ミラクルナイト☆第161話
水都商店街の「グフグフハンバーガー」にて、水都女学院高校1年生の野宮奈理子と水都神社の巫女である風間凜は、市警の柏原蒼菜と向かい合っていた。
「パイナップル男たちが派手に暴れている間、影でカエル男が暗躍していたのよ」
と蒼菜は語る。最近、市内で麻薬捜査官が麻薬密売組織のアジトに迫ろうとしたところを殺害される事件が発生。その手口がカエル男の犯行と酷似しているという鑑識の見立てだった。
「怪人が相手では市警では手が出せないのが現状なの」
と悔しそうに蒼菜が言葉を漏らす。怪人には拳銃が通用しない。市警には怪人に対抗する手立てがなかった。
「つまり、私たちにカエル男を退治してほしいというわけね?」
凜が奈理子に視線を送りながら確認する。
「カエル男だけじゃないかも」
と奈理子が応える。過去に奈理子たちと市警が協力してカエル男を一網打尽にしようとしたが、当時、カエル男以上の強敵ハオリムシ男が現れ、奈理子がミラクルナイトに変身して蒼菜と共に戦ったが捕らわれたこともあった。
「他にもカエル男に協力する怪人がいるかもしれないわ。これ以上、水都の街に犠牲者を出すわけにはいかないの」
と蒼菜が決意を込める。
「分かりました」
と奈理子は頷いた。
「ありがとう。市警もできる限りバックアップするわ」
と蒼菜は安堵の表情を浮かべる。
その時、店に奈理子の弟・隆と寧々が入ってきた。
「あっ、凜ちゃん!姉ちゃんもいる」
と隆が駆け寄る。
「こんにちは、隆くん」
と蒼菜が微笑みかけ、
「こんにちは」
と返す隆。しかし、隆は彼女のことを知らない様子で、奈理子が不思議そうに尋ねた。
「蒼菜さん、どうして隆のこと知ってるんですか?」
「勇敢な奈理子さんの弟。水都で隆くんを知らない人はいないわ」
と蒼菜は答える。ミラクルナイトとして戦う奈理子のピンチを何度も救ったことがある隆は、街でも少し知られた存在だった。
「大事な話をしてるみたいだから、隆、こっちに行こう?」
と寧々が隆の腕を引き、二人は少し離れた席に座る。
「ほんと、寧々と隆くんって仲がいいね」
と凜がその様子を微笑ましげに眺める。
「寧々ちゃん、隆のどこがいいのかな?」
奈理子が呟くと、蒼菜はじっと水都中学の制服姿の寧々を見つめて、
「あの子がドリームキャンディね」と小さく呟いた。
「え?」
奈理子と凜が驚いて彼女を見る。
「誰にも言わないわ。でもどうして、ミラクルナイトとセイクリッドウインドと違って、ドリームキャンディの正体は秘密にしてるの?」
と蒼菜が尋ねる。
「寧々は恥ずかしがり屋だから」
と凜が答える。
「敵に正体が知られると、学校を襲われたりして大変なんです」
と奈理子が補足した。
「そうよね、奈理子さんが中学生の頃は水都中学がよく怪人に狙われていたものね」
と蒼菜も納得した。
「それで、作戦について教えてください」
と奈理子が話を戻す。
「カエル男のアジトの目星はついているわ」
と蒼菜は続けて説明を始めた。
宗教法人或る或る教団。その水都における一大拠点「或る或る天国」の責任者である天野妙華は、教団きっての商売の才覚を持つフンカー・チュンと向き合っていた。チュンはC国からの麻薬密輸ルートを掌握し、その資金が教団の重要な活動資金となっている。しかし、彼の活動は麻薬の蔓延や若者の暴力事件など、数々の社会問題を引き起こしていた。
「麻薬Gメンに嗅ぎつけられるなんて、あなたらしくありませんわね」
妙華がやんわりとチュンを咎める。
「捜査官の一人や二人始末したところで、大したことじゃないさ」
とチュンは嘲笑を浮かべる。彼はこの国の司法警察を見下していた。
「ですが、我が国の警察は貴方の母国よりも遥かに優秀です。それに、カエル男の存在が明るみに出てしまえば、市警だけでなく、ミラクルナイトたちも動き出すでしょう」
と妙華は警告を発する。
「俺をただの密売人だと思ってもらっては困るな」
と言い、チュンは拳を握り締めた。彼はカンフーの達人でもあるのだ。
「それでもアジトは放棄すべきです。教団の痕跡を一切残さず、完璧に撤収してください」
と妙華は冷静に告げた。
一方、穢川研究所の社長室では、渦巻が勅使川原に報告を行っていた。
「市警に動きがありました。どうやら教団のアジトを一つ突き止めたようです」
「あの女は何と?」
