ミラクルナイト☆第138話
水都中学一年A組の教室。寧々は隆に尋ねた。
「奈理子さんの様子はどう?」
昨日、ミラクルナイトはシオマネキ女にこれまでにない無様な敗北を喫した。その動画がSNSに多く上がっている。ドリームキャンディとしてミラクルナイトの痴態を何度も間近で見てきた寧々が、目を背けたくなるほどの酷い敗北だった。
「友達に支えられながら帰ってきた。一花さんって人で、メチャ綺麗な人だったぜ。水女は美人が多いんだな」
と隆が答えた。
「奈理子さんの友達のことはいいから、奈理子さんはどうなの?」
寧々はイライラしながら言った。
「疲れてたからすぐに寝たけど、普通だったぜ」
と隆はあっさり答える。寧々は、あのような敗北をして普通でいられるはずがないと思った。
「姉ちゃんは負けることには慣れているから気にするな」
と隆は軽く言った。寧々は呆れた。やはり、隆はバカだ。女の子があんなことをされて平気なわけがない。
寧々は、奈理子の彼氏のライムはどう思っているのだろうと考え、二年B組の教室に行ってみた。上級生の教室は緊張する。コッソリと教室の引き戸から中を覗き込む。ライムの姿はない。
「何してんだ?」
背後から声を掛けられた。振り向くとそこにいたのはライムだった。
「あ、あの…」
と戸惑う寧々。ライムは奈理子の彼氏だが、学校では寧々の上級生だ。二年の教室だから周りにいる生徒も全員上級生。敬語を使うべきか寧々は迷った。
「昨日の奈理子のことなら大丈夫だ。水女の一花さんが一緒にいたらしいからな」
とライムは寧々が何故ここにいるのか察したようだ。
「そうですか…」
と寧々は思った。彼氏のくせに冷たいなと感じた。
「奈理子さんとは話をしたんですか?」
と言いながら、何でライムに敬語を使わなきゃならないんだろうと寧々は思った。元々ライムは敵だったスライム男だ。
「電話で話した。一花さんに慰められたようだ」
とライムは少し嫌な顔をした。
二年B組の教室を後にする寧々。弟の隆も、彼氏のライムも昨日のミラクルナイトの敗北を軽く考えているようだ。
「私が、奈理子さんをしっかり支えてやらなきゃ!」
と寧々は決意を固め、奈理子のために何ができるか考えた。
「一花さんって、どんな人だろう?」
と寧々は思った。隆が綺麗な人と言い、ライムも知っている一花。寧々は、自分以外に奈理子に他にも頼れる人がいることに少し寂しさを感じていた。
その頃、鄙野の町の空地では、コマリシャスが土の上に拾ってきた単一乾電池を置いていた。
「ここにコレを置いて…」
と呟きながら。彼女はその後、草むらで生き物を探していたタンポポタイに声を掛ける。
「タンポポタイ、何か見つけた?」
「こんなものがいましたぜ」
とタンポポタイが摘んでいたのは毛虫だった。紗理奈はコマリシャスと一緒にタンポポタイが持つ毛虫を覗き込み、
「うわッ!毛虫!!」
と後退りする。
「ヘ〜、紗理奈はこんな物が怖いの?」
コマリシャスが笑いながら言い、タンポポタイから毛虫を受け取って単一乾電池の横に置く。
「行くよー!」
と楽しげに呪文を唱えると、毛虫と単一乾電池の周りに魔法陣が現れた。その中から現れたのは、毛虫と単一乾電池の合成魔物。その魔物が、
「ケムシデンチ登場!」
と叫ぶ。
「ケムシデンチ、タンポポタイと仲良くしてね」
とコマリシャスが声を掛ける。タンポポタイはタンポポとネクタイの合成魔物だ。
「コマリシャス、ケムシデンチはダンゴムシカンよりも強いの?」
紗理奈はケムシデンチを見ながら尋ねる。毛が生えた巨大な乾電池のようで、動きは鈍そうだった。そばにいるタンポポタイも強そうには見えない。
