風紀委員長の紫と、二年生で副会長の和香がいた。風紀委員長でありながらギャル風に制服を着こなす紫はソファで寝転んでタブレットを弄り、和香は黙々と宿題に取り組んでいた。

やがて二階の生徒会長室から一花が降りてきた。

「奈理子さんはいかがなさいますか?」

と和香が立ち上がって尋ねると、

「少しお疲れのご様子で、今は眠っていますから、しばらく寝かせてあげましょう」

と一花が穏やかに微笑んで答えた。

「奈理子のお汁はどうだった?」

と紫がニヤリとしながら一花を見つめると、

「とても美味しかったですわ」

と一花が微笑む。

「私も奈理子の甘い蜜を味わいたいな〜。一花のとどっちが甘いかな?」

と紫がふざけて一花のスカートの中に手を差し入れると、

「和香さんが見ていますわよ」

と一花が軽くたしなめた。

「よし、奈理子をソファに運んでくる」

と紫は言って二階へ上がり、奈理子を抱きかかえて運んできた。

「紫さんの力強いところ、素敵ですわ」

と奈理子をそっとソファに寝かせる紫を見つめて一花が微笑む。背が高く力強い紫にとって、華奢な奈理子を抱きかかえるのはまるで子供を抱くようなものだった。

「ところで、なぜスカート脱がせたの?」

と、奈理子の水色のスカートを手にしながら紫が尋ねる。奈理子は水色襟のセーラー服白いショーツ姿で穏やかな寝顔を見せていた。

「スカートに皺がつくといけませんから、脱がして差し上げました。綺麗なプリーツが崩れてしまってはもったいないですもの」

と一花が答える。

「そうなんだ。…それにしても、寝顔まで可愛い子だね」

と、紫は奈理子の髪をそっと撫でた。

「紫さんには私がいるじゃないですか」

一花が紫の耳元でささやく。

「じゃあ、次は私が一花の蜜を吸ってあげる」

紫は立ち上がり、再び一花の尻を撫でた

「奈理子さんが目を覚ましたら、また遊びに来てくださいとお伝えください。次回は、菜々美さんと一緒に、とも」

と一花は和香に伝え、紫とともに生徒会本部をあとにした。


洋館での戦いは、ミラクルナイトとしての奈理子に自分の無力さを痛感させるものだった。カンフーの使い手である強敵・カエル男を打ち倒したのは、セイクリッドウインドとドリームキャンディの連携によるものだった。ミラクルナイトはただカエル男に大切なものを差し出しただけである。しかし、世間の注目を集めるのは、やはり水都一の美少女・野宮奈理子が変身するミラクルナイトだった。

奈理子は水都公園の遊歩道を歩いていた。周囲には記者が押し寄せ、カメラを向けているが、水都の絶対ヒロインとして注目を浴びることには慣れている。微笑みを浮かべながら対応する一方で、奈理子の頭には生徒会長室での出来事が浮かんでいた。

カエル男との戦いの中で、ミラクルナイトの身体は穢されてしまった。その記憶を、恋人であるライムに上書きしてほしいという思いが奈理子にはあった。しかし、事件後のマスコミの追跡によって、ライムに会う時間を作ることができず、奈理子はもどかしさを感じていた。

そんな中、一花からの誘いを受けて、奈理子は放課後に生徒会長室を訪れた。世間から実力以上に注目される自分の立場への悩みを、一花に打ち明けたのだ。一花は優しく奈理子の話を聞いてくれ、いつの間にか奈理子は眠りについていた。

目を覚ますと、奈理子は生徒会本部リビングのソファーに横たわっていた。水色のセーラー服姿だったが、スカートが脱がされ、白いショーツが露わになっていることに気づき、驚いた。副会長の和香によれば、

「スカートが皺にならないように」

と一花が気を利かせて脱がせてくれたのだという。ショーツが少し濡れていたが、奈理子の頭の中はスッキリしており、悩みを話して気持ちが軽くなったことを実感していた。眠っている間に何があったのかは知らないが、一花に相談してよかったと奈理子は思った。

「奈理子さん、カエル男は他の怪人と繋がりがあるのでしょうか?」

と記者が問いかけた。奈理子は、カエル男が他の怪人たちと直接の組織的繋がりはないものの、協力関係がある可能性を考えていた。過去のカエル男による現金輸送車襲撃事件で現れたボタン男とハオリムシ男は「雇われた」と語っていたことを思い出す。しかし、確かなことはわからない。