と勅使川原が尋ねる。
「アジトを引き払うようです。天野は、この件は下の者が勝手にやったことだと釈明しています」
「まだ、教団を潰すには早い。手を貸してやれ」
と勅使川原は指示した。教団は研究所にとっても重要な取引先である。
「市警はカエル男の存在に気づいています。奈理子が出てくる可能性もあるため、トケイソウ女を向かわせましょう」
と渦巻が進言する。ミラクルナイトの新たな対抗役として、パイナップル男亡き後はトケイソウ女が担当することになっていた。
「いや…」
と勅使川原は少し考え込み、
「研究所と教団の関係が露見してはまずい。確実に任務を遂行できる者が必要だ。冨貴と菅に行かせよ」
と命じた。冨貴はボタン男、菅はハオリムシ男であり、どちらも彼が信頼を置く手練れである。
「かしこまりました」
と渦巻は一礼し、社長室を後にした。
「あの犯罪教団は、部下の統率もできていないのか…」
勅使川原は窓の外を見つめながら、静かに呟いた。
水都郊外にたたずむ古めかしい洋館。百年ほど前に建てられたその建物が、今では麻薬密売組織のアジトとして市警の監視下に置かれていた。七月の強い日差しが降り注ぐ中、洋館から少し離れた場所で警官隊が緊張感を漂わせて待機している。
その時、蒼菜の部下である山田が運転する覆面パトカーが静かに到着。助手席から蒼菜が降り立ち、後部席からは水都の絶対ヒロインである野宮奈理子、そして水都神社の美人巫女と噂される風間凜が現れた。奈理子は放課後のため、水都女学院の制服である水色のセーラー服を纏い、凜はTシャツにジャージのラフな格好をしている。うっすらと汗を浮かべた二人の美しい姿に、警官隊の中から感嘆の声が漏れた。
「まず、私とミラクルナイト、セイクリッドウインドの三人で潜入します。カエル男を制圧したら突入してください」
蒼菜が警官隊に指示を出す。
「俺も一緒に連れて行ってくださいよ」
と相棒の山田が不満を口にするが、
「ダメよ。山田は外で私からの指示を待っていて」
と蒼菜は断った。卑劣なカエル男に対峙する際には、奈理子と凜の名誉のために男性を同行させるべきではないと彼女は判断していた。
「奈理子さん、凜さん」
と蒼菜が促すと、奈理子はアイマスクを掲げ、柔らかな水色の光に包まれる。凜も緑の光に包まれ、二人はその姿を変えた。光が消えると、そこに現れたのは水都の守護神ミラクルナイトと、風の戦士セイクリッドウインドだった。
風がそよぎ、ミラクルナイトのプリーツスカートがふわりと揺れて、彼女の可憐な太腿が警官隊の視線を引き付ける。しかし、ミラクルナイトはまっすぐ洋館を見据えたまま、
「カエル男が出てきたら危険ですから、蒼菜さんも安全な位置まで下がってください」
と、鋭い眼差しで告げた。
羊羹の前に立つミラクルナイトは洋館をじっと見つめていた。彼女が緊張していることを、隣に立つセイクリッドウインドはすぐに感じ取っていた。
「奈理子、私がいるから。安心して」
と、セイクリッドウインドはミラクルナイトの手をそっと握りしめる。その優しい言葉に、ミラクルナイトの心が崩れかける。
「凜さん…私…」
「どうしたの?」
と、セイクリッドウインドが促すと、
「私…悔しい…」
と彼女の肩がかすかに震え始めた。
ミラクルナイトは、水玉銀行の現金輸送車襲撃事件を思い出していた。あの時も市警との共同作戦でカエル男を一網打尽にしようと挑んだが、現れたハオリムシ男の悍ましい姿に、彼女は恐怖で失神し、さらに失禁してしまい、敵に捕らわれた。その後の屈辱が脳裏に甦り、ミラクルナイトの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「奈理子…」
とセイクリッドウインドが囁く。
「悔しい…ハオリムシ男が怖い…」
震える彼女の肩をセイクリッドウインドは抱き寄せる。
「大丈夫。もしハオリムシ男が現れたら、私が奈理子を守るから」
彼女は言葉に力を込めた。華奢な肩を抱きしめながら、セイクリッドウインドは、今や奈理子が仲間以上の、大切な存在に思えてならなかった。
「行きましょう」
と二人のやり取りを黙って見つめていた蒼菜が告げる。可憐で脆さ、危うさを秘めた少女、奈理子を戦いに駆立てる自分たち市警の無力さに、心のどこかで自責の念が湧いていた。しかし、水都の治安を守るために怪人と立ち向かえるのは、奈理子たちしかいないのだ。
