ミラクルナイト☆第229話
ミラクルナイト☆第229話
帰宅途中の奈理子
清純可憐な水色のセーラー服をまとう少女の足が止まる。帰宅途中の奈理子だ。
遠くに商店街のクリスマスツリーが見える。
冷たい風が、紺色のプリーツスカートをめくり上げる。ミニスカートの裾が大きく揺れ、太ももまでの肌が一瞬、露出する。寒気というよりは、冷たい手で股間を撫でられている感触だった。
「…今年も、クリスマスツリーが……」
奈理子はそう呟き、スカートを押さえる。踵を少し浮かし、体重を前足の拇指球に乗せる。それは戦闘の基本。次の瞬間にでも、どの方向へでも動ける体勢だ。
「今年も、絶対に襲ってくる……」
前方に現れたのは、ただの通行人。水都一の美少女と噂される野宮奈理子が目に前にいることに、一瞬だけ驚きの表情を見せたが、そのまますれちがっていった。
奈理子はホッと息をする。敗北、屈辱、羞恥、快感……。商店街のクリスマスツリーは奈理子の複雑な感情を呼び覚ます。
「あっちから帰ろっと」
奈理子はクリスマスツリーを見ないように、商店街を避ける道を歩き始めた。
12月・商店街のクリスマスツリー
放課後。
商店街の中央広場に立つ大きなクリスマスツリーが、まだ消灯したまま冬空に伸びている。
「……もう、あれから一年か。早いね」
ツリーを見上げながら、寧々がぽつりと言った。
「去年の点灯式、 本当は寧々が主役になる予定だったんだけどな」
隣で隆が苦笑する。
「……私が何をやっても、 主役は必ず奈理子さんなんだもん」
寧々はマフラーを握りしめ、視線を落とした。
そのとき――
「そうだねぇ。 今年も奈理子ちゃんにお願いしたかったんだけどねぇ」
声をかけてきたのは、蕎麦屋の店主だった。
「今年は奈理子さん、呼ばなかったんですか?」
寧々が驚いて尋ねる。
「今や奈理子ちゃんはミコールのイメージキャラクターだろ?
なんだか、手の届かない存在になっちまった気がしてね」
「え?」
思わず顔を見合わせる寧々と隆。
(秋祭りも、パン祭りも、普通に奈理子さんを呼んでたのに……)
秋祭りでは、嫌がる奈理子に褌まで穿かせたのだ。
寧々が首を傾げていると、今度は果物屋のおじさんがやってきた。
「ツリーに奈理子ちゃんがいないと、 ちょっと物足りない気がしてなぁ」
「それは……」
言葉に詰まる寧々。
去年はポインセチア女、一昨年はバラ女…
クリスマスのたびに“事件”が起きて、戦いに敗れたミラクルナイトは”敗北ヒロイン”としてクリスマスツリーに吊るされ、商店街の人々を楽しませたのだ。
寧々がどんなに頑張っても、結果的に奈理子が話題の中心になってしまう。
「奈理子ちゃんが飾られていないと、クリスマスツリーって感じがしないんだよ」
「可愛い奈理子ちゃんが吊るされていると、ツリーが華やかになるもんな」
蕎麦屋の店主と果物屋のおじさんが残念そうに口にする。
「俺の姉ちゃんを何だと思ってるんだよ……」
隆が小さく文句を言う。
「誇りだよ、誇り。自慢の看板娘さ。」
「奈理子ちゃんもツリーに吊るされて、ちょっと嬉しそうだったじゃない」
店主たちは悪気なく笑った。
「奈理子さん、注目を浴びることが好きですからね……」
寧々が苦笑する。
「……今年こそ、クリスマスの主役は寧々にするぞ」
隆が、急に真剣な顔で言った。
「……無理だよ。人気だけは、どうやっても奈理子さんには勝てないよ」
寧々は弱く笑う。
「はい、これ」
隆はミコールの紙袋を差し出した。
「え? クリスマスプレゼント?」
袋の中に入っていたのは、
ミコールの公式クリスマス限定グッズ――
“奈理子のブラ&ショーツ"だ。
「ブラのサイズは、凛ちゃんに聞いたから合っているはずだ」
隆は少し照れくさそうに言った。
「凛さん…年末年始は仕事で忙しいと言ってたくせに……」
思わず苦笑する寧々。
「やっぱり、胸は姉ちゃんよりデカかったな」
「えっ、あ、うん……」
顔を真っ赤にして、寎々が俯く。
(隆は……私の下着のサイズを凛さんに聞きに……?)
