DUGA

ミラクルナイト☆第218話

研究所・九頭の研究室

薄暗い部屋に、培養槽の光がぼんやりと揺らめいていた。篠宮=ブナシメジ男は書類を整えながら、九頭の言葉を待っていた。

「篠宮くん。前回の作戦、ご苦労だったね」

九頭はデスクに肘をつき、指を組んで微笑む。

「だが、カラシ男を失った損失は大きい。君ひとりに背負わせるのも酷だと思ってね。新しいパートナーを用意したよ」

「新しい……?」

篠宮は眼鏡を押し上げ、身を正した。

そのとき、ドアが勢いよく開いた。

「コーンにちは〜!お待たせしました〜!」

弾ける声と共に入ってきたのは、頭から足先までトウモロコシの房をまとった怪人だった。足を踏み出すたびに粒がポロポロ落ち、床に弾んで転がる。

「……君が、トウモロコシ男?」

篠宮の眉が僅かに動く。

「その通り!笑いも弾丸もポップに弾ける、エンターテイナー怪人!よろしく頼むぜ、相棒!」

トウモロコシ男は自信満々に親指を立てた。

「……九頭先生、本当にこのような人物でよいのですか?」

篠宮は低く問いかけた。

「篠宮くん、君は真面目すぎるんだよ」

九頭は楽しげに笑った。

「だがね、奈理子を辱めるには“力”だけでは足りない。彼女の最大の弱点は、市民の視線にある。トウモロコシ男は、そのための切り札さ」

「そう!俺の“ポップコーンフラッシュ”で観客を爆笑の渦に巻き込み、奈理子を“お笑いヒロイン”にしてやる!」

「……市民が笑うほどに、ミラクルナイトは心を折られる……」

篠宮は目を細めた。

「なるほど、心理戦ですか。悪くありません」

「そういうこと!俺たちはコンビで奈理子を笑い者にしてやろうぜ!コーンな感じで!」

トウモロコシ男がダジャレを飛ばすと、篠宮は小さくため息をついた。

「……九頭先生。彼が余計なことをして失敗しないと保証していただけますか?」

「ははは、保証なんてしないさ。だが、面白い実験になるだろう?」

九頭は不敵な笑みを浮かべた。


壁に映し出された映像は、先日の「奈理子のブラ」発表会の様子。
奈理子が純白の下着を披露し、セイクリッドウインドが逆さ吊りにされ……その一部始終が、会場だけでなくネット配信でも拡散されていた。

篠宮=ブナシメジ男は資料をめくりながら、淡々と口を開く。

「奈理子――いや、ミラクルナイトは、力押しでは倒せません。市民の声援によって立ち上がる存在だからです。彼女を屈服させるには、市民からの声援を“笑い”に変えることです」

「笑いね!俺の得意分野だ!」

トウモロコシ男がポップコーンを弾けさせ、口いっぱいに頬張りながら言う。

「例えば――」

篠宮は指で資料を示した。

「トウモロコシ男、君の“ポップコーンフラッシュ”を使い、奈理子の変身シーンを強制的に笑いの的にする。光と音で群衆を盛り上げ、彼女が恥ずかしがる様子を“ギャグ”に変換するんです」

「なるほど!“アイドルの失敗シーン”みたいに、ネットで拡散されちまうわけだ!」

ウモロコシ男はニヤリと笑う。

「そうです。奈理子は恥を感じ、力を出せなくなるでしょう」

宮は冷静に続けた。

「そして、私の菌糸で拘束し、彼女を“心理的に詰む”状態に追い込む。戦う前から勝負は決まります」

九頭が満足げに頷いた。

「良い発想だ、篠宮くん。奈理子の弱点を突くには、正攻法よりも心理戦が有効だろう」

「うっし!奈理子を笑わせて、観客も笑わせて、世界中に配信してやろうじゃないか!」

トウモロコシ男は両手を広げ、コーン粒を撒き散らした。

篠宮はその散らばったコーン粒を見て、深いため息をついた。

「……後始末くらい自分でしてください。あなたがポンコツに見えても、作戦は失敗させません」

「おう!任せとけ、相棒!」

篠宮の目は冷静に光っていた。

――次の標的は、奈理子。

彼女を“水都一のお笑いヒロイン”に仕立て上げる舞台が、着々と整いつつあった。


水都公園・遊歩道

夕焼けの校舎を背に、奈理子は肩にカバンを掛けて歩いていた。

「今日も授業が多かったなぁ……。テストも近いし、放課後は図書館に寄ろうかな」

普通の女子高生としての時間を楽しみたい奈理子。だが、その足取りは何かに怯えているように少し重い。

(迫水さんのときもそうだったけど……やっぱり、私のせいで誰かがまた……)

