DUGA

ミラクルナイト☆第149話

放課後の夕暮れ、隆と寧々は並んで歩いていた。いつもの道を、何気ない会話を交わしながら。

「奈理子さんの新しい写真集って見た?」

寧々がふと尋ねた。発売日前だけど、家族ならきっと事前に内容を知っているだろうと思ったからだ。

隆は少し首を傾げながら答える。

「今度発売の写真集ならうちにあるぞ。寧々も姉ちゃんの写真集が欲しいのか?」

「違うよ。街で話題になってるから、気になっただけ」

と寧々は慌てて答える。学業、戦い、そして特訓に明け暮れる奈理子が、いつ撮影の時間を作ったのか不思議に思っていた。

「春休みに撮影に行ってたんだ。街でよく見かけるパンチラポスター、あれ、実は白い水着でパンチラじゃないぞ」

と、隆は寧々が聞いてもいないことまで説明する。

「へえ、そうだったんだ…」

と寧々は頷く。春休みの奈理子と言えば、ウデムシ男に狙われていた頃だ。ウデムシ男の他にも、ニンニク男エビカブトンなど、奈理子は戦いに明け暮れていた。それでも、写真集の撮影までこなすなんて、本当にすごいなと、改めて彼女の凄さを感じた。

街でよく見かける奈理子のパンチラポスターが盗難騒ぎになるほど話題になっているのを知っていた寧々は、

「奈理子さんには敵わないなぁ」

とぽつりと呟いた。

「ネットには姉ちゃんの動画がたくさん転がってるのに、健全な写真集も欲しがる奴がいるんだな」

と隆は少し不思議そうに言った。水着とはいえ、パンチラに見せかけた写真が本当に健全なのかどうか、寧々は頭の中で思わず考え込んでしまう。

そのとき、不意に町内放送が響いた。

「水都公園でミラクルナイトと謎の怪人が交戦中!」

という緊急のアナウンスだった。

寧々の目が鋭く光る。

「私、行って来る」

と彼女は短く告げる。

「謎の怪人だ。気を付けろよ」

と隆は寧々の肩を掴んで引き止める。

「私の使命はミラクルナイトを守ること。奈理子さんは私が守るわ」

と寧々は決意を込めて言うと、

「キャンディスイーツ、ドリームキャンディ!」

と呪文を唱え、その瞬間、彼女の体は黄色い光に包まれ、ドリームキャンディへと変身した。

隆はその姿を見送りながら、心の中で彼女の無事を祈っていた。彼もまた、自分の役割を果たすべく、何かを考え始めていたのだった。


寧々と隆が町内放送を聞く少し前のこと、水都公園の遊歩道を歩いて帰宅途中の奈理子。爽やかな水色のセーラー服を身に纏ったその美少女の姿は、通りかかる市民たちを自然と振り返らせる。彼女の姿がこの街の日常風景に溶け込むように、美しさと清純さが漂っていた。

しかし、そんな穏やかな日常を突如として打ち破るかのように、奈理子の前に現れたのは、見たこともない異様な姿をした怪人だった。

「何…?」

放課後に襲われることには慣れている奈理子も、目の前の異形に思わず身を引く。サザエのような貝殻を背負い、毛を生やしたミミズのようなその姿。まるで悪夢から現れたかのような怪人が彼女を見据えた。

「俺はゴカイサザエ。訳あって、奈理子を襲わせてもらう」

その言葉に、奈理子は困惑しながらも戦闘態勢を整えようとする。

「ゴカイ?サザエ?新型の合成怪人ね…。変身中は襲ってこないでよ!」

内心の不安を押し隠し、彼女はアイマスクを取り出した。

その様子に気づいた公園の市民たちが、奈理子の変身シーンを見ようと集まってくる。

「奈理子ちゃん、頑張って!」

「奈理子、変身だー!」

声援が飛び交う中、奈理子は意を決してアイマスクを装着した。

瞬間、水色の光に包まれた奈理子の姿が、まばゆい変化を遂げる。水都女学院の水色のセーラー服が一瞬で消え、純白のブラショーツだけの姿が露わになる。その清純さを体現するような無防備な姿に、市民たちは息を呑んだ。しかし、それはほんの一瞬のこと。奈理子の黒髪に可愛らしい白いリボンが結ばれ、白いブラウス、胸に水色のリボン、手足にはグローブとブーツが次々と現れ、最後に純白のショーツを優しく包み込むように白いプリーツスカートが広がった。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

