DUGA

ミラクルナイト☆第129話

スマホのアラームが鳴る朝七時。二度寝したいが、朝から大事な会議があるため、七時半には部屋を出なければならない。面倒臭いなと思いながら、姫野真衣香はベッドから身を起こした。香丸にお持ち帰りされたあの日から連絡が無い。大学生に弄ばれたことは悔しいが、また香丸に会いたいと真衣香は願っていた。

「香丸くん……」

呟きながら、カーテンを開ける。朝日が眩しい。一人暮らしの真衣香の寝間着はTシャツ、下はショーツ。面倒なのでパジャマは着ない。

眠気と戦いながらトイレへ向かい、用を済ませた後は洗面所で顔を洗い、うがいをする。少しはスッキリした気分になる。次にコーヒーメーカーをセット。朝はコーヒーを飲まなければ目が覚めない。本当は優雅にコーヒーを飲みたいが、毎朝起床から出社までの真衣香にはそんな余裕は無い。コーヒーが出来上がる間に着替える。まずはタイトスカート。少しキツイ。このスーツは前よりパツパツになったような気がする。

「少し痩せなきゃ…」

と呟く真衣香。

歯磨きを忘れていたことに気付き、慌てて歯磨きをする。コーヒーができた。ゆっくり飲む余裕は無い。マグカップを持って再び洗面所へ向かう。仕事のメイクは適当。速攻、五分で終わらせる。続いてアイロンで髪を巻き、大人可愛い外ハネスタイルを完成させる。ついでに前髪も巻いてトリートメント。時計を見ると時間が無い。ジャンプしながらストッキングを穿く。急げ、電車に間に合わない。上着を羽織り、準備完了。

「よし!」

真衣香は自分に気合を入れた。勢いよく部屋を出る。

主が出て行った真衣香の部屋に静寂が訪れる。しかし、再びドアが開く。

「コートを忘れた……」

真衣香は自分に呆れつつも、再び部屋に駆け込んでコートを手に取った。再び、部屋を出る。今度こそ、大事な会議に向かうための一日が始まった。


朝の出勤時間、多くの人々が行き交うビジネス街。姫野真衣香は時計を見た。間に合いそうだ。出社後はメールチェックや会議の準備などが待っている。

「変なメールが来てなければいいけど…」

と思いながら足早に歩く真衣香の前に突然、ニンニク男が現れた。

出勤途中のビジネスマンたちが逃げ惑う中、突然の出来事に固まる真衣香。

「な…何??」

と後ずさりする。

「ちょっとばかり付き合ってもらうぜ」

ニンニク男が真衣香に舐めるような視線を浴びせる。

「私が誰だか知って言ってるの?」

震えながら問いかける真衣香。

「知っているぜ。イチゴ女の姫野真衣香だろ」

ニンニク男の言葉にハッとして周りを見渡す真衣香。人々は逃げ出し、遠巻きに真衣香とニンニク男を見ている。二人の会話は聞こえないだろうと安心した。

「付き合ってくれるのか?それともここでイチゴ女に変身して俺と戦うか?」

迫るニンニク男。真衣香がイチゴ女であることは絶対の秘密だ。人前で変身することはできない。

「今から大切な会議があるの。お願い、今日は見逃して。私は水都製薬の社員なのよ。勅使河原さんはこのことを知ってるの?」

真衣香は哀願する。水都製薬の名前を出せば許してくれるかもしれないと真衣香は思った。ニンニク男たちのボスである勅使河原は水都製薬の役員なのだ。

しかし、

「ダメだね。姫野真衣香を拉致するのは氷川さんからの命令だからな」

とニンニク男は答える。氷川は勅使河原配下の幹部だ。氷川の命令であれば、勅使河原も承知しているのだろうと真衣香は思った。

「分かったわ…。大人しく付いて行くから、乱暴だけはしないで」

真衣香は諦めた。

そのときだ、

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

ミラクルナイトが現れた。

「何故、朝からミラクルナイトが…?」

真衣香が思わず口にする。しかし、奈理子は中学の卒業式を終え、今は春休みなんだと真衣香は疑問に自己解決した。しかし、可憐で華奢なミラクルナイトが、男臭いニンニク男に勝てるとは思えなかった。

それでも、ミラクルナイトは果敢にニンニク男に立ち向かう。

「大丈夫です。私が守ります!」

ミラクルナイトの決意に満ちた声が響く。ニンニク男は一瞬驚いたものの、すぐに不敵な笑みを浮かべ、

「来るなら来い、奈理子」

と挑発する。

ミラクルナイトはその言葉に怯むことなく、力強く前進した。ビジネス街の騒音とともに、ミラクルナイトとニンニク男の対峙は一層緊迫感を増していった。


ニンニク男と対峙するミラクルナイト。真衣香はハッとした。ドリームキャンディが水都の市立小学校の六年生ならば、彼女も卒業式が終わり春休みに入っているので朝から助けに来てくれるかもしれない。しかし、私立小学校であれば卒業式が終わっているか真衣香には分からない。それに、ドリームキャンディが小学六年生であるとは限らない。迷う真衣香。ミラクルナイトは美少女だが、強さにはムラがあり不安がある。しかし、