罪悪感を胸に抱きながら、奈理子は水都公園の遊歩道に差しかかる。

そのとき――

「ポーンッ!!」

乾いた破裂音とともに、道端に落ちていたトウモロコシが弾け、ポップコーンとなって宙に舞った。

「ひゃあっ!?」

わず飛び退く奈理子。
弾ける音と香ばしい匂いが辺りに充満し、人々が何事かと振り返る。

「お嬢ちゃん!今日のおやつはタダだぜ!」

姿を現したのは、黄色と緑の滑稽な体躯をしたトウモロコシ男。両肩には大きなトウモロコシの穂が生え、笑いながらポップコーンを撒き散らす。

「な、なにこれ……?!」

理子は思わず後ずさった。

「市民の皆さーん!今から始まるのは、奈理子ちゃん主演の“帰宅路爆笑ショー”だ!ポップに笑ってもらうぜ!」

観客を煽るトウモロコシ男。その背後から、冷静な声が響いた。

「奈理子……。君は市民から笑いものにされる恐怖に耐えられるか?」

ブナシメジ男が、菌糸をゆらめかせながら姿を現した。

「ブナシメジ男……!」

奈理子は緊張に身を固める。

「力押しではなく、心理戦。君の可憐な姿を“ギャグ”に変える。それが、今回の作戦だ」

ブナシメジ男の言葉に、トウモロコシ男はポップコーンを掴み取って頬張りながらニヤリと笑った。

「行くぜ!まずはみんなで奈理子ちゃんのスカートを揺らして大爆笑だ!」

奈理子は周囲に集まる市民と、スマホを構え始める人々を見て顔を赤くした。

(また……みんなの前で……!?)


「はははっ!奈理子ちゃん、顔が真っ赤だぜ!」

トウモロコシ男が足をドンッと踏み鳴らすと、地面からトウモロコシの茎が伸び、奈理子のスカートの裾をパタパタと揺らした。

「や、やめてっ!」

奈理子は両手でスカートを押さえるが、次々と伸びる茎が裾をめくろうとする。

「おおーっ!風じゃないのにスカートが!」
「ミラクルナイトごっこか?」

集まった人々から笑い混じりの声が上がり、スマホのカメラが一斉に奈理子に向けられた。

(いや……こんなの、ただの見世物じゃない……!)

羞恥に震えながら、奈理子は必死にスカートを押さえる。

「可愛い偶像は、市民の前で辱められる。それが一番効くんだ」

冷静に分析するブナシメジ男。

「はっはっは!ポップでコミカル!可愛い奈理子ちゃん、爆笑ショーの主役にぴったりだぜ!」

トウモロコシ男がポップコーンを両手で掴んで撒き散らすと、はじけ飛んだ粒が奈理子の身体に当たり、パチッと小さな火花を散らす。

「きゃっ!」

思わず後ずさる奈理子。

(また……市民の前で、こんな姿に……。どうして、私ばっかり……)

一瞬、膝が震えた。だが――

「奈理子ちゃん、泣き顔が最高にウケるぞ!」

観客の中からそんな言葉が飛んだ瞬間、奈理子の中で何かがカチリと切り替わった。

(……泣いてなんか、いられない。みんなの前で、また笑われても……私は、ミラクルナイトだから!)

奈理子はカバンを掴んだ。

「みんなの笑顔を守るのが、私の役目……!」

その瞳に決意の光が宿る。


「おいおい、奈理子ちゃん!可愛いのに顔真っ赤だぞ~?」

トウモロコシ男がにやにやしながら、茎で奈理子のスカートの裾をペチペチ叩く。

「やめてってば!」

奈理子は必死に抑えるが、観衆からは笑い声があがった。

「昨日のブラ発表会でも恥かいたんだろ?」

ブナシメジ男がわざとらしく口にする。

「うっ……」

奈理子の胸が痛む。SNSの炎上、拡散された自分の写真……思い出すだけで足が竦んだ。

「可愛いけど弱い。恥を晒してこそ盛り上がる。君が人気者なのは、市民がそういう“お笑いヒロイン”として見てるからさ」

ブナシメジ男の冷酷な声が奈理子の心を抉る。

「そうだそうだ!パンツ見せなきゃ始まらねぇ!」

トウモロコシ男がはじけたポップコーンを空に撒くと、弾けた粒が奈理子の脚や頬を小突いた。

「わぁッ、また奈理子ちゃんだ!」
「今日も脱がされるのかな?」
「お約束だよな!」

観衆の声が刺さる。

(……私……市民にとっては……ただの笑い者?)

