ミラクルナイト☆第114話
水都第一小学校の六年三組では、終業式の日も特別なざわめきがあった。二学期の終わりと共に迎える冬休み。しかし、六年生にとってはまだ重要な任務が残っている。毎年恒例の「年末チャリティーコンサート」の準備が、これから本格化するのだ。学級委員長の寧々は、この大役を任されていた。充実したものにするため、彼女は合唱とダンスの練習に余念がなかった。
しかし、同級生たちの中には冬休みモードに入ってしまい、練習に集中できない者も。寧々の怒号が、時折、教室から体育館へと響き渡る。
「三馬鹿!真面目にやりなさい!!」
その怒りの矛先は、ふざけて歌ったり踊ったりしている隆、慎治、章太郎の三人組に向けられた。
「また寧々のヒステリーが始まったよ」
「寧々はいつも怒ってるよな」
と慎治と章太郎。
「寧々、歌もダンスも楽しんでやるもんだ。もっと楽しくやろうぜ」
隆は穏やかに寧々を諭す。隆は水都の守護神ミラクルナイト、奈理子の弟であり、彼の言葉はクラスメイトにとって重みを持つ。隆の言葉にクラスメイトたちは徐々に同調し始めた。
寧々は、コンサートを成功させる重圧を感じていた。体育館いっぱいに観客を迎えるこのイベントで、クラスが一致団結して素晴らしいパフォーマンスを披露するためには、どうすればいいのか。彼女は自らのリーダーシップに疑問を持ち始めた。しかし、隆の言葉がきっかけで、寧々は少しずつ変わり始めた。コンサートはただの義務ではなく、共に楽しむべきもの。その真実に気づき始めた時、寧々の心にも変化が生まれていた。
水都中学の二学期の終業式が終わり、奈理子は友達と共にカラオケへと向かっていた。受験生のプレッシャーやミラクルナイトとしての責任を背負いながらも、この瞬間だけはそんな重荷を忘れて、心からの楽しみに身を任せていたのだ。マイクを握り締め、力いっぱいの歌声を響かせる奈理子。そんな彼女に、綾香がふと問いかけた。
「終業式の後は、ライムくんと一緒じゃなくていいの?!」
奈理子の彼氏、ライムは学校じゅうで知られるイケメンで、二人はいわゆる学校のカップルとして注目の的だった。しかし、奈理子は少し照れくさそうに
「実は、この後…」
と打ち明けた。綾香が
「奈理子、今からデートだって~!」
と楽しそうに皆に告げると、すぐに皆が奈理子の周りに集まり、
「いいな〜」
「クリスマスプレゼントは何をあげるの?」
と興味津々に尋ねた。
そんな彼女たちに向けて、奈理子はリュックからひとつのアイテムを取り出した。
「じゃーん!」
と見せたのは、なんと「来年の奈理子カレンダー」だった。水都の絶対ヒロイン奈理子公式グッズである。そのサプライズに、友達は一様に羨望の眼差しを奈理子に送った。
「何それ〜」
「自分のグッズをあげるなんてズルい〜」
「私たち一般人には真似できないよね〜」
と皆が口々に言う中、奈理子は少し恥ずかしそうに
「春から別の学校になるから、カレンダーなら自分の部屋で毎日私を見てくれるかなと思って…」
と答えた。
綾香が投げかけた
「ライムくんは奈理子の抱き枕も持ってるんだよね」
という言葉に、女子たちはさらに盛り上がる。
「じゃあ、毎日奈理子を抱いて寝てるの?!」
「ライムくんって、クールな顔して可愛いとこあるんだね〜」
という声が響き渡る。
奈理子は、春から皆がそれぞれ別の高校に進学することへの寂しさを感じつつも、この時間が永遠に続くことを願っていた。中学生活の最後の瞬間を、友達と共に心から楽しむ奈理子の笑顔が、カラオケボックスの中に満ちていた。
水都タワーの前広場は、年末の賑わいでいっぱいだった。水都の象徴であるこのタワーは、独特の水車が回る姿で、市民に愛されているランドマーク。今日は終業式を迎えた多くの学校があり、特にこの日、12月24日は、タワー周辺の繁華街には学生やカップルが溢れ返っていた。
奈理子は友達との楽しい時間を後にし、ライムとの待ち合わせ場所であるこの広場に足を踏み入れた。水都の公立学校が休みに入るこの日、奈理子とライムにとっても、二人だけの特別な時間が待っていた。特に、タワー横にある観覧車は、巨大な水車が動力源で、二人きりでゆっくりと時間を過ごせる貴重な場所だ。