「ニンニク男、どうして私を狙うの?私はニンニク臭い人は好きじゃないわ」

真衣香は、ドリームキャンディが来るまで、会話で時間を稼ぐことを試みた。

「何だと!貴様は製薬会社の社員のくせにニンニクをバカにするのか!!」

ニンニク男を怒らせることになってしまった。

「危ないから、あっちへ行っててください!」

ミラクルナイトにも怒られてしまった。

「男性ホルモン増強!精力増進!」

ニンニクの能力を解放するニンニク男。

「姫野真衣香!お前の身体にニンニクの力をたっぷり注入してやるぜ!」

ニンニク男が真衣香に襲いかかる。

「男臭いのは、いやぁ~!」

身を竦める真衣香。

「そうはさせなわ!」

ミラクルナイトがニンニク男に飛び掛かる。

交差するミラクルナイトとニンニク男。ミラクルナイトのパンチが空を斬る。躱されたとみるや素早く距離をとるミラクルナイト。

「なかなかやるわね」

とニンニク男を睨むミラクルナイト。そのニンニク男の手には、ミラクルナイトの白いプリーツスカートが握られていた。

「あっ!」

交差したときにスカートを剥ぎ取られたことに気付いたミラクルナイト。奈理子の白いパンツを朝の冷たい空気が撫でる。

「甘いな。隙だらけだぞ、野宮奈理子」

指にスカートを引っ掛け、クルクル回すニンニク男。

「スカートを返して!」

スカートを取り返そうとニンニク男に詰め寄るミラクルナイトだが、ドン!と腹に衝撃を受けた。を垂らし崩れ落ちるミラクルナイト。ニンニク男の強烈な腹パンを喰らったことすら知らぬまま、ミラクルナイトは失神してしまった。

「さあ、一緒に来てもらうぜ、姫野真衣香」

ニンニク男が真衣香に逞しく太い腕を伸ばす。

「ニンニク臭いのはいやぁ……」

震える真衣香を小脇に抱えたニンニク男。

「いいケツだ」

ニンニク男は真衣香のを撫でる。

うつ伏せに倒れたまま動かないミラクルナイト。

「助けてぇ〜!」

真衣香の悲鳴が遠くになり、朝のビジネス街は静寂を取り戻した。


ニンニク男出現の報を受け、黄色い光に包まれビジネス街に向うドリームキャンディ。

「臭……」

強烈なニンニクの臭いに顔を顰めた。路上にミラクルナイトが倒れている。

「また奈理子さん、スカート脱がされちゃって…」

いつものことながら呆れるドリームキャンディ。ミラクルナイトの周りには人集りが出来ていた。制服を着た警官もいる。ミラクルナイトの側にドリームキャンディは舞い降り、気を失ったミラクルナイトを抱き起こす。奈理子のパンツは汚れていない。正しく純白だ。エッチなことはされていないと知り、ドリームキャンディは安心した。

「奈理子さん、起きてください」

パンパーンとミラクルナイトの頬にビンタを喰らわす。

「あ…キャンディ……」

ミラクルナイトが目を開いた。

「大丈夫ですか?」

ミラクルナイトの顔を覗き込む。

「襲われた女の人は?」

ミラクルナイトはニンニク男に敗れたことを思い出した。

「ちょっと待ってくださいね」

ドリームキャンディはスマホを取り出した。

「寧々ちゃん、スマホ買ってもらったんだ〜」

ミラクルナイトが口にする。

「そうなんですよ!親と中学生になったらスマホ買ってもらう約束していたんです」

嬉しそうに話すドリームキャンディ。しかし、

「ハッ!どうして私の正体を知ってるんですか?!」

アタフタするドリームキャンディ。

「だって、隆といい感じの小学六年生の女の子って寧々ちゃんしかしないでしょ」

ミラクルナイトが得意気に答える。

「奈理子さん、いつから…」

「それより、ニンニク男よ」

ミラクルナイトはドリームキャンディが手にするスマホを覗き込む。ミラクルナイトとニンニク男の戦いは既にSNSに動画がアップされていた。

「スカート脱がされて、腹パン一発。奈理子さん、秒殺されてますね…」

「………」

あまりにもあっけない敗北に恥じるミラクルナイト。

「女の人は攫われたようですね」

ドリームキャンディがミラクルナイトを見て言う。自分の不甲斐無さにドリームキャンディを正視する事ができず、顔を伏せるミラクルナイト。

そんな二人の前にパトカーが停まった。若い女性がパトカーから降りてくる。制服の警官が敬礼する中を颯爽と進む女性の姿に、ドリームキャンディはカッコいいと思った。女性は二人の前に立ち、警察手帳を見せた。

「水都市警の柏原蒼菜です。被害者は水都製薬社員、姫野真衣香、24歳」

と説明する。そして、

「誘拐は警察が対応すべきだけど、怪人が相手では警察は対処できない。お願い、姫野真衣香を助けてあげて」

と二人に頼んだ。

「姫野さんと知り合いなんですか?」

とミラクルナイト。

「彼女はどうしても助けたい」

蒼菜が口にする。

「任せてください!姫野さんは必ず助け出します!」

ドリームキャンディが身を乗り出す。蒼菜はニコリとすると去って行った。

「奈理子さん、私たち警察に頼りにされてますよ!早速、姫野さんを探しに行きましょう!!」

ドリームキャンディが嬉しそうにミラクルナイトの腕に抱き付く。

「でも……」

躊躇するミラクルナイト。ミラクルナイトはスカートを穿いていないのだ。

「そんなのいつものことじゃないですか!今日のパンツも可愛いですよ、奈理子さん!!」

ドリームキャンディが、ピンクのリボンで飾られた白いパンツを指してミラクルナイトを励ます。

「でも、どうやって探すの?」

「臭いですよ。ニンニクの臭いを辿って行けば、姫野さんは見つかるはずです」

自信たっぷりのドリームキャンディ。

「パンツを気にしている場合じゃないよね……」

ミラクルナイトもドリームキャンディと一緒にニンニクの臭いを追うことにした。


二人はすぐにニンニク男の強烈な臭いを追跡し始めた。鼻をつまみながらも、ドリームキャンディは決して諦めずに進む。

「こっちです、奈理子さん!」

道案内をするドリームキャンディにミラクルナイトは必死に続く。周囲のビジネスマンたちが驚きの目で見守る中、二人のヒロインはビジネス街を駆け抜ける。その後を興味津々のマスコミと市民が追いかける。