ミラクルナイトへと変身を遂げた奈理子が高らかに宣言する。その瞬間、風が彼女のスカートをふわりと舞い上げ、純白のショーツが一瞬だけ市民たちの視界に映る。

「奈理子、今日も可愛いぞ!」

市民たちの熱い声援が響き渡る。しかし、ゴカイサザエは薄笑いを浮かべながら、その華奢な身体を品定めするように見つめた。

「可哀想だが、三分後にはファンの前で無様に敗北した姿を晒すことになるぜ」

ミラクルナイトはその不気味な宣告に、心の奥に湧き上がる不安をかき消すように小さく呟く。

「負けないわ…」

その言葉は、彼女自身に言い聞かせるようでもあった。

そして、緊張が張り詰める中、ミラクルナイトとゴカイサザエの戦いの火蓋が切って落とされた。


ミラクルナイトは、かつてゴカイ男との戦いを思い出そうとしていた。卑劣な手段で捕らえられたものの、ライムに助けられた記憶が蘇る。ゴカイ男はそれほど強くなかったはずだ。だが、今目の前にいるゴカイサザエは、サザエの殻を持つだけあって守りが堅そうだ。それに加え、ゴカイの能力は何だったか…。考えを巡らせるミラクルナイトの隙をついて、

「何ボーっとしてんだ」

とゴカイサザエが触手を伸ばしてきた。

「ひゃぁッ!触手?!」

驚くミラクルナイト。前に戦ったゴカイ男は触手を使わなかったため、彼女は完全に不意を突かれた。

「ああ~ッ!」

その瞬間、ミラクルナイトは触手に絡め取られ、四肢を拘束されてしまった。

「フハハハッ!水都の絶対アイドル、野宮奈理子。お前の身体を利用させてもらうぞ!」

ゴカイサザエの不気味な笑い声が響く。

「こんなもの…」

ミラクルナイトは必死にミラクルパワーを振り絞り、触手を弾き飛ばそうと試みた。しかし、力が入らない。触手が彼女の身体を締め付け、ミラクルナイトのスカートを無情にも捲り上げていく。その下からは、奈理子の純白のショーツが露わになってしまった。

「あぁ…」

ミラクルナイトの意識が次第に遠のいていく。身体に絡みつく触手が、まるで彼女の力を吸い取っているかのように感じられた。

「この触手には毒があるんだぜ」

ゴカイサザエが不気味に呟くと、ミラクルナイトの身体はまるで糸が切れた人形のようにガクンと弛緩した

その時、水都の町内に

「ミラクルナイトと謎の怪人が交戦中」

と警報が鳴り響いた。しかし、放送が響き渡った時には、すでにミラクルナイトは敗北し、失神していた。触手に弄ばれるミラクルナイトを救うため、ドリームキャンディは一刻も早く駆けつけなければならない。彼女の戦いはまだ終わっていない。急げ、ドリームキャンディ!


黄色い光が水都公園に降り注ぎ、ドリームキャンディが勇ましく現れた。彼女の視線が捉えたのは、ゴカイサザエに両足首を掴まれ、Y字に逆さ吊りにされているミラクルナイトの無残な姿だった。スカートは重力に引かれ、捲れ上がった裾から、彼女の清純の証である白いショーツが、市民たちの前に無防備に晒されていた。意識を失ったままのミラクルナイトが、自分がどれほど屈辱的な状況にあるかを知らないことが、せめてもの救いだった。

「女の子にこんな恥ずかしい格好をさせるなんて、絶対に許せない!」

怒りが爆発したドリームキャンディの叫び声が公園に響く。

「アイドル気取りでいい気になっている奈理子に、お仕置きをしてやっているのよ」

と冷たく響く女の声。ドリームキャンディが振り向くと、そこにはシオマネキ女が立っていた。

「シオマネキ女!」

ドリームキャンディは叫び、さらに状況が悪化していることに気づく。

「僕もいるよ」

と背後から静かに声が響き、現れたのはウミウシ男だった。

「どうして、あなたたちが…」

ドリームキャンディの声には困惑が滲んでいた。ゴカイサザエとの戦いだけでも手一杯の状況に、さらにシオマネキ女とウミウシ男という強敵が加わったことで、彼女は絶望的な状況に追い込まれていた。

