DUGA

ミラクルナイト☆第125話

タコ男のアジトでは、最強の怪人が生まれようとしていた。

「この人でよかったんですか?」

香丸が、二人のブラックナイトと戯れるタコ男に問いかける。タコ男=教授は、自らと九頭が共同で作り上げた、最後の怪人変身薬を用いていた。しかしその薬を用いる対象となっていたのは、見た目の冴えない初老の男、水都大学の用務員だった。

「この男はワシの長年の友人なんじゃ」

と、タコ男は白パンツとピンクパンツのブラックナイトを一旦抱えて香丸に説明する。香丸は、タコ男の友人であればこの男も変態であることを予想して、内心で眉をひそめた。冴えない初老の男が、力強い怪人アブ男に変身する姿を見ながら、

「どうじゃ? 虻になった気分はどうじゃ?」

とタコ男が問いかける。

「すごい…力がみなぎっている」

と、アブ男が力強く呟く。タコ男はその反応に満足げに頷き、

「手始めにミラクルナイトと遊んで来い。この街の者たちは、ミラクルナイトが辱めを受ける姿を大好きじゃからな」

と命じる。その命令を受け、アブ男はアジトを嬉々として出て行った。

「でも、なぜ虻が最強なんですか?」

と香丸がタコ男に疑問を投げかける。タコ男は反問する。

「我が国最強の肉食昆虫は何だと思う?」

香丸は考え込み、

「肉食と言えばカマキリかな? スズメバチも強いし…。でも、スピードに勝るのはトンボ。オニヤンマだと思います」

と答える。

「違うな」

とタコ男がニヤリとして言う。

「スズメバチ、オニヤンマを一撃で葬る最強の昆虫が我が国にはいるんじゃ」

と続けた。

「それが、虻なんですか?」

と香丸が聞くと、タコ男は満足そうに頷くのだった。


放課後の柔らかな陽光が水都公園の遊歩道を照らしていた。奈理子とライムは手を繋ぎ、その道をゆっくりと歩いていた。卒業式まで二週間を切り、放課後の時間は奈理子にとってライムと二人だけで過ごせる貴重な瞬間だった。だが、彼女には心休まる時間は与えられなかった。奈理子は水都の守護神ミラクルナイトであり、その使命を持つ彼女に敵は容赦しなかった。

「見て、あそこに空いてるベンチがあるよ!」

と奈理子は声を上げると、ライムの手を引いてベンチに駆け寄った。だが、その瞬間、二人の前に巨大な影が立ちはだかった。見上げる奈理子の目に映ったのは、巨大な虫のような怪人だった。