「私にはわかりません」

と奈理子は答える。そして、カメラに向かって力強く言葉を続けた。

「ですが、水都の平和を乱す者は許しません。ミラクルナイトが必ず立ち向かいます。私が言えるのは、それだけです!」

その宣言に、遊歩道に集まった人々から拍手が湧き起こった。


「さすが水都の絶対ヒロイン、野宮奈理子。カッコいいこと言うじゃない!」

突如、奈理子と記者たちの前に現れたのは、何かの植物を模した怪人だった。その登場に、辺りは騒然とし、マスコミは一斉に怪人にカメラを向けた。

「皆さん、下がってください!」

奈理子はマスコミに向かって叫び、すぐに怪人に向き直った。

「あなたは何者なの?!」

と声を張り上げる。

「私はトケイソウ女。今日からパイナップル男に代わって、あなたの担当になったわ。よろしくね!」

とトケイソウ女は不敵に笑う。奈理子はすぐにアイマスクを手に取るが、目の前のトケイソウ女が変身を許してくれる相手なのか不安を覚えた。変身の瞬間は無防備。しかも、トケイソウ女には蔓の触手がある。奈理子はその類が苦手だった。スカートから伸びる細い脚がかすかに震える。

「ここでは狭すぎるわね。広い場所で遊びましょうか」

とトケイソウ女が蔓を伸ばした瞬間、奈理子の四肢を絡め取った。

「あぁッ!」

奈理子は身をよじるが、蔓の力は強く、逃れることはできない。宙に吊られた奈理子の顔には恐怖の色が浮かび、目には涙が滲む。

「あらあら、もう泣いちゃうの?さっきはあんなに威勢のいいことを言ってたのに」

とトケイソウ女は嘲笑を浮かべた。

「お願い…変身させて…」

奈理子は哀願するが、

「広いところでって言ったでしょ」

とトケイソウ女は冷たく返し、そのまま奈理子を蔓で捕らえたまま遊歩道から芝生広場へと移動した。

トケイソウ女は奈理子を芝生に放り投げた。

「さあ、遊びましょう。さっさと変身なさい」

と促す。奈理子は震える手でアイマスクを掲げた。

「奈理子さん、頑張れ!」

「変身だ!」

周囲のマスコミや市民たちが期待に満ちた声を上げる。その視線が奈理子に集中する中、彼女は意を決してアイマスクを装着した。

奈理子の身体は水色の光に包まれ、セーラー服が消えて、純白のブラショーツのみの姿が一瞬現れる。しかし、すぐに彼女の髪に愛らしい白いリボンが現れ、白いブラウス、胸元の水色のリボン、そして手足にはグローブブーツが次々と装着される。そして最後に、純白のショーツの上に、ふわりと白いプリーツスカートと水色のサッシュが優しく覆い被さった。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

ミラクルナイトが高らかに宣言する。その声を聞いたトケイソウ女は鼻で笑った。

「それ、さっきも聞いたわ」

と、すかさず蔓を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。

こうして、芝生広場でミラクルナイトとトケイソウ女の戦いが幕を開けた。


芝生広場に集まった市民たちは、熱狂的な声援を送っていた。水都の絶対ヒロイン、ミラクルナイトが立ちはだかる怪人・トケイソウ女に勇敢に挑む姿に、誰もが釘付けだった。

「行け、ミラクルナイト!」

「水都を守ってくれ!」

市民たちの応援の声が広場に響き渡る。

「あなたの華麗な動き、期待してるわよ!」

トケイソウ女は挑発的に笑みを浮かべながら蔓を揺らす。その蔓にはトケイソウの花が咲き、青紫の色彩が妖しく輝いていた。

「だけど、期待通りに踊れるかしら?」

ミラクルナイトは一歩前に出ると宣言した。

「水都の平和を乱す者は、絶対に許しません!」

その言葉に市民たちから大きな拍手が沸き起こる。

トケイソウ女が動いた。地面から蔓が次々と伸び、ミラクルナイトに向かって勢いよく襲い掛かる。

「同じ事ばかり何度も言ってないで、華麗にかわしてみなさい!」

ミラクルナイトは瞬時に反応し、軽やかなステップで後方に跳ぶ。プリーツスカートがふわりと揺れ、白いブーツが芝生を蹴るたびに光が舞うようだ。市民から感嘆の声が上がる中、ミラクルナイトはスピードを活かしてトケイソウ女に接近した。

