ミラクルナイト☆第236話
放課後の陽光は、橙色に傾いていた。奈理子は、一人運河沿いを歩いていた。水色襟のセーラー服にプリーツスカート。いつもの自分だ。運河に架かる古いコンクリートの橋の下へ、彼女は足を踏み入れた。上の遊歩道とは違う世界。車の音も、人の声も、ここでは遠く聞こえるだけだった。
突然、背後から強い力が、彼女を橋の桟に押さえつけた。
「きゃっ!」
奈理子は、息をのんだ。振り返ろうとした。その瞬間。
「声を出すな。振り向いたら、殺す」
耳元で低い声が囁かれた。その声は冷たく、しかし、どこか懐かしくもあった。
男の手が、奈理子の紺色のプリーツスカートを巡る。指先が、生地の上を滑るように動き、彼女の体が震える。そして、その手は、彼女の最もデリケートな場所を覆う白いショーツに達した。
「…!」
彼の指が、その上を優しく撫で回した。
「…もう、濡れてるじゃないか」
男は、嘲るように、言った。
「嘘…」
奈理子は、涙を流した。自分の体が裏切っていること。この屈辱的な状況に反応していることを、認めたくなかった。
男の手が、彼女のショーツを膝までゆっくりと下げた。涼しい風が、彼女の肌に触れた。
「お願い…やめて…」
彼女の哀願は、届かなかった。
男の指が、彼女の秘められた裂け目に、そっと触れた。そして、その濡れ具合に、男は再び嘲る。
「すごいな、こんなに、ヌレヌレになってるなんて」
「いやぁ…やめてぇ…」
彼の指が、中に滑り込んだ。奈理子は、手で口を押さえた。声が漏れないように。誰かに聞かれてはいけない。だが、その快感は抑えられなかった。
男の硬く熱いモノが、彼女の背後から、その濡れた場所に押し付けられた。
「…あくっ!」
橋脚のコンクリートに手をつき、立ちバックで犯される。奈理子は、歯を食いしばり、声を殺した。彼の腰の動きが激しくなるたびに、彼女の体は小さく跳ねる。快感と羞恥心が渦巻き、彼女の意識を溶かしていく。
男の動きがさらに荒くなる。彼の息遣いも乱れてきた。彼のclimaxが近いことを奈理子は感じた。
「お願い…中は、ヤメテ…」
彼女は、哀願した。だが、彼の動きは、止まらなかった。
「…ぐうっ!」
男は、そのまま彼女の中に発射した。熱い何かが、彼女の奥深くに広がるような気がした。
力が抜け、奈理子は、その場に崩れ落ちた。
学ランを着た男が、彼女を抱き起こした。そして、彼は、優しく奈理子にキスをした。
「んんッ…ライム…」
奈理子は、呟いた。
男は、ライムだった。彼は、コンドームを外し、奈理子に口でお掃除をしてもらった。
奈理子とライムの"レイプごっこ“だった。
「…ふぅ…」
重い息を一つ吐き出して、ライムは、奈理子の頭を優しく撫でた。彼女は、まだ、橋の桟にもたれかかったまま、夢うつつの顔をしていた。制服のスカートはめくれ上がり、穿いていたはずの白いショーツは、彼の手に握られていた。ライムは、優しく奈理子の大切な箇所を拭いてやった。
「大丈夫だったか、奈理子」
「…うん…ライムの、おかげで…元気になった…」
奈理子は、彼の胸に顔を埋めた。その声は、か細く、満ち足りた響きを秘めていた。
「相変わらずだな、奈理子は。本気で嫌がるフリが上手すぎる」
「えへへ…バレちゃった?」
「ああ、バレてる。本当に涙を流すとは思わなかったな。下も、触る前からこんなに濡らしやがって」
ライムは奈理子のシミが付いたショーツを広げた。
「…ひどい、ライムは、からかうのが、好きなんだから」
「ああ、好きだ。人に見られるかもしれない状況だと、濡れ具合が全然違うな」
ライムは、そう言って彼女の顎を持ち上げた。そして、再び彼女の唇を奪った。甘い舌の絡み合い。二人の唾液が、混じり合う。
「んん…♡」
「いい声だ、奈理子。もっと、聞かせてほしいな」
「…もう、いやらしい、ことばかり…♡」
「ああ、お前のその言い方がいいんだよ、奈理子」
ライムは、彼女の耳に息を吹きかけた。
「今日の戦い、見てたぞ」
「え…テレビで…?」
「ああ、パンツを穿いているのにモザイクで隠されていた。毛がはみ出してたな」
「うぅ…もう、見ないでほしかった…♡」
「いや、見てよかった。お前の、その恥ずかしそうな顔、すごく好きだ」
「…ライムは、本当に変態だね…♡」
「ああ、変態だ。お前をこんな風に、犯して、泣かせて、楽しむ、変態だ」
