ミラクルナイト☆第237話
放課後、奈理子は、寒い公園のベンチに座っていた。彼女は、ミラクルナイトの変身アイテムであるアイマスクを指で弄んでいた。冬の空気が、彼女の頬を刺す。街灯は、彼女の影を長く伸ばしていた。
彼女は、何かを待っていた。ライムに会う約束をしていたが、彼はまだ来ていなかった。彼女は、少し、寂しかった。
そのとき、彼女の目に、奇妙なものが映った。
それは、鳥の糞だった。ベンチの上に、ポツンと落ちていた。
「…あれ」
彼女は、立ち上がった。鳥の糞が、ベンチの上に落ちていることは珍しくない。しかし、これは、妙に、きれいだった。まるで、模型のようだった。
彼女は、それを、指でつついた。すると、それは、ぬるりと動いた。
「きゃっ!」
彼女は、驚いて後ずさった。それは、生き物だった。
そのとき、彼女の頭上から、何かが、落ちてきた。それは、また、鳥の糞だった。しかし、今回は、彼女の頭を、かすめた。
「きゃっ!」
彼女は、また驚いて後ずさった。そのとき、彼女は、それに気づいた。公園の木々の枝に、たくさんの鳥の糞が、ついていた。まるで、飾り付けのようだった。
「…これは…」
彼女は、木を見上げた。しかし、そこに、鳥は、一羽もいなかった。
「…おかしい…」
彼女は、不思議に思った。そのとき、一つの鳥の糞が、木から離れ、彼女に向かって落ちてきた。それは、まるで、糸で吊られているようだった。
「…これも、生き物…?」
彼女は、それを、避けた。そのとき、彼女は、それに気づいた。鳥の糞は、糸で、つながっていた。それは、まるで、クモの糸のようだった。
「…トリノフン?クモ…??」
彼女は、その名を口にした。敵の襲撃なのか、しかし、鳥の糞で攻撃なんて、単なる嫌がらせにしか思えない。
そのとき、彼女の目の前に、一つの鳥の糞のようなものが、降下してきた。それは、ゆっくりと、彼女に近づいてきた。彼女は、それを、避けた。しかし、それは、彼女の足に、糸を、絡ませた。
「きゃっ!」
彼女は、倒れそうになった。しかし、彼女は、踏ん張った。彼女は、その糸を、切ろうとした。しかし、それは、強かった。
「…これ、敵なの…?」
彼女は、不思議に思った。そのとき、彼女は、それに気づいた。鳥の糞は、実は、小さな蜘蛛の体だった。それは、鳥の糞に擬態していた。それは、鳥の糞に擬態して、獲物を待っていた。
「…クモ男…じゃない!だれ?」
彼女が知っているクモ男が、こんな、つまらない嫌がらせをすると思えない。
「ミラクルチェンジ!」
彼女は、変身した。光の粒子が彼女を包み、水都女学院高校の制服が消える。一瞬、純白のブラとショーツのみ姿になった奈理子だが、ブラウス、グローブ、ブーツ、スカート、次々とミラクルナイトのコスチュームが身を覆っていく。
「悪戯なんかやめて、出て来なさい!」
ミラクルナイトが叫ぶ。
そのとき、木々の枝から、たくさんの鳥の糞が、落ちてきた。それは、まるで、雨のようだった。ミラクルナイトは、それを、避けた。しかし、それらは、彼女の周りに、円を描いていた。
「…囲まれたの…?」
そのとき、鳥の糞は、彼女に向かって、突進してきた。
「…!」
ミラクルナイトは、それを、キックで、跳ね返した。スカートが翻り、冷たい空気が股間を舐める。ミラクルナイトが、恥ずかしげにスカートを押さえる。しかし、鳥の糞は、すぐに、立ち直った。
「…しつこい…」
ミラクルナイトは、両掌に神経を集中させた。
「ミラクルシャインブラスト・シャワー!」
彼女の両掌から水色の光弾が次々と放たれる。光のシャワーが、鳥の糞を、打ち払った。しかし、鳥の糞が多すぎる。
「…終わらない…」
そのとき、ミラクルナイトは、それに気づいた。鳥の糞を操る者がいる。鳥の糞は一方向から襲ってる。その先に、鳥の糞を操る者がいる。
「おっ!ミラクルナイトが戦ってるぞ」
「今日も奈理子は可愛いなー」
戦闘に気付いた市民が集まりだした。
ミラクルナイトの活躍に、市民たちの歓声が沸き起こった。しかし、彼女が、鳥の糞のようなものに翻弄されているのは、明らかだった。
「頑張れ奈理子!」
「今日もパンチラ、期待してるぞ!」