「ごめんなさい」
と、ミラクルナイトが前を向く。その瞳にはもう涙はなく、決意に満ちていた。
重厚な洋館の玄関前。ドアに鍵は掛かっていない。蒼菜がそっとそのドアに手をかけ、静かに開いた。
蒼菜が洋館のドアに手をかける少し前、館の内部では静かなやり取りが行われていた。
「撤収の準備はすでに整っている。君たちが気にすることは何もない」
応接室に招き入れられた冨貴に向かって、チェンが言った。確かに、洋館には最低限の家財しか残されておらず、麻薬密売組織のアジトを思わせる痕跡は一切ない。
「市警はもうすぐそこまで来ている。君も早く立ち去るべきだ」
冷たい眼差しを向ける冨貴に、チェンは軽く肩をすくめて見せた。
「ただ黙って立ち去るのは俺の性に合わない。市警には少し痛い目に遭ってもらうつもりだ」
チェンが自信に満ちた笑みを浮かべると、
「市警と一緒にミラクルナイトも来るかもしれんぞ」
と冨貴が淡々と答える。
「それなら面白い。水都が誇る美少女、野宮奈理子がどんな泣き顔を見せるか、楽しみじゃないか」
チェンが邪悪な笑みを浮かべた。
「どうやら腕には覚えがあるようだな」
冨貴の目が妖しく光る。
「俺をただの蛙だと思ってもらっては困る」
チェンは自信たっぷりに笑った。
冨貴は洋館を後にし、館を見下ろす丘で菅と合流した。
「いい洋館だった。地下室もあるし、奈理子を監禁するにはちょうどいい場所だ」
と冨貴が話すと、
「俺たちのアジトにしてもいいな」
と菅が同意する。
「この騒ぎが収まれば、渦巻に買い取らせるとしよう。事故物件扱いになって安く買えるかもしれん」
と冨貴がほくそ笑む。
「俺の出番はありそうか?」
と菅が尋ねると、
「さあな…まずは、カンフー蛙のお手並みを拝見といこうか」
と冨貴は笑みを浮かべた。
「おっ、来たぞ。奈理子に風間凜、それにあの時の女刑事も一緒だな」
と菅が洋館を見つめながら言った。その時、ちょうど蒼菜が玄関のドアを静かに開けたところだった。
玄関のドアを開けると、そこには吹き抜けの広々としたホールが広がり、正面には二階へと続く壮麗な階段がそびえ立っていた。
「ほぉ…」
その威圧感ある美しさに、思わずセイクリッドウインドが感嘆の声を漏らす。
「ここ、誰の家だったんですか?」
ミラクルナイトが蒼菜に尋ねる。
「最初は華族の邸宅だったんだけど、後に持ち主が転々として、今の持ち主も借主の正体は知らないのよ。借主は偽名を使っていて、不動産屋も特に疑うことなく家賃を受け取っていたみたい」
と蒼菜が説明する。住人の気配がないだけに、豪華な造りがかえって不気味に感じられた。
「ようこそ、我がアジトへ」
突然、階段の踊り場にカエル男が現れた。
「出たな、蛙!」
とセイクリッドウインドが構える。
「蒼菜さんは下がってください」
とミラクルナイトが蒼菜を庇い、前に出る。
「さあ、君たちの力を見せてもらおうか」
とカエル男が挑発的に言うと、ホールの左右から次々とカエル男たちが現れた。その数、なんと六匹。
「やれ!」
と合図がかかり、六匹のカエル男が一斉に襲い掛かってきた。
「えい!」
セイクリッドウインドが鉄扇ガストファングを振るい、風の刃が二匹のカエル男を切り裂く。
「凜さん、あとで鑑識が入るから、あまり風で荒らさないで!」
と蒼菜が慌てて叫ぶ。
「えっ?そんなこと言われても…」
と困惑しながらも、セイクリッドウインドはガストファングを使って二匹のカエル男を叩き伏せた。四匹のカエル男を倒した後、彼女は
「奈理子、そっちは?!」
とミラクルナイトの方を見る。
そこには、二匹のカエル男に左右から両腕を掴まれ、苦しげに呻くミラクルナイトの姿が。
「ワハハハ!ミラクルナイトはもう捕まったか?」
と踊り場のカエル男が高笑いする。ミラクルナイトは「ミラクルアクアティックラプチャー」で反撃しようと考えたが、この場を荒らさないように周囲を水浸しにする技を躊躇した。その隙にカエル男に組み伏せられてしまったのだ。
「へへ…奈理子、可愛いな」
右のカエル男が奈理子の頬を舐める。
「スカート脱がしてやろうぜ」
奈理子の太股を舐める左のカエル男が、彼女のスカートを引き剥がそうとする。
「やめて…」