「…わたしも、ライムに、犯されて、嬉しい、変態…♡」
二人は、顔を寄せ合って笑った。橙色の光が、運河の水面を照らしていた。ここは、二人だけの秘密の場所だった。
「ねえ、ライム」
「ん?」
「この前の、最後の、ミラクルヒップストライク…。どうだったかしら?」
「匂い…?」
「ああ、お前の香りだ。汗と、愛液と、少しの恐怖が混じった香り。俺も受けてみたいな」
「…ダメ。あれは、迫水さんを救うための、特別なものだから…」
「そっか。じゃあ、俺は、この汚れたパンツを、もらうことにする」
「えっ…やだ…恥ずかしいよ…♡」
「文句は、後で、俺に言え。さて、今日は教授に呼ばれているし、行くとするか」
「…うん。頑張ってね、ライム」
ライムは、最後に奈理子の唇をチョンと吸うと、その場を去った。
奈理子は、一人橋の下に残された。彼女は、ゆっくりと体を起こし、スカートを直した。穿いていないことに、気づいて、顔を赤らめた。彼女は、夕闇に消えていくライムの背中を見送っていた。
その瞳には、先程までの屈辱や恐怖はなかった。ただ、穏やかな愛情だけがそこに、あった。
ライムとの甘い時間の余韻が、まだ、体に残っている。奈理子は、慎重に足を運ばせた。普段は気にもならないスカートの裾の揺れ。だが今日は、無防備さが彼女の肌をかすめるたびに、胸がどきりとした。穿いていない、という事実。それが、小さな秘密のように、彼女の心をくすぐった。
水都の夕暮れは、穏やかで美しい。遊歩道へ一歩足を踏み入れると、そこは、彼女の世界だった。
「奈理子ちゃ~ん!」
「ミラクルナイト、だ~いすき!」
可憐なセーラー服姿の彼女を、見つけて、幼い、子供たちが、駆け寄ってきた。
「あら、こんにちは」
奈理子は、にこやかに手を振った。子供たちは、彼女の笑顔に大喜びで、また、手を振り返す。彼女は、水都市民の絶対的なアイドルだった。その潔白なイメージは、誰もが信じる真実だった。
そんな彼女を、一人の男が観察していた。彼は、影のように街角に身を潜め、彼女の一挙手一投足を見つめていた。
奈理子が子供たちに囲まれ笑顔で応えると、男はそっとその場を離れ、彼女の歩く先に回った。
「奈理子さん、サイン、お願いできますか!」
男は、彼女の前に立ちはだかった。彼の目は、熱を帯びていた。
「え?…はい、もちろんですよ」
奈理子は、少し驚いたが、優しく笑って彼の差し出す色紙とペンを受け取った。
「何に、書きましょうか?」
「『あなたの心に、光はある』と、お願いします」
「えへへ、この前の決め台詞ですね」
「『純白の天使』もお願いします」
「はい!」
彼女は、そう言って色紙にサインを書き始めた。その間、男は、そっと彼女のスカートの裾に、小さな鏡を差し入れた。
「…!」
鏡が映し出した、光景。無防備な太もも。そして、そこに、ないもの。純粋で清らかな白いショーツが、ないこと。
「…はい、お待たせしました」
奈理子は、笑顔でサインを渡した。
「ありがとうございます、奈理子さん!」
男は、深くお辞儀をすると、その場を去った。
彼は、少し離れた場所でスマホを取り出した。そして、ある番号に電話をかける。
「…もしもし、篠宮さん?手黒です」
「…手黒くん…、水都に帰っていたのですか。どうしました?」
電話の向こうからは、暗い男の声が聞こえた。
電話をかけた男は手黒=サボテン男だった。ベネズエラ出張から帰ってきたばかりだ。
「今は篠宮さんが現場監督なんですよね?」
「そうだけど…」
「今がチャンスです。奈理子を襲撃する、絶好のチャンスだ」
手黒は、言った。
「…!どういう、こと、ですか?」
「それあとでのお楽しみで。今なら、必ず奈理子を倒すます」
篠宮の息が、詰まった。
「…本当、ですか?」
「ああ、俺がこの目で確認しました。絶対に成功しますよ。水都公園です」
「…分かりました。そちらへ向かいます。手黒くん、君にも強力してもらいますよ」
「ああ、俺は今から社長に帰国の挨拶に行かなゃいけないので。大丈夫です。篠宮さんとウズムシだけでいけますよ」
「ウズムシ男を使うには九頭先生の了解が…」
「篠宮さん、現場監督なんですよね?ウズムシを自由に使えないんですか?」
「…」
篠宮は言葉が詰まった。今までの現場監督は、ウズムシ男を割と自由に使っていた。だが、篠宮はウズムシ男を使うとき際には、毎回、九頭の許可を得ていたのだ。今まで、九頭に気を使いすぎたのかもしれないと彼は思った。