「紗理奈、ダンゴムシカンはミルキーナイトを苛め抜いて鄙野を制覇した勇者だよ。ダンゴムシカンほどの魔物はそう簡単に作れないよ」
とコマリシャスが答える。
「姫様、ダンゴムシカンの仇を討ちに水都に行きましょう。ダンゴムシカンが殺られたのは何かの間違いです」
とタンポポタイがコマリシャスに提案する。
「う~ん…」
と考えるコマリシャス。
「行こう!今度こそ水都の人間をギャフンと言わせてやる!」
コマリシャスがタンポポタイとケムシデンチに声を掛ける。
「待ってよ。ダンゴムシカンが負けたのにそれより弱い貴方たちが勝てるはずないでしょ」
と紗理奈は止めるが、
「人間は黙ってろ!」
とタンポポタイが放ったネクタイが紗理奈の身体をグルグル巻きにする。
「やめて、分かったから、貴方たちに協力するから」
と紗理奈は藻掻きながらタンポポタイにお願いする。
「ダメだよ、タンポポタイ。紗理奈は人間だけど仲間だよ。みんな、仲良くしてよ」
とコマリシャスが言うと、タンポポタイは紗理奈を拘束するネクタイを解いた。
「今度こそ、水都の人間どもに魔物の怖さを教えてやろう!」
とコマリシャスが気勢を上げる。
「水都の守護神を苛めるのが楽しみだ」
とタンポポタイ。
「俺がいる限り負けはしないぜ」
とケムシデンチが自信満々に応える。
コマリシャス、タンポポタイ、ケムシデンチ、そして紗理奈は水都に向けて歩み始めた。
一之木多実は、足早に穢川研究所の社長室に入った。
「社長、御祖さんから連絡がありました」
と告げる。
勅使河原の脇に控える渦巻が問う。
「何の連絡があったのですか?」
御祖紗理奈は魔界の少女を監視するために鄙野に派遣された勅使河原の部下である。
「魔界の少女が二匹の魔物を引き連れ水都に侵攻中です」
と多実が報告した。
「行き先は何処ですか?」
と重ねて渦巻が問う。
「あてもなく水都に向かっている模様です。おそらく、水都タワーか水都公園ではないかと」
と多実が答える。田舎者が水都に行くとすれば、水都のシンボルである水都タワーか、水都公園が考えられる。
「面白い。魔物どものお手並み拝見といこう」
と勅使河原がニヤリとする。
「しかし、イソギンハンミョウが出撃準備中です」
と渦巻が告げる。新型の合成怪人イソギンハンミョウは、その能力を試すべく出撃する予定になっていた。ミラクルナイトが苦手とするイソギンチャクの触手とハンミョウの強力な牙を持つ恐るべき怪人だ。
「九頭先生の自信作だな。予定通りイソギンハンミョウは出撃させよ。しかし、魔物とは接触はせず、ミラクルナイトを倒したら直ぐに撤収するよう伝えよ」
と勅使河原は渦巻に命じた。
水都を支配しようとする魔物たちと、ミラクルナイトを狙うイソギンハンミョウ。水都の街に危機が迫っていた。
水都公園の遊歩道。放課後、奈理子はライムと歩いていた。昨日のシオマネキ女との戦いの傷がまだ癒えていない。奈理子はそっとライムの手を握った。
「ライム、エッチしたい…」
と、恥ずかしそうに口にする奈理子。
「もちろん、そのつもりだ。女よりも男がいいことを奈理子に思い知らせてやるぜ」
ライムは、奈理子が一花に慰められたことを気にしていた。そんなライムの言葉に奈理子は頼もしく感じていた。ライムの激しい責めを思い出し、奈理子はドキドキと期待を膨らませる。
「久しぶりに多目的トイレに行くか?」
ライムが奈理子の手を引く。
「多目的トイレはダメだよ」
奈理子は足を止める。制服姿ではホテルには行けない。同じ中学だったときは校舎の屋上を使っていたが、別の学校に行くようになると、放課後に二人だけで過ごせる場所を探すことが難しくなっていた。