「テントウムシ女が生ぬるいから、一度だけ代わってもらったのよ」

とシオマネキ女が軽く笑みを浮かべた。そして、その笑みは冷酷なものへと変わり、

「奈理子のお仕置きの仕上げは、貴女がするのよ」

と告げる。

「どうして私が奈理子さんにお仕置きしなきゃならないの?!」

ドリームキャンディは嫌な予感に襲われた。彼女の不安を見透かすように、シオマネキ女はゴカイサザエに向かって声を掛けた。

「ゴカイサザエ、準備はできた?」

「もう、奈理子は俺の可愛い人形さ」

と嘲笑を浮かべながら、ゴカイサザエは意識を失ったままのミラクルナイトをシオマネキ女の方へと投げ渡した。

ミラクルナイトを受け止めたシオマネキ女は、冷酷な微笑を浮かべながら彼女の耳元に囁く。

「さあ、奈理子。これから始まるショーの主役は貴女よ。せいぜい頑張ってね」

その瞬間、ミラクルナイトの瞳が開いた。しかし、その鋭い視線は、かつての友ではなく、敵意に満ちた目でドリームキャンディを見据えていた。

「やっぱり、奈理子さんは洗脳されている…」

ドリームキャンディは状況を理解した。敵の術中に陥ったミラクルナイトを前に、彼女は奈理子を救うための決断を迫られる。周囲の奈理子ファンである市民たちが固唾を呑んで見守る中、ドリームキャンディは覚悟を決めた。自分の友であり、守るべき存在であるミラクルナイトを取り戻すための戦いが、今始まろうとしていた。


ミラクルナイトの右ハイキックが鋭く飛ぶ。ドリームキャンディは左腕で軽々と防御し、その瞬間、彼女の面前にミラクルナイトの純白のショーツが露わになる。汗ばむ肌にほんのりと湿ったクロッチが、光の下でほのかに輝く。さらに、続けて回し蹴り。しかし、それもドリームキャンディは軽やかに躱した。

「奈理子、頑張れー!」

「奈理子の生パン、最高!」

水都の絶対的なアイドル、野宮奈理子。その奈理子が変身したミラクルナイトは、動くたびにスカートが舞い、彼女のショーツがチラリと覗く。市民たちは無責任な声援を送り、ミラクルナイトのパンチラアクションを楽しんでいた。しかし、操られた奈理子はその聖なる力を十分に発揮できていない。ドリームキャンディにとって、今のミラクルナイトは、あまりにも非力だった。

「またか…」

ドリームキャンディは、敵に操られたミラクルナイトと戦うのはこれで何度目だろうか、と考える。彼女はシオマネキ女に冷静に問いかけた。

「貴方たちは、奈理子さんに何をしたの?」

それに答えたのは、ゴカイサザエだった。

「俺の毒だよ。相手を操る効果がある。奈理子はもはや俺たちの操り人形に過ぎないのさ」

その言葉を聞き、ドリームキャンディは決断を下す。操られた奈理子を正気に戻すには毒を浄化するしかない。ミラクルナイトの聖なる力は時間が経てば毒を浄化することはできるが、それまでは待てない。今はミラクルナイトを戦闘不能にするしかないと彼女は覚悟を決めた。

「奈理子、頑張れ!」

とミラクルナイトの可憐なアクションを無邪気に叫ぶ市民たち。その声援を浴びながらも、ミラクルナイトは無意識のまま戦い続ける。ドリームキャンディは、奈理子が何度も敵に操られ、そのたびに市民から声援を受ける姿に、次第に怒りが込み上げてきた。スカートを翻しながらローリングソバットを仕掛けるミラクルナイトを平然と避け、ドリームキャンディは素早く背後に回り込み、ミラクルナイトを高々と抱え上げた。

「何度敵の玩具にされれば気が済むんですか!」

怒りの叫びを上げる。

バックドロップだ。奈理子、気を付けろ!」

市民は尚もミラクルナイトに声援を送り続ける。

「違います!」

と叫びながら、ドリームキャンディはミラクルナイトを膝に向かって落とし、強烈なアトミックドロップを叩き込む。尾骶骨に衝撃を受けたミラクルナイトは、脱力し、そのまま動かなくなった。