「やっぱり、この格好は恥ずかしい…」

ミラクルナイトがブラウスを伸ばしてパンツを隠そうとするが、無駄な努力だった。

「恥ずかしがるから余計に恥ずかしくなるんです。いつものように堂々と見せつけてやれば平気ですよ」

ドリームキャンディは他人事のように軽く答える。しかし、ミラクルナイトは後ろにいる人たちの熱い視線がパンツに集中しているようで落ち着かない。

そして、

「もう少しです!」

ドリームキャンディは臭いの強まりを感じ、速度を上げた。

「キャンディにこんな能力があるって知らなかったわ」

ミラクルナイトはドリームキャンディの嗅覚に感心する。すると、路地裏のビルの陰でニンニクの臭いが途絶えた。

「上ですね。ジャンプして屋上に行ったのかも」

ドリームキャンディはビルを見上げる。

「あんなに高い所まで飛べるような身軽な怪人には見えなかったけど…」

ミラクルナイトもビルを見上げた。

「行ってみよう」

ミラクルナイトがミラクルウイングを広げ、ドリームキャンディの身体を後ろから抱いた。

「暴れないでね」

と言うと、ミラクルナイトはドリームキャンディをぶら下げたままゆっくりと舞い上がった。

「凄い、空を飛んでる」

ドリームキャンディが楽しげに口にする。

「寧々ちゃんも黄色い光で飛んでるじゃない」

「あれは飛んでるんじゃなくて、飛ばされてるって感じです」

ドリームキャンディは楽しげに、二人を追ってきた人たちに手を振りながら答える。

ビルの上空まで舞い上がったミラクルナイトとドリームキャンディ。ビルの屋上はヘリポートになっていた。真衣香とニンニク男の姿は無い。

「寧々ちゃん、どうする?敵はヘリコプターで逃げたみたいだけど…」

「『寧々ちゃん』は恥ずかしいので、いつものように『キャンディ』って呼んでください」

「寧々ちゃんは、私のことを変身した後も『奈理子さん』って呼んでるじゃないの」

「奈理子さんの正体はみんな知ってるからです。私の正体はまだ公にはなってません」

「わかったわ。で、キャンディ、これからどうする?」

「う~ん…あっちに行ってみましょう」

ドリームキャンディは東の方角を指した。ドリームキャンディは西からビジネス街に来た。敵は西には逃げていないと確信があった。しかし、ドリームキャンディは敵のことよりも、もっとミラクルナイトとの空の旅を楽しみたかった。

「飛んでると風が気持ちいいですね!」

ドリームキャンディは上機嫌で言う。

「確かに。でも、早く姫野さんを見つけないと」

ミラクルナイトは気を引き締めるように答えた。二人は東の空を目指して飛び続けた。

しばらく飛んだ後、ドリームキャンディは下を指差した。

「見て、あれ!」

彼女の指が示す方向には、小さな工場のような建物があった。建物の前には、周囲を警戒しているウズムシ男の姿があった。

「見つけた!」

ミラクルナイトは翼をたたみ、急降下して地面に降り立った。


山中に打ち捨てられた廃工場。その冷たい壁に手枷で拘束された真衣香は、立ち尽くしていた。彼女の目の前にはスキンヘッドの氷川、その後ろにはニンニク男の姿があった。

「私を…どうするつもりなの…?」

真衣香が震える声で尋ねる。

「どうするかねぇ。渦巻からの依頼はお前を始末することだったが…」

氷川は真衣香の顔を観察するように眺める。真衣香は顔を背けたかったが、氷川に顎を掴まれ、怯えることしかできなかった。渦巻とは常に勅使河原の傍にいる不気味な中年の男だ。

「どうして?私は渦巻という人はよく知らないのに…」

怯える真衣香。

「渦巻は、お前が敵に寝返る前に殺してくれと言ってたな」

「どうして…私は普通に水都製薬で働いていたいだけなのに…」

涙を流す真衣香。

そのとき、大男が入って来た。赤岩だ。氷川と赤岩のコンビの噂は真衣香も知っている。この二人に狙われたら生きては帰れない。絶望に打ちひしがれる真衣香。赤岩に続いて若い女が入って来た。黒いゴスロリワンピースの女。小瓶を手に、中に入っているものをポリポリと食べている。何を食べているのだろう?と涙を流しながらも真衣香は思った。

朝食を取る時間があるなら一秒でも長く寝ていたい。真衣香は、今日も朝起きてから何も食べていなかった。悲しくても腹は減る。真衣香の視線に気付いたゴスロリ女は真衣香の目の前に立ち、