奈理子は唇を噛みしめた。膝が震える。けれど、心の奥で小さな声が響く。

(それでも……みんな、私を待ってる。バカにされても、笑われても……)

「ほら奈理子ちゃん!そのカバンに入ってるんだろ?変身アイテム!」

トウモロコシ男が観衆に聞こえるよう大声で言う。

「変身なんかしてみろよ!またパンツ丸出しで負けるだけだ!」

「ぎゃははは!」

観衆の一部も煽りに乗った。

奈理子の手はもう、アイマスクを握りしめている。

(……それでも、私は……!)


「変身するのかよ?」
「今日もパンツ見放題か?」

野次馬たちがスマホを構え、興奮気味にざわつく。

「おいおい、奈理子ちゃん。昨日みたいに下着姿を全国配信されたいのか?」

ブナシメジ男が冷酷に囁く。

「昨日の紺パン巫女さんと並んで、今日は白パンJKだな!」

トウモロコシ男はわざとらしく観衆にアピールするように叫ぶ。

観衆は爆笑と歓声を入り混じらせる。

「やっぱ奈理子は脱がされてナンボ!」
「恥ずかしがって泣く奈理子が最高なんだ!」

奈理子は震える唇を噛みしめた。

(……分かってる。みんな私を“弱いヒロイン”“脱がされヒロイン”として見てるんだ……でも……それでも……)

目に涙が滲む。だが、その涙は恐怖ではなく決意の証。

「私……水都の守護神、ミラクルナイト!」

アイマスクを顔に当てると、まばゆい水色の光が彼女の身体を包んだ。制服は瞬時に消え去り、純白の下着姿が露わになる。

「うおおっ!」
「奈理子の生着替え!」

観衆の歓声が爆発した。

だが、奈理子は怯まなかった。

「ミラクル・チェンジ!!」

光とともに白と水色のコスチュームが一気に彼女を包み、背中には白いリボン、脚には水色のブーツ。
水都の絶対アイドル、守護神ミラクルナイトが再び姿を現した。

「笑われても、馬鹿にされても……私は戦う!」

涙を拭い、強い瞳で敵を見据える奈理子。


「出たぁー!『純白の天使』奈理子の変身ショー!」
「今日もパンツ丸出しで始まったぞ!」

観衆が爆笑と歓声でごった返す。

「やっぱり生パンからの変身は鉄板だな」
「白いパンツで二日連続トレンド入り間違いなし!」

スマホを掲げる手の群れ。ライブ配信アプリのコメント欄はすぐに埋まった。

#奈理子また脱がされた
#白パン守護神
#昨日は紺今日は白
#ミラクルナイトは下着アイドル

「おい、これもうイベントだろ!」
「週末には“奈理子変身上映会”とか開かれそう」

観衆の誰もが、ヒロインの恥ずかしい姿を“ショー”として楽しんでいた。

(みんな……私を笑ってる……でも、それでもいい。だって……)

ミラクルナイトは胸の奥に熱いものを感じながら、観衆に向けて叫んだ。

「みんな!私は絶対に負けない!水都を守るために戦うから!」

一瞬の静寂の後、観衆は大歓声に包まれた。

「奈理子頑張れー!」
「泣かされてもいいから立ち上がれー!」
「白パン天使、応援してるぞ!」

敵の挑発と観衆の期待が交錯する中、ミラクルナイトの戦いが始まろうとしていた。


「フフフ……」

ブナシメジ男は菌糸を地面に這わせながら、奈理子の前に立った。

「奈理子、君はいつも市民に笑われ、晒され、それでも立ち上がる。…でも、本当に守られているのは誰なんだろうな?」

「なにを言ってるのよ!」

ミラクルナイトが構える。

「守る? いいや、彼らはただ“君の恥ずかしい姿”を楽しんでいるだけだ。さっきの歓声を聞いただろう?」

ミラクルナイトの心臓がドクンと跳ねた。

(そんなこと……ない……)