「わかった。ウズムシ男一個小隊とともに向かう」
篠宮は答えた。
「早くしないと、奈理子が帰っちゃいます。九頭先生には、俺からも伝えておきますよ」
手黒は電話を切ると、奈理子の後ろ姿を見た。
「さて、…奈理子、どれほど成長したか見せてもらうぞ…」
手黒は闇に消えた。
水都公園の出口に差し掛かったあたり。夕闇が、芝生を紫に染め始めていた。噴水の水音だけが、静寂に響く。奈理子は、足早に歩いていた。スカートの裾が、冷たい空気になびくたびに背筋にぞくりとした感じが走る。下着がない、という事実が、小さな恐怖になって、彼女の心を締め付けていた。
(こんなときに、敵に、襲われたら…)
その不安を思わせるように、背後から何かが動く気配。
「…!」
奈理子が、振り返る、間もなく、粘液質の触手が、彼女の足元に伸びてきた。それは、ぬめり光り、気持ちの悪い動きをしていた。
「ひゃっ!」
奈理子は、思わず悲鳴を上げた。触手は、彼女の紺色のスカートの裾を巧みに掴むと、ゆっくりとめくっていく。肌が露出する、感覚。彼女は、反射的にスカートを押さえた。
「!」
だが、彼女は、すぐに立ち直った。ウズムシ男だ。彼女の手が、カバンの中のアイマスクに伸びる。しかし、そこで彼女は躊躇した。変身するときには、一瞬、衣類が消滅する。このまま変身すると、ウズムシ男にショーツを穿いていないことがバレてしまう。ノーパンであることを知られると、スケベなウズムシ男は、彼女にとんでもない悪戯をするに違いない。ウズムシ男は、奈理子にエッチなことをしたいだけだ。市民に悪さはしないだろう。それに、騒ぎが大きくなれば、ドリームキャンディが来てくれるはず。そう、思いをめぐらした奈理子の行動は、早かった。
(逃げよう!)
彼女は、ウズムシ男に背を向けて走り出した。しかし…
「あぁッ!」
その先にも、別のウズムシ男が立っていた。さらにもう一体。彼女は、三体のウズムシ男に、三角形に取り囲まれてしまった。
「奈理子ちゃん、今日は、変身しないの?」
ウズムシ男Aが、嘲笑する。
「奈理子ちゃんの、純白パンティ、今日も、見せてよ」
ウズムシ男Bが、舌なめずりをした。
「俺は奈理子ちゃんのパンティを脱がして、脱ぎたてホカホカのパンティで癒されたいな」
ウズムシ男Cが、卑猥な笑いを漏らす。彼らの粘液質の体からは、嫌な匂いがした。
「こいつら…」
ウズムシ男らの、下衆な視線に、目眩を起こしそうになる奈理子。彼女の心は、恐怖で震えていた。しかし、ノーパンであることをウズムシ男に知られてはならない。彼女は、かたくなに変身を拒んでいた。
公園の静寂は一瞬で破られた。三体のウズムシ男の出現は、決して大した脅威ではなかった。水都の市民は、すでに、何度もこの光景を見ていたからだ。人々は、すぐに集まってきた。しかし、その表情は恐怖ではなく、むしろ、好奇心に満ちていた。
「お、変身してないぞ」
「どうしたんだ、奈理子?」
「まあ、いいや。制服の奈理子ちゃんも可愛いな♪」
若い男たちが、そんなことを、言い合っている。彼らの視線は、奈理子のセーラー服姿に注がれていた。水都女学院の水色襟の紺色セーラー服と紺色プリーツスカート。清純可憐なその姿は、多くの市民の憧れの的だった。
(うわ、みんな見てる…!)
奈理子は、焦りを感じた。彼女は、大手下着メーカー"ミコール"のイメージガールだ。その彼女が、ノーパンであることなど、許されるはずがなかった。彼女のパンチラアクションは、ミコールが彼女をイメージガールに起用した理由の一つなのだから。
人垣が、どんどん大きくなる。そのことに、気をよくした三体のウズムシ男たち。彼らは、奈理子をじろじろと見つめ、いやらしい言葉を次々と投げかけ始めた。
「なぁ、奈理子ちゃん、今日はどんなパンツ穿いてるの?」
「俺は、レースの付いた白いやつに賭けるよ。”Sexy girl”ってヤツ」
「いや、リボンのやつでしょ。初期型”奈理子のショーツ”、使い込んだ木綿の純白パンティ」
「スカート脱がせて、みんなに見せてやろうよ!」
その言葉が、奈理子の心を容赦なくえぐった。羞恥心で、彼女の頬がカッと熱くなる。彼女は、唇を噛みしめ、その視線、耐えようとした。
(どうしよどうしよう!助けを呼ぶしかない!)
