DUGA

ミラクルナイト☆第131話

四月の陽気に照らされる水都タワー前広場。

「へぇ〜、鄙野と違って人間が沢山いる」

不思議そうに周りを見渡す少女は、実は人間ではない。その少女の存在に気付いた御祖紗理奈。紗理奈は休日の暇つぶしに街に繰り出していた。

「コマリシャスじゃないの。一人?お爺ちゃんは?」

紗理奈は声を掛けた。紗理奈は鄙野勤務時代にコマリシャスと知り合った。水都から少し離れた鄙野という町に、祖父と四畳半一間のボロアパートに住んでいた少女だ。外国生まれのためか、我が国の言語についての読み書きは全く出来ないが、少しおかしいが言葉は流暢に話す変わった娘だった。

「一人だよ。爺やには内緒」

「お爺ちゃんを爺やなんて言ったらダメだよ」

「爺やはパパが私に付けてくれた下僕だよ」

コマリシャスは自分は遠い国のお姫様だとかよく言っていたことを紗理奈は思い出した。

「水都は鄙野と違って悪い人が多いから危ないよ」

紗理奈はどうしようかと考えた。暇だし、コマリシャスを鄙野まで送ってあげようかと思った。鄙野には温泉がある。せっかくの休日だから温泉もいいかもしれない。

「水都って人間臭い街だね」

コマリシャスは鼻を摘む。

「鄙野の何十倍も人がいるからね」

紗理奈が答えると、

「もうすぐ水都もコマリシャスのものになるよ。紗理奈は人間だけど、特別にコマリシャスの仲間にしてあげる」

また訳が分からないことを言ってると紗理奈は思いながら、コマリシャスの話に合わせていた。

突然、

「来ないで!」

と叫び声が聞こえた。イチゴ女だ。続いて

「待ってくれ、理由を聞かせてくれ!」

とイチゴ女を追って来たのはウミウシ男。騒然とするタワー前広場。

「真衣香と牛島じゃないの。何だか面白そう」

紗理奈はワクワクしてイチゴ女とウミウシ男の様子を伺う。そのとき、コマリシャスの瞳がキラリと光ったことに、紗理奈は気付かなかった。

イチゴ女はウミウシ男の追撃を振り切ろうと必死だった。だが、その場にいた人々は足を止め、驚きと恐怖で騒然としていた。

「お願い、もう追わないで!」

イチゴ女の声が響く。ウミウシ男は手を伸ばし、

「待ってくれないと、こうだ!」

と毒液を放つ。

「ああっ!」

どうにか紙一重で避けたイチゴ女。

「やったわね!そっちがその気なら…」

イチゴ女の表情には決意と悲しみが交錯していた。苺苦無を手にする彼女の瞳は真剣そのもので、決意は揺るがない。

「紗理奈、あの雌、知ってるの?」

コマリシャスが尋ねる。

「知ってるわ。姫野真衣香っていうの。頭が良くて可愛いこと以外は特に取柄もない娘だけど」

紗理奈は答えながら、頭が良くて可愛ければ十分だなと思った。そして、コマリシャスは女を『雌』、男を『雄』と呼んでいたことを思い出す。相変わらずコマリシャスは言葉の使い方をよく分かっていないようだ。

「面白い。あの雌も私の仲間にしてあげよかな」

とコマリシャスがニヤリと笑う。その瞳には妖しい光が宿っていた。

タワー前広場で、苺苦無による爆発が次々と起こる。苦無の先端に小さな苺が付いている苺苦無は、小型爆弾なのだ。

「待って、僕はわざと外したんだ、本気で毒液を放っていない!」

ウミウシ男の叫び声が再び響く。紗理奈は状況を見守りながら、コマリシャスの異常な行動に対して警戒心を募らせていた。この小さな少女が何を企んでいるのか、紗理奈にはまだ見当がつかなかった。しかし、その答えがすぐに明らかになることは、この時点で誰も知る由もなかった。