ミラクルナイトが抵抗するが、容赦なくスカートを剥ぎ取られ、白いショーツがあらわになる。
「あぁ…」
と彼女が小さく呟く。
「ごめんなさい!捜査のことは気にしないで、存分に戦って!」
自分の一言がミラクルナイトのピンチを招いてしまったことに気づいた蒼菜が、ミラクルナイトとセイクリッドウインドに向かって叫んだ。
「ミラクルパワー!」
蒼菜の声を背に、ミラクルナイトが秘めた力を解放する。その聖なる力で、両腕を掴んでいたカエル男二匹が一気に吹き飛ばされた。
「えいっ!」
とミラクルナイトの鋭い右ハイキックが、正面のカエル男に炸裂する。アイドル的な人気を誇るミラクルナイトだが、その技のキレは本物だ。鍛えられた下半身と美しい太ももから繰り出されるキックは、見る者をも魅了する。しかし、非力な彼女のキックは、カエル男を喜ばせるだけだった。
「奈理子のパンツ、いい眺めだなぁ」
とカエル男の視線が彼女のクロッチに釘付けになる。
「奈理子が可愛いから、もう我慢できねぇぜ」
背後から別のカエル男が、キックで右脚を上げたままのミラクルナイトを抱きかかえた。
「うっ、離して!」
彼女が叫ぶが、
「柔らかくていい匂いだ、奈理子最高だ!」
と言いながら、カエル男はミラクルナイトを倒れ込ませ、もう一匹のカエル男がじりじりと迫ってきた。
「まるで山賊に襲われる女子高生だな」
と踊り場のカエル男が嘲笑う。
「奈理子、あとは私が…」
セイクリッドウインドが彼女を庇うように立ちはだかるが、ミラクルナイトはまだ諦めていない。
「凜さん、大丈夫。このカエル男たちは、私が倒す!」
ミラクルナイトは力強く立ち上がり、セイクリッドウインドを制して前へ進み出た。
「可愛い顔して、いい匂いしやがって。たっぷり可愛がってやるぜ!」
と二匹のカエル男が彼女に迫る。
「そうはいかないわ!」
ミラクルナイトは一瞬で右のカエル男に向かって飛び上がり、股間が水色に輝く。
「ミラクルヒップストライク!」
白いショーツで包まれたヒップをカエル男の顔面に叩きつける。
「わっ!奈理子のパンツ!」
と強烈な一撃を受けたカエル男が叫ぶ。そのままミラクルナイトは腰を振り、反動で空中に跳び上がると、今度は左のカエル男の顔面を太ももで挟み込み、
「ミラクルハピネスホイップ!」
と叫びながら身体を捻り、敵を投げ飛ばす華麗な技を繰り出した。まるでフランケンシュタイナーのような高速投げ技が炸裂する。
軽やかに着地するミラクルナイト。
「すごい、大技二連発!スカートは脱がされちゃったけど、今日は一段と気合入ってるね」
とセイクリッドウインドが駆け寄る。
「私は毎日気合い入ってるよ」
とミラクルナイトが微笑む。
「雑魚カエルはこれで全て倒した。残るはあのボス蛙だけね」
と、セイクリッドウインドが踊り場のカエル男に目を向ける。
「カエル男には負けないわ!」
ミラクルナイトもその視線をカエル男に向け、気迫を込める。
「パンツ丸出しのくせに威勢がいいな。俺は他のカエル男とは違うぞ」
とボスカエル男は嘲笑を浮かべた。
「二人とも、気を付けて!」
蒼菜がそのただならぬ気配に緊張を漂わせたまま、二人に声をかけた。
敵はカエル男だけ──そうわかると、ミラクルナイトの顔に自信が満ちた。
「水都の平和を乱す者は、私が許しません!」
と、ビシッとカエル男に言い放つ。白いショーツとブーツだけの無防備な下半身だが、程よく引き締まった美しい脚線美が、まさに水都の絶対ヒロインの名にふさわしかった。
しかし、そんな彼女の美脚もカエル男には単なる見世物に過ぎなかった。
「ミラクルナイト、お前はパンツ丸出しの恥ずかしい姿でいることを忘れてないか?」
カエル男が嘲笑を浮かべる。
「うぅ…」
彼の言葉に、急に恥じらいが込み上げ、ミラクルナイトは両手でショーツを隠そうとする。木綿のショーツだが、子供用のものではない。それは、リボンとフリルで飾られた女子高生奈理子の清純の証だった。
「ミラクルナイトだけが恥ずかしい思いをするのも不公平だな…」
カエル男の視線がセイクリッドウインドに向けられる。
「私のコスチュームの下はレオタードだから大丈夫」
と、彼女は先回りして答え、警戒の構えを取った。しかし、カエル男はニヤリと笑って
「では、勇敢な女刑事にも、ミラクルナイトと同じ思いを味わってもらおうか」
と言うなり、踊り場を蹴って跳んだ。