「まだ終わりません!」

ドリームキャンディ怒りは収まらない。そのままミラクルナイトを持ち上げ、後方に投げ飛ばす。見事なブリッジでミラクルナイトを固めたバックドロップホールド。まんぐり返しの体勢のまま、ミラクルナイトは完全に戦闘不能となった。

「さあ、次は貴方たちの番よ!」

ドリームキャンディは、シオマネキ女とゴカイサザエを睨みつけながら、毅然とした声で言い放った。同じようなシーンが過去にもあったな、と思いながら…。


ドリームキャンディはウミウシ男、シオマネキ女、ゴカイサザエを睨みつける。しかし、シオマネキ女は余裕たっぷりにパンパンパンと拍手をしながら近づいてきた。

「さすが中学生戦士ドリームキャンディ。高校生の奈理子に対して、見事なお仕置きっぷりだったわ」

シオマネキ女は、まんぐり返しになって無防備に晒されたミラクルナイトの姿に満足そうな笑みを浮かべている。奈理子の白いショーツが市民の前に晒され、ファンたちも熱狂している光景にシオマネキ女は満足げだった。

「奈理子も、自慢のパンツをこれだけ大勢に見てもらって、さぞかし満足だろうね」

とウミウシ男も同調する。

「奈理子さんをこんな目に遭わせるなんて、絶対に許せない!」

ドリームキャンディの怒りが頂点に達する。

「でも、奈理子をこんな目に遭わせたのは貴女よね」

と、シオマネキ女は嘲笑を浮かべながら言い放つ。

「君の相手をするのは僕たちじゃないよ。このゴカイサザエが担当するからね」

ウミウシ男がゴカイサザエを指し示す。

ゴカイサザエが前に進み出て、ニヤリと笑う。

「奈理子は弱すぎて、俺の力を十分に発揮できなかった。次はお前で試してやるよ、ドリームキャンディ」

ドリームキャンディは内心でホッとする。シオマネキ女とウミウシ男が強敵であることを十分に知っていた彼女は、三対一で戦うのは無理だと感じていた。だが、ゴカイサザエとの一対一ならまだ勝機がある。

「奈理子さんをこんな目に遭わせたゴカイサザエは絶対に倒してみせます!」

ドリームキャンディは失神しているミラクルナイトにそう語り掛けながら、奈理子の濡れたクロッチを撫でていた。もちろん、ミラクルナイトは反応しない。

ゴカイサザエの触手がドリームキャンディに向かって襲いかかる。

「キャンディチェーン!」

ドリームキャンディはキャンディチェーンを振り回して触手に立ち向かうが、シオマネキ女は楽しそうに笑っていた。

「飴ちゃんの鞭は一本だけど、ゴカイサザエの触手は何本もあるわよ。防ぎきれるかしら?」

シオマネキ女の冷やかしの声が響く。

「くッ!」

ドリームキャンディは一本のキャンディチェーンでは無数の触手を防ぎきれないことを悟る。触手が徐々に彼女のドレスを引き裂いていく。

「近距離戦なら…!」

そう判断したドリームキャンディは、触手をかわしながらゴカイサザエに突進する。

「ロリポップハンマー!」

キャンディチェーンを巨大なチュッパチャプス、ロリホップハンマーに変形させ、渾身の力でゴカイサザエに向かう。

だが、ゴカイサザエは待っていたかのように笑い声を上げた。

「待ってたぜ、この瞬間を!」

彼の背中のサザエの貝殻がドリームキャンディに向かって投げつけられる。

「貝殻なんて、粉砕してやるわ!ロリポップ凄い突き!!」

ドリームキャンディは大きな貝殻に向かって鋭い突きを放つ。しかし、その突きの勢いのまま、彼女は巨大な巻き貝の中に吸い込まれてしまった。

「これがサザエの渦巻きトラップだ!」

ゴカイサザエが得意げに叫ぶ。ドリームキャンディは、巨大な巻き貝の中に閉じ込められ、出口のない渦の中で身動きが取れなくなってしまった。

ドリームキャンディの姿が貝殻の中に消え、周囲には静かな緊張が漂っていた。


サザエの中に吸い込まれ、姿を消してしまったドリームキャンディ。そして、ミラクルナイトは「まんぐり返し」の無防備な姿勢のまま、気を失っている。彼女たちの無様な敗北を目の当たりにした市民たちは、息を呑んでその場の成り行きを見守っていた。