待ち合わせの時間まで少し余裕がある中、奈理子はクリスマスを楽しむカップルたちを眺めながら、これから始まるライムとの甘いひと時を心待ちにしていた。
しかし、その穏やかな時間は突如として中断された。空から、突如現れた怪人がタワー前広場に降り立ったのだ。
「クリスマスに浮かれるバカップルども!このシリアゲムシ男様が貴様らを恐怖のドン底に落としてやる!」
と叫びながら、シリアゲムシ男が暴れ出した瞬間、奈理子は決意した。
「私とライムとの時間を邪魔するなんて許せない!」
と心の中で叫びながら、奈理子はアイマスクを取り出し、ミラクルナイトに変身する準備をした。このクリスマスイブの夜、水都タワー前広場はミラクルナイトとシリアゲムシ男の戦いの舞台となるのだった。
市民が一斉にアイマスクを掲げる奈理子の姿に気がつく。
「奈理子、頼んだぞー!」
「奈理子ちゃん、頑張ってー!」
そんな声援を受けながら、奈理子はアイマスクを顔に当てると、水色の光に包まれる姿が広場の人々にはっきりと映った。一瞬、冬の装いが消え、水都中学の制服に身を包む姿へと変わるが、その姿もすぐに霧散。続く瞬間、奈理子は純白の下着姿になる。この変身の途中経過に市民からは驚きの歓声が上がる。しかし、その美しい姿に続くのは、ミラクルナイトの象徴的な装いだ。白いリボンが頭に、白いブラウスが体を包み、水色のリボンが胸を飾り、そして、手足には水色のグローブとブーツが現れる。最後に、白いプリーツスカートが純白のショーツを覆った。
水色の光が消え去ると、ミラクルナイトはタワー前広場に立っていた。その瞬間、プリーツスカートがふわりと持ち上がり、純白のショーツがちらりと覗く。この瞬間に、市民からはさらなる歓声が沸き起こる。
「水都の平和を乱す者は、水都の守護神ミラクルナイトが許しません!」
奈理子、いや、ミラクルナイトはそう高らかに宣言した。
「水都が誇る美少女奈理子か。面白い。俺がたっぷり可愛がってやる!」
と、ミラクルナイトに挑むシリアゲムシ男。だが、際どい状況の中で、ミラクルナイトはミラクルウイングを広げ、空中へと舞い上がる。
「空中戦なら負けないわ!」
と、地上のシリアゲムシ男を見下ろしながら、ミラクルナイトは水色の光弾を放った。
難なく水色の光弾を避け、翅を広げて飛び上がるシリアゲムシ男は、空を舞台にした戦いに自信を見せる。
「空中戦なら負けないだと?ならば、その空中戦で無様な姿を晒すがいい」
と挑発的に言い放つ。しかし、その言葉を聞いたミラクルナイトは、敵の空中戦の技術が思ったほどではないと見抜き、
「ミラクルニーアタック!」と叫びながら、シリアゲムシ男の顔面に膝蹴りを加える。
よろめきながらも、シリアゲムシ男はなんとかミラクルナイトにしがみつく。
「イヤ!離して!」
ミラクルナイトは必死に振りほどこうとするが、シリアゲムシ男は彼女の脇の匂いを嗅ぎながら、
「捕まえてしまえばこっちのもんだ。いい匂いがするぞ、奈理子」
不気味に囁く。シリアゲムシ男の舌がミラクルナイトの脇に迫る。危機感を覚えたミラクルナイトは、全身から水色の光を放ち、
「ミラクルパワー!」
と叫びながらシリアゲムシ男を強引に振り解く。しかし、恐怖に駆られた彼女は、ビルの間を縫って逃げ出す。その後ろ姿を追うシリアゲムシ男は、「空中戦なら負けないと言ったな?俺のスピードを見くびるなよ、奈理子!」と高らかに宣言する。
水都タワー付近の上空で、逃げるミラクルナイトと追うシリアゲムシ男の間で、息詰まる追跡戦が繰り広げられる。しかし、ついにシリアゲムシ男はミラクルナイトの背に追いつき、一撃を食らわせる。
「あぁッ!」
と悲鳴を上げ墜落しかけるミラクルナイトを、シリアゲムシ男は背後から腰を掴み、捕らえる。
「やめて…」
と悲痛な叫びを上げるミラクルナイト。水都タワーの近くの空中戦は、ミラクルナイトがシリアゲムシ男に捕まってしまったところで、一つの節目を迎えた。
シリアゲムシ男出現の報を受けタワー前広場に急行したドリームキャンディは、遥か上空からか細いミラクルナイトの悲鳴のような声がするものの、ミラクルナイトの姿は見当たらなかった。彼女の視線が空へと向けられたその時、セイクリッドウインドが近づき、