彼女の脳裏に蘇る、助けを呼ぶ方法。
(ミラクル・メガホン!なんてものがあれば…)
だが、大声で助けを呼べば、変身を渋っている理由が市民にバレてしまうかもしれない。彼女は、逡巡した。
そんなとき、ようやく、公園にウズムシ男出現の、町内放送が、鳴り響いた。
『ピロピロ…ピロピロ…注意、注意。水都公園にウズムシ男が出現しました。危険ですので、周辺の市民は避難してくだい…』
その声を聞いて、奈理子は、ホッとした。もうすぐ、放送を聞いたドリームキャンディか、セイクリッドウインドが助けに来てくれるはずだ。
(あと、少しだけ…!あと、少しだけ、しのげればいい…!)
だが、その間、ノーパンであることを市民にも、ウズムシ男にも知られずに、この場を切り抜けるには、どうすればいいのか。彼女の頭は、白熱していた。
ウズムシ男たちは、ますます調子に乗ってきた。彼らの触手が、また、奈理子のスカートの裾に伸びようとしていた。
「おいおい、逃げないでよぉ?」
ウズムシ男Cが、滑るような足取りで、奈理子に近づいてくる。その手が、またしても、彼女のスカートの裾を狙った。まるで、じゃれ合う子猫のような無邪気さと、そこにいない、悪意が同居しているような動き。
「もう、やめて!」
奈理子は、声を振り絞る。彼女の身体は軽くひねり、ウズムシ男の手をヒラリとかわした。それは、まるで舞踏のような美しい動きだった。
「うわっ、すげえ!」
「やるな、奈理子ちゃん!」
市民から喝采が上がる。
しかし、奈理子の心には喝采どころか、氷のような恐怖が張り付いていた。スカートをめくられれば、彼女の秘密がすべて曝け出される。
そんな、長閑な光景を陰から、一人の男が眺めていた。ブナシメジ男こと、篠宮だった。彼は、手黒の言葉を信じていた。『今が、奈理子を倒すチャンスだ』と。だが、目の前の光景は、そうは見えなかった。奈理子は、変身しない。だが、それは、油断や慢心から来るものではなかった。彼女の瞳は切迫しており、その動きは必死だった。
(なぜだ…?何が、奈理子を縛り付けている…?)
篠宮は、思考を巡らせる。そのとき、彼の目に、一つの違和感が映り込んだ。いつもの、奈理子の戦い方との違い。彼女の魅力の一つは、パンチラと、それに伴う恥じらいだった。だが、今日の彼女は、恥じらいはあるものの、肝心のパンチラがない。むしろ、懸命にスカートを押さえ、それを見せまいとしている。
(まさか…)
篠宮の頭に、一つの仮説が浮かんだ。それは、あまりに大胆で、あまりに衝撃的だった。だが、それが、彼女の不可解な行動を、すべて説明していた。
(もし、本当に、そうなら…)
彼の唇に、残忍な笑みが浮かんだ。
(これは、とんでもない、チャンスになるかもしれない)
「どうしたんだ、奈理子。変身しないで俺たちと鬼ごっこしたいのか?」
ウズムシ男Cが、粘液を引きながら、再び、奈理子に迫る。その言葉が、奈理子の神経をなで斬った。彼女の表情が歪む。彼女は思わず後ずさるが、その背中には、ウズムシ男Bが壁のように立ちはだかっていた。
「俺たちの期待を裏切るなよ、奈理子ちゃん。今日は生で奈理子ちゃんの純白パンティが見られると楽しみにしていたのに」
ウズムシ男Bが、彼女の耳元で卑猥な囁きを漏らした。その息遣いが、奈理子の首筋に触れ、ぞっとさせる。
「お願い…やめて…」
奈理子は、か細い声で哀願する。彼女の瞳は、もはや、恐怖でいっぱいだった。その縁から溢れた涙が、彼女の頬を伝い落ちる。その姿に、市民からは、さまざまな反応が上がった。
「奈理子ちゃん、可哀想に…」
「でも、パンツは見えないけど、なんかエロくない?泣き顔も最高だな…」
「あの涙、本物だよな…?もっと、奈理子ちゃんの涙が見たい!」
ファンは、もっと過激な野次を飛ばした。
「奈理子ちゃん、いつものパンチラキックやって!」
「早くパンツ見せてよ!」
その、野次に煽られたかのように、ウズムシ男Aが動いた。彼の粘液質の手が光のように伸び、奈理子のセーラー服のスカートを後ろからめくり上げた。
「ひゃあッ!」
奈理子の悲鳴が、夕闇に響いた。
一瞬だけ、スカートの中が見えてしまった。そして、そこには…皆が期待していたものはなかった。見えたのは、桃のように形の良い奈理子の生尻だった。
市民のどよめき。
「…え?」
「…お尻?…Tバックか?」
ウズムシ男たちも、その光景に呆然とした。
「…白じゃない…?」
ブナシメジ男は、その光景を見ていた。そして、確信した。
(…あぁ、そうか。手黒くんは、これを見たのか…)
奈理子は、血の気が引いていくのを感じながら、スカートを必死に押さえた。彼女の秘密が、見られたかもしれない。もはやこれ以上、ここにいることはできない。市民もウズムシ男も、奈理子のスカートの中がどうなっているのか、思いを巡らせていた。
(今だ!)