「えいっ!」

鋭い回し蹴りがトケイソウ女の蔓を狙う。しかし、蔓はしなやかに動いて攻撃を避け、逆にミラクルナイトの脚に絡みついた。

「きゃっ!」

「可愛いわね。でも、私を本気で相手にするには、もう少し考えたほうが良かったわね」

とトケイソウ女は嘲笑を浮かべ、さらに蔓を伸ばした。

「これで終わりじゃないわ!」

ミラクルナイトは光弾を放とうとするが、蔓は次々と伸びて腕にも絡みつく。

「やめなさい!」

奈理子の声が震える。しかし、トケイソウ女の蔓は容赦なく彼女の四肢を完全に捕らえた。宙に吊り上げられたミラクルナイトは、もがけばもがくほど蔓がきつく締め付ける。

「あぁっ…!」

「どうしたの?さっきの威勢はどこへ行ったのかしら?」

トケイソウ女は余裕たっぷりに笑いながらミラクルナイトを見つめる。

「市民の声援を背負ってるんじゃなかったの?」

観衆の中にはミラクルナイトを助けたいと駆け出しそうな者もいたが、トケイソウ女の異様な力に恐れをなして誰も動けない。

「このまま触手に捉えられて終わりなんて、ヒロイン失格じゃない?」

トケイソウ女の蔓がミラクルナイトのスカートに触れる。

「さて、どこまで見せてくれるのかしら?」

ミラクルナイトの心臓が早鐘のように鳴る。だが、彼女の瞳にはまだ希望の光が宿っていた。

「こんなところで負けられない…」

彼女の中で何かが燃え上がる。

次の瞬間、芝生広場の戦いは新たな展開を迎えようとしていた。


トケイソウ女の蔓がミラクルナイトの華奢な身体を這い回る。その冷たく滑らかな感触が、奈理子の肌を震わせた。

「あぁん!」

堪えきれない痺れに、ミラクルナイトの身体はビクビクと反応してしまう。

「感度良好ねぇ。まるで発情しているみたい」

とトケイソウ女が嘲笑する。

(自分の身体が、自分のものじゃないみたい…どうして…?)

焦るミラクルナイトの心。蔓がさらに動き、スルスルとスカートを剥ぎ取った。白いショーツが露わになる。

「ここに来る前に、学校で何か良からぬことでもしていたの?」

トケイソウ女はミラクルナイトを見下ろしながら、からかうように言う。

「そんなことは、していないッ!」

ミラクルナイトは必死に否定するものの、羞恥心と焦りで顔は真っ赤になっていた。

「どうしたんだ、ミラクルナイト!」

「今日の奈理子はいつもより敏感すぎる!」

声援を送っていた市民たちも、困惑の色を隠せない。さらに、現場にいたテレビ局が中継を始め、スマホを持つ市民たちも一斉に実況を開始した。芝生広場の戦いは、いつしか混乱の様相を呈していた。

一方その頃、寧々と隆は商店街を歩いていた。町内放送で「水都公園でミラクルナイトとトケイソウ女が交戦中」という情報が流れると、隆が呟いた。

「姉ちゃん、やっぱり今日も襲われたな…」

「トケイソウって何?」

と不思議そうに首をかしげる寧々。その言葉に反応した果物屋のおじさんが、奥から赤紫色の果物を持ってきた。

「これだよ。パッションフルーツ。時計草の仲間なんだ」

「また果物の怪人か…」

寧々は手にしたパッションフルーツを見ながら考え込む。パイナップル男の登場以降、次々と果物を模した怪人が現れていた。しかし、トケイソウ女にはドリアン男ココナッツ男のような硬い外殻はなさそうだ。