「見つけたぜ、奈理子」

とその怪人が声をかける。

「何よ、アンタ!」

と奈理子が答えた。彼女はミラクルナイトへの変身アイテムであるアイマスクを手に取った。

「俺はアブ男。奈理子、今晩九時に水都中学に来い。お前の学校でお前と遊んでやるぜ」

とアブ男が挑戦を宣言した。その言葉を聞いたライムは

「おー、虻の薬の使用者が決まったのか」

と口にした。

「アブ男を知ってるの?」

と奈理子がライムに尋ねると、ライムは答えた。

「いや、こいつが誰かは知らないが、虻の薬は教授と九頭先生が最後に二人で作ったものだ。誰の手に渡るのかと思ってたが、普通のオッサンみたいだな」

「お前がスライム男か。俺はタコ男の了解を得ているんだ。邪魔はさせんぜ」

とアブ男がライムを睨みつけた。ライムの正体はスライム男だった。

「邪魔はしねぇよ。奈理子、このオッサンを懲らしめてやれ」

とライムが奈理子を見て言った。

「嫌よ。街の平和を乱す者は許さないけど、私と遊びたいだけの人と何故私が戦わなきゃならないの?」

と奈理子はアブ男の挑戦を拒否した。そして、

「それに、中学生が夜中に外出できるはずないでしょ。私と戦いたいなら放課後か休日にしてよ」

と言った。

「仕方がねぇ、それなら今から水都中学だ」

とアブ男が水都中学の方に飛び立とうとする。

「ダメよ!まだ受験は終わってない生徒もいるんだから、中学校はダメ!!」

「なら、どこならいいんだ!」

とアブ男が苛立ちを見せた。

「明日、放課後、噴水広場。これでどう?」

と奈理子が提案した。

「逃げるなよ、奈理子。パンツは今日から替えなくていいぞ。奈理子の体臭が染み込んだパンツで勝負だ」

と言い残し、アブ男は飛び去って行った。

「パンツは毎日変えます!」

と奈理子が怒鳴った。

「奈理子頑張れー!」

「奈理子、負けるなよ!」

周りの人たちが、明日行われるミラクルナイトとアブ男の対決に盛り上がっていた。

「頑張ります!明日は声援お願いします!」

と頭を下げ、市民の期待に応える奈理子。

「虻の薬は教授と九頭先生の最後の作品。間違いなく強敵だ」

とライムが呟いた。彼の脳裏には、アブ男に凌辱されるミラクルナイトの姿が思い浮かんでいた。


真衣香はいつもより早めに仕事を切り上げ、薄手のコートを羽織った。今日は奈理子とアブ男の戦いが始まる日だ。中学生の放課後は何時頃からだっただろうか?と真衣香は自分の中学時代を思い出していた。バレー部だった真衣香は、帰宅部が何時頃に帰っていたか思い出せない。とにかく、急がなければならない。それにしても、アブ男は正々堂々と奈理子に勝負を挑んだ。奈理子を闇討ちまがいに襲ってきたウミウシ男とシオマネキ女とは大違いだ。誰だか知らないが、アブ男は男らしい男の中の男なんだろうと真衣香は勝手に思い描いていた。

足早に水都製薬本社を出た真衣香。その瞬間、突然甘い香りに包まれた。

「この香りは…」

と真衣香は感じた。媚薬のように甘いその香りはメロンのようだった。

「メロン男が、近くにいる…!」

と警戒する真衣香。直接メロン男に会ったことはないが、ポインセチア女を虜にした危険な男だと聞いている。シオマネキ女も危うく落とされそうになったらしい。

すると、彼女の眼の前に現れたのは若い男だった。その男は真衣香が思わず見とれてしまうほどの美男子だった。間違いない。メロン男の大学生、香丸だ。

「姫野真衣香さんですね」

と香丸が声をかけてきた。爽やかな笑みを浮かべながら、

「イカ男の誘いがお気に召さなかったようなので、私がお誘いに参りました」

と言う。この男は危険だ。香丸に心を奪われそうになる真衣香。しかし、真衣香は社会人二年目の二十四歳だ。いかに香丸が魅力的な男だったとしても、年下の大学生に屈することは社会人としての矜持が許さない。

香丸はそんな真衣香の思いをよそに、

「奈理子とアブ男の戦いを見に行くんですよね。一緒に観戦しましょう」

と言いながら真衣香の手を取った。


噴水広場に足を踏み入れた真衣香と香丸。群衆の熱気が二人を包み込み、真衣香は思わず香丸の腕にしがみついた。

「凄い人…」

彼女の声がざわめきの中に消えた。噴水広場はミラクルナイトとアブ男の対決を見ようと、多くの市民が詰めかけていた。簡易の櫓の上にはテレビ局のカメラまで設置されていた。

「よう、ライム。糸井さんも一緒か」

と香丸が群衆の中からライムを見つけて声をかけた。奈理子の彼氏として有名なライムのことは真衣香も知っていた。ライムの正体がスライム男であることも。しかし、糸井と呼ばれた男のことは彼女には未知だった。

「香丸さんはもうイチゴ女を落としたのか」

とライムが何気なく口にした言葉に真衣香はハッとした。真衣香がイチゴ女であることは、誰も知らない、知られてはいけない秘密だ。

「へー、苺ちゃんか。柏原から何度も聞かされたが、可愛いじゃねぇか」

と糸井が言う。その言葉も真衣香の耳には入らなかった。周囲を見渡し、誰も真衣香がイチゴ女であることに気づいていないと確認してホッと胸を撫で下ろした。

メロン男、スライム男とくると、糸井という男はクモ男なんだろうと真衣香は推測した。いずれも、勅使河原が戦いを避ける猛者たちだ。

「糸井さん、鈴さんと一緒じゃないんですか?」

と香丸が尋ねた。

「鈴は商店街の奴らと一緒に奈理子を応援すると言ってたぜ」

と糸井が答えた。鈴という名前も真衣香には馴染みがなかった。

「鈴って誰?」

と彼女は小声で香丸に聞いた。

「鈴さんはヒメバチ女ですよ」

と香丸が応えた。ヒメバチ女はかつて奈理子をブラックナイトとして操った女だ。メロン男も、スライム男も、クモ男も、ヒメバチ女も、始めは奈理子の敵だったが、今は奈理子を応援しているようだった。驚く真衣香をよそに、