「さぁ、どうなるのかしらね?」

と呟く紗理奈。その目は、一瞬たりともコマリシャスから離れることはなかった。


「僕の何がいけなかったんだ?!」

「はぁ?何言ってるの。自惚れないでよ。初めから貴方は関係無いわ!」

「僕は君のことを任されていたんだ!」

「そんなの知らないわ!貴方にはシオマネキ女がいるでしょ」

「僕はシオマネキ女と同じくらいに君を大切に思っている!」

ウミウシ男とイチゴ女が言い合う。

「何だ何だ?怪人同士の痴話喧嘩か?」

「ウミウシ男、苺ちゃんを泣かすなよー」

「苺ちゃん、頑張れ!」

市民も興味津々にウミウシ男とイチゴ女の遣り取りを眺めている。ミラクルナイトの好敵手として市民に認知されているイチゴ女はファンも少なくない。

「貴方が変な言い方するから、みんな誤解しているじゃない!」

イチゴ女がウミウシ男に怒る。

「あれは魔物じゃないし、何なの?」

コマリシャスが紗理奈に尋ねる。

「人間だよ。特別な能力を手に入れた人間。水都にはあんなのが一杯いるから、コマリシャスも気をつけないとね」

紗理奈が優しく教える。

更に、タワー前広場に黄色い光とともにドリームキャンディが降臨した。

「あれ?今日はシオマネキ女はいないの?」

ドリームキャンディがウミウシ男といつも一緒のシオマネキ女がいないことを不思議がる。

「今日はイチゴ女を連れ戻しに来たんだ。邪魔はしないでくれ!」

ウミウシ男がドリームキャンディを制する。

「連れ戻すって…。私はあなたのものじゃないわ!あなたなんかメロン男にやられちゃえばいいのよ」

「やっぱり、君はメロン男とできていたのか!」

言い合いを続ける二人に、ドリームキャンディはニヤリとした。

「はは~ん、イチゴ女もメロン男にメロメロにされちゃったのね。だけど、メロン男には彼女がいますよ」

ドリームキャンディは、美人OL誘拐事件でメロン男である香丸が真衣香と抱き合っている姿を思い出した。しかし、その真衣香がイチゴ女であることをドリームキャンディは知らない。奈理子、真衣香に続いてイチゴ女にまで手を出してしまう香丸に、ただ呆れるばかりだ。