「おじさん、パッションフルーツの特徴って何ですか?」

寧々が尋ねる。

「少し酸味があるけど、熟すと甘くなるよ」

とおじさん。

「植物としてはどうですか?」

とさらに問う寧々に、おじさんは続けた。

「蔓性だから、触手みたいに蔓を伸ばすだろうね。それから、花は時計みたいな形をしていて、雌蕊は十字架に磔にされたキリストに例えられることもある」

「触手…そして、十字架に磔…?!」

寧々の顔が引き締まる。さらに、おじさんが追い打ちをかけるように言った。

「パッションフルーツは安全だけど、時計草の中には毒を持つものもいるんだ。奈理子ちゃん、大丈夫かな…」

「俺の姉ちゃんがそんな危険な奴に勝てるはずがない…」

隆は不安そうに呟いた。

「大丈夫、私が奈理子さんを守る」

と寧々は力強く言った。

「頼む、寧々。姉ちゃんを助けてくれ」

と隆が懇願するように言うと、寧々はしっかりと頷き、公園に向かって駆け出した。

奈理子のピンチを救うべく、寧々の戦いが始まろうとしていた。


「あぁッ!やめて!」

ミラクルナイトの悲鳴が芝生広場に響き渡る。その声に市民たちの視線が集中する。トケイソウ女の蔓は、ミラクルナイトの華奢な身体を縛り上げ、次第にブラウスやショーツの中へと侵入していく。水都一の美少女と名高い野宮奈理子、その愛らしい姿