彼女は、その場から駆け出した。
「また逃げるのか!」
「捕まえろ!」
奈理子の逃走を見て、ウズムシ男たちが叫ぶ。市民の野次も、それに拍車をかけた。
「奈理子、頑張れ!」
「いや、捕まってほしい!」
「お尻、もう一回、確認させてよ!」
奈理子の耳には、すべてが屈辱に聞こえた。日頃の鍛錬の成果を発揮し、彼女は公園を駆け抜けた。パンツを穿いていないから、恥ずかしい。懸命に逃げる、彼女。もう少しで、ウズムシ男を振り切れるかと思われた、そのとき。
彼女の目の前に、一人の怪人が現れた。ブナシメジ男だった。
「あ…」
絶望が、奈理子の胸を締め付けた。
「逃がさいよ」
ブナシメジ男が、低く言う。彼の手から、白い菌糸が伸び、光のように奈理子を追いかけた。それは、まるで生きている糸だった。
「きゃっ!」
菌糸が、彼女の足首と手首に絡みついた。彼女は、体勢を崩し、転びそうになった。だが、菌糸は、彼女を地面に落とさない。彼女の体は、宙に浮き上がり、ブナシメジ男の前に引き寄せられた。
「ひっ…!」
彼女は抵抗したが、菌糸は強く、彼女の身体を支配した。彼女の両足は、強制的に開かれ、M字の形になった。そのまま、ブナシメジ男の目の前に吊るされた。
奈理子の陰毛、陰裂、肛門が、ブナシメジ男の前に露わに、なった。
「いやぁ!見ないでぇ…!」
奈理子の悲痛な叫びも虚しく、夕闇の中で、彼女の秘部は、無防備に晒されていた。
「…ああ、なるほど」
ブナシメジ男は、そう呟いた。彼の目は、奈理子の秘部をじっと見つめていた。
「手黒くんの、言っていたことは、このことだったのか…」
「どうして私が、こんな目に…」
羞恥に奈理子の身体は震えた。ミラクルナイトの姿で見られるよりも、制服姿で見られる方が100万倍恥ずかしい。こんな目に遭うくらいなら、変身しておけばよかったと、後悔した。だが、両手を菌糸に拘束されたままでは、変身はできない。
「なっ…」
後ろから、ウズムシ男と市民が、奈理子を追ってきた。このままでは、皆に大切な箇所を見られてしまう。焦る、奈理子。
ブナシメジ男は、じっくりと奈理子を観察するために、このまま、奈理子をお持ち帰りしようとした。
「お願い…やめて…」
奈理子は、嫌だと泣き出してしまった。
ブナシメジ男が、奈理子を連れて帰ろうとした、その瞬間。
シュンッ、という鋭い音が響いた。ブナシメジ男が放った白い菌糸が、見えない何かに次々と切断されていく。
「なっ…!」
ブナシメジ男が、驚いて周りを見回す。宙に浮かぶ奈理子の身体を支えていた糸がすべて切れ、彼女は軽い悲鳴を上げながら地面に落ちていく。
「きゃっ!」
その落下する体を優しく受け止めたのは、柔らかく、そして強い腕だった。見上げれば、そこには聖なる緑色の光をまとった女性が立っていた。
「大丈夫?奈理子」
セイクリッドウインドの声が、穏やかに響く。
「うぅ…凜さん…!」
奈理子はセイクリッドウインドの胸に顔を埋め、そのまま嗚咽を漏らした。彼女の肩が小さく震えている。セイクリッドウインドは、優しく彼女を抱き締めた。彼女の視線は、ブナシメジ男を銃弾のように射抜いていた。
水都公園には、もう一人の戦士も駆けつけていた。オレンジの光を放つ、中学生戦士ドリームキャンディだった。
「奈理子さん、パンツを脱がさているのに、変身していないんですか?」
「キャンディ、これには理由があって…」
奈理子はバツが悪そうに口籠る。
「話は後です。奈理子さん、あとは私たちに任せてください。悪者はどこ!」
ドリームキャンディが、キリッとした声で言うと、彼女の目が三体の、ウズムシ男に向かった。奈理子を泣かした犯人だ。
「奈理子さんのパンツを脱がすエッチな者は、中学生戦士ドリームキャンディが、許さない!」
彼女は、指をウズムシ男たちに向けた。ウズムシ男たちは、ビクッと怯える。
「いや、それは…」
ウズムシ男Aが、もじもじと言った。
「俺たちは、奈理子のパンツを脱がしていないんだよ…」
「ウソ!奈理子さんが泣いているじゃない!!早く奈理子さんのパンツを返しなさい!!」
ドリームキャンディは、決めゼリフのように、言った。
だが、市民たちは、ウズムシ男が言っていることは正しいと、彼女に告げる。
「ああ、確かに、奴らはスカートをめくったけど、中はお尻しか見えなかったよな」