彼らの視線は、ミラクルナイトのスカートに注がれていた。だが、彼女はそんな声には耳を貸さず、ひたすら鳥の糞の動きを観察していた。大量の小さな蜘蛛たちが、まるで一つの意志を持つかのように、彼女を攻撃してくる。どこかに、指揮する者がいるはずだ。
彼女の視線が、遊具の滑り台の先端に定まった。そこだけが、奇妙なほど静寂だった。ありえない。他の全ての木や遊具には偽物の糞が張り付いているのに、あの場所だけが汚されていない。そこが、本体の隠れ家だ。
「見つけたわ」
ミラクルナイトは、滑り台に向かって突進した。だが、その瞬間、彼女の足元から粘着質の糸が吹き上がり、彼女の足をがっちりと絡めとった。
「なっ…!」
バランスを崩した彼女に、更なる襲撃が襲いかかる。無数の鳥の糞が、まるで狩りをする蜘蛛の群れのように、彼女の体を襲った。一つは彼女のアイマスクを弾き飛ばし、もう一つはブラウスのボタンを外していき、さらにもう一つがスカートのウエストバンドを引っ張った。
「きゃっ!」
光の粒子が消え、ミラクルナイトのコスチュームが剥ぎ取られていく。水色のブーツと白いグローブは残っていたが、あとは純白のブラジャーとショーツだけ。これはミラクルナイトのコスチュームではない。奈理子のものだ、彼女の下着姿が、市民たちの目に晒された。
「うおーっ!」
「見えた!今日も純白!」
「やったー!」
市民たちは、まるで祭りのように沸き立った。彼らの目は、剥き出しになった彼女の肌と、薄い布の下の曲線を貪るように見ていた。彼らの視線が、奈理子の肌を刺すように突き刺さる。屈辱で顔が火照る。
「ひぃっ…!」
そのとき、一つの鳥の糞が、彼女の背に襲いかかった。それは、彼女のブラジャーのホックを外そうとした。
「やめっ…!」
彼女は、必死に胸を守った。しかし、そのとき、もう一つの鳥の糞が、彼女のショーツに糸を絡ませた。
「きゃっ!」
彼女は、転倒した。彼女の目の前には、市民たちがいる。ブラジャーは既に剥ぎ取られている。
「ひぃっ…やめて…」
悲鳴を上げて胸を隠し、ショーツを守るミラクルナイト。
「奈理子のおっぱいサイコー!」
「ちっぱいは正義!」
「パンツ脱がれそうな奈理子、可愛い!」
市民はさらに大喜びだ。その熱狂的な声の中、いつの間にか、襲いかかってきた鳥の糞は一つひとつ消え始めていた。彼らの目的は、彼女を辱めることだけだったのか。
滑り台の先端にいた、トリノフンダマシ男は、その様子を満足げに見ていた。彼は、自分の仕事が終わったのを感じて、静かにその場を去ろうとした。
そのとき、一人の少年が立っていた。彼は、ライムだった。彼は、奈理子との待ち合わせ場所へやってきた。しかし、彼が目にしたのは、白いショーツ一枚で転倒し、市民の視線に晒される奈理子だった。
「…またかよ」
ライムは、呆れて言った。彼の目には、同情も、驚きもなかった。ただ、呆れだけがあった。
「…ライム…」
ミラクルナイトは、彼を見て、顔を赤くした。彼は、落ちていた白いブラジャーを拾い、彼女を見ていた。彼女の心が、さらに、張り裂けそうになった。彼女は、立ち上がり、彼に駆け寄ろうとした。しかし、彼女は、足がふらふらで、歩けなかった。
「…最低…!」
彼女は、泣き声で言った。
「…最低だわ、ライム…!」
穢川研究所、九頭の研究室。無数のモニターが、部屋の薄暗さを打ち破っていた。中央の大画面には、トリノフンダマシ男にパンツ一枚の姿にされ、両腕で小さい胸を隠し、泣くミラクルナイトの姿が、映し出されていた。
「…見事だ、トリノフンダマシ男」
九頭が、満足げに呟いた。彼は、熱心な奈理子ファンでもあった。彼の目は、画面の上の奈理子の小さいおっぱいと、美しい背中に吸い寄せられていた。
「この柔らかな背中のライン、このか細い腰。そして、この控えめだけれども形のいい乳房。完璧だ…!まるで、神が作った彫刻のようだ」
彼は、奈理子を称賛していた。その姿は、まるで、聖人を見つめる信者のようだった。
「でも…、なんだか、可哀想な…」
隣に立つ、助手の絹枝が、心配そうに呟いた。彼女の目には、同情の色が浮かんでいた。彼女は、奈理子が、こんなに辱められているのを見て、胸が痛んでいた。