胸の奥がじんわりと熱くなる。
「凛ちゃんの口を割るのに苦労したぜ」
隆の言葉で、寧々の頬がさらに熱くなる。
(凛さんは私のサイズの隆に教えたの?!)
「今年こそ、寧々が姉ちゃんに勝つんだ」
隆の瞳は、真剣そのものだった。
「寧々がクリスマスツリーに飾られて、姉ちゃんは見てる。
それが、一番のクリスマスプレゼントだ」
(……そ、そんな……どうして私が、ツリーに吊るされなちゃいけないの……?)
寧々は言葉にならない声を出した。
「お前が一番だ」
隆が寧々に、もう一度、はっきりと告げる。
「……そっか」
寧々は小さく頷く。
(私は、奈理子さんが吊るされないように頑張れってことか……)
再び奈理子
冷たい風が奈理子の頬を撫でた。商店街を避けた路地裏は、日陰となって肌寒さが一層増している。彼女は足を速め、自分の吐く息が白くなるのを眺めた。クリスマスという言葉に敏感に反応する心を落ち着かせるため、授業で習った詩の一節を口ずさもうとするが、その言葉はすぐに風に掻き消されてしまった。
「タコクリスマスローズ…キャンディが助けてくれなかったら、私は……」
先日の戦いが頭から離れない。タコクリスマスローズの触手で奈理子は絶頂寸前まで追い込まれてしまった。
「でも…また、クリスマスローズに…会いたい……」
思わず口に出してしまい、奈理子は首を振った。タコクリスマスローズは敵なのだ。
商店街の広場に近づくにつれて、気配は確信へと変わる。人々の歓声、点灯式を待つワクワクした空気。だが、その下に、粘着質で冷たい何かが絡みついているような違和感。それは去年と同じ。そして一昨年も。
(来る……)
奈理子は歩みを止め、近くのビルの壁にそっと背中を預ける。彼女の体は戦闘準備に入ったことを自覚している。足の裏が地面に吸い付く感覚。指先がわずかに震えるのは、恐怖か、それとも期待か。
蛸触手、再び…
その時だった。商店街の中心で、悲鳴が上がる。
それは喜びや興奮の声ではなかった。純粋な恐怖の叫びだ。
奈理子の予感は的中した。彼女の足が、自らの意志とは無関係に、騒ぎの中心へと向かい始める。心臓が喉までせり上がってくるような鼓動。それは恐怖の高鳴りではなく、戦士としての本能が目覚めた合図だった。
「私がやらないと……」
彼女はスカートの裾を軽く押さえると、小さな声で詠唱を始めた。人混みに紛れて、その声は誰にも聞こえない。
「水の守護よ、光の化身よ……今、私に力を……ミラクル・チェンジ!」
周囲の光が奈理子の体に吸い込まれていく。水色のセーラー服が粒となって消散、水色の光が彼女の全身を包む。光が収まったとき、そこに立っていたのは、水都の守護神ミラクルナイトだった。
純白のノースリーブブラウス、軽やかなミニスカート。手足のグローブとブーツ、髪に飾られた白いリボン、そして胸に大きな水色のリボン。その姿は、まるで光そのものだった。
商店街の中心広場は、パニックに陥っていた。人々が一目散に逃げ出す先に、異形の姿が立っていた。白と薄ピンクの花弁を背負い、八本のタコの足で地上を滑るように移動する怪人。タコクリスマスローズが、やってきたのだ。
「ごきげんよう、奈理子。待ってたわよ。今年も、あなたを気持ちよくしてあげる」
クモクリスマスローズは優雅な口調で言う。その声は甘く、それでいてどこか陰鬱だった。
「今年のクリスマスツリーも、あなたが飾られていないと寂しいわね。
でも、まずはあなたにクリスマスの気分を味わってもらわないと」
怪人の花弁が揺れ、そこから無数の触手が伸びてくる。ローズ・テンドリルだ。