「パンツは見えなかった」
「えっ?ウズムシに脱がされたんじゃないの?」
セイクリッドウインドは首を傾げた。
「じゃあ、奈理子さんのパンツを脱がしたのは、ブナシメジ男ね!」
ドリームキャンディは、次のターゲットをブナシメジ男に定め、彼を睨みつけた。
「違う。私も、脱がしていない」
ブナシメジ男は、冷たく否定する。
「…え?」
ドリームキャンディは、首をかしげた。
「奈理子?何があったの?」
セイクリッドウインドが奈理子に聞くが、彼女は俯いたまま固く黙っている。その様子を見て、ブナシメジ男は口を開いた。
「…教えてやろう」
彼の口から、残忍な事実が紡がれた。
「最初から、奈理子は、何も穿いていなかった…」
ブナシメジ男の言葉が夕闇に凍りついた。
「…え?」
最初に反応したのは、ドリームキャンディだった。彼女の瞳が、驚きで見開かれた。
「何、言ってるの!ウソでしょ!」
ドリームキャンディは、信じられない、というように首を振った。彼女の頭の中では、奈理子のイメージが揺らいでいた。隆の優しいお姉さん。水都女学院高校の美少女。完璧な可愛らしさ。誰もが憧れる清純さ。大手下着メーカー"ミコール"のイメージガール。そして、純白のショーツは"純白の天使"と呼ばれる彼女の象徴だ。そんな彼女が、ノーパンで登下校するはずがなかった。
「ウソではない、ドリームキャンディ」
ブナシメジ男は、あくまで冷静に言った。彼の視線は、奈理子の隠したがる秘密を暴き、楽しんでいるかのようだった。
「なっ、奈理子さん…本当なの…?」
ドリームキャンディが、奈理子に問いかける。その声は震えていた。
奈理子は、答えられない。彼女は、顔をセイクリッドウインドの胸にさらに押し付け、涙を堪えている。その姿が、すべてを物語っていた。ドリームキャンディの顔から血の気が引いていく。
市民たちも、その事実に固まっていた。
「…まさか、俺たちの、奈理子ちゃんが…」
「ノーパン…?」
「ミコールのイメージガールなのに…?」
彼らの声は、信じられないという驚きと、裏切られたという失望に満ちていた。いつも、彼らは彼女のパンチラを見ていた。それは、彼女の純白のショーツと、それを見せてしまう彼女の恥じらいだった。それが、彼女の魅力の一つだった。だが、それが嘘だった。彼女の清純さは、すべて、作り物だったのか。
「どうして…どうしてパンツを穿いていないんですか?!」
ドリームキャンディの声が、奈理子の心臓をえぐった。その声は問い詰めるというよりは、哀願のようにも聞こえた。後輩が、憧れの先輩に裏切られたと感じていた。
「…っ…」
奈理子は、言葉に詰まる。彼女の喉が、かさかさに乾いていく。なぜ、と聞かれて、何と答えればいいのか。彼氏であるライムに穿いていた使用済みのパンツをあげたなんて、そんなこと、口が裂けても言えない。
「なあ、奈理子ちゃん、俺たちにも教えてよ」
ウズムシ男Aが、ねっとりと迫ってきた。
「俺たちは、毎日、奈理子ちゃんのパンチラを楽しみにしてたんだぞ?」
「だよなー。俺も、奈理子ちゃんの純白パンティ、見たいと思って悪さしてるんだよ」
「今日も見れる、と思ってたのに…」
ウズムシ男たちは、悲しんだフリをしながらも、その目は輝いていた。奈理子の秘密を知りたい、という好奇心に燃えていた。
市民たちも同じだった。奈理子ファンは、自分たちの天使が、なぜ、聖域を失ったのか知りたくてたまらなかった。
「奈理子ちゃん、裏切ったな」
「俺は、パンツを脱がされようとする奈理子ちゃんの恥じらいの表情が好きで好きで堪らないのに、最初から穿いていないなんて、酷いぞ!」
「なんで、そんな俺たちの思いをないがしろにするんだ!」
彼らの非難は容赦がなかった。まるで、奈理子が、彼らの人生を踏みにじったかのようだった。
「違う…そんな、こと…」
奈理子は、必死に否定したかった。だが、彼女の声は、震えて出てこなかった。彼女は、なぜ、パンツを穿いていないことでそこまで皆から責められないといけないのか、理解できなかった。パンツを穿いていなかった、というだけのことだ。スポンサーのミコールが言うなら、まだわかる。しかし、なぜ、彼らにこれほどまでに罪人のように扱われなければならないのか。
「…うっ…うぅ…」