「食べる?」

と瓶の中のものを取り出した。

「ありがとう」と言葉が出かかった真衣香だが、それが何か分かった瞬間、

「ぎゃぁ~!虫〜〜ッ、虫はいやぁ~〜!」

と大声で泣き出した。

「あら?イナゴの佃煮は美味しいのに」

ゴスロリ女はイナゴを摘まむ。

「いやぁ〜!虫はいやぁ!助けてぇ〜!!」

泣き叫ぶ真衣香。

「赤岩さん、この娘、本当にイチゴ女なんですか?泣いてばかりで情けない」

ゴスロリ女が赤岩に言う。

「噂通りの可愛い苺ちゃんだろ。いじめちゃ可哀想だぜ、和莉」

赤岩が答える。ゴスロリ女は和莉と言う名前だが、真衣香の耳には入っていない。

「こう見えても水都大学卒のインテリだ。C国に売れば良い値が付くぜ」

と赤岩。

「ヒィッ!いやぁ!!」

と真衣香。C国には自由は無い。売られてしまえば、奴隷としてそのまま一生を終えることになる。

「あら、C国に売った後で逃げられたら、こっちに賠償請求が来ますよ。この娘、イチゴの能力があるんでしょ」

と和莉。

「ならば、殺すしかないな」

と氷川。

「いやぁ!何でも言うことを聞くから、殺さないで!」

真衣香が哀願する。

「じゃ、苺ちゃんの身体を楽しませてもらおうか」

赤岩がニヤリとする。

「捕まえたのは俺の手下だから、俺が先だぞ」

と氷川。

「捕らえたのは俺ですぜ」

とニンニク男。

「香丸くん…助けて……」

怯える真衣香。

「香丸?メロン男か…」

と氷川。

「この娘、やっぱり裏切ってやがったな」

と赤岩。真衣香は思い切り首を振り、否定する。

そのとき、

「表に、ミラクルナイトとドリームキャンディが現れた!」

ウズムシ男が飛び込んで来た。

「行け」

氷川がニンニク男に目で合図する。ニンニク男は外に飛び出した。


「ミラクルアクアティックラプチャー!」

「キャンディシャワー!」

ミラクルナイトとドリームキャンディは次々とウズムシ男を蹴散らしていった。

「姫野さんはどこ?」

ミラクルナイトが叫ぶ。

「建物の中ですよ。奈理子さん、行きましょう」

ドリームキャンディが建物の中に駆けようとした瞬間、

「わッ、臭ッ!」

強烈な臭いに足が止まった。建物から出てきたのは、ウズムシ男を引き連れたニンニク男だった。

そんな姿で追ってくるとは…。奈理子、お前には羞恥心がないのか?」

ニンニク男はミラクルナイトの破廉恥な姿に溜息をついた。

「うぅ……」

返す言葉が無いミラクルナイトは両手でパンツを隠そうとした。

「奈理子さん、しっかりしてください。恥ずかしがっている場合じゃありません!」

ドリームキャンディがミラクルナイトを励ます。

意を決したミラクルナイトは

「ニンニク男を倒して、姫野さんを助けます!」

と力強く言った。

「私と一緒にいる奈理子さんは無敵。なぜなら、私が奈理子さんを守るから」

ドリームキャンディがキャンディチェーンでバシン!と地面を打った。二人はニンニク男に向かって立ち向かった。

「フン、今度こそ終わらせてやる!」

ニンニク男は不敵な笑みを浮かべた。しかし、二人のヒロインは一歩も引かず、決意を新たにニンニク男に挑んだ。

「私たちは負けない!」

ミラクルナイトとドリームキャンディの声が響き渡り、激しい戦いが始まった。

「えい!」

ミラクルナイトが水色の光弾を放つ。ニンニク男の周りに黄色い臭気が漂った。

「臭ッ!」

ドリームキャンディは鼻を摘むが、直ぐに

「えぇ~!」

と驚きの声を上げた。ミラクルナイトが放った水色の光弾は、黄色い臭気に触れると消滅してしまったのだ。

「見たか、これが臭気防御だ」

ニンニク男が自慢気に言った。

「次は私が!」

ドリームキャンディが突っ込み、キャンディチェーンを振るった。黄色い臭気を切り裂きニンニク男を鞭打った。

「えい!えい!え~い!!」

調子を上げるドリームキャンディ。しかし、

「臭い…もうダメ……」

攻撃していたはずのドリームキャンディが倒れてしまった。臭気にやられてしまったのだ。

「もう、終わりか?ドリームキャンディ」

ニンニク男が笑った。

「キャンディ、しっかりして」

ミラクルナイトがドリームキャンディを抱き起こす。

「あの臭いはダメ…。奈理子さん、あとは任せました……」

力無く呟くドリームキャンディ。

「私を守るって言ったじゃない!私を守ることがキャンディの使命でしょ!」

ミラクルナイトが懸命に励ます。

「おいおい、俺はまだ全然本気を出しちゃいないぜ」

ニンニク男が抱き合う二人のヒロインに迫る。


「男性ホルモン増強!精力増進!」

ニンニク男がその能力を開放する。

「スカートの次は、奈理子の匂いが染み付いたその純白パンティだ!」

奈理子のパンツに狙いを定めるニンニク男。

「あぁ…」

ニンニク男の迫力に圧倒され、固まるミラクルナイト。そのとき、ドリームキャンディの瞳が光った。

「ロリポップ三段突き!」

瞬時にキャンディチェーンをロリポップハンマーに変え、高速の三段突きをニンニク男に放つ。

「ぐおっ!」

三段突きをまともに喰らったニンニク男の動きが止まる。しかし、倒れない。

「さっきのお返し、ミラクルパ~ンチ!」

すかさずミラクルナイトはニンニク男の腹に渾身のパンチを放つ。それでも、倒れない。

「効かねぇな。」

ニヤリとするニンニク男。そして、

「次はこっちの番だ。ニンニクブレス!」

強烈なニンニクの息をミラクルナイトとドリームキャンディに吐きかけた。

「きゃぁ~!」

「臭ぁ〜い!」

圧倒的な力でミラクルナイトとドリームキャンディをねじ伏せるニンニク男。地に伏せる二人のヒロインに覆いかぶさるように立つ彼の姿は、まるで勝利を確信した猛獣のようだった。