「可哀想などと、絹枝君。これは、芸術だよ。彼女の弱さ、脆さ、それが彼女の真の美しさを引き出しているのだ」
九頭は、そう言って、絹枝の肩に手を置いた。
「…ですか」
絹枝は、頷いたが、彼女の顔には、まだ、同情の色が消えなかった。
「九頭先生」
篠宮が、割って入った。彼の目は、決意に燃えていた。彼は、早く、成果を上げなければ、今の地位を失うと考えていた。
「今度こそ、トリノフンダマシ男とともに、ミラクルナイトを成敗してみせます」
「…ほう、意気込みがいいな、篠宮君」
九頭は、そう言って、篠宮に目を向けた。
「君のその熱意、買ってみようか」
彼は、そう言うと、コンソールを操作した。
「トリノフンダマシ男に加え、彼を使うがいい」
モニターに、新しい怪人のデータが映し出された。それは、ユスリカとノミの合成怪人、ユスリカノミだった。
「これは…ユスリカとノミの合…?」
「ああ。小さな虫の群れで視界をにじませながら、高速跳躍で見えない衝撃を与える。攻撃力は低いが、連続的に動きを止め、判断と反応を崩す。街灯の周囲で特に能力が強くなる」
九頭は、そう説明した。
「なるほど…」
篠宮は、目を輝かせた。
「これで、ミラクルナイトの反応速度を完全に封じ込められる」
「…しかし、これまた、不快な…」
絹枝は、呟いた。トリノフンダマシ男とユスリカノミ、ともに蟲を操ることができる能力を与えられた新型の怪人。ほとんどの女の子は蟲が嫌いだ。これでは、彼女は、精神的に、完全に追い詰められてしまう。
「…ふふっ、楽しみだな」
九頭は、そう言って、モニターの奈理子を見ていた。彼は、更に奈理子の恥ずかしい姿が楽しめるとご満悦だった。
「行きたまえ、篠宮君」
「かしこまりました」
篠宮は、そう言うと、研究室を出ていった。
「…絹枝君」
九頭が、呼び止めた。
「…はい」
「君も、奈理子のピンチを楽しめるようにならなければならないな。」
「…え…」
「彼女は、この街のヒロインだ。ヒロインは、ピンチにこそ輝く。愛情は良いが、同情など不要だ」
彼は、そう言うと、絹枝のあごを上げた。
「…すみませんでした」
絹枝は、俯いた。
「いいね、絹枝君。君のその優しさも好きだよ。だが、仕事と個人的な感情は分けることだ」
「…はい」
絹枝は、そう言うと、部屋を出ていった。
水都神社に隣接する大谷家。そこに住み込む凜の部屋。四畳半の和室。コタツとミカン。昭和チックな部屋の隅にある、凜の母校である清流大学のゆるキャラ"せいりゅうくん"のぬいぐるみが、僅かに女子らしい空間を作り出していた。その中央に、ノートパソコンが置かれていた。画面には、SNSにアップされたミラクルナイトの動画が流れていた。
「おっ、見て見て!またスカート脱がされてる!今日もパンツ丸出し!」
凜が、画面を指さした。彼女の目は、キラキラと輝いていた。
「あっ、ブラも取られちゃった!」
彼女の声は、まるで、スポーツ実況のようだった。
「…やめて、凜さん」
奈理子は、顔を赤くして言った。彼女は、自分の屈辱的な姿を、何度も見せられるのが、嫌だった。
「えー、でもすごいよ!涙目で胸を隠す奈理子、可愛い〜!」
凜は、そう言って、奈理子の頬をつねった。
「…そんな」
「だって、事実だからしょうがないでしょ」
「そうだけど…」
「ほら、パンツは守ったんだ!奈理子ちゃん、偉い!」
「…もう、やめて!」
奈理子は、顔を真っ赤にして、頭を撫でる凜の腕を払い除けた。
「…もう、二人とも、いい加減にしてください」
寧々が、呆れたように言った。彼女は、そんな二人を少し羨ましく思っていた。
「でも、寧々も見ててよ!奈理子、可愛いよ」
「…私は、そういうのに、興味ないから」
「さては、照れ隠しか?」
「…うるさいなぁ」
寧々は、顔を赤くして、そっぽを向いた。
「まあ、それはそうとして、気になるのは、敵の目的ね」
凜は、真剣な顔になった。
「ミラクルナイトのコスチュームを脱がしただけで、撤退した。まるで、奈理子の服を脱がすことが目的だったみたい」
「…そうかもしれないですね」
寧々は、頷いた。
「…蟲」
奈理子が、小さな声で呟いた。
「…え?」