その思いが、奈理子の胸に溜まり、溜まり、ついに溢れ出した。彼女は、セイクリッドウインドの胸に顔をうずめ、泣き出してしまった。その声は、もはや悲鳴に近かった。
奈理子の嗚咽は、夕闇に染まる公園に空虚に響いた。その声は、まるで、誰かの心を引き裂く刃のようだった。
「…奈理子」
セイクリッドウインドが、彼女の頭を優しく撫でる。彼女の目は、深い悲しみに満ちていた。彼女は、皆の視線を感じていた。ウズムシ男の卑猥な好奇心。ファンの失望と裏切り。ドリームキャンディの動揺。そして、奈理子の深く、暗い、苦しみ。
「…もう、やめなさい」
彼女の声は静かだった。だが、そこには、揺るぎない意志があった。
「皆、奈理子を責めるのはやめて。みんなは奈理子のパンツを見たかったかもしれないけど、奈理子には、奈理子なりの、人には言えない事情があるはずよ」
セイクリッドウインドの言葉に、市民たちは、一瞬、息をのんだ。彼女の問いは、彼らの心に突き刺さった。確かに、彼らは、何をしていただけなのだろうか?ただの好奇心と自己満足で、一人の少女を追い詰めていただけなのではないか?
だが、その静寂を破ったのはブナシメジ男の嘲笑だった。
「…フン、せいぜい、慈悲ぶっているがいい」
彼はそう言うと、奈理子の涙で濡れた顔を見つめていた。
「しかし、これは興味深い事実だ。完璧な正義の、ヒロインが、こんなに脆い秘密を持っていたとは」
彼の言葉が、奈理子の涙をさらに誘った。彼女は、もはや、何も考えられなかった。ただ、悲しい。だけだった。
そのとき、ブナシメジ男が、奈理子に近づいてきた。彼の目には、好奇心と悪意が混じり合っていた。
「…なあ、奈理子。パンツはどうしたんだ?まさか、ミコールから提供されたパンツを、ファンに売って小遣い稼ぎでもしているのか?」
「そんなことしない!」
奈理子が叫ぶ。
「じゃあ、なに?教えてくれ。みんな、奈理子がなぜ、パンツを穿いていないのか知りたいんだぜ」
彼はそう言うと、奈理子のスカートに手を伸ばそうとした。そのとき、セイクリッドウインドが、彼の腕を掴んだ。
「止めなさい」
「…なにするんだ、セイクリッドウインド」
「女の子がパンツを穿いていない理由は幾らでもあるわ」
セイクリッドウインドの目は、氷のように冷たかった。
「…ほう、何だ?」
ブナシメジ男は、一度、身を引いた。だが、彼の目は、まだ奈理子を追いかけていた。
「奈理子は、こう見えて意外とドジだから、朝、急いでてパンツを穿き忘れたとか…」
「とか?」
「奈理子は、たまにお漏らしするから、お漏らしして、おしっこまみれのパンツを捨てちゃったとか…」
セイクリッドウインドは、そう言いながら、奈理子の顔を覗き込んだ。奈理子は、赤面している。セイクリッドウインドの言ったことは、どちらも違う。だが、彼女の言ったことが、奈理子の状況を少し和らげた。
市民たちは、その言葉を聞いて、少し、顔を上げた。
「…なるほど」
「奈理子ちゃん、ドジなのか」
「お漏らし…?なんか、萌えるな」
彼らは、少し、状況を理解しようとしていた。だが、ブナシメジ男は納得していなかった。
「…そういうことか。しかし、奈理子、まだ言っていないことがあるな」
彼はそう言うと、奈理子の耳元に囁いた。
「…急に女の子の日が来たのかもしれないでしょ…汚れて、捨てたのよ」
セイクリッドウインドはボソリと言うと、ガストファングでブナシメジ男を払い除けた。
「見てはいけないものを見ようとする悪党は、中学生戦士ドリームキャンディが成敗します!」
ドリームキャンディが、キャンディチェーンを構えた。
「ウソつきめ…」
ブナシメジ男は、笑いながら後ずさった。
「まあ、今回はこの辺で。今、君たちと戦っても、いいことはないからな」
彼はそう言うと、影に溶けるように消えた。ウズムシ男たちも、それを見て、慌てて逃げ出した。
公園には、セイクリッドウインド、ドリームキャンディ、そして、泣き続ける奈理子が残された。
「…ごめん、奈理子。私が、もっと早く来られれば…」
セイクリッドウインドが謝る。
「ううん…そんな、こと…」
奈理子は、やっと顔を上げた。その顔は、涙でぐしょぐしょだった。
「…凜さん、キャンディ…」
彼女は、彼女たちを、見つめた。