ミラクルナイトは即座に後ろへ飛び退く。軽やかな身のこなしで、触手を回避する。だが、クモクリスマスローズの動きは速い。八本の脚で滑るように接近し、同時に触手を四方八方から繰り出す。
「うっ!」
ミラクルナイトの防御は完璧ではなかった。一本の触手が彼女の足首に絡みついた。粘着質の感触に、彼女の体が硬直する。
「捕まったわね、奈理子。あなたのそのもっともらしい顔が好きだわ」
クモクリスマスローズは得意げに笑い、残りの触手もまとめてミラクルナイトに向かう。
「まずは、今年のクリスマス気分、味わってみましょうか?」
触手がミラクルナイトの四肢を締め上げる。白いブラウスの下から、彼女の柔らかい肌が露わになる。スカートの裾がめくられ、可憐な太ももと白いショーツが露わにされる。羞恥に耐えながらも、ミラクルナイトは抵抗するが、力は入らない。
「ひゃっ……! やめてっ……!」
クモクリスマスローズの触手は、彼女の敏感な部分を執拗に刺激する。優しく、しかし確実に。
「この前よりもより早く感じるじゃない。奈理子、よりマゾっぽくなったのね」
屈辱的な言葉が、彼女の耳に突き刺さる。
「ち、違うっ……私は受け身が好きなだけ……っ!うあぁっ!!」
触手が白いショーツの中に潜り込み彼女の秘部に直接触れる。瞬間、電流が走った。快感が脊髄を駆け上る。
「見ててあげる、奈理子。あなたがもっと可愛い顔になるのを」
クモクリスマスローズは楽し気に言い、触手の動きを激しくする。
「や、やめ……んんっ……ひぐっ……!いやぁ……みんなが見てるのに……」
ミラクルナイトの抵抗は弱くなる。理性のタガが外れ始めていた。
「いい声、出るわね。もっとみんなに聞かせて?」
クリスマスローズの言葉に応えるように、人々が歓声を上げる。
「奈理子ちゃん、今日も可愛いよ!」
「奈理子ちゃんの声、もっと聞かせて!」
ミラクルナイトの意識が遠のいていく。
(隆に……寧々ちゃんに……見られたくない……)
彼女の最後の抵抗だった。
「さあ、奈理子。私からクリスマスプレゼントを、あなたにあげる」
クモクリスマスローズの触手が、彼女の最奥部を責める。
「ひ、ひゃあぁぁああああっ!奈理子、イクうぅぅぅ……!」
奈理子の体が痙攣する。快感が頭を真っ白にする。彼女の視界が白く染まり、意識が途切れる。同時に、温かい液体が彼女の太ももの間から伝わる。
「あ……あれ……?」
ミラクルナイトは気絶し、そのままクモクリスマスローズの触手に抱き上げられた。彼女の白いショーツは、先ほどの失禁で一部濡れて、肌に張り付いている。商店街の明かりが、彼女の無防備な姿を浮かび上がらせている。
「手に入れたわ。最高のクリスマスプレゼントよ」
クモクリスマスローズは満足げに言い、ミラクルナイトを抱きしめ、優しくキスをする。
商店街には、一瞬の静寂が流れる。
そして、一人の少女の怒りの声が響いた。
「奈理子さんを虐める者は、私が許しません!奈理子さんを返しなさいッ!」
オレンジ色の光が閃き、ドリームキャンディが現れた。
「あら、手遅れよ。もう奈理子は私のもの」
闇の中から、クモクリスマスローズの声が響く。
「奈理子さんは、あなたのものじゃないッ!」
ドリームキャンディは地面を強く蹴り、怪人の逃げた方向へと追いかける。だが、時すでに遅し。タコクリスマスローズの気配は、街灯の灯りの中に溶けていった。
「奈理子さんッ!」
ドリームキャンディの絶叫が、冬の夜空に響く。
今年も……
夜七時。
クリスマスツリーの点灯式の時間が来た。
商店街の広場に再び人が集まる。先ほどのパニックは嘘のように、人々の顔には期待の色が浮かんでいた。