「え?」
「速い!」
ミラクルナイトとセイクリッドウインドが驚いたその瞬間、カエル男の姿が一瞬消えた。
「わっ!」
蒼菜の叫び声に振り返ると、カエル男が蒼菜にしがみついていた。
「離れなさい!」
蒼菜はもがくが、その力ではカエル男に対抗できない。
「や、やめて…」
焦る蒼菜を尻目に、カエル男はあっという間に蒼菜のスラックスを引きずり下ろしてしまった。
「やめなさいってば!」
と、セイクリッドウインドがガストファングを振り上げるも、振り下ろしたときにはカエル男はすでにその場にいない。
「くっ!どこ行った?!」
とカエル男を探すセイクリッドウインド。
「上よ!」
ミラクルナイトが叫ぶと、吹き抜けの高い天井に蒼菜のスラックスを手にしたカエル男が張り付いていた。
「俺は他のカエルとは違うって言っただろう?」
そう言うと、蒼菜のスラックスを手でビリビリと引き裂くカエル男。
「支給品なのに…」
と、ショックでその場に座り込む蒼菜。上はカットソーに夏用ジャケット、下は肌色のパンスト越しにピンクのショーツが透けている。
「そうなの?」
とセイクリッドウインドが尋ねると、
「業者が採寸して作ってくれるんだけど、費用は市警が負担するの」
と蒼菜が答える。
「公務員って制服の他に洋服もらえるんだ」
とミラクルナイトが感心して言うと、
「刑事だけよ」
と蒼菜は苦笑いを浮かべた。
「何をのんきに話してるんだ。行くぞ!」
カエル男が天井から再び飛びかかってきた。
セイクリッドウインドが迫るカエル男に対しガストファングを構えた。しかし、カエル男は巧みにガストファングの射程外から長い舌を伸ばし、セイクリッドウインドの頬を舐める。
「ひゃっ!」
と怯む彼女。それでもガストファングを振り下ろすが、その瞬間、カエル男は素早く着地し、鋭い肘をセイクリッドウインドの腹に突き刺した。
そのまま、カエル男は横に飛び、ミラクルナイトへと向かう。あまりの速さに対応が遅れた彼女に、カエル男の舌が素早く伸び、股間を舐める。
「きゃっ!」
と悲鳴を上げた瞬間、カエル男は消え、背後から衝撃が走る。同時にミラクルナイトは吹き飛ばされ、彼は瞬時に壁を蹴って背後から蹴りを放っていたのだ。
「この程度か?水都が誇るヒロインも大したことはないな」
と、床に腹這いのまま勝ち誇るカエル男。
「まだ、勝負はこれからよ!」
セイクリッドウインドがミラクルナイトを抱き起こす。
「私たちは、変態蛙には負けない!」
と、ミラクルナイトも負けじと声を張る。
「ふふふ…そこまで言うなら、我が奥義を見せてやろう」
とカエル男が不敵な笑みを浮かべ、壁に向かって飛んだ。
「跳蛙百掌撃!」
カエル男の素早い掌打がミラクルナイトとセイクリッドウインドに襲いかかる。
「ぐわっ!」
「あぁっ!」
豪華な洋館のホールに二人の悲鳴が響き渡った。強靭なバネとスピードを駆使し、カエル男は壁、床、天井を飛び跳ねながら、あらゆる角度から攻撃を繰り出し、二人を翻弄する。彼の猛攻に、二人は全く対処できずに押され続けた。
やがて、一方的に打ちのめされたミラクルナイトとセイクリッドウインドは、ついにその場に倒れ込んでしまう。
「ワハハハ!俺の手にかかれば、水都のヒロインなど赤子同然だ!」
と勝ち誇るカエル男。立ち上がれない二人の姿に、彼は確かな勝利を感じていた。
「待ちなさい!」
その時、洋館の玄関が開き、清らかな声が響き渡った。
「水都のヒロインはもう一人いるわ!」
ホールに堂々と足を踏み入れたのは、中学生戦士ドリームキャンディ。倒れたミラクルナイトとセイクリッドウインドを見つめながらも、その目には決して怯まず、強い自信が宿っていた。
ドリームキャンディが堂々とホールに足を踏み入れると、M字開脚して尻もちをついているミラクルナイトの姿が目に入った。
「奈理子さん、今日もスカートを脱がされたんですね」
冷ややかな視線を向けるドリームキャンディに、ミラクルナイトは恥ずかしそうに目を逸らした。
「でも、お漏らししてないことは褒めてあげます」
と、ドリームキャンディは少し意地悪そうに言う。視線が奈理子のクロッチを確認してからの言葉だった。湿ってはいるが、失禁まではしていないのだ。
(どうして弟の彼女にこんなこと言われなきゃいけないの…)