「金が掛かるけど、観覧車に行くか?」
「橋の下でいいよ」
水都公園の運河に架かる橋の下は意外な穴場だった。歩道は人が多いが、平日の夕方は橋の下にはほとんど人が来ない。
そのとき、水都公園の運河からイソギンハンミョウ出現の町内放送が鳴り響いた。
「イソギンハンミョウ、新型か」
とライムが呟いた。
「イソギンチャク……」
奈理子は震えていた。イソギンチャク男との戦いは奈理子の心に深い恐怖を植え付けた。イソギンチャク男は倒したが、奈理子は今でもイソギンチャク男に凌辱される夢を見ることがある。
「奈理子、今日は休め。しばらくするとドリームキャンディたちが来るだろう」
怯える奈理子をライムが抱き締めた。
「私は、水都の守護神ミラクルナイト。どんなに辱めを受けようと、逃げるわけにはいかないわ」
ライムの腕の中で落ち着きを取り戻した奈理子がアイマスクを取り出す。
「無理はするなよ」
奈理子を気遣うライム。
「イソギンハンミョウはイソギンチャク男じゃない。イソギンハンミョウは私が倒すわ」
奈理子は自分に言い聞かせ、ミラクルナイトに変身した。
水都公園内の運河から飛び出したイソギンハンミョウ。
「ミラクルナイト、出て来い!」
と暴れ狂う。逃げ惑う市民の前に現れたのは、水都の絶対ヒロイン、ミラクルナイト。
「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」
高らかに宣言するミラクルナイトだが、その心中はイソギンハンミョウの凶悪な外観に怯えていた。ハンミョウの鋭い牙も恐ろしいが、ミラクルナイトが最も恐れているのはイソギンチャクの触手だった。かつて、イソギンチャク男に凌辱された記憶は、未だに奈理子の心に深い傷を残している。
「奈理子だ!」
「ミラクルナイト、助けてくれ!」
市民が水都の守護神ミラクルナイトに熱い期待を寄せる。
「ほぅ、思ったよりも早かったな」
イソギンハンミョウがミラクルナイトのプリーツスカートから覗く太股を見てニヤリとする。
ミラクルナイトは市民の期待を裏切ることはできない。イソギンハンミョウに勝てないとしても、セイクリッドウインドかドリームキャンディが来るまで持ち堪えなければならない。ミラクルナイトは勇気を奮い立たせ、イソギンハンミョウに挑む。
「これ以上、市民に迷惑をかけるのは止めなさい!」
と飛び掛かるミラクルナイト。
「楽しませて貰おうか」
口から無数の触手を伸ばすイソギンハンミョウ。
「あぁッ…」
ミラクルナイトは四肢を絡め取られてしまった。
「離してッ!」
触手に絡まれもがくミラクルナイトだが、触手は軽々と彼女をM字に開脚させに持ち上げる。大勢の市民の前に晒された奈理子の純白パンティのクロッチには黄色い染みが付いていた。
「見ないで……」
羞恥に顔を背けるミラクルナイト。しかし、
「顔も見せて貰うぜ」
とイソギンハンミョウは触手を操り、ミラクルナイトのアイマスクを弾き飛ばし、さらにはスカートまでも剥ぎ取ってしまった。水都市民の自慢である美少女奈理子の素顔と純白パンティが市民の前に晒される。
しばらくの間、羞恥に震えるミラクルナイトの姿を楽しんだイソギンハンミョウは、
「もっと試したい能力はあるが、早く帰れと言われているから今日は触手だけにしといてやるか」
とミラクルナイトの拘束を解き、地面に叩きつけた。
「ミラクルナイト、頑張れー!」
「今日の奈理子も可愛いぞ!」
市民がなおもミラクルナイトに声援を送る。その声援が、ミラクルナイトに勇気を与える。