そこにトウモロコシ男が飛び出す。黄色い粒を弾丸のように飛ばしながら笑った。

「キャッキャッ!市民はヒーローよりエンタメが大好き!お前のパンツもブラも、もう“水都の名物”だぜ!」

「やめてッ!」

ミラクルナイトが叫ぶ。

「昨日は紺パン巫女!今日は白パン天使!さあ次は何だ?!青か?ピンクか?!」

トウモロコシ男の軽快な声に、観衆の笑いと歓声が重なる。

「奈理子〜!次は何色だぁ!」
「白もいいけど、柄物も見たいぞー!」
「やめてぇ〜!」

頬を赤らめるミラクルナイト。

ブナシメジ男は冷笑した。

「どうだ奈理子? 市民の声援は希望ではなく、“期待”だ。君が負けて、脱がされ、泣く姿を望んでいる」

観衆の声援が、心に突き刺さる。

(違う……違うはず……みんな、応援してくれてるんだ……)

しかしミラクルナイトの瞳は迷いに揺らぎ始めていた。


「奈理子!次も白か?それとも赤かぁ?」
トウモロコシ男が粒弾を撒き散らしながら笑う。

「やめてってば……」

ミラクルナイトは必死に避けるが、動きがぎこちない。

ブナシメジ男の冷ややかな声が背後から追い討ちをかける。

「市民は君の勝利を望んでなどいない。期待しているのは“醜態”だ。…その純白の下着が、また晒される瞬間を」

「うぅっ……」

声援と笑い声が混ざる観衆の喧騒が、奈理子の耳を満たす。

「奈理子ちゃん!もっと見せてくれよー!」
「『純白の天使』の伝統だろ!」

「ほら見ろ、これが水都の守護神の正体だ」

ブナシメジ男が嗤う。

(違う……本当は、みんな私を応援してくれてる……でも……)