「無様な姿ね、奈理子。」

シオマネキ女が嘲笑を浮かべながら、奈理子の濡れたクロッチ越しに彼女の大切な箇所を撫でる。ミラクルナイトの無反応な姿は、まるで彼女を完全に支配していることを示していた。

「ミラクルナイトも、ドリームキャンディも、所詮はこの程度さ。水都のヒロインも俺の手にかかれば無力だ。」

ゴカイサザエが勝ち誇ったように言い放つ。

しかし、ウミウシ男は冷静だった。

「喜ぶのはまだ早い。まだ、風間凜が残っている。」

この言葉に、市民たちの間に再び希望が灯る。

「そうだ、まだ凜ちゃんがいるぞ!」

「きっと、奈理子のピンチを知って来てくれるはずだ!」

シオマネキ女はそれを聞いて冷笑を浮かべた。

「裏切り者の風間凜一人で、何ができるというの?」

そう言うと、彼女はミラクルナイトの尻を軽く叩き、無防備なまんぐり返しの姿勢を崩れさせた。ミラクルナイトは横向きに倒れ、そのまま無反応で眠り続けている。

そのとき、空から緑色の光が急降下してきた。

「来たぞ!」

市民が歓声を上げ、光を指し示す。緑色の光が水都公園に着地すると、そこに現れたのは風の戦士セイクリッドウインドだった。

「凜ちゃんだ!」

「奈理子とキャンディを助けてくれ!」

市民たちは再び盛り上がり、歓声が響く。

「え?何??」

セイクリッドウインドはいきなりの大声援に戸惑いながらも、倒れたミラクルナイトを見つけ、駆け寄る。

「奈理子!」

と叫びながら彼女を抱き起こすが、ミラクルナイトはまだ意識が戻らない。しかし、スカートとパンツは脱がされていないことに、少しホッとした。

「キャンディは?」

と周囲を見渡し、敵の姿を確認する。ウミウシ男、シオマネキ女、そして見慣れない怪人がいる。

形勢は明らかに不利だ。セイクリッドウインドはさらに目の前の巨大なサザエに気付く。

「何これ?」

と不思議そうにサザエを見つめる。

「キャンディが中にいるんだ!」

市民の一人が声を上げて知らせる。

「はぁ?キャンディがこの中に?」

セイクリッドウインドは信じられない様子でサザエを見つめる。すると、謎の怪人が不敵な笑みを浮かべて言った。

「そうさ、俺がドリームキャンディをサザエの中に封じ込めたんだ。」

「アンタ、誰?」

セイクリッドウインドはガストファングを構え、警戒を強めた。

「俺はゴカイサザエ。お前も奈理子のように晒し者にしてやるさ。」

そう言うと、ゴカイサザエの体から無数のゴカイが生え、触手のように蠢き始めた。

セイクリッドウインドは決意を固め、ガストファングを握り締めた。

「そんなこと、させるものか!」


「凜ちゃん、その触手には毒があるぞ!」

「奈理子はそれでやられたんだ!」

市民たちがセイクリッドウインドに声をかけ、警告する。セイクリッドウインドは横たわるミラクルナイトを一瞥し、彼女の状況を確認する。ミニスカートから覗く白い太股とパンツが痛々しいほど無防備な姿をさらしていた。

「奈理子をこんな目に合わせた奴は許さない!」

セイクリッドウインドの瞳に怒りが燃え上がる。すると、ゴカイサザエの無数の触手が彼女に向かって襲いかかってきた。

「エアリアルダンスブレード!」

セイクリッドウインドは鋭い声と共にガストファングを振り、無数の風の刃が触手を次々と斬り裂いていく。

「釣りの餌なんかには負けない!」

と舞うように攻撃を繰り出すセイクリッドウインド。彼女は次々と風の刃を放ちながら、ゴカイサザエの触手を容赦なく打ち払っていった。そして、ガストファングを天に掲げると、巨大な竜巻が発生し、瞬く間にゴカイサザエを巻き込んだ。