「このままじゃ、ダメ…」

ミラクルナイトが呻く。

「奈理子さん、頑張ってください…」

ドリームキャンディも懸命に立ち上がろうとする。しかし、ニンニク男の強烈な臭気に身体が動かない。

「これが俺の力だ。貴様らは俺には勝てないんだよ!」

ニンニク男が高笑いする。

地に伏したまま、二人は絶望感に包まれる。ミラクルナイトの心に浮かぶのは、真衣香の顔だった。市民を守ることがミラクルナイトの使命。

「私たちは負けない…絶対に負けない…」

ミラクルナイトは自分に言い聞かせるように呟いた。そして、ドリームキャンディの手を握り締めた。

「キャンディ、一緒に力を合わせて…」

ドリームキャンディもまた、奈理子の手を握り返す。

「はい、奈理子さん。私たちは諦めません!」

二人のヒロインは、再び立ち上がろうとする。ニンニク男に勝ち、真衣香を助け出すために、彼女たちの心には新たな決意が宿っていた。

「これが、私たちの力よ!」

ミラクルナイトとドリームキャンディは、最後の力を振り絞り、再びニンニク男に立ち向かう。


廃工場の中。

「奈理子たちに嗅ぎつけられたらここもダメだな。この女を連れてずらかるか?」

赤岩が氷川に撤収を促す。

「貴方たちのことは誰にも話さないから、私は置いて行って〜!」

真衣香が泣き叫ぶ。

「ニンニク男が奈理子たちに負けるとは考えられん。ここで、この女で楽しもうじゃないか」

氷川が真衣香の頬を撫でる。

「ひぃ~ッ!香丸くん、助けて〜!!」

真衣香が悲痛の声を上げる。

「あの色男がここに来るはず無いだろ」

氷川が真衣香のブラウスのボタンを外していく。

そのとき、

「呼んだかい?」

氷川たちの後ろから声がした。

「香丸くん!」

と真衣香。

「メロン男!」

と赤岩。

「あら、いい男…」

と和莉。それを聞いた真衣香が

「ダメ!香丸くん、この女にメロンの匂いを嗅がせちゃダメ~ッ!!」

と叫ぶ。

「なんだ?この女、急に元気になったな」

と氷川。

「俺もいるぜ。久しぶりだな、お二人さん」

香丸の横に赤岩にも負けないほどの大男、不知火が現れた。

「お前は、デコボン!」

と赤岩。

お相撲さんのような不知火を真衣香は知らないが、赤岩の言葉から不知火がデコポン男であることを悟った。メロン男の香丸が、デコポン男の不知火を連れて真衣香を助けに来てくれた。香丸と不知火なら、カラクサ男の氷川とザリガニ男の赤岩にも勝てるかもしれない。安心した真衣香は思わず、

「あれから、どうして連絡してくれなかったの!」

と香丸を怒鳴ってしまった。

「黙れ!」

氷川が真衣香の頬に強烈な平手を喰らわす。自分が置かれた状況を思い出し、再び涙を流す真衣香。

「お前たち、どうやってここまで来た」

氷川が香丸と不知火に問う。

「ウズムシたちは表の奈理子たちの方に行って、裏口は手薄だっぜ」

不知火が答える。

「デブは赤岩さんと氷川さんでお願いします。私はあのイケメンを…」

と和莉が口にする。

「いいのかい?私は女の子が相手なら絶対に負けない自信があるけど」

と香丸がニヤリとする。

「ダメ!私以外の女をメロメロにしないで〜!」

再び真衣香は叫ぶ。

「煩い!」

再び氷川が真衣香の頬に平手を喰らわす。

「和莉、やめておけ。奴は女には滅法強い」

赤岩が、香丸と戦う気満々の和莉を止める。

「お前ら、俺たちを敵に回すつもりか?」

氷川が香丸と不知火に問う。

「それはこっちのセリフだ。君たちのように柏原さんや勅使河原さんから薬を買った者と、私たちカオリさんから薬を入手した者とは決定的な違いがある。勅使河原さんから何も聞いていないのかい?」

香丸が言う。氷川と赤岩は、勅使河原からカオリ一派との戦いは避けるように言われている。氷川も赤岩もその理由は聞いていない。

「柏原さんがどんな理由で真衣香さんに薬を与えたのかは知らない。だけど、真衣香さんはこっち側の人間なんだよ。まぁ、柏原さんと勅使河原さんもこっち側の人のはずだったんだけどね」