「おお!」

と市民から歓声が上がる。

「いや!見ないで!」

羞恥に震えるミラクルナイトの叫びにも関わらず、トケイソウ女は嘲笑を浮かべながら蔓を操り、奈理子のショーツを引き剥がそうとする。

「もっと市民を喜ばせてあげなさいよ!」

「いやぁ!こうなったら…ミラクルパワー!」

水色の光が奈理子を包み込み、ミラクルな力が発動する。彼女は絡みつく蔓を引き千切り、その拘束から一瞬のうちに解放された。

「はぁ…はぁ…」

肩で息をするミラクルナイト。しかし、彼女の身体は火照り、汗ばみ、どこかいつもとは違う感覚に戸惑っていた。

「ミラクルパワーなんて一瞬だけ。私の蔓は無限なのよ!」

トケイソウ女が再び無数の蔓を操り、ミラクルナイトに襲いかかる。

「えいっ!」

ミラクルナイトは水色の光弾を連射して迎え撃つ。しかし、蔓はその弾幕を掻い潜り、あっという間に彼女の四肢を再び拘束してしまった。

「弱すぎる。本当にパイナップル男がこんな奴に負けたのかしら?」

トケイソウ女は軽蔑の笑みを浮かべ、ミラクルナイトを引き寄せる。

「貴女…私の身体に何をしたの…?」

と、震える声で問うミラクルナイト。

「何を言っているの?私はまだ何もしていないよ。おかしいのなら、私と戦う前に誰かに術をかけられたんじゃないのかしら?」

トケイソウ女はそう言うと、奈理子のショーツを剥ぎ取った。

「私がアンタを狂わせるのはこれからよ。さぁ、市民を喜ばせてあげなさい、水都の絶対アイドル奈理子ちゃん」

とミラクルナイトの耳元で囁き、市民に見せつけるように蔓で抱え上げる。その姿を、数え切れないカメラが捉えていた。

「いやぁ…!私の大切な箇所を見ないで…」

奈理子の顔が羞恥で真っ赤になる。しかし、市民は大喜びだ。

「また負けたか。でも奈理子は可愛いぞ!」

「見事なピンク色だ!」

「奈理子、後ろの穴も綺麗だよ!」

市民の口から次々と歓喜の声が湧き上がる。

「時計草、英語ではPassion Flower。その意味は"受難"。ミラクルナイト、あなたに最高の受難を与えてあげるわ」

トケイソウ女の冷たい声が響く。甘い爽やか香りがミラクルナイトを包み込み、奈理子の胸が高鳴った。込み上げてくる尿意。彼女の瞳から涙が溢れる。

「負けないわ!私は水都の守護神ミラクルナイト。絶対に耐えてみせる!」

奈理子は自分に言い聞かせるように叫ぶ。

しかし、トケイソウ女の囁きが追い打ちをかける。

「ほら、みんながカメラを向けてるわよ」

ミラクルナイトは視線を上げる。そこには無数のカメラが自分を捉えている。

「いやぁ…撮らないで……!」

お汁が垂れてるじゃないの。見られて気持ちいいの?」

トケイソウ女は蔓を操り、奈理子の大切な箇所から溢れ出す液体を掬った

「ひぃッ!」

羞恥と緊張が限界に達し、その瞬間、太陽の光を浴びた聖水が放物線を描いて放たれた

「いや…見ないで…撮っちゃダメぇ…!」

泣きじゃくるミラクルナイトの声が広場に響く。

「守るべき市民の前で粗相するなんて、何ともはしたない守護神ね!」

トケイソウ女は高笑いを上げる。

そのとき、黄色い光が芝生広場を照らした。光の中から現れたのは中学生戦士・ドリームキャンディ。

「奈理子さん、また晒し者にされてる…」

呆れたように呟くと、芝生に落ちていた白いショーツを拾い上げた。

「奈理子さんを虐める者は、中学生戦士ドリームキャンディが許しません!奈理子さんを離しなさいッ!」

ドリームキャンディはキャンディチェーンを振るい、ミラクルナイトを拘束する蔓を次々と切り裂いていく。

「奈理子さん、しっかり!」

抱き起こした奈理子に優しく声をかける。

「キャンディ…私、みんなの前で…」

ミラクルナイトは羞恥に震えながら消え入りそうな声を漏らす。

「話は後です。まずはパンツを穿いてください」

とショーツを差し出すドリームキャンディ。その言葉に、ミラクルナイトは小さく頷き、ショーツを身に着けると再び立ち上がった。

「お前がパイナップル男に負けたドリームキャンディかい?」

トケイソウ女は不敵な笑みを浮かべた。

「そのドリームキャンディが、貴女を倒します!」

ドリームキャンディの目が怒りに燃える。ミラクルナイトとキャンディ、二人の戦士が並び立った瞬間、新たな戦いの幕が上がろうとしていた。


「キャンディ、トケイソウ女は毒を使う。気をつけて」

ミラクルナイトが鋭い目でドリームキャンディに忠告する。

「分かっています。奈理子さんが豪快におしっこをしたのも毒のせいですよね」

ドリームキャンディが無邪気な口調で返す。

「……」

ミラクルナイトは羞恥のあまり視線を逸らした。ショーツを穿き直したものの、下半身がまだ尿にまみれている感覚が残り、不快感を覚える。

「マゾっ子発情ヒロインミラクルナイトとガキンチョ戦士ドリームキャンディ。まとめて相手をしてあげる」

トケイソウ女が不敵な笑みを浮かべながら蔓を操り、二人のヒロインを挑発する。

「負けないわ…」

ミラクルナイトが震える声で答える。

「貴女なんか、けちょんけちょんにしてやる!」

ドリームキャンディはキャンディチェーンを力強く振りかざした。

「えい!」

ミラクルナイトが水色の光弾を放ち、トケイソウ女の無数の蔓を撃ち払おうとする。しかし、トケイソウ女の蔓はしなやかに動き、光弾の隙間を縫ってミラクルナイトに迫る。

「はっ!」

ミラクルナイトは跳躍し、蔓をかわして反撃を試みるが、動きが鈍い。

「どうしたの、いつものキレがないじゃない?」

トケイソウ女が嘲笑する。

「黙りなさい!」

ドリームキャンディが横から割り込み、キャンディチェーンでトケイソウ女の蔓を一閃する。バシーンという音が響き、切り裂かれた蔓が地面に落ちた。

「やるじゃない、中学生のくせに!」

トケイソウ女は驚きつつも、再び無数の蔓を伸ばして攻撃を仕掛ける。

「こんなの効きません!」

ドリームキャンディは素早く動きながら、キャンディチェーンを振りかざし、迫る蔓を粉砕していく。

「奈理子さん!今です!」

ドリームキャンディが叫ぶ。

「分かってる!」

ミラクルナイトはトケイソウ女の隙を突き、水色に輝く掌を振りかざした。

「ミラクルシャインブラスト!」

掌から放たれた光の波動がトケイソウ女を捉えたかに見えたが、彼女は驚異的な反射神経でその場から後退する。

「二人とも中々やるわね。でも、この私を倒せるかしら?」

トケイソウ女は余裕の表情を崩さず、さらに毒を含んだ蔓を彼女たちに向けて放つ。

「奈理子さん、避けて!」

ドリームキャンディが警告する。二人は間一髪で毒の蔓をかわしながら、息を切らせた。

芝生広場には緊迫した空気が漂う。ミラクルナイトの光弾、ドリームキャンディのキャンディチェーン、トケイソウ女の蔓による猛攻が入り乱れる。誰もが互いの一手を見逃さず、次の動きを探っていた。

