ミラクルナイト☆第128話
水都神社の境内には、多くの若者が押し寄せていた。彼らの目的はただ一つ、風間凜を一目見ることだった。凜の正体がセイクリッドウインドであることが、アブラナ男との戦いの動画を通じて広まってしまったのだ。この動画はもともと会員制の裏サイトにアップされたもので、一般には知られるはずのないものだった。しかし、瞬く間に噂が広がり、凜がセイクリッドウインドであるという事実は世間の知るところとなった。
水都神社の可愛い巫女として一部の市民の間で話題になっていた凜だったが、この動画の拡散で彼女の人気は爆発的に高まってしまった。その代償として、日常の平穏は失われた。
「可愛いお嫁さんになることが子供の頃からの夢だったのに、あの動画が拡散されたら、私はお嫁にいけない…」
凜は部屋の片隅で項垂れていた。彼女の声には深い絶望が滲んでいた。
大谷は凜を慰めるように優しく声をかけた。
「騒ぎが落ち着くまで、仕事は休むといい」
凜は水都神社に隣接する大谷の家に下宿していた。
「こんな騒ぎになっても、まだここで働いていいの?」
凜は不安げに大谷を見つめた。
「勿論だ。凜は大切な巫女だからな」
と大谷は穏やかに微笑み、彼女の肩に手を置いた。二人の視線が交わり、凜の心は少しだけ安らいだ。
しかし、静かな時間は長くは続かない。
「凜、お客さんよ。寧々ちゃんと隆くんが来てるわよ」
別の巫女が凜を呼んでいる。二人は慌てて距離を取る。
「だけど、この様子じゃ、卒業式は大変な騒ぎになりそうだな」
と大谷が呟きながら部屋を出て行った。凜は来週に大学の卒業式を控えているが、これだけ騒がれると不安が残る。凜はため息をつきながら大谷に続いて部屋を出た。
応接室では、寧々と隆がソファに座っていた。寧々は水都中学のセーラー服、隆は学ランを着ている。今日は水都第一小学校の卒業式があったのだ。卒業式の服装について特に決まりはないが、この地区では小学校の卒業式には中学の制服を着用することが一般的だ。
「二人とも卒業おめでとう!」
凜は笑顔で二人に声をかけ、ソファに座った。大谷もその隣に腰を下ろした。
「凜さんに卒業の報告に来ました。ついでに大谷さんにも」
と寧々は嬉しそうに言った。
「ついでってことはないだろう」
と大谷は笑って返す。
「大谷さん、凜さんと一緒の時はいつも機嫌がいいですね。私にはいつも厳しいのに」
と寧々が口を尖らせる。
「お祝いに、今度グフグフで二人に奢ってあげる」
と凜が提案した。グフグフとは商店街にある人気のハンバーガー店、グフグフハンバーガーのことだ。
「凜さん、すごい人気ですね」
と隆が感嘆の声を漏らす。
「アイドルだった時にこれだけ人気があればよかったのにね……」
凜は悲しげに呟いた。凜の元アイドルという過去が、彼女の胸に暗い影を落としていた。
凜は応接室を見渡し、寧々と隆の笑顔に少しだけ元気をもらった。どれだけ困難な状況でも、彼女には支えてくれる人々がいる。その事実が、凜の心に小さな光を灯していた。
その頃、水都公園の噴水広場では…。
「うぐっ…」
ウズムシ男に腹パンチを喰らったミラクルナイト。それでも、水都の絶対ヒロインミラクルナイトはめげない。
「ミラクルアクアティックラプチャー!」
ミラクルナイトが放つ水のオーラが三人のウズムシ男を消滅させた。
「それっ!」
ナイトの背後からスカートを捲るウズムシ男。
「あぁッ!」
奈理子の水色のショーツが露わになる。湧き上がる歓声。
「えい!」
ミラクルナイトは歯を食いしばり、回し蹴りをウズムシ男に当てる。しかし、ウズムシ男は二人に分裂してしまった。
「えへへ、奈理子のパンツ丸見えー」
「奈理子のパンチラしっかり撮影」
大喜びのウズムシ男たち。
何人のウズムシ男と戦っているのか、ミラクルナイトには分からなくなっていた。ミラクルナイトに向かって来るウズムシ男たち。その周りにはカメラを手にしたウズムシ男たち。その奥にはウズムシ男たちに指示を出すウデムシ男。
「はぁはぁ……貴方たち、何が目的なの?!」
息が上がるミラクルナイトがウデムシ男に問う。
「見ての通り、奈理子の動画撮影だ。近頃は風間凜が人気だが、本当の水都のアイドルは奈理子だってところを見せてやろうぜ」
とウデムシ男が楽しげに答える。
「私は、撮影なんかされたくない!」
毅然と言うミラクルナイト。しかし、