「奈理子は勝てないと悟って逃げ出したみたい」
と推測する。しかし、ドリームキャンディは
「どこかで奈理子さんは捕まって今も…」
と心配するが、セイクリッドウインドは
「空を飛べない私達にはどうすることもできないよ」
とため息をつく。それでもドリームキャンディは諦めず、
「奈理子さんを探しましょう。奈理子さんの声を追っていけば必ずいるはずです」
と彼女を探そうと提案する。もはやミラクルナイトの声は聞こえないが、市民が水都タワー周辺の方向にミラクルナイトが飛んで逃げたとセイクリッドウインドウに伝えた。
「こっちの方に奈理子は逃げたみたいだよ」
とセイクリッドウインドが走り始める。必ずミラクルナイトを助ける。その思いで水都の街中を走り回るドリームキャンディとセイクリッドウインド。目撃情報からすると、水都タワー周辺からミラクルナイトは出てはいないようだが、ミラクルナイトを探し出すことはできなかった。
「まさか、ビルの屋上?」
と周りのビル群を見上げるセイクリッドウインド。
そんな時、ドリームキャンディに向かって何かが投げつけられる。反射的にキャッチしたものを見て、ドリームキャンディが
「これは…」
と呟くと、セイクリッドウインドが驚愕して
「奈理子のパンツ!」
と叫ぶ。奈理子の純潔を象徴する大切なアイテムが、空から彼女たちの元へと投げつけられたのだ。
その瞬間、
「奈理子の身体、たっぷり楽しませてもらったぜ」
という声と共に、宙に浮かぶシリアゲムシ男の姿が現れる。セイクリッドウインドが
「奈理子は?!」
奈理子の安否を問うと、シリアゲムシ男は嘲笑うように
「気持ちよくなり過ぎて寝ている。奈理子はいい声で鳴いてたぜ」
と得意げに答える。ドリームキャンディが怒りに任せて
「奈理子さんを返しなさい!」
とキャンディチェーンを振るうも、シリアゲムシ男はそれを軽々と避け、
「空を飛ぶことすらできないお前たちには俺に触ることすらできないぜ」
と嘲笑う。奈理子の運命や二人がどう立ち向かうか、緊迫の展開が待ち受けていた。
空高くから嘲笑うシリアゲムシ男に対し、ドリームキャンディとセイクリッドウインドは力を合わせて立ち向かうことにした。しかし、二人には空を飛ぶ能力がなく、シリアゲムシ男の攻撃を避けることしかできない。シリアゲムシ男は容赦なく空から黒い粘液を降り注ぎ、ドリームキャンディたちはそれをかわすのに必死だ。
「このままじゃダメ!」
とドリームキャンディが叫ぶ。セイクリッドウインドも
「私たちの力では届かない…」
と絶望的な表情を浮かべる。その時、シリアゲムシ男が一瞬の隙をついて、二人に向かって急降下する。ドリームキャンディとセイクリッドウインドは慌てて避けるが、シリアゲムシ男の速さにはかなわず、二人は地面に叩きつけられた。
「痛っ!」
とドリームキャンディが呻きながらも立ち上がろうとするが、シリアゲムシ男は既に次の攻撃を仕掛けていた。彼の体から無数の小さなシリアゲムシが飛び出し、ドリームキャンディとセイクリッドウインドに襲いかかる。小さなシリアゲムシたちは、二人の体を覆い尽くし、噛み付いてくる。
「うわぁぁっ!やめて!」
とセイクリッドウインドが叫び、ドリームキャンディも
「こんなことで負けられない!」
と必死にシリアゲムシたちを払いのけようとするが、数が多すぎて手に負えない。シリアゲムシ男は高く空に舞い上がり、二人の苦しむ姿を楽しんでいるかのようだった。
絶体絶命のピンチ、ドリームキャンディとセイクリッドウインドは助けを求めながらも、なんとか自力でこの窮地を脱出しようと奮闘する。しかし、シリアゲムシ男の圧倒的な力に二人はどう立ち向かえばいいのか、答えを見つけられずにいた。
高層ビルの屋上に打ち捨てられたミラクルナイトは無防備な状態で横たわっていた。その側にはスライム男が立ち、彼女を優しくスライムで包み込んでいた。下界では、ドリームキャンディとセイクリッドウインドがシリアゲムシ男と激しい戦いを繰り広げている。スライムの柔らかな包み込みに心地よさを感じつつも、
「ライム…」