と続ける香丸。

「こっち側とかあっち側とかは知らねぇが、イチゴ女は渡せねぇな」

と氷川。

「やるか?俺は最初からそのつもりだ」

と不知火。

「デコポン、あのときの決着を付けようぜ!」

と赤岩。不知火、氷川、赤岩が変身する構えを見せる。

しかし、香丸は

「勅使河原さんの了解は得ている。それに、イチゴ女を希望しているのはタコ男だ。勅使河原さんもタコ男に逆らってまでイチゴ女を処分しようとは思っていないと思うよ」

とにこやかに言った。

「チッ!」

氷川が舌打ちをする。真衣香の心に、もしかしたら助かるかもしれない、勅使河原の手下から抜け出せるかもしれないと期待がよぎった。


ニンニク男と対峙するミラクルナイトとドリームキャンディ。ミラクルナイトはニンニク男に集中しているが、ウズムシ男が音も立てずに背後に忍び寄っていることに気付いていなかった。

「それ〜!」

ウズムシ男が突然、奈理子のパンツを足首まで下げる

「わっ!何?」

一瞬、何が起こったのか分からなかったミラクルナイト。

「やったー!」

大喜びのウズムシ男たち。状況を理解すると慌ててパンツを引き上げるミラクルナイト。

「何するのッ!」

とウズムシ男を怒鳴りつけた。

百戦錬磨のニンニク男はその隙を逃さない。

「ヘヘッ、捕まえたー!」

抱き付くニンニク男を振り払おうとするが、非力なミラクルナイトではどうすることもできない。

「うぅ…、これがニンニク男の力……」

圧倒的な力の差に為されるが侭のミラクルナイト。

「たっぷり可愛がってやるぜ、奈理子」

ミラクルナイトの反応を楽しむニンニク男。

「奈理子さんから離れなさいッ!」

ドリームキャンディがロリポップハンマーでニンニク男に殴り掛かるが、ニンニク男はドリームキャンディに向かってミラクルナイトを投げ付けた。

「あぁッ!」

「わ!」

同時に悲鳴を上げて重なり倒れ込む二人。それでも、ドリームキャンディはミラクルナイトを押しのけて立ち上がる。

「やぁ!」

とロリポップハンマーを突き出したが、ニンニク男は躱す。

「速い!」

とニンニク男の速さに驚くドリームキャンディが呟いたときには、ニンニク男の顔がドリームキャンディの面前に迫っていた。慌てて跳び下がろうとするドリームキャンディだが、その前にニンニク男に抱きつかれてしまった。そして、キスされてしまった。

「ぅ……」

口を塞がれ藻掻くドリームキャンディ。ニンニク男は、ドリームキャンディの口から体内にニンニクブレスを流し込む。ドリームキャンディは薄れゆく意識の中で

「ファーストキスがニンニク臭いニンニク男なんて…」

と嘆きながら気を失ってしまった。

「キャンディ!」

ミラクルナイトがドリームキャンディに縋り付く。

「奈理子、お楽しみはこれからだぜ」

ニンニク男は再びミラクルナイトを捕える。左右の足首を掴むとそのままミラクルナイトを組み伏せてしまった。まんぐり返しだ。身体の柔らかさには自信があるミラクルナイトは、まんぐり返し自体は苦にならない。しかし、パンツを穿いているとはいえ、このポーズは顔から火が出るくらい恥ずかし過ぎる。

「いゃぁ!」

手で股間を隠すミラクルナイト。

「手をどけろ」

ニンニク男がミラクルナイトを見下す。ミラクルナイトは、自由に身動きができない。抵抗しても無駄と悟ったミラクルナイトは手をおろした。

「いい眺めだな、奈理子」

ニンニク男が嘲笑う。ウズムシ男たちも近寄ってきてミラクルナイトの姿を楽しんでいる。恥ずかしさに顔を背け、瞳を閉じるミラクルナイト。

「ニンニクパワーでひぃひぃ鳴かしてやるぜ」

ニンニク男が奈理子のパンツに手をかける。ゆっくりとパンツを脱がされると、ニンニク男の熱い息が奈理子の大切な箇所に触れる。

「お願い、優しくして…」

これから、どんな責めを受けるのか、ドキドキのミラクルナイト。

その時だ!