「たくさんの、蟲が、襲ってきた…。鳥のフンに擬態した、小さなクモみたいなのが…」
奈理子の声は、震えていた。戦っているときは、コスチュームを脱がされていく恥ずかしさで頭がいっぱいだった。恐怖が込み上げてきたのは、恥ずかしさが去った後だ。彼女は、まだ、その恐怖から、抜け出せていなかった。
「…奈理子さん、大丈夫ですか?」
寧々が、心配そうに顔を寄せた。
「大丈夫じゃない…!あの、たくさんの蟲が、私の体にまとわりつくのが、今でも見えるよう…!」
彼女は、自分の腕を見て、震えていた。
「蟻が道を作るように、あの蜘蛛たちは私の体を駆け上がっていくの。気持ち悪い、嫌だ、怖い…!」
彼女の目には、涙が浮かんでいた。
「大丈夫です、奈理子さん」
寧々は、彼女の肩に手を置いた。
「蟲なんか、私のキャンディシャワーで全部消してあげますよ。甘い匂いで酔っ払って落ちていくはず」
彼女は、そう言って、ニコッと笑った。しかし、彼女も、蟲は大嫌いだった。内心では、ゾッとしながらも、奈理子を励まそうとしていた。
「…ありがとう、寧々ちゃん」
奈理子は、感謝の言葉を言った。彼女の目に、涙が、浮かんでいた。
「でも、次こそは、絶対、やらせない…」
彼女は、そう言って、拳を握りしめた。
奈理子は、水都公園にいた。敵は再び現れる。そんな気がしていた。
夕暮れの光が、公園を染めていた。街灯は、すでに点灯していた。寒い空気の中で、白い息が立つ。公園には、人影はほとんどなかった。
奈理子は、何度かあくびをした。昨日の夜は眠れなかった。トリノフンダマシ男の恐怖が、頭から離れなかった。
「…眠い…」
奈理子は、こめかみを押さえた。軽い眠気が襲ってくる。昨日の夜、眠れなかったせいだろう。
奈理子の視界が、わずかににじむ。街灯の周りには、小さな虫が集まっていた。ユスリカだ。冬にユスリカが飛ぶのはおかしいが、気にしないことにした。奈理子は、眠かった。なんでも許せる気がする。
奈理子は、公園の芝生広場を歩いていた。すると、彼女の足元に、ポツンと鳥の糞が落ちていた。
「…またか」
彼女は、そう思った。しかし、昨日の恐怖が蘇る。彼女は、それを避けた。しかし、彼女の判断は、少し遅れていた。足元に粘着質の感触が、残る。
「…きゃっ!」
彼女は、驚いて、後ずさりした。トリノフンダマシ男の糸だった。
「見つけたわ。隠れてないで、出てきなさい」
彼女は、叫んだ。しかし、どこからも返事は来なかった。
そのとき、彼女の頭上から、何かが落ちてきた。彼女は、本能的に避けようとした。しかし、体が、動かない。昨日の恐怖が、彼女の体を縛り付けていた。
「きゃっ!」
糸が、彼女の右腕に絡みついた。彼女は、左手でそれを払おうとした。しかし、左手にも、糸が絡みついた。両腕を捕られてしまった。
「…やめて…」
彼女は、震えていた。ユスリカの群れが、彼女の周りを飛んでいた。視界がにじみ、彼女の判断を鈍らせていた。
「…何?この眠気は…」
不自然な眠気の正体を探ろうとする彼女の意識は、さらに遠ざかっていく。街灯の光がぼやけ、三つに、四つに見える。
「…だれ…」
彼女の声は、かすれていた。
そのとき、芝生の陰から何者かが現れた。ブナシメジ男だった。彼の傘のようで傘でない器官から、紫色の胞子が静かに舞っていた。
「…なっ…」
彼女の呼吸が、乱れる。胞子を吸い込んでしまった。体の芯から、熱がこみ上げてくる。不思議な力が、体の奥で目覚める。腕を捕られているはずなのに、力が入らない。力を入れようとすればするほど、体が熱くなっていく。甘い吐息が、漏れる。
「これ匂いは…前にも…?」
ブナシメジ男は、満足げに微笑んだ。
「その媚薬は、あなたのために開発したものですよ、奈理子さん。あなたの体調と心の状態を分析し、最も効果的になるように調整しました」
彼の声は、低く、静かだった。しかし、その言葉は、奈理子の耳に深く刻まれた。
「媚薬…?やめて…」
彼女は、抵抗しようとした。しかし、媚薬の効果は、強烈だった。彼女の意識は、さらに、遠ざかっていく。
「さあ、変身しなさい。ミラクルナイト」
ブナシメジ男の言葉に、彼女の体が反応した。彼女は、望まないのに、アイマスクを取り出し、口が動いた。