心の中でミラクルナイトはそう嘆いた。ドリームキャンディの正体、寧々は彼女の弟・隆の恋人でもあった。
続いて、ドリームキャンディは四つん這いでうずくまるセイクリッドウインドに視線を移す。
「凜さんまでカエル男にやられたんですか?」
呆れたように言うと、
「このカエル男は…」
と何かを言いかけるセイクリッドウインドを、ドリームキャンディがさえぎる。
「カエル男はカエル男です。カエル男に負けるなんて、凜さんらしくありませんよ」
彼女の口調はあくまで強気だ。
「自信満々のようだが、俺はただのカエル男とは違う!何度も言わせるな!」
カエル男がドリームキャンディを睨みつける。
「私が聞くのは初めてですね。でも、蛙は所詮蛙だということを私が教えてあげます」
と言い、ドリームキャンディはキャンディチェーンを床に叩きつけた。バシーンという鋭い音がホールに響き渡る。
その堂々とした姿に蒼菜の胸は高鳴った。ドリームキャンディなら、あのカンフー蛙を倒してくれるかもしれない。
「ねぇ、寧々ちゃんって格闘技の経験でもあるの?」
と、蒼菜はセイクリッドウインドに小声で尋ねた。
「寧々は、私や奈理子と違って成績優秀で運動神経抜群だけど、格闘技の経験は聞いたことないなぁ…塾には通ってるけど」
「塾??大丈夫かしら…」
「本人がやる気満々なんだから、任せてみましょう」
とセイクリッドウインドが微笑む。
その間にも、ドリームキャンディとカエル男の戦いの火蓋が切られようとしていた。
ドリームキャンディの闘志は燃え上がっていた。ミラクルナイトとセイクリッドウインドが倒れた今、ここはパイナップル男に連敗した汚名を返上する好機だ。パイナップル男のように硬い外殻を持つわけでもないカエル男の柔らかい皮膚なら、キャンディチェーンで叩きのめせるはずだと意気込む。
「これでも喰らいなさい!」
と、ドリームキャンディがキャンディチェーンを振り下ろす。だが、次の瞬間、
「えっ?!」
と驚きの声が漏れた。狙いを定めたはずのキャンディチェーンは空を切り、カエル男は素早く跳んで避けていたのだ。すかさず横薙ぎに振り払うも、それも軽々と躱されてしまう。
「そんな鞭が俺に当たるわけがない!」
とカエル男は壁を蹴ってさらに跳び上がる。
「なんなの、この蛙!?」
カエル男の素早い動きに追いつけず、焦りが増すドリームキャンディ。
瞬く間に、跳躍したカエル男がドリームキャンディへ迫ってくる。彼女も迎え撃つべく飛び上がり、
「キャンディキック!」
と蹴りを放つが、カエル男も
「跳蛙獄屠拳!」
と鋭い蹴りで応戦。宙で二人の飛び蹴りが交差し、カエル男は何事もなかったかのように着地。一方、ドリームキャンディは勢いのまま床に叩きつけられてしまった。
「キャンディ!」
ミラクルナイトとセイクリッドウインドが倒れたドリームキャンディに駆け寄る。
「お前たちは功夫が足らん」
とカエル男が勝ち誇るように笑う。
「こうなると思ってたわ」
とセイクリッドウインドがため息をつく。ミラクルナイトと二人掛かりでも苦戦した相手に、ドリームキャンディが一人で勝てるわけがないとわかっていたのだ。
「何なんですか…あの蛙…?」
ショックを隠せないドリームキャンディに、
「ボス蛙よ」
とセイクリッドウインドが応える。
「私たちが負けた理由、わかったでしょ?三人で力を合わせて倒そう」
とミラクルナイトが力強く言う。
「奈理子は、何とかしてカエル男の足を止めて!」
とセイクリッドウインドがミラクルナイトに告げる。
「わかった」
とミラクルナイトが頷くと、セイクリッドウインドは次にドリームキャンディへ、
「キャンディ、ロリポップハンマーの準備をお願い」
と指示を出す。
「はい!」
ドリームキャンディはキャンディチェーンを巨大なロリポップ、ロリポップハンマーに変形させる。
三人のヒロインは互いに目を合わせ、頷き合った。
カエル男は三人を見下し、挑発的に叫んだ。
「コソコソと何を相談している?三人まとめてかかって来い!」
その言葉に、ミラクルナイトが一歩前に出て答えた。
「私が相手よ!」
果敢に立ち向かうミラクルナイト。
「えい!」
と、靭やかなハイキックを繰り出す。しかしカエル男は余裕でそれを受け止め、奈理子の可憐な股えくぼにニヤリと視線を落とすと、素早く舌を伸ばして彼女のクロッチを舐めた。