「奈理子の太股ー!」
「奈理子のひらひらスカート堪らん♪」
ウズムシ男たちが楽しそうにミラクルナイトを取り囲む。
「ミラクルアクアティックラプチャー!」
二人のウズムシ男を消滅させた。しかし、別のウズムシ男がミラクルナイトに迫る。
「ミラクルナイト、頑張れー!」
撮影を見学する市民がミラクルナイトに声援を送る。
ウズムシ男は倒しても倒してもきりがない。
「キャンディ、凜さん、早く来て…」
ミラクルナイトがそう口にしたとき、水都の街中に
「水都公園にウデムシ男とウズムシ男出現。ミラクルナイトと交戦中」
と町内放送が鳴り響いた。
噴水広場に集まった市民たちは一斉に声を上げ、ミラクルナイトの応援に駆け付ける。彼らの声援はミラクルナイトの力となり、彼女は決して諦めない。水都の平和を守るため、彼女は最後の力を振り絞って戦い続けるのだった。
「これで終わらせるわけにはいかない…!」
ミラクルナイトは再び立ち上がり、ウズムシ男たちに向かって突進した。その勇姿を見て、市民たちはさらに大きな声援を送り続けた。
「頑張れ、奈理子!」
「ミラクルナイト、負けるな!」
その声援に応え、ミラクルナイトは再び立ち上がる。
「私には、みんなの声援がある限り、負けられない!」
彼女は決意を新たに、ウズムシ男たちとの戦いを続ける。
町内放送の警報は水都神社まで届いた。
「姉ちゃんが戦っているのか?!」
隆は姉の奈理子の安否を心配して声を上げた。
「隆、奈理子さんは私が守るから安心して」
と寧々が立ち上がる。
「私も行くわ」
と凜も立ち上がろうとしたが、大谷が彼女の腕を掴んで制止した。
「待て、凜は傷がまだ癒えていない。寧々に任せるんだ」
と大谷は優しく諭す。
「傷なんか無いわ」
と凜は大谷の腕を振り払う。実際、凜の身体には何の異常もなかった。
「身体の傷じゃない」
と大谷は凜の目を見つめて言った。
「大谷さんの言う通り、凜さんは休んでください」
と寧々も続けた。
「奈理子と寧々だけに戦わせるわけにはいかない」
と凜は譲らない。しかし、寧々は毅然とした態度で言った。
「凜さんは今、水都で一番話題になっている人です。今、凜さんが市民の前に出たら混乱します」
と言い残し、寧々は外へと飛び出した。
「キャンディスイーツ、ドリームキャンディ!」
寧々が呪文を唱えると、黄色い光が彼女の体を包み込んだ。ドリームキャンディは光となり、水都公園に向かって飛び立っていった。
凜が祈るように戦いの様子を感じ取っていた。
「奈理子、寧々、頑張って……」
彼女の祈りが二人に届くことを信じて。
噴水広場では、ウズムシ男の手を躱したミラクルナイトが力ない蹴りを繰り出していた。体力の限界に近いせいだけではない。強い打撃を与えるとウズムシ男は分裂してしまうのだ。終わりのない戦いに、気力が尽きようとしていた。
「ひらひらミニスカに太股とパンチラが堪らないねぇ」
思うように攻撃ができないミラクルナイトをウズムシ男が嘲笑う。
「奈理子が可愛いから捕まえちゃった」
背後にいたウズムシ男がミラクルナイトに抱きつく。
「は…離して……」
息絶え絶えのミラクルナイト。前にいたウズムシ男が強烈な腹パンチをミラクルナイトに喰らわせ、彼女の口からキラキラした液体が飛び出した。
黄色い光とともに噴水広場に降り立ったドリームキャンディは、その異様な盛り上がりに戸惑っていた。ウデムシ男の指揮の下、ウズムシ男たちがミラクルナイトの撮影をしているのは明らかだった。
「ミラクルナイト頑張れー!」
市民が楽しそうにミラクルナイトへの声援を大合唱している。まるでヒーローショーのようだった。
「何をしているんですか?」
ドリームキャンディは近くの市民に聞いてみた。
「ミラクルナイトの映画の撮影だよ。キャンディは聞いてないの?」
市民が答えた。
「はぁ?」
そんなバカなと思い、ウズムシ男に捕らえられたミラクルナイトを見つめる。ミラクルナイトはブラウスとミニスカートを身に着けている。いつもなら、とっくにミラクルナイトはコスチュームを剥ぎ取られて、下着姿か素っ裸にされているはず。今日のミラクルナイトはスカートもショーツも脱がされていない。本当にただの映画の撮影かもしれないとドリームキャンディは思った。
ウズムシ男がミラクルナイトに強烈な往復ビンタを喰らわせる。正義のヒロインが絶体絶命のピンチに陥っていた。