「ゴカイサザエ、逃げるんだ!」

ウミウシ男が叫ぶも、ゴカイサザエは逃げる術を持たなかった。防御用のサザエの殻も、ドリームキャンディを閉じ込めるために身につけていないのだ。

「ウミウシ男、あんたも一緒に飛ばしてやるよ!ウィンドサイクロンスラッシュ!」

巨大な竜巻が瞬く間にウミウシ男とゴカイサザエを飲み込む。竜巻に巻き上げられ、ゴカイサザエは空中で風の刃に体を斬り刻まれていく。

竜巻が収まり、ゴカイサザエの体が地面に叩きつけられた。

「おのれ…風間凜。だが、こんなものでは死なんぞ…」

ゴカイサザエは再生能力で回復しようとしたが、その瞬間、セイクリッドウインドは冷徹にガストファングを振りかざした。風の刃がゴカイサザエを真っ二つに切り裂き、彼の体は徐々に消滅していった。

「アンタは飛ばせなかったみたいね。」

セイクリッドウインドは視線をウミウシ男に向けた。彼は体を地面に吸着させ、竜巻を耐えていたのだ。

「ゴカイサザエを倒したことは誉めてやるよ、風間凜。しかし、奈理子を見ろ。」

ウミウシ男がミラクルナイトを指さす。セイクリッドウインドがその方向を見ると、シオマネキ女が気を失ったままのミラクルナイトの首に電磁鋏を当てていた。

「奈理子は僕たちの手の内にある。さあ、その鉄扇を捨てるんだ。」

ウミウシ男が静かに告げた。

「くッ…!」

セイクリッドウインドは、悔しさを噛みしめながら、ガストファングを地面に落とした。

「いい子だ、風間凜。」

ウミウシ男が不気味に笑う一方、セイクリッドウインドはまだ諦めていなかった。自らの武器を捨てたとしても、仲間を守るための決意は揺るぎない。


水都公園の騒然とした空気の中、シオマネキ女はゆっくりとミラクルナイトの襟元から電磁鋏を滑らせ、コスチュームを斬り裂いていった。

「やめなさい!言われた通り、ガストファングは捨てたでしょう!」

セイクリッドウインドが怒りを露わにして叫ぶ。

「ふふっ、奈理子にはこの姿が一番似合うのよ。写真集の奈理子よりも、ずっと可愛い奈理子を見せてあげるわ」

シオマネキ女は不敵な笑みを浮かべ、さらに鋏を進める。ブラウスはぱっくりと開かれ、スカートは無惨にも落ち、奈理子の素肌と清純な下着が市民の前に晒されてしまった。

「奈理子、可愛いよ!」

「シオマネキ女、もっと見せてくれ!」

「アイマスクも外して、奈理子の素顔を見たいんだ!」

ミラクルナイトの美しすぎる姿に興奮した市民たちの声が一斉に上がる。

「貴方たち…」

セイクリッドウインドは呆れ果てた。彼女の仲間が倒れているというのに、無責任な声援を送る市民たちに失望感が募る。

「じゃあ、見せてあげるわ」

シオマネキ女は市民たちの要望に応え、ミラクルナイトのアイマスクを取り去った。失神している奈理子の可憐で儚い素顔が現れ、その美しさに市民は再びため息を漏らす。シオマネキ女は、無抵抗のミラクルナイトを抱え上げ、まるで撮影会が始まったかのようにポーズを取らせる。

そのとき、

「奈理子ちゃん、目を覚ますんだ!」

と突然声が響いた。水都大学の奈理子私設ファンクラブ、通称「MNSFC」の会長である成好が前に出てきたのだ。彼の背後にはMNSFCの会員たちの手により大きなミラクルナイトの横断幕が掲げられている。

さらに、

「姉ちゃん、起きろ!」

ともう一つの声が。ミラクルナイトを「姉ちゃん」と呼ぶ者は一人しかいない。奈理子の弟、隆だ。彼の登場に市民がどよめいた。隆は、ドリームキャンディに変身した寧々を追って水都公園まで来たが、それは戦に敗れたミラクルナイトは気を失い、ドリームキャンディが閉じ込められた後だった。

「姉ちゃん、いつまで寝てんだ!早く起きろ!」

隆が懸命に叫ぶ。

その声を受けて、成好が勇敢にシオマネキ女の前に立ちはだかった。

「シオマネキ女、君は奈理子ちゃんの好敵手として、水都市民から認められている存在だ。だが、今日、奈理子ちゃんを倒したのはゴカイサザエだ。君ではない。君は正々堂々と奈理子ちゃんと勝負すべきだ!」