ミラクルナイトの足取りが重くなる。パンチもキックも遅れ、光弾の発射も狙いが定まらない。

「フハハッ!守護神が震えてやがる!」

トウモロコシ男の嘲笑が広場に響く。

「奈理子、もうお前は戦えない。可愛いだけの飾り人形さ」

ブナシメジ男の声が、ミラクルナイトの胸の奥に深く突き刺さった。

「ち、違う……私は……」

必死に言葉を絞り出すが、その両足は噴水の縁で止まってしまった。


「それッ!コーンショット乱れ打ちだッ!」

トウモロコシ男が粒弾を乱射する。

「きゃあッ!」

コーンの雨はミラクルナイトの身体をかすめ、狙い澄ましたかのようにスカートのベルト部分を撃ち抜いた。
バサリと白いスカートが地面に落ちる。

「またスカート脱がされたー!」
「白パンが丸見えだぞ!」
「奈理子、今日も天使すぎる!」

観衆の声は悲鳴ではなく喝采だった。

「やめてぇ……パンツばかり見ないで……!」

涙目で両手を前に伸ばすミラクルナイト。

「可愛いだけのお前に、正義のヒロインは務まらない!」

ブナシメジ男が冷酷に言い放つ。

「ガーン……」

ミラクルナイトは膝から崩れ落ち、項垂れた。

そこに、黄色い光をまとってドリームキャンディが到着する。

「奈理子さん、パンツ見せ付けるような格好で何やってるんですか!」

「キャンディ……私は……パンツを見せることでしか、市民のお役に立てないの……」

「しっかりしてください!」

パシーン!
ドリームキャンディは、白いパンツに包まれたミラクルナイトのお尻を思い切り叩いた。

「あんっ!」

痛みと羞恥に顔を真っ赤にするミラクルナイト。

さらに、観客席から**水都大学奈理子私設ファンクラブ(MNSFC)**の面々が立ち上がる。

「奈理子ちゃん、立つんだ!」

会長・成好が叫ぶ。

「僕たちは奈理子ちゃんが羞恥に耐えながら戦う姿に勇気をもらうんだ!」
「奈理子ちゃん、頑張れ!」

「会長さん……みんな……!」

ミラクルナイトの胸に再び灯る闘志。

「私は水都の守護神ミラクルナイト!こんなことでは負けないわ!」

涙を拭い、白パンツ姿のまま立ち上がる。

「すぐに乗せられるんだから……」

呆れ顔のドリームキャンディ。

「こんなに早く立ち直るとは……」

驚きを隠せないブナシメジ男。

「まあいいさ!もっと奈理子をイジメてやるぜ!」

トウモロコシ男が笑いながら新たな攻撃態勢に入る。


「ポップコーン閃光!」

トウモロコシ男が両腕を振りかざすと、破裂したポップコーンが閃光弾のように弾け飛ぶ。

「きゃぁッ!」

白い光に視界を奪われたミラクルナイトは一瞬の隙を突かれ、白いパンツを剥ぎ取られた。

「奈理子のパンツが奪われたー!」
「ついに本体をゲットしたぞ!」

観衆が歓声をあげる。

「返しなさい!」

ドリームキャンディがキャンディチェーンを投げ、宙を舞う白いパンツを絡め取る。

「奈理子さん!」

キャンディが投げ返すと、ミラクルナイトは慌てて穿き直した。

「はぁ…はぁ……。私は水都の守護神。こんな屈辱で止まるわけにはいかない!」

再び立ち上がる奈理子。白パンツを穿き直し、鮮烈に復帰した。

「奈理子、二人で本気を出しましょう!」

「うん!」

ミラクルナイトとドリームキャンディが連携し、トウモロコシ男に挑む。だが、戦いは本気のはずなのに……

「キャンディの黄色パンツ、またチラッと見えた!」
「いや、キャンディはブルマーだ!」
「がんばれー!二人とも、もっと見せてくれー!」

観衆は攻撃や必殺技ではなく、ミラクルナイトのショーツとドリームキャンディのブルチラに熱狂していた。

「……どんなにがんばっても、みんな笑ってる……」

ドリームキャンディの動きが鈍る。胸の奥に虚しさが広がっていく。

そこに、芝生広場からブナシメジ男の冷たい声が響いた。

「やはりな。お前は真面目すぎる。真面目なだけのドリームキャンディに、正義のヒロインは務まらない!」

「やめて……」

ドリームキャンディの顔が歪む。
心理的な痛打は肉体の傷よりも深く、ドリームキャンディの心を折ろうとしていた。


「真面目な堅物だから、お前は奈理子や風間凜ほどの人気がないんだ」

ブナシメジ男が声を張り上げる。

「悔しかったら、パンツを見せてみろ!」

トウモロコシ男が指を突きつけた。

「……私は……奈理子さんや凜さんのように、パンツを見せるのはイヤ……」

ドリームキャンディは俯き、肩を震わせた。

「だったらヒロイン失格だ!」

「市民はお前に何も期待していない!」

二人の怪人が勝ち誇る声を響かせると、観衆もざわめいた。

「そんな……」

ドリームキャンディは拳を握りしめながらも、その言葉に心を折られかけていた。

「それは違うわ!」

観衆の視線が一斉に向けられる。
そこに立っていたのは、スカートを失い、パンツ丸見えのミラクルナイト。
羞恥に震えながらも、真っ直ぐ前を見据えていた。

「私と凜さんがエッチな責めを受ける姿を、市民が安心して楽しめるのは……強いキャンディがいるからよ!」

ミラクルナイトの声が広場に響いた。

「市民は、キャンディが必ず敵を倒してくれると信じているから、私や凜さんの恥ずかしい姿を純粋に喜べるんだよ!」

パンツ姿のまま、ミラクルナイトはドリームキャンディの手をぎゅっと握った。

「奈理子さん……」

ドリームキャンディの胸に熱いものがこみ上げる。

(奈理子さんと凜さんは、エッチな姿を喜ばれて、それでいいの……?)

そんな疑問は拭えない。だが、ミラクルナイトの手の温もりが、自分の弱さを吹き飛ばしていく。

「やっぱり、私がしっかりしなくちゃ!」

ドリームキャンディは立ち上がり、ミラクルナイトと並んで前を向いた。

二人が再び立ち上がったことで、観衆の空気も変わっていく。

「奈理子とキャンディが並んだぞ!」
「二人で戦えば負けない!」
「キャンディ、信じてるぞー!」

市民の声援が二人を包み、失われかけた闘志に再び火が灯るのだった。


「キャンディ、みんなのエッチな視線は全部、私が引き受ける。存分に戦って!」

ミラクルナイトは、涙を滲ませながらも力強く語りかける。

「分かりました。けど……もうパンツは脱がされないでくださいね」

ドリームキャンディはミラクルナイトの腰を見やり、少し汚れた純白のショーツを確認した。今のミラクルナイトは下半身ショーツ1枚の、あまりにも無防備な姿だ。

「ハハハ!奈理子の白いパンツにコーンをトッピングしてやるぜ!」

トウモロコシ男の下品な発言に、観客は爆笑。

「うぅ……パンツばかり見ないでぇ……」

羞恥を引き受けると宣言したミラクルナイトだが、心は揺れていた。

「やっぱり、奈理子さんは下がってください!」

その姿を見かねたドリームキャンディが一歩前に出る。

「私が相手よ!」

キャンディチェーンを構えるドリームキャンディ。その瞳には強い光が宿っていた。

「まあいいや。奈理子のパンツなんか、いつでも脱がせるからな!」

嘲笑うトウモロコシ男が、寧々に向かって叫ぶ。

「コーンショット乱れ打ち!」

無数の粒コーンが雨のように飛来!