「奈理子さん、凄い…迫真の演技……」
思わず口にするドリームキャンディ。
「そこの小学生、撮影の邪魔だから下がって!」
ウデムシ男がドリームキャンディに向かって言う。
「あっ、ごめんなさい」
思わずウデムシ男に謝ってしまうドリームキャンディ。ミラクルナイトは気を失ってしまったように見える。
「凄い!奈理子さんがこんなに演技が上手かったなんて知らなかった…」
すっかり映画の撮影だと信じてしまったドリームキャンディは、市民と一緒に
「ミラクルナイト頑張れー!」
と叫んでいた。
ミラクルナイトは心の中で叫んでいた。
「違う、これは演技じゃない!」
しかし、声は届かず、彼女は無力なままウズムシ男たちに弄ばれていた。その姿に市民たちはますます盛り上がり、声援を送る。
「奈理子、負けるな!」
「ミラクルナイト、頑張れ!」
その声援がミラクルナイトの耳に届き、彼女は意識を取り戻そうと必死に努力する。ドリームキャンディは再びミラクルナイトの様子を見て、何かが違うと感じ始めた。
「本当にただの撮影なのかな…?」
心の中で疑念が芽生える。しかし、市民たちの楽しそうな様子を見て、その疑念を振り払う。
「ミラクルナイト、頑張れー!」
ドリームキャンディは自分の中で葛藤しながらも、再び声援を送る。しかし、その裏には
「もし本当にこれが戦いなら、私はどうすれば…」
という迷いがあった。
ミラクルナイトはその声援を聞き、再び立ち上がろうとする。
「私は…負けられない!」
彼女は再び力を振り絞り、ウズムシ男たちに立ち向かう決意を固めた。
ミラクルナイトはウズムシ男に後ろからしがみつかれ、身動きが取れない状態だった。
「奈理子の太股スベスベだー!」
別のウズムシ男がミラクルナイトの太股に頬擦りをする。
「やめて!」
奈理子は必死に蹴りを入れるが、ウズムシ男たちはそれを難なく躱す。
「奈理子の素顔が見たいからアイマスクを取っちゃった」
別のウズムシ男がミラクルナイトのアイマスクを剥ぎ取ると、奈理子の苦悶の表情が露わになる。
「奈理子が可愛いからキスしちゃった」
次に唇を奪われ、
「奈理子の剃り跡が生々しいから舐めちゃった」
と脇を舐められ、
「奈理子のパンツを見たくなったから脱がしちゃった」
とスカートを剥ぎ取られてしまう。水色の生地に白いリボンとレースで飾られたショーツが露わになり、ウズムシ男たちの悪戯に抗うことができないミラクルナイト。
「ミラクルナイト、負けないでー!」
「奈理子、頑張れー!」
市民の応援も熱が入る。ドリームキャンディは
「いくら映画の撮影と言っても、これはやり過ぎでは…」
と不審に思うが、ミラクルナイトがスカートを剥ぎ取られるのはいつものことだ。むしろ、スカートを穿いていない方が、いつものミラクルナイトっぽい安心感がある。
「それにしてもキスは……」
ミラクルナイトはウズムシ男たちに代る代る口を吸われていた。
「これは、やっぱりおかしい」
とドリームキャンディが前に出てウズムシ男たちを止めようとしたとき、緑色の光とともにセイクリッドウインドが噴水広場に舞い降りた。
「凜ちゃんだー!」
「カッコイー!」
時の人である風間凜、セイクリッドウインドの登場に噴水広場の市民はさらに盛り上がりを見せた。しかし、セイクリッドウインドは市民の声援を無視し、
「心配になって来てみたら…。キャンディ!奈理子のピンチを市民と一緒に楽しんで、何やってんの!!」
とドリームキャンディを叱責した。
ドリームキャンディは凜の言葉にハッとし、自分の軽率な行動を反省する。
「ごめんなさい、凜さん。すぐに奈理子さんを助けます!」
彼女は決意を新たにウズムシ男たちに立ち向かう。
守るべき市民の目の前で、ウズムシ男たちの度を越した悪戯を受け続けていたミラクルナイトの心は、既に折れていた。自らの力で立つ気力すら無く、両脇をウズムシ男に支えられようやく立っている状態だった。
その時、セイクリッドウインドはすかさず行動に移り、ガストファングでウズムシ男たちを次々と吹き飛ばしていく。
「奈理子、大丈夫?今、助けるから!」
彼女の声に、ミラクルナイトもかすかに反応する。
「凜さん…」
すべてを諦めかけていた奈理子の瞳が微かに開いた。
「もう大丈夫です。私たちが奈理子さんを助けます。キャンディシャワー!」
ドリームキャンディがウズムシ男を消滅させる。戦いを見守る市民は、セイクリッドウインドとドリームキャンディの登場も映画の演出と思っているのか、