「…ミラクル…チェンジ…」
光の粒子が、彼女を包む。変身の光は、いつもより弱々しく感じられた。ブラウス、スカート、グローブ、ブーツ。ミラクルナイトのコスチュームが、彼女の身を包む。しかし、頭の中は霞んでいた。媚薬の熱が、全身を巡り思考を溶かしていく。
「…私は…今日は、負けない…」
ミラクルナイトは、ふらつきながらも立っていた。だが、その瞳は潤み、意識ははっきりとしない。
「どうやら、効果は上々のようだね」
ブナシメジ男は、そう言って、ミラクルナイトに近づいた。
トリノフンダマシ男が、彼女の背後に回り込み、糸で彼女の体を固く縛り付けた。
「あぁんッ…!」
身動きが取れない。媚薬の効果が、ミラクルナイトを襲う。股間が熱い。力が入らない。完全に捕らえられてしまった。
「…やめてっ…あぁぁ…!」
ミラクルナイトの声は、か細く、甘く響いた。その声は、ブナシメジ男の耳に快楽として届いた。
「はぁ…いやぁ…エッチなこと…しないで…」
その声には、自信がなかった。四肢を糸に絡まれただけなのに、僅か刺激で子宮がキュン!とする。
「ああ、その声も素晴らしい。さあ、我々の研究所へおいで。奈理子の美しさを、もっと深く、研究させてほしい」
ブナシメジ男は、そう言って、ミラクルナイトのあごを持ち上げた。
「やめ…やめてぇっ…!」
ミラクルナイトは、抵抗した。しかし、その抵抗も、媚薬によって弱々しいものになっていた。
「やめていいのかな?」
ブナシメジ男は、ミラクルナイトのスカートを捲った。そして、しゃがんで奈理子の白いショーツを眺める。
「いやぁ…見ないで…ひいぃッ!」
ブナシメジ男は、クロッチに手を添えた。
「拘束されただけで、こんなに濡れているぞ、奈理子」
「違う…これは違うのぉ…!」
このままでは、また、敵に嬲られ恥ずかしい姿を晒してしまう。
(寧々ちゃん…凜さん…早く助けにきて…)
「ふふふ、どうした?触って欲しいのか?」
「!」
ブナシメジ男は、ミラクルナイトの股間に手を添えているだけだ。
「自分から腰振ってるぜ。擦り付けオナニーってやつか?」
トリノフンダマシ男が、ミラクルナイトを嘲笑う。
ミラクルナイトは、気付かぬうちに、自ら股間をブナシメジ男の掌に擦り付けていた。
「違うぅ!これは…媚薬のせい…あぁんッ…!」
「よい反応だ」
ブナシメジ男は、股間を擦り付けるミラクルナイトの姿に満足そうに口にすると、トリノフンダマシ男に目配せをした。
「奈理子の腰の動きを、もっとよく見えるようにしてやるぜ」
トリノフンダマシ男に操れる小さなクモが、ミラクルナイトのスカートに取り付いた。
「な…何を…」
「決まってるだろ。スカートを脱がして、奈理子のオナニーを見せてもらうのさ」
「いやぁ…や、やめてぇ…やめて、ってばぁ!…はぁんッ!」
ミラクルナイトのスカートがスルスルと脱がされていく。
「お漏らしでもしたのか?股間がビチョビチョだぞ」
ブナシメジ男が笑う。
周囲が騒がしくなってきた。冬の夕暮れ、人が少なかった芝生広場だったが、騒ぎに人が徐々に集まってきた。
「ミラクルナイトが、今日も捕まってスカート脱がされてるぞ」
「ブナシメジ男の手があんなところに?!」
「奈理子が自分で腰振ってる。これって、まさか…」
「いや、奈理子ちゃんに限ってそんなことは…」
市民は、目の前に繰り広げられる信じられない光景に、唖然としてしまう。
(うぅ…早く…寧々ちゃん…来て…助けて…このままじゃ、みんなの前で…イクぅ…)
ミラクルナイトの懇願が天に届いたか。
突然、甘い香りと共に虹色のキャンディが降り注ぐ。その香りにトリノフンダマシ男が一瞬怯む。
「なっ…?」
「奈理子さんにエッチなことをする者は許しませんッ!ドリームキャンディ、ただ今参上!」
甘く可愛らしい声。公園に中学生戦士、ドリームキャンディが登場した。
「ドリームキャンディ…!」
ブナシメジ男は、一瞬、嫌な顔をしたが、すぐに冷静になり、ミラクルナイトの股間から手を離した。
「お前が来ることは予測していた…」
ブナシメジ男は話し始めたが、
「キャンディ、来るのが早いよ!」