「…私のこと、助けてくれて…ありがとう」
そう言うと、彼女は、また泣き出した。だが、今度の涙は少し違った。それは、安堵の涙だった。
「奈理子ちゃん、女の子の日だったのか」
「白いパンツは汚れが目立つからね!」
「でも、女の子の日なら、パンツ穿いてないとヤバくね?」
奈理子ファンは、まだ、ノーパン奈理子に興味津々だった。
「うぅ…」
市民の好奇な視線が、奈理子の肌を刺すように突き刺さった。彼女はまだ涙を浮かべていたが、セイクリッドウインドが作ってくれた「生理のせい」という言い訳の方が、本当の理由を暴露されるよりはましだと考え、黙って耐え込んでいた。心の奥では、この屈辱的な状況を終わらせてほしいと必死に祈っていた。
「もう、皆さん。お帰りください」
セイクリッドウインドの穏やかだが、決して譲らない声が響いた。
「ヒロインだって女の子です。時には困ることもあるでしょう?それを大げさに騒ぎ立てて、何が楽しいの?彼女がミラクルナイトとして、皆を守ってくれること、忘れないでくださいね」
その言葉に、市民たちは、まるで催眠でもかけられたかのように、うんうんと頷き始めた。
「…そっか。奈理子ちゃんも大変なんだな」
「お疲れ様、奈理子ちゃん!」
「明日も頑張って!」
次々と人々は去っていき、公園には三人だけが残された。空は完全に夜の色に染まり、街灯がぼんやりと周囲を照らしていた。
「奈理子さん、パンツ、買って来ましょうか?」
ドリームキャンディが、心配そうに顔を寄せて言った。彼女は、本当に奈理子が生理だと思っていた。その率直な提案に、奈理子は顔を赤くして俯いてしまった。
「うぅ…その…」
何も言えないまま、彼女はうずくまる。それを見て取ったドリームキャンディが言った。
「お金、ないんですか…?」
ドリームキャンディは、そう突き放すように言ったが、その目には心配の色がなかったわけではなかった。
「寧々ちゃん、ありがとう。お金は、持ってる」
思わず、奈理子は少し慌てて、続けた。
「私、ミコールの仕事でお小遣いもらってるから…グッズの売り上げもあるし」
「じゃあ、どうして…?」
不思議がるがドリームキャンディ。
「まぁ、いいじゃない」
セイクリッドウインドは、ドリームキャンディの肩を叩いた。
「寧々、奈理子に暖かい飲み物を買ってきてあげて。私が払うから」
「はい!分かりました、凜さん!」
ドリームキャンディは元気に頷くと、軽やかに走り去っていった。
「奈理子、大丈夫?」
セイクリッドウインドの声は、優しかった。彼女は奈理子の肩に手を置き、抱きしめる。奈理子は、その温もりに、ついに心が緩み、セイクリッドウインドに甘えるように、身体を預けた。
「うぅ…」
「ほら、大丈夫。もう一人じゃないから」
セイクリッドウインドは、彼女をさらに強く抱きしめた。
二人はしばらくの間、そこに立っていた。夜風が、彼女たちの髪を揺らした。奈理子は、ゆっくりと気を落ち着かせていった。
「…凜さん」
「何?」
「…ごめんなさい」
「何を?」
「…さっきまで、ライムと会ってたの」
「…ああ、そういうことか」
「…でも、本当に、迷惑をかけてごめんなさい」
「いいの、奈理子」
セイクリッドウインドは、そう言って、奈理子の頭を撫でた。
「私も、昔、同じことしたことあるから」
「え、本当?」
「ああ、昔、彼氏がいてね。それで…まあ、そういうことよ」
セイクリッドウインドは、ニッと笑った。
「…今は、彼氏いないの?」
「どうかな」
「…大谷さんは、凜さんの彼氏、かな…?」
「さあ、どうかな?」
セイクリッドウインドは、そう言って、空を見上げた。
「でも、スカした奴って、変態が多いよね」
「…え?」
「大谷じゃないよ。昔の彼氏のこと」
「…」
奈理子は、答えられなかった。凜の昔の彼氏とは、ナメコ姫だった頃のことだろうか?彼女の胸が、暖かくなった。
「…凜さん」
「ん?」
「…ありがとう」
「うん」
セイクリッドウインドは、そう言って、奈理子を抱きしめた。
「…奈理子、大好き」
「…私も、凜さんのこと、大好き」
二人は、しばらくの間、抱き合っていた。
(第237話へつづく)












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