「奈理子はまだかい?」

と香丸がライムに尋ねた。

「奈理子は突然敵に襲われることが多いが、戦いの時間と場所が決まっているときは、思いっきり自分を可愛く見せようと準備をする。その準備をしているはずだ」

とライムが答えた。

「カブトムシ男のときは白いワンピース、クワガタ男のときはブルマで奈理子は現れたな」

と糸井が過去の奈理子の戦いを思い出す。

「ここにいる誰も奈理子が勝つと思っちゃいない。皆が可愛い奈理子が凌辱される姿を楽しみにしている。奈理子も皆の期待に応えようと頑張っている」

とライムが呟いた。

そのとき、噴水広場の一角で大歓声が上がった。水都中学生のセーラー服姿の奈理子が現れたのだ。歓声に包まれながら、奈理子はゆっくりと群衆の中心へと歩みを進めた。


幾度もミラクルナイトの戦いの舞台となった噴水広場は、美少女奈理子の登場にこれまでにない盛り上がりを見せていた。大歓声を一身に浴びる奈理子は、内に秘めた決意を胸にこの戦いに挑んでいた。彼女は市民に可愛い姿を思いっきり楽しんでもらうため、十五歳の中学三年生らしい工夫を凝らしていた。百均グッズを駆使した化粧で、自然なメイクを施し、勝負下着にリボンとフリルで飾られた純白のブラとショーツを身に着けていた。

もうすぐ、奈理子は水都中学を卒業する。この制服姿でミラクルナイトの変身を大勢の市民の前で披露するのは、これが最後かもしれない。スカートのプリーツは昨夜、アイロンで丁寧に整えた。

「今の私は完璧に可愛い!」

奈理子は自分に言い聞かせながら、アブ男の前に立った。

「遅かったな、奈理子。痴態を晒すことが分かっていながら逃げずに来たことは褒めてやる」

とアブ男が奈理子を見据えた。

「私は水都の守護神ミラクルナイト。市民の期待を裏切ることはしないわ。覚悟しなさい!」

奈理子はアイマスクを掲げ、決然と答えた。これから始まるミラクルナイトの変身シーンに、さらなる歓声が湧き起こった。

奈理子がアイマスクを装着すると、水色の光が彼女を包んだ。水都中学の制服が消え、純白のブラとショーツ姿になる奈理子。しかし、その無防備な姿は一瞬だった。彼女のミディアムボブの黒髪に愛らしい白いリボンが現れ、ノースリーブの白いブラウスが彼女の体を包んだ。胸には水色のリボンが飾られ、手には水色のグローブ、足には水色のブーツが次々と現れた。最後に、奈理子の清純の証である純白のショーツを白いプリーツスカートが優しく隠した。

光が消えると、風がスカートを舞い上げ、純白のショーツがチラリと見えた。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

ミラクルナイトは高らかに宣言した。


「パンツを変えやがったな。まあ、いいや。すぐに奈理子の体液でグチョグチョに汚してやるぜ」

アブ男の下衆な言葉と視線に、ミラクルナイトは思わず股を閉じ、スカートを押さえた。改めてアブ男を見つめると、その異様な姿に恐怖が湧いてくる。モフモフとした毛が生えているが、ミツバチのような愛らしさは微塵もなく、鋭く針のように尖った口吻が特に不気味だった。

「アレに刺されると…」

と考えると、足がすくんでしまった。しかし、

「私はミラクルナイト。どんなに辱めを受けようと、自分を見失わないように可愛い私でいよう」

と自分を奮い立たせた。

「どうした、戦う前から怖気ついたか?それとも、これからされることを想像して濡れたか?」

アブ男が嘲笑う。

「貴方なんかに、私のパンツは汚させないわ!」

精一杯の強がりで返すミラクルナイト。そして、ジャンプしたミラクルナイトはミラクルウイングを広げた。

「俺に空中戦を挑むとはいい度胸だ」

とアブ男も翅を羽ばたかせ舞い上がる。

「奈理子、頑張れー!」

市民の声援を浴びるミラクルナイトとアブ男の戦いは空中で始まった。

ミラクルナイトは空中で華麗に舞い、アブ男の攻撃をかわしながら反撃の機会を窺った。彼女の動きには一切の無駄がなく、市民の声援を背に受けて力強く飛んだ。アブ男はその姿を追いながら、鋭い口吻で奈理子を狙ったが、ミラクルナイトはその度に巧みに避けた。