「うわぁっ!痛い!」

両腕で顔を庇うドリームキャンディだが、ドレスに粒が次々と当たり、布地が穴だらけになっていく。

「私も見ているだけじゃいけない!」

ミラクルナイトが水色の光を両手に溜め、光弾を放とうとしたその時――

「奈理子なんか、コーン一粒で十分だ」

トウモロコシ男が指先で弾いた小さなコーンが飛ぶ。

「きゃあんッ!」

甘い悲鳴をあげて奈理子が蹲った。
その一粒は、白いショーツ越しに彼女の敏感な箇所を正確に掠めていたのだ。

「今の声……やけに可愛くなかったか?」
「どこに当たったんだ?!」

観客のざわめきが広場を揺らす。

「奈理子はあとでたっぷり可愛がってやるから、パンツを濡らして大人しく待ってな!」

下卑た笑みを浮かべるトウモロコシ男。

「……今だッ!」

隙を逃さず、ドリームキャンディが叫ぶ。

「キャンディシャワー!!」

虹色の閃光が弧を描き、トウモロコシ男を直撃!

「うわぁぁっ!」

悲鳴を上げて仰け反るトウモロコシ男。

「奈理子さん、隙を作ってくれてありがとうございます!」

ドリームキャンディはすかさずキャンディチェーンをロリポップハンマーへ変形させる。

「甘さなら負けんぞ!――スイートコーンマインド!!」

香ばしく甘いコーンの香りが広場を覆い、キャンディシャワーに抗うトウモロコシ男。

「ロリポップ三段突きぃ!!」

ハンマーが閃光のように三度突き出され、トウモロコシ男の体に命中!

「コーンなことになるとはァァーーッ!」

大声を残し、トウモロコシ男は空高く吹き飛び、彼方へ消えた。

観衆からは大歓声が沸き起こる。

「やった!キャンディが決めたぞ!」
「奈理子のパンツはやっぱり守られた!」
「キャンディ最高!奈理子もお疲れ!」

羞恥と誇りが交錯する広場に、二人のヒロインの姿が光り輝いていた。


「まだ終わっていない……」

ブナシメジ男はヌルリと姿を翻し、黒い影とともに去っていった。

「奈理子さん、大丈夫ですか?」

駆け寄るドリームキャンディ。

「……大丈夫……」

頬を赤らめ、涙目で立ち上がるミラクルナイト。その姿はボロボロだが、確かに“水都の守護神”だった。

「奈理子、今日も可愛かったぞー!」
「キャンディ、奈理子を守ってくれてありがとう!」

観客や配信を見ていた市民から、温かい声援が飛ぶ。

「みんな、キャンディのこと大好きなんだよ。人気がないはずがない」

ミラクルナイトは、ドリームキャンディに肩を貸されながら優しく微笑む。

「奈理子さん……」

ドリームキャンディの胸に温かいものがこみ上げる。

「だから、敵の言葉に惑わされないで」

ミラクルナイトは強い瞳で告げた。

その時、市民から笑顔と茶化しが入り混じった声が飛んだ。

「そうだ!キャンディの黄色ブルマ、好きだぞー!」
「ガードが固いキャンディのブルマは、生パンツに負けない破壊力があるからな!」

「……やっぱり、えっちな目でしか見られていない……」

ドリームキャンディは呆然と呟く。

「ヒロインなんて、そんなものよ」

ミラクルナイトは苦笑しながら答えた。その白いショーツが、夕暮れの街灯にほんのり光っていた。

その日の夜・奈理子の部屋

トウモロコシ男は撃退された。
だがSNSには、ミラクルナイトがコーン一粒であげた甘く可愛い悲鳴の動画が瞬く間に拡散し、トレンドを独占していた。

「……もうイヤぁ……」

泣きそうになりながらも、奈理子は再び守護神として歩き出す決意を胸に秘めるのだった。

(第219話へつづく)