成好の言葉に、市民たちは息を呑み、そして、シオマネキ女も一瞬驚いた表情を見せた。

「私と戦っても結果は同じよ」

とシオマネキ女は冷ややかに答えたが、すでに市民たちは成好の意見に同意していた。

「そうだ!シオマネキ女、奈理子と戦え!」

「他の奴が倒した奈理子をいじめるのは卑怯だ!」

と次々に声が上がる。今まで喜んでミラクルナイトの姿を撮影していた市民たちも、急にシオマネキ女に対して公平な戦いを要求し始めたのだ。

市民の声援が奈理子コールへと変わっていく。まるで奈理子の復活を期待するかのように、声はますます大きくなっていった。

「この人たち…」

市民の変わり身の早さに、セイクリッドウインドは呆れながらも、彼女自身の心も少し軽くなった。そして、

「さすが、奈理子ファンクラブの会長ね」

と成好の行動に感謝し、無意識に

「奈理子、目を覚まして…」

と呟いた。


盛大な奈理子コールが響き渡る中、シオマネキ女は、市民の熱狂的な大声援を浴びるミラクルナイトを叩きのめす喜びを思い出していた。

「でも、奈理子はもう終わりよ」

と言い放ち、気を失ったままのミラクルナイトを無情に投げ捨てた。

「奈理子、しっかり!」

セイクリッドウインドが慌てて駆け寄り、ミラクルナイトの身体を揺さぶる。

「奈理子、起きろー!」

と市民も必死に声を上げる。その声に応えるように、ミラクルナイトの瞳がゆっくりと開かれた。

「凜さん…私、ゴカイサザエに負けたの……?」

ミラクルナイトは、ゴカイサザエの触手に捕らえられたところから先の記憶が無かった。セイクリッドウインドは、サザエの貝殻に視線を送る。

「ゴカイサザエは退治したけど、ドリームキャンディがあの中に閉じ込められているのよ」

それを聞いたミラクルナイトは、驚きに目を見開く。

「キャンディがあの中に?!嘘でしょ…」

その事実に奈理子の目は一気に覚めた。しかし、同時に、自分のブラウスが開け放たれ、スカートを穿いていないことにも気付き、慌てて胸を押さえた。

「そうだ、今頃ドリームキャンディはサザエの迷宮を彷徨っているだろう」

とウミウシ男が不敵に笑う。

「さあ、奈理子はどうする?また私と戦って、無様に負けるつもり?」

とシオマネキ女が挑発する。

「キャンディをサザエに閉じ込めるなんて!」

ミラクルナイトは全身の痛みに耐えながら立ち上がり、シオマネキ女を鋭く睨みつけた。

「奈理子が復活したぞー!」

市民たちは歓喜に包まれる。白いブラを隠しきれないボロボロのブラウスに、純白のパンティが露わになっているミラクルナイトの姿は、市民たちにとって絶対的なアイドルの姿そのものだった。

しかし、セイクリッドウインドは冷静だった。

「ダメよ、奈理子。まだゴカイサザエに受けたダメージが回復していないの。今戦えば危険すぎる」

と必死に制止する。しかし、シオマネキ女は嘲笑を浮かべ、

「風間凜の言う通り、奈理子に勝ち目なんてないわ。負ける前にやめておいたら?」

と奈理子を挑発し続ける。

「止めないで、凜さん!」

ミラクルナイトはセイクリッドウインドの制止を振り切り、声を振り絞る。

「シオマネキ女は私の宿敵なの。今日こそ決着をつける!」

その決意は強かった。

しかし、シオマネキ女は冷酷に笑みを浮かべた。

前回の戦いで失神してお漏らししたのは誰だったかしら?もう決着はついていると思うけど?」

奈理子を嘲りながら、一層余裕を見せる。

「ミラクルナイト対シオマネキ女だ!」

「奈理子、今日は負けるな!」

市民たちは熱狂し、声援がますます大きくなっていく。数多くの名勝負を繰り広げてきた二人の対決に、誰もが期待を寄せていた。

奈理子の細い脚が震えている。ゴカイサザエの毒が体内に残っており、完全には回復していない。それでも、市民の熱い声援を受け、覚束ない足取りながらも、ミラクルナイトはシオマネキ女に向かって駆け出した。

「奈理子…」

セイクリッドウインドは、その背中をただ見守るしかなかった。負けると分かっていても、宿命の敵との対決を避けることはできない。その戦いが始まることを、彼女も、そして市民も、誰も止めることができなかったのだ。