「貴方のような下劣な存在に、私は屈しない!」

とミラクルナイトは叫び、ミラクルウイングの力を最大限に引き出した。その瞬間、彼女の体が輝き、眩い光の中で一層美しく、強くなった。

「この光…!何だ、これは!」

アブ男は驚き、目を覆った。奈理子はその隙を見逃さず、掌に水色の光を集めた。

「これで終わりよ!えい!」

と叫びながら、彼女はアブ男に強烈な水色の光弾を放った。

アブ男はその一撃に怯み、バランスを崩して落下し始めた。

「これが…ミラクルナイトの力か…!」

と呟きながら、地面に向かって墜ちていった。

奈理子は勝利を確信し、空中で静かに舞い降りながら市民に向かって手を振った。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

再び高らかに宣言すると、群衆からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。市民のボルテージは最高潮に達し、ミラクルナイトの勇姿は永遠に心に刻まれた。


「呆気なく終わったね」

と香丸に肩を抱かれながら、真衣香は彼の顔を見上げた。

「こんな簡単に終わるはずはありません。アブ男は教授の古い友人ですから」

と香丸は地に伏すアブ男から目を離さずに言った。

「鉄山さんのときもこうだったよな」

とライムが口を開く。鉄山=カブトムシ男も、最初はミラクルナイトに好きなように攻めさせたが、その後は圧倒的な力で彼女を叩きのめしたのだ。

「勝利の余韻に浸っていい気になっている奈理子を徹底的に辱めるつもりだろう」

と糸井も口にする。市民がミラクルナイトの勝利を称える中で、この三人だけがミラクルナイトの勝利を信じていなかった。

「貴方たち、奈理子の友達なんでしょ。何故奈理子の勝利を素直に讃えないの?」

と真衣香が疑問を投げかけた。

「私たちはタコ男、教授をよく知っています。教授が最強の虻の薬を託した男は教授の古い友人。教授に負けず劣らず変態のはずです。このまま終わるはずがない」

と香丸が答えた。

「でも、現にアブ男は奈理子にやられて倒れているじゃない」

とミラクルナイトの勝利を信じたい真衣香が異議を唱えた。

「教授が最強と言った奴がシャインブラストなんかでやられるはずがない」

と倒れたアブ男を見つめるライムが言う。

「貴方、奈理子の彼氏でしょう…」

真衣香がライムに言いかけたところで、

「始まるぜ」

と糸井が言った。

真衣香はアブ男を見る。倒れていたはずのアブ男が、全くダメージを受けていないかのように立ち上がっていた。

「さあ、これからが本番だ」

とアブ男が笑いながら言った。その不気味な笑みに真衣香の心は冷えた。アブ男の体が再び光を放ち、その力が溢れ出す。

「お前のような小娘に俺が負けるわけがないだろう」

とアブ男が宣言すると、その声は広場中に響き渡った。

「奈理子、気をつけて!」

市民の中からも不安の声が上がる。しかし、ミラクルナイトはその声に動じることなく、再び戦闘態勢に入った。

「私はミラクルナイト。水都の平和を守るために、どんな困難にも立ち向かうわ!」

と彼女は宣言した。

アブ男はその言葉に応じて攻撃を仕掛けた。彼の鋭い口吻がミラクルナイトを狙い、次々と迫りくる。しかし、ミラクルナイトは巧みにそれをかわし、反撃の機会を探った。

「ミラクルナイト、負けないで!」

市民の声援が彼女を支えた。ミラクルナイトはその声に応え、全力で戦った。彼女の姿はまさに希望の光だった。市民の期待を背負い、彼女は再びアブ男に立ち向かう。

「これが最後の一撃よ!」

奈理子は全身の力を込めてアブ男に向かって水色の光弾を放った。その一撃がアブ男に直撃し、彼は再び地に倒れた。しかし、今回は完全に動かなくなっていた。

「ミラクルナイト、やった!」

市民の歓声が再び広場に響き渡った。奈理子は微笑みながら市民に手を振った。その姿は勝利の光に包まれ、まさに守護神と呼ぶにふさわしいものだった。