「もう少しで、奈理子はイキそうなんだよ!」
「寸止めじゃ、奈理子がかわいそうだ!」
市民の声によって遮れてしまった。
「はぁ…はぁ…お、遅かったわよ…」
そう言いながらも、ミラクルナイトの心中は、皆に痴態を晒さずに済んだ安堵感と、イケそうでイケなかった虚しさで苛まされていた。
「奈理子の言う通り、遅かったな。奈理子は既に我々の手中にある」
ブナシメジ男が、ミラクルナイトの股間を撫でた。
「んッ…!…あッ…あぁッ!」
ミラクルナイトは、ビクッ!と震えると、我慢しているものから解放されたように、力が抜けていった。
「お、奈理子、イッたか?」
「可愛いぞ、奈理子ちゃん!」
放心状態のミラクルナイトは、トリノフンダマシ男の糸に支えられ、痴態を晒されていた。そんな彼女の股間から、生暖かい液体が溢れ出す。
「あぁぁ…」
白いショーツから溢れ出した液体は太股を伝い、彼女の脚まで濡らしていく。
「お漏らしする姿も可愛い!さすが"純白の天使"!」
守るべき市民と倒すべき敵の前で、絶頂に達し、失禁してしまう姿を晒しているという恥ずかしさと悔しさ、そして、それを上回る強烈な快感。ミラクルナイトは、気が遠くなる感覚に襲われていた。
「さすが、絶対な人気を誇る"水都の守護神"。市民も大喜びだ」
フナシメジ男は、惨めな敗北ヒロインの姿に、満足気な笑みを浮かべる。しかし、ドリームキャンディは違った。
「ふふんッ、奈理子さんは、貴方たちを誘き出すための囮。こうなることも、織り込み済みよ。私が、貴方たちを成敗してあげるわ」
「残念だが、成敗されるのはお前の方だ」
ブナシメジ男の言葉と同時に、地面から、小さな虫の群れが、湧き出た。ユスリカだった。それは、ドリームキャンディに向かって、猛スピードで、飛んでいった。
「なっ…虫は嫌い…!」
ドリームキャンディは、ユスリカの群れを見て、悲鳴を上げた。彼女も、奈理子と同じように、虫が嫌いだった。キャンディシャワーを放つが、ユスリカの群れは、それをかいくぐり、彼女の体にまとわりついた。
「きゃっきゃっきゃっ!やめてッ!」
視界が、にじみ、集中力が、切れていく。キャンディチェーンを振るうことはできても、的確に敵に当てることができない。ユスリカの足止めに遭い、ドリームキャンディは身動きが取れない状態に。
「もうだめ…蟲はイヤ!」
ドリームキャンディは、膝から崩れ落ちた。
「これが、ドリームキャンディか。噂ほどにもない」
ユスリカの群れの中から、ユスリカノミが、ゆっくりと姿を現す。ユスリカは、彼が操っていたのだった。
「フハハハ!ドリームキャンディも、ユスリカの群れには敵うまい!」
ブナシメジ男は、狂喜した。
「んッ…んッ…はぁぁ…キャンディ…!」
媚薬に侵されながらも、トリノフンダマシ男の糸に拘束ミラクルナイトは身動きすることができなかった。自分を慰めたいが、触れない。そんな刹那い彼女も、ドリームキャンディのピンチに気が付いた。
「あぁ…キャンディが…」
「今度こそミラクルナイトを捕獲し、連行する!」
ミラクルナイトの絶望が深まる。媚薬に侵されたまま連れ去られたら、どんなことをされてしまうのか?せめて、ショーツだけは新しいものに履き替えさせてほしい。瞳から涙が溢れる。ミラクルナイトは、不安と恐怖で、もう一人、仲間がいることに思い至る余裕はなかった。
そのとき。静かな音。ピシュッ。風の刃が、ミラクルナイトを拘束する糸をきり裂いた。ミラクルナイトは、支えを失い、地面に崩れ落ちる。
「奈理子は渡さないよ」
ブナシメジ男の前に現れたのは、ガストファングを手にしたセイクリッドウインド。
「凜さん…」
地に伏せるミラクルナイトは、虚ろな目でセイクリッドウインドを見上げた。拘束から解放された彼女の手は、媚薬の効果には抗えず、無意識のうちに股間に伸びていた。
「ンンッ……」
ミラクルナイトは、目を伏せ、ショーツ越しに、こっそりとクリトリスを指で擦りはじめる。
「奈理子…しばらく、休んでなさい…」
セイクリッドウインドは、憐れむように口にした。
「そうはいかない。トリノフンダマシ男、奈理子を捕らえるのだ」