「待ちなさい!」
痛みに耐えながらも立ち上がり、立ち去ろうとするイソギンハンミョウに向かっていくミラクルナイト。彼女の渾身のパンチ。しかし、イソギンハンミョウは軽く躱した。
「可愛いだけの弱小ヒロインはお寝んねしてな!」
とミラクルナイトに強烈な腹パンを喰らわせる。
「うッ……」
膝から崩れ落ちるミラクルナイトは、そのまま失神してしまった。
「今から魔物が来るらしいぜ。続きは魔物に可愛がってもらいな」
イソギンハンミョウはうつ伏せに倒れるミラクルナイトに吐き捨てると、水都公園を去って行った。
水都公園の運河の畔には、人々が集まり、気絶して仰向けに倒れるミラクルナイトを取り囲んでいた。
「あの女は誰?」
興味津々のコマリシャスが紗理奈に尋ねた。
「あれは水都の守護神ミラクルナイトよ」
と答えた紗理奈は、野次馬に事情を聞いていた。どうやらミラクルナイトはイソギンハンミョウにやられたようだ。
「ヘ〜、水都の守護神も弱いんだね」
と横で聞いていたコマリシャスは楽しそうに言った。そして、コマリシャスはミラクルナイトの姿が普通とは少し違うことに気付いた。
「ねぇ、紗理奈。水都の守護神はスカートを穿かないの?」
「ミラクルナイトはスカートを脱がされることがお約束なの」
と紗理奈が得意気に答える。
「ふ~ん、水都の守護神のお汁も良い味しそう!」
コマリシャスは奈理子の純白パンティを見つめながら舌を舐めた。
黄色い光とともにドリームキャンディが現れた。
「奈理子さん、またスカート脱がされちゃって…。アイマスクも外されてる。私が来るまで頑張れなかったの?」
ドリームキャンディはそう呟きながら、奈理子のクロッチを確認した。染みはあるが、激しく濡れてはいない。悪戯はされていないようだ。
「何故、奈理子さんに悪戯せずに帰ったんだろう?」
ドリームキャンディは疑問を感じながら、気絶したままのミラクルナイトを抱き上げた。気絶して生気のない美少女奈理子の素顔を露わにしたミラクルナイトがドリームキャンディにお姫様抱っこされる。その美しい姿を撮影しようと多くの市民がスマホを向けていた。緑色の光とともにセイクリッドウインドも現れる。
「奈理子、大丈夫?」
セイクリッドウインドが奈理子の素顔を覗き込む。
「気を失ってるだけ。だと思います」
「そう。気を失ってると奈理子の美少女っぷりが増すね」
セイクリッドウインドが奈理子の頭を撫でた。
「あ~っ、あの飴玉をチャラチャラ点けたガキンキョ!ダンゴムシカンが殺られたときにいた奴だ!」
コマリシャスがドリームキャンディを指して紗理奈の腕を引っ張った。紗理奈は明らかにドリームキャンディよりもコマリシャスの方がずっとガキンキョだと思いながら、
「ミラクルナイトに仕えるドリームキャンディね。後から来たのはセイクリッドウインド。あの二人はミラクルナイトよりもずっと強いわよ」
と教えてやった。
「ミラクルナイトは守護神のくせに自分の手下より弱いなんて情けないね」
「水都にはミラクルナイトよりも強いのがうじゃうじゃいるから危ないよ。今日はもう帰ろう」
「嫌ッ!あのガキンキョだけは許さない」
コマリシャスは紗理奈の制止を聞かず、呪文を唱え始めた。
「パンツは少し汚れているけど、まあ無事だったみたいね」
とセイクリッドウインドは屈んでドリームキャンディに抱き上げられた奈理子のクロッチをずらして中を観察していた。
「凜さん、敵もいないし、帰りましょう」
とドリームキャンディがセイクリッドウインドに言ったその瞬間、水都公園の市民が再び悲鳴を上げた。ハッとその方を向くドリームキャンディとセイクリッドウインド。そこには、タンポポにネクタイを巻きつけた魔物タンポポタイと、毛が生えた巨大な乾電池の魔物ケムシデンチが立っていた。