ミラクルナイトへの大声援が湧き起こる中、アブ男は突然大空に舞い上がった。

「まだやるつもり!」

とミラクルナイトもミラクルウイングを広げ、大空に舞い上がる。

「お前の動きは既に見切った」

とアブ男がスピードを上げ、ミラクルナイトの背後に回り込んだ。

「速い!」

ミラクルナイトはその動きについていけず、アブ男を見失ってしまった。

「虻を舐めるなよ。俺が本気を出せばお前のような小娘など…」

アブ男は背後からミラクルナイトを羽交い絞めにした。

「お前の身体はもう俺のものだ。たっぷり楽しませてもらうぜ」

と言いながら、アブ男の手がミラクルナイトの身体を弄り始める。

「いゃぁぁぁ!」

ミラクルナイトの悲鳴が響いた。

「いい匂いだ、ミラクルナイト。堪んねぇな!」

と、ミラクルナイトの匂いを堪能するアブ男。

「離して!」

とミラクルナイトの身体が水色に輝き始める。

「ミラクルパワー!」

聖なる力で纏わりつくアブ男を弾き飛ばした。

「おのれミラクルナイト、もう許さんぞ!」

アブ男が両手を広げて、体中の毛を逆立たせた。

「な…何をするつもり…?」

ミラクルナイトは赤黒いエネルギーを纏うアブ男の姿に危険を感じた。

「クックック…。ミラクルナイト、お前の清らかな純白パンティを恐怖のしょんべんまみれにしてやる」

とアブ男の背中から無数の刺針が出現し、それぞれが徐々に輝き始めた。

「あんな針で刺されると…」

ミラクルナイトは強烈な恐怖心で固まってしまった。

「怯えるがいい、ミラクルナイト。この致命的な針の雨でな!」

アブ男が叫ぶと同時に、刺針を一斉に射出した。

その瞬間、無数の刺針が空を切り裂き、ミラクルナイトに向かって突き進んだ。ミラクルナイトはその恐ろしい光景に動けず、ただ刺針の雨が迫ってくるのを見つめることしかできなかった。しかし、彼女の心には市民の期待と応援の声が響いていた。

「負けられない…負けるわけにはいかない!」

と自分に言い聞かせた。

刺針が彼女に到達する瞬間、ミラクルナイトは最後の力を振り絞り、防御の光を放った。

「フェアリーシールド!」

と叫びながら、彼女の周りに水色に輝く光のバリアが現れた。

アブ男はその光景に驚愕し、

「こんなことが…あり得るか!」

と叫んだ。

「この街の平和を守るため、私は負けない!」

と力強く宣言し、戦いに向かって進む決意を新たにした。


「なーんてな。そんなもんで俺の針は防げねえ」

アブ男が笑う。その瞬間、シールドを突き抜けた刺針が次々とミラクルナイトを襲う。しかし、刺針はミラクルナイトには直撃せず、肌の擦れ擦れを通過してコスチュームを引き裂いていった。直接刺針には触れずとも、迫りくる鋭い刺針はミラクルナイトの戦意を喪失させる程の恐怖を与えていた。そして、最後の一本がミラクルナイトに迫る。

「あ……あぁ……」

刺針は恐怖で固まるミラクルナイトのスカートを突き抜けた。股間を通過する間、刺針はクロッチ越しに奈理子の敏感な箇所を擦り続ける。噴水広場に聖水が降り注ぐ。そして、ミラクルナイトも噴水広場の石畳に落ちていった。彼女は失禁し、失神してしまったのだ。

ゆっくりと噴水広場に降り立ったアブ男。

「お楽しみはこれからだぜ」

と呟き、動かないミラクルナイトの両足を高々と持ち上げた。逆さ吊りにされたミラクルナイト。

「ミラクルナイトのお汁いただきまーす」

アブ男がミラクルナイトの股を広げ口吻を突き立てようとしたその瞬間、市民はその光景に息を呑み、唖然としていた。

だが、その時、黄色い光とともに、小学生戦士ドリームキャンディが噴水広場に降臨した。

「もう、勝負はついたのよ!奈理子さんは負けたの!奈理子さんは敗北!奈理子さんは敗者!敗者を辱める行為は私が許さない!」

と鞭状の武器キャンディチェーンを地面に打ち付け、アブ男に宣言するドリームキャンディ。ミラクルナイトが敗れ、ドリームキャンディガールが現れるのはいつものパターンだった。