ブナシメジ男の言葉に、トリノフンダマシ男が糸を伸ばす。糸の先には、小さな蜘蛛、トリノフンダマシ。トリノフンダマシ男の糸は、彼が操るトリノフンダマシの糸なのだ。
「残念ね。奈理子のお楽しみの邪魔はさせないわ」
セイクリッドウインドがガストファングを振るう。風の刃が再び糸を切断した。
「凛ちゃん、カッコいい!」
「オナる奈理子も可愛いぞ!」
市民が、歓声を上げる。
「ぬぬっ!ユスリカノミ、風間凛を倒せ!」
ブナシメジ男は、ユスリカノミに目を向けた。ユスリカの群れが、ドリームキャンディから離れ、セイクリッドウインドに向かっていく。
そのとき、どこからかプシューと霧が発射された。ユスリカが次々と地面に落ちていく。
「何?、何だ、これは…殺虫剤?」
焦るブナシメジ男。
「俺の姉ちゃんを、よくもこんな目に合わせてくれたな!」
その声は、凛に頼まれ殺虫剤を持ってきた隆のものだった。
「隆…?」
ミラクルナイトの声は、か細かった。弟を前にしても、自身を慰める彼女の指の動きは止まらない。高まる羞恥が、彼女の思考を蕩けさせていた。
「蟲退治のお手伝いに、隆くんにありったけの殺虫剤を持ってきてもらったの」
セイクリッドウインドが、ブナシメジ男に告げる。
「キャンディもしっかりしろ!」
姉の淫らな姿を目にした隆の声は震えていたが、ドリームキャンディを励ました。
「分かってる」
ドリームキャンディは、よろめきながらも立ち上がった。
「隆くん、ありがとう。あとは私とキャンディに任せて。奈理子は、必ず敵には渡さない!」
聖なる風を纏う戦士、セイクリッドウインドが、巨大な鉄扇、ガストファングを構える。
「危ないから、隆は逃げて!」
中学生戦士、ドリームキャンディは、キャンディチェーンを握りしめた。
「おう、これ使え」
隆は、残った殺虫剤をドリームキャンディに託すと、野次馬市民の群れに紛れ込んで行った。
「うっ、殺虫剤…」
並べられた殺虫剤のスプレーを前に、怯むユスリカノミ。
「さあ、行くわよ、キャンディ」
「はい、凛さん。ブナシメジ男、ユスリカノミ、トリノフンダマシ男、全員倒す!」
セイクリッドウインドとドリームキャンディは並んで立つ。
「セイクリッドウインドとドリームキャンディが二人で立つとはな。だが、ユスリカの群れが舞う街灯の下では、お前たちの力も半減だ」
ブナシメジ男は、街灯の光の下に立つ。ユスリカが、彼の周りを飛んでいた。
「その割には、足が震えてるようだけど?」
セイクリッドウインドは、ブナシメジ男をからかった。
「これさえあれば、ユスリカなんて怖くない!」
ドリームキャンディは、隆から受け取った殺虫剤をまき散らす。ユスリカの群れが、次々と地上に落ちていく。
「なっ…!」
ブナシメジ男は、言葉に詰まった。しかし、蚊柱を作るユスリカを、すべて落とすまではいかない。
「キャンディ、あそこの街灯を壊して」
「了解!指示したのは凜さんだから、公共物破壊で怒られるのは凜さんですよ!」
ドリームキャンディが、街灯に、キャンディチェーンを打ちつける。キャンディの鞭が、街灯を粉々に砕いた。
「なっ!」
ブナシメジ男は、驚いた。ユスリカの群れは、街灯を失い、パニックに陥った。
「行くわよ、キャンディ。ガストファング!」
セイクリッドウインドが、ガストファングを振るう。風の刃が、ブナシメジ男に向かっていく。
「くっ!」
ブナシメジ男は、傘のようで傘でない器官で、風の刃を受け止めた。
「パチパチキャンディ弾!」
ドリームキャンディが放り投げたキャンディが、ブナシメジ男の、足元で、爆発した。
「うおっ!」
ブナシメジ男は、爆風に吹き飛ばされた。
「フハハ!お前たち、よくもやったな!」
トリノフンダマシ男が、セイクリッドウインドに向かって糸を放つ。
「風の壁、築け!」
セイクリッドウインドが、ガストファングを振るう。風の壁が、トリノフンダマシ男の糸を防いだ。
「ロリポップハンマー!」
ドリームキャンディは、素早くキャンディチェーンをロリポップハンマーに変形させ、トリノフンダマシ男に向かって、ロリポップハンマーを叩きつける。
「ぐあっ!」
トリノフンダマシ男は、ロリポップハンマーを受け、吹き飛ばされた。