「ほっといてよ、子供は黙ってて!」

イチゴ女はドリームキャンディを𠮟りつける。

「あれが、水都の守護神?」

コマリシャスはドリームキャンディを指して紗理奈に尋ねる。

「ああ、あれは守護神じゃないよ。守護神の護衛みたいなもの」

答える紗理奈。

「守護神なのに護衛がいるって、水都の守護神も大したことないんだね」

「コマリシャス、守護神のこと知ってるの?」

今度は紗理奈がコマリシャスに尋ねる。

「知ってるよ。鄙野の守護神にミルキーナイトってのがいて、笑っちゃうくらい弱かったの!」

楽しそうに答えるコマリシャス。

「ミルキーナイト?ミラクルナイトみたいなものかな?」

首を傾げる紗理奈。

「化け物たちが街で派手に暴れているなら、鄙野のようにコソコソとしなくてもいいかな…パパは、水都は鄙野のようにはいかないから慎重にやるって言ってたけど……」

コマリシャスが呟く。

「何一人でブツブツ言ってるの?」

紗理奈がコマリシャスの顔を覗き込む。

「紗理奈、面白いもの見せてあげる!」

コマリシャスが楽しそうに呪文を唱えだした。

「わっ!何?」

驚く紗理奈。地面に魔法陣が浮かび上がる。その中から浮かび上がる魔物。巨大な空缶の上と下から、ダンゴムシの頭と尻が出ている。

「コマリシャスが作り出した勇者、ダンゴムシカンだよ~!」

コマリシャスが自慢気に紗理奈にダンゴムシカンを紹介した。

タワー前広場は一瞬にして騒然となった。

「何だ、あれ?!」

「うわー、化け物だ!」

市民たちが驚きの声を上げる中、ウミウシ男とイチゴ女の言い合いも一時中断された。

「コマリシャス、どうしてこんなことを?」

紗理奈が問う。

「紗理奈を楽しませるためだよ。ほら、楽しんでる?」

コマリシャスが楽しそうに答える。

「ダンゴムシカン、行け~!」

コマリシャスの指示で、ダンゴムシカンが動き出す。

「待って、危ない!」

紗理奈が叫ぶが、ダンゴムシカンはすでに市民たちに向かって進んでいる。

「コマリシャス、避難するわよ!」

紗理奈がコマリシャスの手を引こうとするが、コマリシャスは笑顔を浮かべたまま動こうとしない。

「コマリシャスはここで見てるよ。紗理奈も見ててね、私の勇者がどれだけ強いか」

紗理奈はどうするか迷った。前からコマリシャスのことを普通の女の子ではないと思っていたが、本当に普通ではない女の子のようだ。

「ダンゴムシカンは強いよ。コマリシャスが生み出した魔物の中で二番目に強いの。でも、一番強かったのはもういないから、今は一番強いんだよ!」

こうして、タワー前広場での戦いは新たな展開を迎えた。市民たちは遠巻きにその様子を見守りながら、ドリームキャンディたちが勝利を収めることを願っていた。


正体不明の化け物の出現に混乱するタワー前広場。

「へへへ、何だか面白そうなことやってんな。俺も混ぜてくれよ」

ダンゴムシカンがドリームキャンディたちの方へ進んで行く。

「僕が知らない怪人…何なんだ、君は知ってるかい?」

ウミウシ男はイチゴ女に尋ねる。

「知らないわ。馴れ馴れしく話し私にかけないで」

とイチゴ女が答える。

「あ~ッ!」

ドリームキャンディが何かを思い出したかのように叫んだ。

「ドリームキャンディ、知ってるの?」

イチゴ女がに尋ねる。

修学旅行で鄙野に行ったときに、似たような敵と戦いました。名前は…そう、ミミズドローン!」

ドリームキャンディが叫ぶ。

「何?お前、ミミズドローンを知ってるのか?!」

次はダンゴムシカンが驚く。

そのとき、

「お~い!」

と隆がやって来た。春休みに寧々は隆と二人で仲良く水都タワーへ遊びに来ていたのだ。

「隆、あれ見て!」

ドリームキャンディがダンゴムシカンを指す。

「おー!機械合成怪人じゃないか。ついに水都にも出るようになったのか」

「カンカンも機械なの?でも、ミミズドローンを思い出すね」

「笑えるくらい弱かったよな」

ドリームキャンディと隆の思い出話が弾む。修学旅行で寧々はドリームキャンディに変身し、ミミズドローンを瞬殺したのだった。

「ミミズドローンは最強の勇者だ。お前みたいなガキンチョにやられるはずがない!」

怒りを露わにするダンゴムシカン。

「ミミズドローンが最強なら、コイツも弱いぞ。さっさとやっちまえ」

と隆。

「うん!」

と返事したドリームキャンディは、

「水都の平和を乱す者は、水都の守護神ミラクルナイトに代わってドリームキャンディが許しません!」

と高らかに宣言した。

「ミミズドローンが殺られたのは何かの間違いだ。俺様が水都の人間どもに魔物の恐ろしさを教えてやる!」

ダンゴムシカンがドリームキャンディに迫る。

そのとき、

「弱いんなら引っ込んでなさい!」

とイチゴ女が苺流星錘をダンゴムシカンに放った。

グシャッ!