「待っていたぞ、ドリームキャンディ!」

と市民はドリームキャンディに大声援を送る。

「奈理子の仇を討ってくれー!」

その声に応えるように、ドリームキャンディは力強く頷いた。

「アブ男、ここから先は私が相手よ!」

とドリームキャンディが叫ぶと、アブ男はにやりと笑った。

「お前も同じ運命を辿ることになるぞ、小娘が」

と嘲笑するアブ男に、ドリームキャンディは一歩も引かない。

「私は奈理子さんのようにお漏らしなんかしない!でも、奈理子さんの意志は私が受け継ぐ!」

とドリームキャンディは決意を胸に、アブ男に向かって突進した。市民たちはその姿に希望を見出し、再び声援を送った。

「頑張れ、ドリームキャンディ!負けるな!」

その声に力を得たドリームキャンディは、アブ男との戦いに挑んだ。

空には再び闘志が燃え上がり、ドリームキャンディの勇姿が輝く。市民たちは彼女の勝利を信じ、その瞬間を待ち望んでいた。ミラクルナイトの敗北を乗り越え、ドリームキャンディが新たな希望として立ち上がった。


「チッ!せっかくミラクルナイトの身体を存分に楽しもうと思ったのによ」

とアブ男はミラクルナイトの蜜を吸うのをやめ、彼女を無造作に投げ捨てた。コスチュームをズタズタに斬り裂かれたミラクルナイトは、まだ気を失ったままだった。

「奈理子さんを苛める者は私が許さない!」

とドリームキャンディはキャンディチェーンを振るった。しかし、アブ男は軽々と飛び上がり、キャンディチェーンの射程外に逃れた。

「空を飛べないお前に殺られる俺様ではない」

と嘲笑う。

「お前の蜜も吸ってやろうか?」

アブ男が急降下し、ドリームキャンディに迫る。

「チェーンディフェンス!」

とドリームキャンディはキャンディチェーンを螺旋状に回転させて全身を覆った。

「飴ちゃんで俺の攻撃が防げるか!」

アブ男はチェーンディフェンスごとドリームキャンディを吹き飛ばした。

「きゃぁ~!」

と叫びながら地面に叩きつけられるドリームキャンディ。

「強い…」

必死に上体を起こすドリームキャンディ。しかし、アブ男は彼女に目もくれず、気絶したままのミラクルナイトに目を向けた。

「俺はカギには興味ねぇ。やっぱミラクルナイトだな。あの太股、堪らんねぇ…」

と呟いたその時、緑色の光がアブ男に激突した。弾き飛ばされるアブ男。その光の中から現れたのは、風の戦士セイクリッドウインドだった。

「奈理子に手出しはさせないよ!」

扇型の武器ガストファングを手にセイクリッドウインドがアブ男を睨みつける。

「次から次に面倒くさい奴らだ。だが、セイクリッドウインド、お前も俺の『蜜を吸いたい女リスト』に入っているぜ」

とアブ男が下衆な視線をセイクリッドウインドに向けた。

「嫌らしい目で見ないでよ!」

とセイクリッドウインドがガストファングを構えた。

「アブ男は強いです!気を付けてください」

とドリームキャンディがセイクリッドウインドに注意を促す。

「面倒だ。二人一緒に掛かって来い」

とアブ男が挑発した。

ドリームキャンディとセイクリッドウインドは互いに頷き合い、協力してアブ男に立ち向かう決意を固めた。空中で繰り広げられる激しい戦いに、市民たちは再び声援を送り、二人の戦士の勇姿に期待を寄せた。アブ男の強力な攻撃に対抗しながら、彼女たちはミラクルナイトのため、そして水都の平和のために戦い続ける。