「水都の守護神を渡してもらおうか」
「水都の守護神も可愛いねぇ。どんな味がするか楽しみだ」
とタンポポタイとケムシデンチが、お姫様抱っこされているミラクルナイトに下衆な視線を浴びせる。
「凜さん、奈理子さんをお願いします」
とドリームキャンディはセイクリッドウインドにミラクルナイトを渡した。
「こいつらが例の魔物?」
ミラクルナイトを受け取りながらセイクリッドウインドが尋ねた。セイクリッドウインドにとって、魔物を直接見るのは初めてだ。
「魔物に奈理子さんを渡しちゃいけない。そんな気がします」
とドリームキャンディは腰のキャンディベルトを外し、キャンディチェーンを構えた。
セイクリッドウインドはミラクルナイトを優しく抱きかかえ、ドリームキャンディの背中を見つめた。
「気をつけてね、キャンディ」
ドリームキャンディはセイクリッドウインドの言葉に力強く頷き、タンポポタイとケムシデンチに向かって突進した。
「奈理子さんを狙う者は許さない!」
と叫びながら、ドリームキャンディは魔物たちと激突した。
セイクリッドウインドはミラクルナイトをしっかりと抱きしめ、彼女の安全を確保しながら、ドリームキャンディの戦いを見守っていた。ミラクルナイトの無防備な姿に心配しつつも、セイクリッドウインドはドリームキャンディの勇敢な姿に誇りを感じていた。
ドリームキャンディはキャンディチェーンをしっかりと握りしめ、タンポポタイとケムシデンチに向かって構えた。彼女の目は決意に満ちている。
「奈理子さんを狙う者は絶対に許さない!」
と声を上げると、キャンディチェーンが風を切って振るわれた。
タンポポタイはその長いネクタイを鞭のように振り回し、ドリームキャンディに迫る。
「守護神の家来のくせにデカい顔をするんじゃねぇ!」
と不敵に笑うタンポポタイ。彼のネクタイが鋭く振るわれるが、ドリームキャンディはその動きを読んで巧みに避けた。
「ネクタイなんか怖くはないわ!キャンディスラッシュ!」
ドリームキャンディはキャンディチェーンを一閃し、タンポポタイのネクタイに絡みつける。強く引き寄せられたタンポポタイはバランスを崩し、その隙にドリームキャンディが素早く接近した。
「甘く見ないで!」
と叫びながら、彼女はキャンディチェーンを勢いよく叩きつけた。タンポポタイは苦痛に顔を歪めたが、すぐに立ち直り、再びネクタイを振るって反撃を試みる。
その時、ケムシデンチが重い身体を引きずりながらドリームキャンディに迫ってきた。
「今度は俺の番だ」
と低く唸り、彼の大きな体がドリームキャンディに影を落とす。毛虫のような体がうねりながら近づくその姿は不気味だったが、ドリームキャンディは一歩も引かなかった。
「キャンディバインド!」
ドリームキャンディはキャンディチェーンをケムシデンチの身体に巻きつけ、その動きを封じ込めようとした。しかし、ケムシデンチはその巨体を揺さぶりながら、チェーンを引きちぎろうとする。
「この程度の鎖では俺を止められない!」
と吼えるケムシデンチ。そして、電撃を放とうとするが、何も起こらない。
「あれれ?おかしいな??」
首をかしげるケムシデンチ。
「何をしたいのか分からないけど、させない!」
ドリームキャンディは力を込めてチェーンを引き、一瞬の隙を突いてケムシデンチの動きを封じる。その間に、彼女は再びタンポポタイに向き直った。タンポポタイは再びネクタイを振るい、ドリームキャンディを捕らえようとしたが、彼女はその動きを完全に見切っていた。