「凜ちゃん、可愛い!」
などと明るい声援を送っている。
その時、
「撮影班、野外の撮影はひとまず終了。撤収だ」
ウデムシ男が撮影班のウズムシ男に命じる。その間もミラクルナイトは攻撃班のウズムシ男たちに悪戯をされ続け、ブラウスどころかブラまでも剥ぎ取られてしまっていた。
「奈理子のちっちゃいおっぱいを寄せて上げちゃうぞ!」
ウズムシ男が奈理子の胸を掴む。しかし、
「小さすぎて谷間ができないぞ」
爆笑するウズムシ男たち。攻撃班に遊ばれ続けるミラクルナイト。
噴水広場を去ろうとするウデムシ男とウズムシ男撮影班に対し、
「待ちなさい!」
と呼び止めるセイクリッドウインド。ウデムシ男が
「今日の主役は奈理子だ。風間凜の相手をするのは俺じゃねぇよ」
と言ったとき、セイクリッドウインドは上空から強烈な一撃を喰らった。吹き飛ばされるセイクリッドウインド。空を見上げ、新たな敵の姿を見た。
「カニカゲロウ!」
セイクリッドウインドが叫ぶ。
ドリームキャンディはカニカゲロウの出現に唖然とする。空を飛べないドリームキャンディとセイクリッドウインドでは、カニカゲロウに対抗する術がない。
「撮影班は帰ったが、俺たちの責めはまだまだ続くぜ!」
攻撃班のウズムシ男たちがミラクルナイトを地に転がせ組み伏せる。唯一空を飛べるミラクルナイトは期待できそうにない。
「どうしたらいいの…」
絶望の思いを口にするドリームキャンディ。
それでも、
「キャンディ、私たちは一緒にカニカゲロウを倒すよ!」
とセイクリッドウインドはドリームキャンディを励ます。二人のヒロインは、再び力を合わせてカニカゲロウに立ち向かい始めた。市民たちの声援も一層大きくなり、噴水広場は熱気に包まれる。
「セイクリッドウインド、ドリームキャンディ頑張れー!」
市民たちの声援が二人の力となり、彼女たちはカニカゲロウに全力で戦い続ける。空を飛ぶカニカゲロウにセイクリッドウインドとドリームキャンディの攻撃は届かない。それでも二人は力強く戦い、市民たちの声援に応え続けた。
カニカゲロウは高笑いしながら空を舞う。
「フン、空も飛べないお前たちが俺に勝てると思うのか?」
挑発するカニカゲロウに対し、セイクリッドウインドは凜とした声で応えた。
「私たちは決して諦めない。奈理子を、そして水都を守るために!」
ドリームキャンディも決意を新たに叫ぶ。
「奈理子さんを傷つける者は、絶対に許さない!」
二人のヒロインは全力でカニカゲロウに攻撃を仕掛け続ける。その姿に市民たちも一層の声援を送った。
やがて、カニカゲロウの動きにわずかな隙が生じた瞬間、セイクリッドウインドは素早くガストファングを振りかざし、
「テンペストスラッシュ!」
と叫んだ。強烈な風の刃がカニカゲロウに直撃し、その身体を傷付ける。
「これで終わりよ!」
ドリームキャンディがロリポップハンマーを振り下ろし、カニカゲロウにとどめを刺そうとした。しかし、カニカゲロウは紙一重で交わす。
「お前たち、腕を上げたな。しかし、まだまだ、俺を倒すことはできないぞ」
ウデムシ男と撮影班が完全に撤収したことを見届けたカニカゲロウは、そのまま飛び去ってしまった。
見事勝利を収めた二人のヒロインは、ウズムシ男に地面に押さえつけられ嬲られ続けるミラクルナイトを見た。
「さ、奈理子を助けるよ」
「公園でそんなことしちゃダメ!」
二人のヒロインが力を合わせ、ウズムシ男たちを完全に撃退することに成功する。凜と奈理子は息を切らしながらも、互いの存在に感謝し、再び立ち上がった。
市民たちは歓声を上げ、セイクリッドウインドとドリームキャンディに大きな拍手を送った。
「奈理子、私たちは勝ったよ!」
セイクリッドウインドがミラクルナイトに駆け寄り、優しく抱きしめる。
「ありがとう、凜さん…キャンディ…」
奈理子は涙ながらに感謝の言葉を口にする。市民たちの声援と、仲間たちの支えによって、ミラクルナイトの心も再び立ち上がる力を取り戻した。
三人のヒロインは互いに支え合い、絆を深めた。水都の平和を守るために、彼女たちはこれからも力を合わせて戦い続けるのだった。
(第129話へつづく)













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