縦横無尽に飛び回るアブ男に対し、セイクリッドウインドとドリームキャンディは防戦一方だった。それでも市民は二人のヒロインに精一杯の声援を送り続けた。

「空を飛べないあの二人ではアブ男には勝てないな」

と香丸が真衣香を後ろからギュッと抱きしめながら口にする。真衣香は香丸に身を委ね、固唾を呑んで戦いを見守っていた。

「やはり、空飛ぶ相手には奈理子だな。ライム、何とかならんのか?」

と糸井がライムを見る。ミラクルナイトは依然として気絶したままだった。

「奈理子の力だけではアブ男は倒せないだろう。三人力を合わせて何とか互角ってところか…」

とライムが呟く。

「奈理子、いい加減に目を覚ましなさい!いつまで寝てるの!!」

突然、噴水広場に女性の怒号が鳴り響いた。

「おっ、この声は鈴だ」

と糸井が声の主を言い当てると同時に、鈴の声がした周りから

「奈理子ちゃん、起きろー!」

「キャンディとナメコ姫がピンチだぞ!」

「奈理子ちゃん、立つんだ!」

と一斉にミラクルナイトに向かって声が飛んだ。

「蕎麦屋のじじいもいるぜ」

と糸井が奈理子に声援を送る一団を見た。

「商店街のみんなが奈理子に声援を送ってる…」

とライムも確認した。

「奈理子ちゃん、しっかりするんだ!」

別の方向からも声がした。

「あれは成好さんじゃないか。春休みは実家に帰ると言っていたのに、水都に戻ってたのか…」

と香丸が呟いた。『水都大学奈理子私設ファンクラブ』の横断幕の元、ファンクラブの面々が一斉にミラクルナイトに向かって声を上げる。成好はファンクラブの会長だ。

商店街とファンクラブの声援につられ、他の市民も倒れたミラクルナイトに向かって声援を送る。それは、盛大な奈理子コールに変わっていった。噴水広場の市民だけではない、テレビで、ネットで噴水広場の戦いを視聴する市民も奈理子に声援を送る。水都市民全体が、水都の守護神ミラクルナイト、野宮奈理子に声援を送っていた。

「みんなが奈理子を待っているぞ。奈理子、目を覚ませ」

とライムは呟いた。その声は、無意識の中の奈理子に届き始めていた。市民の声援、仲間たちの呼びかけ、そしてライムの切実な願いが、奈理子の心を揺り動かしていた。

ミラクルナイトの瞳がゆっくりと開かれた。彼女は市民たちの声援に応えるために、再び立ち上がる決意を胸に秘めていた。ミラクルナイトの復活が、今まさに始まろうとしていた。


「ミルク臭いミラクルナイトも良いが、現役女子大生の匂いも堪らん!」

とアブ男が言いながら、セイクリッドウインドをまんぐり返しにした。セイクリッドウインドウのコスチュームの下はレオタードだ。

「やめて!私はもうすぐ卒業だから、女子大生じゃなくなるし…」

「今月までは女子大生だろ。クンカクンカ…」

「いゃぁ〜!」

「女子大生の甘い蜜を頂くぜぇ」

アブ男はセイクリッドグリッドのレオタードをずらす。

「あぁ……」

大切な箇所がひんやりとした空気に触れ、セイクリッドウインドは力が抜けてしまった。

アブ男の口吻がセイクリッドウインドに迫る。

「そこは…ダメ……」

セイクリッドウインドの力なく声が漏れる。その瞬間、

「ナメコ姫から離れなさい、ロリポップ三段突き!」

とドリームキャンディがロリポップハンマーで高速の三段突きを繰り出した。

「おーっと、危ねぇ」

アブ男は素早く舞い上がり、ロリポップハンマーを避けた。

「あっ!」

とドリームキャンディは勢い余ってズッコケてしまい、ロリポップハンマーを落としてしまった。

「お前の蜜はもうちょっと大人になってからだ」

とアブ男がドリームキャンディを嘲笑った。

その瞬間、アブ男の背に水色の光弾が直撃した。

「何だ?」

と振り返るアブ男。そこにはミラクルウイングを広げて空中を舞うミラクルナイトの姿があった。

「大切なことなので、もう一度言います。水都の平和を乱す者はミラクルナイトが…、私たちが許しません!」

とミラクルナイトが高らかに宣言する。

「そんなボロボロの姿で、よくそんなことが言えるな」

とアブ男がミラクルナイトの破れたコスチュームの隙間から覗く白い下着を見てニヤリとした。

アブ男がミラクルナイトに気を取られた一瞬の隙をセイクリッドウインドは逃さなかった。

「ヌルヌル発射!」

セイクリッドウインドが掌からナメコ粘液を放つ。

「わっ!何だコレは?!」

ヌルヌル塗れになり翅を動かせなくなったアブ男が地に落ちる。

「地上に降りればこっちのもん。キャンディシャワー!」

ドリームキャンディが放つ虹色の光がアブ男を包み込む。

「これで終わりよ」

ミラクルナイトの左脚が水色に輝き始める。

「ミラクルキ〜ック!」

ミラクルキックがアブ男にヒットした。かに思われたが、アブ男の体に纏わり付くヌルヌルに滑ってしまい、ミラクルナイトは尻餅をついて地面に落ちてしまった。

しかし、アブ男のダメージは大きい。

「俺はミラクルナイトに一対一の勝負を挑んだんだぞ。それを三人掛かりで攻撃しやがって。お前ら、それでも正義のヒロインか!」

とアブ男が怒鳴る。

「奈理子さんを守ることが私たちの使命…」

とドリームキャンディが口にすると、

「奈理子のピンチのときには必ず私とキャンディが現れる。覚えておきなさい!」

とセイクリッドウインドも続ける。

ヌルヌル塗れのままで三人のヒロインと戦い続けることの不利を悟ったアブ男は、

「セイクリッドウインド、次は蜜を吸うだけじゃなく俺様のミルクを注入してやる!ドリームキャンディは中学生になったら初めての血を頂いてやる。小学生とやると犯罪だからな!」