「うぎゃ!」

巨大な苺の一撃にダンゴムシカンの胴体である缶が凹む。さらに苺流星錘は缶を貫通し、ダンゴムシカンの胴体に穴が空いてしまった。

「コマリシャス様ー!」

と叫びながらダンゴムシカンは消滅していった。

市民たちは驚きと興奮で騒然とする。

「苺ちゃん、やるじゃん!」

「イチゴ女、最高!」

歓声が広がる中、ドリームキャンディとイチゴ女は視線を交わし、微笑んだ。

「私が活躍するはずだったのに…」

「悪い奴をやっつけて街の平和を守るって、気持ちいいね!」

とイチゴ女が答える。

「コマリシャスの作り出した魔物も、この程度か…」

紗理奈が呟く。

「これからも、私たちは戦い続けるわ。水都の平和を守るために」

ドリームキャンディが決意を新たにする。

「奈理子の弟と一緒に修学旅行に行ったのなら、一小?四月からは水中?進学おめでとう」

イチゴ女がドリームキャンディに微笑みかける。『一小』と水都第一小学校、『水中』とは水都中学校のことだ。

「あっ、それは…」

慌てるドリームキャンディ。ドリームキャンディの正体は秘密にしおかなければならない。

コマリシャスはダンゴムシカンのあっけない敗北に、

「わ~ん!消えちゃいや~!ダンゴムシカ~~ン!!」

と泣きながらダンゴムシカンが消えていった場所に手を伸ばいていた。そして、

「次はもっと強い魔物をつく出してやる」

ミミズドローンに続いてダンゴムシカンま失ってしまったコマリシャスは涙を流しながら静かに誓った。

水都の平和を守るため、ヒロインたちの戦いはこれからも続くのであった。


その頃、水都の守護神である奈理子は…

「う…んっ……」

水都女学院の中庭で水色のセーラー服を身に纏った奈理子は上級生にキスされていた。

女同士でこんな…」

戸惑う奈理子。

「ここにいる生徒全員、奈理子さんが入学するのを待っていたんですよ。卒業まで、たっぷりと奈理子さんを可愛がってあげますわ」

上級生が奈理子を優しく見つめる。周りでは、中等部と高等部の生徒たちが温かく奈理子と上級生を見守っていた。当然、全員女子だ。

「ちゅっ」

更にキスされる奈理子。

「皺がつくからスカートは脱ぎましょう」

上級生の手が奈理子のスカートにかかる。反射的に腰を浮かす奈理子。

「うふっ、脱がさることに慣れているんですね。水都の守護神ミラクルナイトは脱がされ上手」

上級生は微笑みながらスルスルと奈理子のプリーツスカートを脱がしてしまった。奈理子の白いパンツが優しい日差しに照らされる。

「キスだけでこんな濡れちゃうなんて…。可愛いわぁ、奈理子さん。ちゅっ」

奈理子にキスする上級生の手が奈理子の濡れたクロッチずらし中を弄ぶ。くちゅくちゅと、奈理子の恥ずかしかいところから音がする。

「ハッ!」

夢から覚めた奈理子。ここは奈理子部屋。ポカポカ陽気に、ついうたた寝してしまったようだ。変な夢のせいで、パンツが濡れている。

「パンツ、変えなきゃ」

奈理子は立ち上がり、窓を開け外を眺めた。タワー前広場に現れた謎の怪人はイチゴ女が撃退したと町内放送が流れていた。

「何故イチゴ女が?」

と思ったが、深くは考えなかった。街の平和が守られたのであればそれでいい。

「私は一人じゃない。寧々ちゃんと凜さんがいる。よく知らないけど、イチゴ女も敵と戦ってくれたんだ…」

イチゴ女の活躍に、奈理子の水都の守護神ミラクルナイトとしての決意は更に固くなった。イチゴ女ともう一度全力で戦いたいとの思いはあるが、もしかしたら敵ではないのかもしれないと奈理子は思った。

新しい制服が届いた。高校生になり、大好きなライムとは別の学校になってしまった実感が湧く。来週は水都女学院の入学式だ。

「女子高の生活って、実際はどんななんだろう?」

奈理子は期待と不安に胸を膨らませ、アニメや漫画でしか知らない女子校という新世界に足を踏み入れようとしていた。

第132話へつづく)