「きゃっ!」
ミラクルナイトは反射的に後退する。
「なるほど…」
と、ドリームキャンディは気づいた。奈理子のクロッチが湿っていたのは、カエル男に舐められていたせいだったのだと。
ミラクルナイトは気を取り直し、再びハイキックを繰り出す。彼女の役目はカエル男の動きを止めること。美脚から繰り出される鋭い蹴りが次々と襲うが、カエル男は一歩も引かず、余裕でいなし続ける。
「足技が得意のようだが、足元がお留守だぞ」
と言うと、カエル男はミラクルナイトの軸足を狙い、彼女のバランスを崩す。
「あぁっ!」
と倒れそうになるミラクルナイト。その瞬間、カエル男が奈理子のショーツを掴み、ミラクルナイトが倒れ込むのを防いだ。
「この中はどうなっているのかな?」
カエル男はニヤリとすると、奈理子のショーツを膝上まで引き下げた。
「な…」
あまりの早業に理解が追いつかず、驚くミラクルナイト。
カエル男は奈理子の発育具合を確認すると、
「哈っ!」
と気合を込めた一撃を放ち、彼女を吹き飛ばした。
胸膝をついた姿勢で床に伏すミラクルナイト。
(私には無理かも…)
カエル男の足を止める使命を受けたものの、通じない自分の無力さに嘆く。
ショーツを膝まで下ろされ、腰を高く上げた格好では、奈理子の大切な箇所があらわになっていた。
「良い格好だ」
と、カエル男が彼女を嘲笑する。その視線は奈理子の大切な箇所をじっと見つめていた。
(こうなったら、私の魅力でカエル男の動きを止めるしか…)
と、ミラクルナイトは意を決し、わざと、腰をさらに高く突き上げた。
(恥ずかしい…けど、私にはこれしかできない…)
ミラクルナイトは耐える。
「何だ?誘っているのか?」
とカエル男はニヤリとしながら、彼女に近づいていく。
(あぁ…私の…カエル男に見られてる、恥ずかしい…)
と、緊張の中でじっと耐えるミラクルナイト。奈理子の大切な箇所から蜜が溢れだす。
「何もしていないのにここまで濡れるとは…」
カエル男が嘲笑う。そして、長い舌を伸ばし奈理子の蜜を掬った。ビクン!とミラクルナイトの腰が跳ねる。
「いい反応だ」
満足気に奈理子の蜜を味わいながら近づくカエル男。
(恥ずかしいけど、もう少し…がんばれ、私…)
ミラクルナイトは腕を立て、四つん這いで受け入れる体勢をとった。
「もう溢れだしてきたか。ミラクルナイト、慰めてやるぞ」
カエル男は足を止め、嬉々として後ろからミラクルナイトの細い腰をムズと両手で掴む。
(来たっ!凜さん、早く…)
やっとカエル男が足を止めた。しかし、ミラクルナイトの願いも虚しく、硬いものが入り口に触れる。思わず腰を引こうとするが、カエル男はしっかりと彼女の腰を掴んで逃がさない。
(凜さん、まだ…?このままじゃ…)
中に、ゆっくりと硬いもが入っていく。
(ひゃあ!凜さん、どうして…?あっ…ライムよりも大きい…?)
硬いものは深く入らずに浅い場所で抜き差しし、その感触を楽しんでいた。
「さすがはミラクルナイト。良い締め付けだ」
(うぅ…やめて…)
ミラクルナイトの腰を掴むカエル男の手に、さらに力が加えられる。
「だいぶん馴染んできたな。では、ゆくぞミラクルナイト」
(いや!それ以上入っちゃダメ…凜さん、助けて…)
そのとき、ついに
「ヌルヌル発射!」
というセイクリッドウインドの声が響き渡った。カエル男の背中に、彼女が放ったナメコの粘液が直撃する。
「うわ!何だコレは?!」
ヌルヌルに覆われたカエル男は、その場で転倒し、床に転がった。
「どう?私のヌルヌルは?」
とセイクリッドウインドが得意げに言う。
「さすがナメコ姫!」
とドリームキャンディが応じる。セイクリッドウインドはナメコの能力も併せ持つのだ。
「キャンディ、今よ!」
と、セイクリッドウインドがタイミングを伝える。
「はい!」
ドリームキャンディはロリポップハンマーを天井に向け高く振り上げた。
「うわーっ!」
ヌルヌルにまみれて床をのたうち回るカエル男。その前で、ドリームキャンディのロリポップハンマーの先端にある巨大な飴玉が七色に輝き始めた。
「キャンディスターバースト!」
ドリームキャンディが声を張り上げ、ロリポップを振り下ろす。七色の光が放たれ、カエル男に向かって直撃した。
「おわーっ!こんな力を使うなんて卑怯だぞ!己の肉体で勝負しろ…」