「奈理子、しっかりしなさい!自分に負けちゃダメ!!」

ミラクルナイトを叱咤する声。ハッとして瞳を開くと、風の戦士セイクリッドウインドの姿が。

「凜さん!」

ミラクルナイトが叫ぶ。しかし、ニンニク男に押さえつけられ動けない。ガストファングを振るうセイクリッドウインド。竜巻がウズムシ男を吹き飛ばす。

「奈理子、大丈夫?今、助けるから!」

彼女の声に、ミラクルナイトもかすかに反応する。


「奈理子に何てことすんの!」

セイクリッドウインドがガストファングを手にニンニク男に殴り掛かる。

「おっと危ねぇ」

ニンニク男はミラクルナイトから離れ躱す。セイクリッドウインドは

「奈理子、諦めるの早すぎ」

とミラクルナイトを叱責し、

「アンタも起きなさい!」

とドリームキャンディの頭をポカンとハリセンのようにガストファングで叩いた。しかし、ショックが大き過ぎるドリームキャンディは、

「私、初めてのキスを……」

とセイクリッドウインドに訴える。

「後で話は聞いてやるから、今は戦いに集中しよ」

とセイクリッドウインドが宥め、

「キャンディ、一緒にニンニク男を倒そう。そして、姫野さんを助け出そう」

とパンツを穿き直したミラクルナイトも励ます。

泣きながら立ち上がるドリームキャンディ。そして、ミラクルナイトとセイクリッドウインド。ニンニクパワーで圧倒的な強さを誇るニンニク男。この激闘の行方は――。

「うぅ……私、負けない!」

ミラクルナイトが決意を新たにし、ニンニク男に向かって突進する。

「えい!」

と叫びながら、水色の光弾を連射する。しかし、ニンニク男はその光弾を軽々と躱す。

「フン、そんな攻撃で俺に勝てると思うなよ!」

ニンニク男は嘲笑し、強烈なニンニクブレスを吐きかける。ミラクルナイトは咄嗟に手で顔を覆うが、臭気はすでに周囲を充満させていた。

「くっ……臭い!」

とドリームキャンディも鼻をつまむ。しかし、彼女は負けじとロリポップハンマーを構え、

「やぁ!」

と叫んでニンニク男に突進する。ハンマーが一閃し、ニンニク男の肩に直撃するが、彼はビクともしない。

「何だ、子供のおもちゃか?」

とニンニク男が嘲笑う。

「ガストファング、風の刃!」

セイクリッドウインドがガストファングを振るい、竜巻を発生させる。その風の刃がニンニク男に襲いかかるが、彼は一歩も引かずに耐え抜く。

「俺のニンニクパワーにはそんなもん効かねぇよ!」

と叫び、逆にミラクルナイトに突進してきた。

「奈理子さん、下がって!」

ドリームキャンディが叫び、ミラクルナイトを庇うように立ちはだかる。しかし、ニンニク男の勢いは止まらない。

「どけ!」

と叫び、ドリームキャンディを弾き飛ばす。

「キャンディ!」

ミラクルナイトが叫び、再びニンニク男に向かって突進する。

ミラクルヒップストライク!」

彼女は自分の全力を込めて、ニンニク男に一撃を放つ。しかし、ニンニク男はその攻撃を顔面で受け止め、

「そんな攻撃じゃ俺には勝てない!」

と叫びながら、逆にミラクルナイトの股間を顔に押し付ける。

「いや!臭い嗅がないで!」

逃れようとするミラクルナイト。

「奈理子さんから離れなさい!」

ドリームキャンディがロリホップハンマーを振るい、ミラクルナイトを救出する。

彼女たちは再び立ち上がり、真衣香を救い出すために戦い続けるのだった。


「ニンニクパワーに加え、奈理子の匂いで更に精力増強!絶倫パワーマックスだ!!」

ニンニク男がなおもミラクルナイトに迫る。

「来ないで!」

ミラクルナイトが水色の光弾を連射するが、ニンニク男はものともしない。

「俺をここまで熱くさせた責任を取ってもらうぜ、奈理子!」

「嫌よ!またエッチなことするんでしょ!!」

拒絶するミラクルナイト。

「アンタは暑苦しいのよ!少しは体を冷やしなさい!!」

セイクリッドウインドがガストファングを扇ぎ、ニンニク男に強風を送る。しかし、

「こんな風じゃ、俺の情熱は冷めないぜ!」

とニンニク男は強風にも怯まない。

「それならこれはどう?ミラクルアクアティックラプチャー!」

ミラクルナイトが水のオーラをニンニク男に向けて放つ。水のオーラに包まれたニンニク男。ニンニク男の熱も冷めるかと思われたが…。

「奈理子の匂いがする水だ!これは気持ちいいぞ」

ニンニク男は水のオーラの中で奈理子の匂いを楽しんでいる。

水のオーラはニンニク男の熱を奪う。しかし、ニンニク男は水のオーラを上回る精力を放ち続けている。

「うぅ…これ以上は……」

何とかして水のオーラでニンニク男を抑え込もうと耐えるミラクルナイトだが、圧倒的なニンニク男の精力の前に限界が近付いてきた。

「キャンディ、早く!」

セイクリッドウインドがドリームキャンディに促す。水のオーラがニンニク男を取り込んでいるうちに倒さなければならない。

「はい!」

ドリームキャンディがロリポップハンマーを高く振り上げた。強力なエネルギーをロリポップハンマーに集中させる。そして、

「キャンディスターバースト!」

とロリポップハンマーをニンニク男に向け、一撃を放った。

ロリポップハンマーから放たれたエネルギーは色とりどりの星のような光を放ちながらニンニク男に向かって飛んでいく。その瞬間、爆発音が響き、ニンニク男の周囲に閃光が迸った。

「ぐおぉぉ!」

ニンニク男は苦痛の叫びを上げる。エネルギーの光が彼の体を包み、徐々にその力を削ぎ取っていく。

「やった…?」

ミラクルナイトが息を切らしながら呟く。しかし、まだ油断はできない。セイクリッドウインドとドリームキャンディも息を呑んでニンニク男の様子を見守る。

煙が晴れると、ニンニク男は膝をつき、息も絶え絶えに地面に崩れ落ちていた。

「奈理子にハメるまでは…負けるわけには…いかない…」

と呻くが、力尽きたように倒れ込む。

「やったわ、奈理子!」

セイクリッドウインドが駆け寄り、ミラクルナイトを抱きしめる。

「ありがとう、凜さん…キャンディも…」

ミラクルナイトは涙を浮かべながら感謝の言葉を述べる。

「姫野さんを助けに行きましょう!」

ドリームキャンディが呼びかける。ニンニク男を倒した彼女たちは、再び力を合わせて真衣香を救い出すために全力で戦い続けるのだった。


「凜ちゃーん!」

廃工場から、お相撲さんのような大きな男が飛び出してきた。

「あっ、不知火くん。そっちは終わったの?」

セイクリッドウインドが不知火に微笑む。

「姫野さんは無事に確保した」

不知火の言葉に、ホッとするミラクルナイトとドリームキャンディ。

だが、二人は不知火のことは知らない。

「大学の友達の不知火くん。元学生横綱よ」

セイクリッドウインドが不知火を二人に紹介する。

「学生横綱…」

ドリームキャンディが不知火の巨体を珍しそうに見て呟く。餅のような不知火の腹を触ってみたいとドリームキャンディは思ったが、初対面ではさすがに口にすることは出来なかった。