「これが水都の守護神たちか。面白くなってきたわ!」

トケイソウ女の声が響く。

「絶対に負けない!」

ミラクルナイトとドリームキャンディの声が重なる。

三者の戦いは互いの力が拮抗し、決着の兆しを見せないまま、次の瞬間を迎えようとしていた。


「あぁッ!」

ミラクルナイトの声が芝生広場に響いた。トケイソウ女の蔓が彼女の敏感な部分を撫で、ミラクルナイトは肩を震わせてその場に蹲る。動きのキレが自慢の彼女だが、今日は様子が違った。

「奈理子さん、どうしたんですか?」

ドリームキャンディが心配そうに声をかける。

「何故だか知らないけど、ミラクルナイトは発情しているのよ」

トケイソウ女が冷笑を浮かべながら口を挟む。

「発情…?」

ドリームキャンディは首を傾げるが、その間にも市民からの声援が次々に飛んでくる。

「奈理子、頑張れ!」

「ミラクルナイト、負けるな!」

そんな中、広場に緑色の光が降り注いだ。

「お待たせ〜」

風の戦士、セイクリッドウインドが颯爽と現れる。その姿を見た市民たちから歓声が上がる。

彼女は蹲るミラクルナイトを一瞥し、軽く溜息をついた。

「奈理子、またスカートを脱がされたの?」

とからかうように声を掛ける。

ミラクルナイトは答えず、恥ずかしそうに俯くだけだった。

「風間凜、久しぶりね」

トケイソウ女が挑発的な声を上げる。セイクリッドウインドである風間凜は、かってはナメコ姫として敵の組織と繋がっていた。しかし、セイクリッドウインドはその声に眉をひそめる。

「誰?私は下っ端の怪人なんて覚えてないの」

と冷たく返す。

「相変わらず、お姫様気取りね。今日は貴女たち三人にご挨拶に来ただけだから」

トケイソウ女は微笑むが、その目は敵意に満ちている。

「奈理子さんをこんな目に合わせておいて、何が挨拶よ!」

ドリームキャンディが怒りの声を上げ、キャンディチェーンを構えた。

「まあまあ、そんなに怒らないで。貴女が遅れたせいで、待つ間に少し遊んでいただけ」

トケイソウ女はさらりと言い放つと、さらに挑発的な笑みを浮かべた。

「あとはウズムシ男たちに任せるわ。次は風間凜、貴女を恥ずかしい目に合わせてあげるから楽しみにしてて」

彼女の合図とともに、三体のウズムシ男が現れた。

「待て、逃げるな!」

セイクリッドウインドがガストファングを構え、トケイソウ女を追いかけようとする。

「逃がさない!」

ドリームキャンディもキャンディチェーンを振るうが、トケイソウ女は軽やかに躱し、その場を去っていった。

その間に、ウズムシ男たちはミラクルナイトに群がっていた。

「いやッ!やめて、変態ッ!」

悲鳴を上げるミラクルナイト。非力なミラクルナイトは捕まってしまうとされるがままだ。

「奈理子の腋はいい香り」

「尿が滴る太股も塩っぱくていい味だ」

「胸はコンパクトで手のひらにすっぽり、コンパクトサイズだ」

ウズムシ男たちは口々に彼女をもて遊び始める。

「奈理子から離れなさい!」

セイクリッドウインドが叫び、ガストファングを振るうと、ウズムシ男ごとミラクルナイトを吹き飛ばした。すぐさま、ドリームチャンディがキャンディチェーンはミラクルナイトを捕まえる。

「キャンディシャワー!」

ドリームキャンディが続けざまに攻撃し、ウズムシ男たちを消滅させた。

「奈理子、大丈夫?」

セイクリッドウインドが彼女を支える。

「奈理子さん、今日は体調が悪いんですか?」

ドリームキャンディも心配そうに声をかけた。

「大丈夫、何でもないの…気にしないで」

ミラクルナイトは無理に笑顔を作り、二人を安心させようとした。

市民の歓声が再び広場を包む中、三人のヒロインたちは新たな敵トケイソウ女との戦いに向けて決意を新たにするのだった。

第163話へつづく)