「キャンディスピン!」
ドリームキャンディは素早く回転し、キャンディチェーンを旋回させてタンポポタイのネクタイを絡め取った。強引に引き寄せられたタンポポタイは、そのまま地面に叩きつけられた。
「もう一度言うわ。奈理子さんを狙う者は許さない!」
ドリームキャンディはタンポポタイに最後の一撃を加え、完全に無力化した。
ケムシデンチも、動きを封じられたまま反撃の機会を失った。
「とどめよ、キャンディシャワー!」
ドリームキャンディ放った虹色の光がケムシデンチに直撃する。
「チッ、ここまでか…」
と呟きながら、彼はその場に崩れ落ちた。ドリームキャンディは深呼吸をしながら立ち上がり、セイクリッドウインドとミラクルナイトのもとに駆け寄った。
「奈理子さん、もう大丈夫よ」
と、優しくミラクルナイトの顔を撫でながら言うドリームキャンディ。セイクリッドウインドも微笑みながら彼女を見守っていた。
「水都の平和は私たちが守るわ」
と誓うドリームキャンディ。その姿は、決意と勇気に満ちていた。
「あぁッ、ケムシデンチが!」
コマリシャスは消滅していくケムシデンチに手を伸ばした。
「空地に捨ててあった乾電池だから電池が切れていたのね…」
紗理奈は呆れた表情を浮かべていた。
「コマリシャス、猫とか蜥蜴とかもっと強そうな生き物で魔物を作れないの?」
と紗理奈が提案する。しかし、コマリシャスはべそをかきながら答えた。
「だって、猫や蜥蜴はすばしっこくて捕まえられないよ。」
「じゃあ、空地に捨ててあるゴミじゃなくてもっと使える道具で魔物を作ろうよ」
と紗理奈が言うと、コマリシャスはさらに困った顔をした。
「コマリシャスはお金を持ってないから道具を買えないもん。」
「じゃあ、ミミズドローンはどうやって作ったの?」
紗理奈が問いかけると、コマリシャスは少し顔を明るくして答えた。
「ドローンは山で拾ったの。」
紗理奈はそれを聞いて納得した。墜落したドローンをたまたま拾っただけだったのだ。
「コマリシャス、次はもっと強い魔物を作ろう。」
紗理奈がコマリシャスの手を握り、励ますように言った。道具はともかく、罠を仕掛ければ猫や雀くらいは捕まえられるかもしれない。紗理奈は、魔物を失うたびに泣いて悲しむ心優しいコマリシャスのために強い魔物を作ることに協力しようと心に決めた。
「うん」
と頷くコマリシャス。彼女の視線はミラクルナイトの方に向けられていた。そこでは男子中学生がセイクリッドウインドからミラクルナイトを受け取ろうとしているところだった。じっとその男子中学生を見つめるコマリシャス。
「あの男の子はミラクルナイト、奈理子の彼氏ライム。」
紗理奈が説明する。
「ライムって言うんだ。どこかで見たことがある気がする…」
コマリシャスはライムの顔に見覚えがあるようだったが、どこで会ったのか思い出せなかった。
「ライムと奈理子は美男美女カップルって水都では有名だからね。」
「ヘ〜。弱っちい守護神のくせに彼氏がいるなんて生意気だね。」
コマリシャスは不満げに呟いた。
「ミラクルナイトは可愛いだけが取り柄の守護神。凄い人気者だし、モテモテだよ。さ、鄙野に帰ろう。」
紗理奈はコマリシャスの手を引いた。タンポポタイは何とか逃げ出したようだ。
水都に現れた新たな敵、コマリシャスと紗理奈はドリームキャンディへの復讐を誓い、水都を後にした。
(第139話へつづく)













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