「奈理子、久しぶり。奈理子はいつも色っぽいな」

と不知火が奈理子に笑顔を見せる。ハッと両手でパンツを隠すミラクルナイト。ミラクルナイトはスカートを穿いていないのだ。それにしても、不知火は奈理子のことを知っているようだが、どこで会ったことがあるのだろうか、とミラクルナイトは思った。

「不知火くんは、デコポン男なんだよ」

セイクリッドウインドがミラクルナイトに説明する。

「え?!」

後退りするミラクルナイト。商店街でデコポン男に襲われた過去を思い出した。

「怖がらなくてもいいよ、奈理子。不知火くんが、ここで奈理子とキャンディが戦っているって教えてくれたの」

とセイクリッドウインド。

「香丸がキャンディをぶら下げて空を飛んでいる奈理子を見つけて俺に知らせてきた」

と不知火。

「香丸さんもここにいるの?」

とミラクルナイト。

「中に姫野さんと一緒にいるぜ」

不知火が廃工場を見て言う。どうして香丸さんが姫野さんを助けたんだろう?とミラクルナイトは不思議に思った。二人は知り合い?もしかしたら、恋人同士?ミラクルナイトの心に疑念が広がる。

「私、香丸さんのところに行って来る」

ミラクルナイトは廃工場の中に駆けて掛けて行った。

「あっ、私も行きます」

ドリームキャンディがミラクルナイトの後を追う。

廃工場に入って行く二人の後ろ姿を眺めるセイクリッドウインドと不知火。

「行かない方がいいと思うけどね」

「奈理子は恋多き女だから、ライムと付き合ってるくせに香丸くんのことも好きなんだよ。中学生が大学生に憧れるのも分からなくはないけど…」

不知火とセイクリッドウインドは溜息を付く。

「こうやって女の子は大人になっていくんだな」

不知火はしみじみと呟いた。

廃工場の中に入ったミラクルナイトとドリームキャンディ。そこには、椅子に座りながら真衣香を抱きしめている香丸の姿があった。真衣香は涙を流しながら香丸に感謝の言葉を伝えていた。

「香丸くん、本当にありがとう…」

その光景に胸が締め付けられるような気持ちになるミラクルナイト。

「姫野さん、無事でよかったです!」

ドリームキャンディが駆け寄る。ミラクルナイトはこの場を黙って立ち去りたかったが、仕方なくドリームキャンディの後を付いて行く。

「ありがとう、ドリームキャンディ」

真衣香が微笑む。香丸も優しく微笑んでいる。

「香丸さん、どうしてここに…?」

ミラクルナイトが問いかける。

「姫野さんを守るために来たんだ。もちろん、奈理子を助けるために、不知火さんにセイクリッドウインドを呼んでもっらたよ」

香丸が答える。

ミラクルナイトはその言葉に少し戸惑いながらも、香丸の存在に心強さを感じた。

「みんなが協力してくれたから、こうして姫野さんを助け出すことができたんだね」

ドリームキャンディが感謝の気持ちを口にする。

「そうだね。みんなのおかげだよ」

香丸が頷く。その時、真衣香は香丸の手をぎゅっと握りしめた。


廃工場を後にするミラクルナイトとドリームキャンディ。抱き合う香丸と真衣香の姿を見てしまったミラクルナイトは無言だった。ドリームキャンディは、奈理子にはライムという彼氏がいるのに、香丸のことも好きだったのかもしれないと考えていた。

「奈理子さん、元気を出してください。奈理子さんにはちゃんと彼氏がいるじゃないですか」

沈黙に耐えられなくなったドリームキャンディが言った。

「キャンディ…」

ミラクルナイトは年下のドリームキャンディに気を使わせてしまっている自分を恥じた。

「私たち、ニンニク臭いよね」

ミラクルナイトが笑顔を見せる。その笑顔にホッとしたドリームキャンディ。

「私がニンニク男にキスされたことは隆には絶対に言わないでくださいね」

「え〜!寧々ちゃんがキスされたと聞いた隆の反応を楽しみにしてたのに」

ミラクルナイトが大袈裟に驚く。

「そんなこと言うなら、また奈理子さんのパンツを脱がしますよ!」

奈理子の白いパンツはニンニク男との激しい戦いで汚れてしまっている。

「キャンディ、それは冗談になってないよ!」

怒った顔を見せるミラクルナイト。楽しそうにじゃれ合いながら、ドリームキャンデイが奈理子の汚れた白いパンツを撫でる。

「私ももっと強くなって、みんなを守れるようになりたい」

とミラクルナイトが決意を新たにする。その言葉にドリームキャンディも

「私も一緒に頑張ります!」

と声を合わせた。

「これからも力を合わせて戦おうね」

とミラクルナイトが微笑む。ミラクルナイトとドリームキャンディはその言葉に力強く頷いた。彼女たちの絆はさらに深まり、真衣香を救い出したことで新たな決意を胸に、再び水都の平和を守るために戦い続けるのだった。

第130話へつづく)

あとがき