と奈理子は虚ろな眼で呟いた。
「ごめんなさい…。私、シリアゲムシ男に…」
と彼女は涙を流し始めた。スライム男はそんな彼女を優しく抱きしめ、
「ミラクルナイトの身体は聖なる力で護られている。奈理子は綺麗なままだよ」
と慰めた。そして、ビルの下で続く戦いに言及し、
「下でドリームキャンディたちが戦っている。飛べないあいつらでは、シリアゲムシ男には勝てない」
という厳しい現実を突きつけた。
「でも、私もシリアゲムシ男には勝てない…」
と奈理子は力なく頭を垂れた。スライム男はそんな彼女の頬に平手打ちをかまし、
「しっかりしろ!奈理子は水都の守護神ミラクルナイトだ。シリアゲムシ男の動きを思い出せ。トンボ男ほど速かったか?バッタ男ほど素早かったか?シリアゲムシ男よりも、もっと強い敵に奈理子は勝ってきただろ」
と力強く励ました。スライム男の言葉によって、奈理子の中に再び闘志が湧き上がる。
「私、戦う。ライム、しっかり見てて」
と、立ち上がったミラクルナイトは決意を新たにした。
高層ビルの頂上から、ミラクルナイトは下界の混沌を冷静な眼差しで見下ろした。地上では、彼女の仲間たちがシリアゲムシ男とその無数の分身による猛攻に苦戦していた。ドリームキャンディは息を切らしながらも、自身が負う責任を思い出していた。
「チャリティーコンサートの練習しなきゃいけないのに…」
と彼女は思い焦がれた。一方で、セイクリッドウインドは膝をつき、自身の使命を嘆いた。
「今から年末年始の巫女さんバイトに指導をしなきゃいけないに…」。
その時、空中からシリアゲムシ男が高らかに嘲笑った。
「ワハハハ!口程にもない奴らだな」
と彼は言い放った。しかし、ミラクルナイトは彼女が直面している現実から一刻も早く脱却する決意を固めていた。彼女にとって、下半身の寒さは今の彼女の闘志に火をつけるに過ぎなかった。
彼女は深呼吸を一つし、その後、自らを鼓舞するように静かに呟いた。
「今はこれ以上、大切な仲間を苦しめさせない。」
彼女の内なる力が湧き上がるのを感じ、水色の輝きが彼女を包み込む。ミラクルナイトの決意が固まったその瞬間、彼女はビルの屋上から一歩踏み出し、戦いへと身を投じた。
地上では、ドリームキャンディとセイクリッドウインドが彼女の勇姿を見上げ、新たな希望に心を強く持った。ミラクルナイトは、自らの未来だけでなく、友達の大切な瞬間も守るために戦うのだ。彼女はただのヒロインではなく、水都の守護神、ミラクルナイトであることを改めて世界に示す時が来ていた。
タワー前広場は再び激しい戦場へと変わった。水色の光弾がシリアゲムシ男の背中を直撃し、彼を地面へと叩きつける。
「何だ?」
驚きと疑問を口にするシリアゲムシ男だが、彼が再び上空を見上げる暇もなく、ミラクルナイトはすでに戦いの舞台を地上へと移していた。
風に舞うスカートから繰り出される渾身のハイキックがシリアゲムシ男の顔面を直撃し、巨大な衝撃波が周囲を揺さぶる。シリアゲムシ男は遠くへと吹き飛ばされ、地に打ち付けられた。
その瞬間、セイクリッドウインドとドリームキャンディの視線は、戦いの渦中で冷静さを保つミラクルナイトへと集中した。
「奈理子、ノーパンだよ!パンツ穿いてないよ!!」
セイクリッドウインドは驚愕し、ドリームキャンディは奈理子の白いショーツを広げながらながら、
「だって、奈理子さんのパンツはここにあるもの」
とミラクルナイトの安全を祈った。赤面するミラクルナイト。しかし、ミラクルナイトは仲間の声を耳にもせず、前に進む決意を固めていた。
シリアゲムシ男は再び立ち上がり、
「おのれ…奈理子、再び奈理子の子宮を俺の種で満たしてやる!」
と叫びながら猛然と襲い掛かる。しかし、ミラクルナイトは動じず、
「そうはいかないわ!」
と宣言し、ミラクルウイングを広げて空中へと舞い上がった。シリアゲムシ男も追撃を開始し、二人の間で繰り広げられる空中戦は、さらに激しさを増す。
「これでも喰らえ!」
シリアゲムシ男が黒い粘液を放つと、ミラクルナイトは
「フェアリーシールド!」