「キャンディスターバースト!」
ドリームキャンディが、ロリホップハンマーから、虹色の光を降り注がせる。
「うわっ!」
トリノフンダマシ男は、光りに包まれ、消滅していった。
「ユスリカノミは…逃げた?でも、これで、全員倒した…」
セイクリッドウインドは、そう言った。しかし、ブナシメジ男は、まだ動いていた。
「…まだ、終わったわけじゃない」
ブナシメジ男は、立ち上がった。彼の傘のようで傘でない器官から、紫色の胞子が舞っていた。
「…また、その胞子…」
セイクリッドウインドは、警戒した。
「この胞子の媚薬は、奈理子のために最適化された奈理子専用。お前たちには効かないよ」
ブナシメジ男は、そう告げると姿を消した。彼の最後の言葉は、セイクリッドウインドの耳に深く残った。
「奈理子専用…?」
セイクリッドウインドは、不審に思った。
「とりあえず、奈理子を…」
セイクリッドウインドが、ミラクルナイトに駆け寄る。
「ンッ…ンッ…はぁんッ…あ…あぁぁ…!」
ミラクルナイトは、ショーツの中の指を動かし、自分を慰め続けている。彼女は、もう、何も見えていなかった。媚薬の効果は、彼女の意識を、完全に、奪っていた。彼女の目からは涙が溢れ、彼女の口からは、甘い吐息が漏れていた。
「ん…ひぃッ…あぁんッ…!」
彼女の体は痙攣し、彼女の声は、か細く震えていた。
「奈理子!」
セイクリッドウインドは、彼女を抱きしめた。
「ん…あ…凛…さん…」
ミラクルナイトは、セイクリッドウインドに気づいた。彼女の瞳は潤み、彼女の意識は、はっきりとしなかった。しかし、彼女の手は、まだ股間にあった。
「奈理子さん、これを…」
ドリームキャンディは、ハッカの飴をミラクルナイトの口に放り込んだ。
「んんッ!ヒィ〜ッ!」
強烈にハードなミントメントールがミラクルナイトを突き抜ける。その爽快感は、媚薬の効果を一気に吹き飛ばした。
「はぁ…はぁ…凜さん、気持ちいいの、見られちゃった…恥ずかしい…」
落ち着いた彼女は、顔を赤くして言った。彼女の声は、か細く甘かった。
「平気よ、奈理子。誰も何も言わないから」
セイクリッドウインドは、彼女の髪を撫でた。
「奈理子さん、パンツしか穿いていないから、変身を解いたほうがいいですよ」
ドリームキャンディは、彼女のビチョビチョになったショーツを指した。
「うん…変身、解除…」
ミラクルナイトの体は光に包まれ、元の制服姿に戻った。
「今日の奈理子、最高だった!」
「白いパンツは汚したけど、奈理子ちゃんの気持ちいい顔、良かったよ!」
「いいもの見せてくれてアリガトー!」
セイクリッドウインドはああ言ったが、市民はしっかりとミラクルナイトの恥ずかしい姿を目に焼き付けていた。
「隆は…」
ドリームキャンディは隆の姿を探したが、いない。
奈理子は、隆に見られたことを思い出し、顔を赤くした。
市民が、ブナシメジ男の撤退を見届けた後、隆は帰ったことをドリームキャンディに告げる。
「さあ、私たちも帰ろう、奈理子」
セイクリッドウインドは、奈理子の手を引いた。
「凛さん…ありがとう」
奈理子は、小さな声で言った。
「奈理子さん、私もここにいますよ。私にもお礼を言ってくれていいのに」
ドリームキャンディは、そう言ってニコッと笑った。
「はいはい、キャンディも、ありがとう」
奈理子は、笑った。
「凛さん、キャンディ、これからは、もっとちゃんと戦って、敵を倒す。絶対に、あんな恥ずかしい姿は見せない」
「うん、期待してるよ、奈理子」
「今日だって、囮の役目は、ちゃんと果たしてましたよ」
「まぁ…そうかもしれなけど……ね、凛さん」
「なに、奈理子」
「今日は、お風呂、貸して。下着、汚れたから」
「うん、いいよ。三人で、お風呂入ろう」
三人は、手を繋いで、公園を、去っていった。彼女たちの背後には、市民の歓声が、響いていた。しかし、奈理子の耳には、その声は、届いていなかった。彼女の心は、今日の恥ずかしさと、強くなろうとする決意で、満たされていた。
(第238話へつづく)












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