青蟹の悪魔」の異名を持つシオマネキ女。その前に立ちはだかるミラクルナイトは、ゴカイサザエの毒に侵され、もはや満足に動くことすらできなかった。彼女の必死のパンチは、シオマネキ女にとってまるで赤子のようなもの。余裕で躱したシオマネキ女は、左腕の電磁鋏でミラクルナイトのブラウスを斬り裂き、右手で奈理子のブラとショーツを容赦なく剥ぎ取った。

「あぁ…」

か細い声を漏らすミラクルナイト。しかし、抵抗する力は彼女の身体には既に残っていなかった。黒髪を飾る白いリボングローブブーツだけが残された無防備な姿。シオマネキ女はミラクルナイトを軽々と持ち上げ、その股間に指を挿入する。

「あぅッ!」

奈理子の悲鳴は儚く、次の瞬間、シオマネキ女のシュミット式バックブリーカーが彼女を襲い、背中を激しく膝に叩きつけられた。

「くぅ…」

そのままミラクルナイトは再び意識を失った。水都公園に集まった市民たちは、あまりに一方的に終わった戦いの行方にただ静まり返るばかりだった。シオマネキ女は「くちゅくちゅ」と音を立てながら、気絶したミラクルナイトを弄ぶ。

「よくやった、シオマネキ女。『青蟹の悪魔』の完全復活だな」

とウミウシ男が彼女の勝利を称える。

「ふふっ、奈理子の写真集発売記念に、もう少し彼女を楽しませてあげるわ」

シオマネキ女はミラクルナイトを抱え、ウミウシ男とともにその場を去っていった。

「だから止めたのに…」

セイクリッドウインドは深い溜息をつき、残されたミラクルナイトの痕跡に目を向けた。脱ぎ擦れられた奈理子のブラとショーツを手に取り、ふと目に止まったのは、巨大なサザエの殻。中に閉じ込められたドリームキャンディのことを思い出し、

「キャンディを助けなきゃ…」

と呟いた。どうやったら中のドリームキャンディをたすけられるのか考えながらガストファングで軽くサザエを叩くと、それはポロポロと崩れ、風に乗って砂のように飛び散った。ゴカイサザエが消滅したことで、その力も失われたのだ。

サザエが消えると同時に、ドリームキャンディの姿が現れた。

「キャンディ、大丈夫?怪我はない?」

セイクリッドウインドは急いで彼女を抱き起こす。

「中は迷路みたいで、もう一生出られないかと思った…」

ドリームキャンディはセイクリッドウインドの胸に顔を埋め、わんわんと泣き出した。

「寧々、無事でよかった」

隆が手を差し差し伸べると

「隆~、怖かった~!」

とドリームキャンディはセイクリッドインドの胸から離れ、隆に抱き着いた。抱きしめ合うドリームキャンディと隆。

ミラクルナイトは連れ去られたものの、ドリームキャンディが無事に救出されたことにより、水都公園の市民の間には少しの安堵の空気が広がった。

そんな中、成好はミラクルナイトが連れ去られた方向を見つめ、

「奈理子ちゃんはどこに連れて行かれたんだ…」

と呟いていた。

その頃、水都タワー前広場では、奈理子写真集の巨大広告の前に、大の字に裸のまま磔にされたミラクルナイトの姿があった。広告には女子校生風の制服を身に纏い、笑顔で輝く奈理子。そして、現実には無様に敗北失神し、無防備な姿を晒す奈理子。その対照的な姿に、市民たちは衝撃を受け、ミラクルナイトの自己犠牲と美しさに胸を打たれた。

野宮奈理子の人気は更に過熱した。発売された奈理子写真集は過去最高の売上を記録する。初版は予約し、重版が重ねられることになる。

「これだけ売上に貢献したんだから、奈理子に感謝してもらわなきゃね」

とウミウシ男である牛島は笑みを浮かべた。彼は特典DVD付きの奈理子写真集を予約し、既に手に入れていた。

「こんなはずじゃなかったのに…」

と肩を落とすシオマネキ女の渚。彼女の計画は、奈理子を辱めることで彼女の人気を貶めるつもりだったが、逆に奈理子写真集の売上に貢献する結果となってしまった。

「見てなさい、奈理子。次こそは、必ず…」

奈理子に決定的な恥辱を与えることを胸に誓う渚の瞳には、再び炎が灯っていた。

第149話へつづく)

あとがき