と叫び、水色の半透明な防御壁を展開して攻撃を無効化した。この一連の動きは、ミラクルナイトがこれまでに数多くの戦いを経験してきた証であり、彼女の冷静さと戦闘技術の高さを改めて証明した瞬間であった。
空は戦いの渦中にあっても静寂を保っていた。ミラクルナイト、その名の通り、水都の守護神は冷静さを失うことがなかった。彼女の目の前にはシリアゲムシ男がいたが、彼女は彼を見てもトンボ男やバッタ男のような脅威を感じなかった。数えきれないほどの戦いを経てきた彼女には、この敵の攻撃も容易に読めた。誰よりも厳しい戦いを経験してきたミラクルナイトは、自身の内なる声に耳を傾けた。「心が折れなければ、敗北などありえない」と。
シリアゲムシ男の不満が爆発した。
「クソッ、種付けさせろー!」
彼の声には苛立ちがみなぎっていたが、ミラクルナイトはその攻撃をミラクルウイングのはためきで軽やかに避けた。彼女は瞬時に彼の背後に回り込み、彼の翅をぐっと掴んだ。
「さっきは貴方の異様な雰囲気に怯んだけど、もう貴方の思い通りにはならないわ!」
彼女の声には決意が込められていた。
「やめろ!」
とシリアゲムシ男が叫ぶも、ミラクルナイトは翅を力強く引きちぎった。その瞬間、シリアゲムシ男の悲鳴が空に響き渡った。
「ウギャー!」
彼の叫び声が終わると、静寂が戻った。戦いはまだ終わっていないが、この瞬間、ミラクルナイトは完全に優位に立っていた。
翅を引きちぎられたシリアゲムシ男は、制御を失い空中から墜落していく。その危機的状況にもかかわらず、彼の目の前に現れたのは、ミラクルナイトの美しい太腿だった。一瞬、シリアゲムシ男の表情には、子供がおもちゃを手にした時のような歓喜が浮かんだ。
「うひょー!」
と彼が声を上げたのも束の間、ミラクルナイトは彼の顔面を太股でがっちりと挟み込む。
地上へと向かって猛スピードで落下する二人。その間も、ミラクルナイトの身体からは水色の光が放たれ、彼女の周囲を包み込んでいた。そして、彼女はその光の中で、まるで運命を決めるかのように、必殺技
「ミラクルハピネスホイップ!」
を叫びながら、シリアゲムシ男の頭部を地面へと叩きつけた。
その瞬間、シリアゲムシ男の存在は、まるで光に溶けるようにして消え去った。ミラクルナイトによる完璧な勝利だった。その場にいたドリームキャンディとセイクリッドウインドは、勝利を収めたミラクルナイトのもとへと駆け寄った。彼女たちの表情には、戦いの緊張が解け、安堵の息が混じっていた。
ドリームキャンディが満面の笑みでミラクルナイトに向かって言った。
「やっぱり、空を飛ぶ相手には奈理子さんがいないとダメですね。はい、奈理子さんの可愛いパンツ。」
そう言って、彼女は純白のショーツをミラクルナイトに手渡した。
「あ…ありがとう…」
と、ミラクルナイトは少し戸惑いながらもそれを受け取った。セイクリッドウインドも加わり、
「ノーパンでミラクルハピネスホイップを繰り出すとは、さすが奈理子ね」
とミラクルナイトの勝利を称えた。勝利の余韻に浸る三人のヒロインたち。
チャリティコンサートの日、会場は老人ホームから訪れたたくさんのお年寄りで賑わっていた。彼らは生徒たちの演出に期待を膨らませていた。寧々たち六年三組の児童たちは、冬の名曲を中心に幅広いレパートリーで会場を温かい雰囲気で包み込んだ。特に寧々のソロパートが始まると、彼女の澄んだ声が会場に響き渡り、聴衆からは感動のため息が漏れた。演奏が終わると、拍手が雷のように鳴り響き、寧々は涙をこらえながら深くお辞儀をした。
コンサートの後、お年寄りからは
「若い人たちの元気をもらったよ」
「来年も聴きに来たいね」
という言葉が寄せられた。寧々たちは、演奏を通じて多くの人に喜びを分かち合うことができたと感じ、一層の絆で結ばれた感覚を得た。
年末の忙しさの中でも、水都市の人々は心を寄せ合い、新しい年を迎える準備をしていた。卒業論文の提出を終えた凜は、年末年始に向けて新人巫女の指導に余念がなかった。寧々にとって、この年末は一生忘れられない特別な思い出となった。
(第115話へつづく)
(あとがき)












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