司会者の蕎麦屋の店主がマイクを持って壇上に立つ。
「皆さん、お待たせいたしました!水都商店街のクリスマスツリー点灯式の時間です!」
歓声が上がる。
「では、カウントダウンを一緒にしましょう!」
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……!」
電球が一斉に点灯する。
ツリーの頂上から、そして枝から枝へと光が走り、全体が輝き始める。
その時、人々から感嘆の声が上がった。
「見て!」
クリスマスツリーの、もっとも目立つ中央の場所に、一人の少女が吊るされていた。
ミラクルナイトだ。
彼女は気絶したままだ。手足は細い紐で拘束され、不恰好に吊るされている。スカートは、失禁で濡れた痕が残り、太ももに張り付いている。ショーツのラインはくっきりと透け、はだけたブラウスからは小さい胸の膨らみも丸見えだ。
「ああ……今年も、奈理子ちゃんが飾られてる……」
「可愛い……本当に可愛い……」
人々は感動の声を上げる。
「これでクリスマスが来たって感じだね」
「そうだよ。奈理子ちゃんがいないと、クリスマスが始まらないよ」
蕈麦屋の店主が満面の笑みで言う。
「今年も、最高のクリスマスツリーになったな」
果物屋のおじさんが感無量の様子で頷く。
人々の歓声の中、寧々はただ立ち尽くしていた。
「奈理子さん……」
「やっぱんり、姉ちゃんはこうなる運命なんだな……」
隆が寧々の肩に手を添える。
彼女の手には、隆から渡されたクリスマスプレゼントが、ぎゅっと握りしめられていた。
奈理子復活
「んんッ…ここは……?また、ツリーに吊るされてる??」
騒がしさに目を覚ましたミラクルナイト。手足をツリーに縛り付けられいるため動けない。
「私、タコクリスマスローズに捕まって……あんなことやこんなことを……」
ミラクルナイトは頬を赤らめたが、今日はコスチュームを脱がされていない。スカートもちゃんと穿いている。
「みんな喜んでいるから、いっか……」
笑顔の商店街の人々を見下ろしホッとする。しかし、ひんやりとした風が股間を撫でた。
「いやぁ!私、おしっこ漏らしてる?!パンツ濡れてる!?」
ミラクルナイトは焦り、必死に足を閉じようとする。ツリーに縛り付けられた手足は全く動かない。無駄な抵抗だ。
「なんで、おしっこ漏らしてるのよぉ……みんなに見られてるのに……」
顔が火照り、涙が溢れる。屈辱。羞恥。でも……
「今年もクリスマスツリーに吊るされて、皆の幸せを願っている……」
奈理子は、ミラクルナイトとしての覚悟を決める。
「私は、そういう存在なんだから……」
目の前の輝きが、まるで彼女の純白のドレスのようだった。
人々の歓声は、まだまだ続く。
「見てよ、奈理子ちゃん、目覚めたよ!」
「奈理子ちゃん、可哀想だけど、すっごく可愛いね!」
「奈理子ちゃんのお漏らしパンツ、見せてよ!」
無神経な声が飛び交う。
「見せてよ!」
「見せてよ!」
合唱のようになっていく。
「なんで??おしっこ漏らしてるのよぉ……みんなに見られてるのに……」
ミラクルナイトは屈辱の涙を流すが、無情にも、人々の歓声に答えるように、風がスカートを少し持ち上げた。
「ひやぁ!……見て、見て……これが、私のクリスマスプレゼント……」
人々はさらに歓声を上げる。
「最高のクリスマスだ!」
「奈理子ちゃん、ありがとう!」
人々の歓声が、冬の夜空に響き渡る。
(第230話へつづく)
(あとがき)













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