と言い残し、去って行った。

「嫌です!!」

「大学生でも犯罪だ!」

ドリームキャンディとセイクリッドウインドウが怒りの声を上げる。

市民たちは一瞬の静寂の後、大きな歓声を上げ、三人のヒロインに声援を送った。ミラクルナイト、ドリームキャンディ、そしてセイクリッドウインドは、共に力を合わせて水都の平和を守り抜いたのだ。


「奈理子、今日も可愛かったぞー!」

「ナメコ姫、いいもの見せてもらったぞー!」

「キャンディ、こっち向いてー!」

噴水広場に沸き起こる声援に応え、三人のヒロインは笑顔で手を振った。華やかな雰囲気が広場を包む中、ミラクルキックに失敗して尻餅をついたミラクルナイトを心配する声も上がる。

「奈理子、お尻大丈夫?」

と心配する市民の声に、奈理子は苦笑いを浮かべた。

コスチュームがボロボロになり下着が丸見えであることに気付いたミラクルナイトは、慌てて変身を解除した。水都中学の制服姿になった奈理子に一際大きな歓声が上がる。市民の声援が奈理子に勇気を与える。

「私は、もうすぐ中学を卒業します。高校生になっても、応援よろしくお願いします!」

奈理子は深々と市民に頭を下げた。

「教授曰く最強のアブ男を撃退するとは、奈理子も成長したな。お漏らしするところは昔と変わらんが」

と糸井が面白げに口にする。

「あの二人がいたからさ」

とライムが呟く。ミラクルナイトはまだまだだが、ドリームキャンディとセイクリッドウインドの助けがあれば、よほどのことがない限り負けることはないだろうとライムは思っている。

「香丸と苺ちゃんはどこ行った?」

と糸井が尋ねる。香丸と真衣香がいないことに気付いたのだ。

「さっきまでそこにいたけどな」

とライムも周りを見渡すが、香丸と真衣香の姿がない。

「香丸の奴、今頃苺ちゃんと…」

忌々し気に糸井が呟いた。

「あの女、年の割には純情ぽかったし、香丸さんの手にかかればイチコロだろう」

とライムはそう言いながら歓声を浴びる奈理子に目を遣った。水都の絶対アイドル奈理子はライムの彼女だ。これからどうやって奈理子を可愛がってやろうかと思いを馳せたが、奈理子はお漏らししたので早く帰らせてシャワーを浴びさせるべきだなと考えていた。

「奈理子、今日はよくやった。早く帰って小便を洗い流せ」

とライムが声をかけると、奈理子は少し照れた様子で頷いた。

「うん、ありがとう、ライム。みんな、本当にありがとう!」

と最後にもう一度市民に向かって手を振ると、彼女はライムと共に広場を後にした。

一方、香丸と真衣香は噴水広場から少し離れた静かな場所にいた。香丸は火照った身体の真衣香の肩を抱き、

「本当にいいんだね」

と優しく尋ねた。真衣香は頷きながら、

「もう、どうしようもないの。お願い…」

と顔を伏せた。

「真衣香さん、君の勇気には感心するよ。でも、もっと自分のことも大切にしなきゃダメだよ」

と香丸が微笑みかけると、真衣香は恥らいの表情で、

「でも、もう抑えられない…」

と答えた。二人は寄り添いながら歩き始めた。

広場では、セイクリッドウインドとドリームキャンディも市民に囲まれ、笑顔で応えていた。

「今日は本当にありがとう。みんなの声援がなかったら、私たちは負けていたかもしれない」

とセイクリッドウインドが感謝の言葉を述べると、ドリームキャンディも続けた。

「そうです!みんなが応援してくれたおかげで、私たちは最後まで頑張れました。ありがとう!」

市民たちの笑顔と歓声が再び広場に響き渡る。水都の守護者たちは、これからもこの街を守り続ける決意を新たにした。日が傾き、静かな夕暮れが訪れる中、市民たちはそれぞれの家路についた。

ライムと奈理子、香丸と真衣香、そしてセイクリッドウインドとドリームキャンディ。それぞれが自分の大切な人と共に、また新たな一日を迎えるために歩みを進めていた。水都の夜は、希望と勇気に満ち溢れていた。

(第126話へつづく)

(あとがき)