と七色の光に包まれ、カエル男が叫ぶ。
「これが私たちの力です!」
とドリームキャンディが一喝。カエル男は最後に
「もう少しで、ミラクルナイトに…」
と悔しそうに呟きながら消滅していった。
「やったー!」
セイクリッドウインドが歓喜の声を上げる。
「凜さん、ヌルヌル出すの遅い!」
と、涙目のミラクルナイトがショーツを引き上げながら睨む。
「奈理子が迫真の演技をしてたから、どこで止めたらいいの迷ったんだよ」
とセイクリッドウインドが冗談交じりに答え、
「奈理子さん、すごく可愛かったですよ。本当に演技だったんですか?」
とドリームキャンディも悪戯っぽく笑う。
「もう!こっちは必死だったんだから!」
とミラクルナイトが膨れて見せた。
「カエル男を倒してくれてありがとう」
蒼菜が三人のヒロインに感謝の言葉をかける。そしてインカムで外で待機する警官隊に突入の指示を出した。
「蒼菜さん、その格好でいいんですか?」
とセイクリッドウインドが尋ねる。蒼菜は上がカットソーとジャケット、下がパンストのみという姿で、しかもパンスト越しにピンクのショーツが透けて見えていた。
「あっ!どうしよう、隠すものが…」
と蒼菜は周りを見回すが、洋館内はすでにほとんどの物が持ち去られ、下半身を隠すものがない。
外の音が近づき、警官隊がすぐそこまで来ている様子に、
「何も無い!奈理子さん、どうしよう?!」
と慌ててミラクルナイトを見た。しかし、ミラクルナイトもスカートを剥がされ、下は白いショーツのみのはずだったが、気づけば変身を解いており、水都女学院の制服姿の野宮奈理子に戻っていた。
「奈理子さん…」
蒼菜が唖然としている間に、警官隊が玄関から雪崩れ込んできた。
市警の捜査が始まったが、洋館はすでに空っぽで、手がかりになりそうなものは何も見つかりそうになかった。
「蒼菜さん、ズボンはどうされたんですか?」
と山田が、ジャケットで下半身を隠している蒼菜にニヤついた視線を向ける。
「カエル男にやられたのよ。いいから、車から毛布かバスタオルを持ってきて」
と蒼菜は冷静に指示する。
「奈理子さんと一緒の時は、いつも蒼菜さんは下を脱がされるんですね」
と山田は愉快そうだ。
「早く行って!」
と蒼菜が一喝し、山田は渋々洋館を出ていく。
蒼菜は奈理子たちの方に向き直ると、深く頭を下げて言った。
「今日は本当にありがとう。後日、本部長から正式にお礼があると思うけど、きっと表彰とわずかな協力金くらいしか出せないと思う…」
申し訳なさそうな蒼菜の表情に、
「気にしないでください。水都の平和を守るのが私たちの使命ですから」
と奈理子が優しく微笑む。
「怪人退治は私たちの役目ですし」
とドリームキャンディが続け、
「どうぞお気になさらずに。また何かあったらいつでも呼んでください」
とセイクリッドウインドも応えた。
一方、その頃、洋館を見下ろす丘の上では…。
「おい、市警に捜査をさせていいのか?」
と菅が冨貴に尋ねる。
「チュンとかいうあの蛙、証拠隠滅は見事だった。優秀な奴だったんだろうな。これで教団は大打撃だが」
と冨貴が答える。当初、二人は洋館を焼き払って証拠を消すつもりだったが、チュンの用意周到な仕事を見て、冨貴は考えを変えていた。
「市警の捜査が終わったら、あの洋館を俺たちのアジトにするさ」
と冨貴が言う。
「あのケチな渦巻が金を出すか?」
と菅が笑う。
「出させてやるさ」
と冨貴が答えた。
その時、
「おい、ここで何をしている!」
と警官二人が現れた。
「いや、警官が大勢いるもので、何かあったのかと見に来ただけですよ」
と冨貴が答えるが、
「怪しい奴だ。ちょっと来てもらおうか」
と警官が言った瞬間、菅の身体からチューブワームが飛び出し、警官の首に巻き付いた。
「何だ!?」
もう一人の警官が腰を抜かす中、菅はハオリムシ男に変身した。
「この姿を見てしまったら、生きて帰すわけにはいかないな」
と、チューブワームがもう一人の警官の首にも絡みつく。
「この洋館で奈理子を…ヒッヒッヒ…」
と冨貴の冷たい笑い声が、ハオリムシ男が警官たちを始末するそばで響き渡っていた。
(第162話へつづく)













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