DUGA

ミラクルナイト☆第79話

日差しが温かいある日、隆の家の玄関を軽くノックする音がした。玄関を開けると、そこに立っていたのは寧々だった。奈理子と隆の母親は彼女の姿を見て微笑んだ。

「あら、寧々ちゃん。」

奈理子の可愛らしさは母親似だなと思った寧々。今日の寧々は、いつもの健康的な姿とは異なり、少し大人びた格好をしていた。ハーフアップの髪、リップを塗った唇、そしてシンプルなワンピース。奈理子と隆の母親は、彼女の変化を感じ取ることができた。

リビングの奥から、休日のリラックスした格好をした隆が姿を現した。寧々は照れくさい表情をして、恥ずかしそうに彼の方を見た。隆の母はその光景を見て、意味深な笑みを浮かべた。寧々は隆の母親がいることを気にしてモジモジしている。それを察し隆の母親は寧々に優しく声を掛けるとさがっていった。

「上がるか?」

と隆。しかし、寧々の

「外で話がしたい」

と、小さな声が聞こえると、隆は迅速にサンダルを履いて彼女を外に誘った。

寧々の瞳には期待が宿っており、ネカフェで隆との時間を楽しむことを望んでいた。

「ネカフェに行きたい」

と恥ずかしそうに言う寧々。しかし、その期待は隆の言葉で少し霧散してしまった。

「寧々、会員証持ってんの?」

と隆。寧々は持っていない。

「小学生は親と一緒に会員証作らないと会員になれないぞ」

と冷たく隆に言われてしまった。

仕方なく商店街の方向へと進む隆と寧々。隆と2人でいるところを近所の人たち見られたくないと思う寧々の歩調が少し急いだのを察して、

「どこ行くんだ?」

と隆が声をかける。

「水都タワーの方に行きたい」

と寧々は答えると、隆が寧々の姿を改めてジロジロと見て言った。

「姉ちゃんもデートのときはだいたいワンピースだな」

その言葉に、寧々の心には小さな傷が付いた。しかし、彼女は隆との時間を大切にしたいという気持ちを強く持っていた。


水都タワーが聳え立つその場所は、街の中でも特に風が心地よく、光がきらめくロマンティックなエリアだった。隆と寧々はそのタワーの前で立ち止まり、周りの風景と賑わいを眺めていた。

「奈理子さんの様子はどう?」

寧々が小さな声で訊ねた。彼女の心の中には、ミラクルナイトの最後の戦いのシーンが鮮明に浮かんでいた。

「毎日特訓に行ってるぜ。家でもスクワットとかトレーニングしてる」

隆の答えは寧々の心に少し安堵をもたらした。そして、

「観覧車乗ろうぜ」

と、隆が寧々の手をぐっと引っ張る。寧々の心臓は驚きと期待で高鳴った。しかし、その期待は、隆が自分のポケットを探る姿で一瞬打ち砕かれた。彼はお金を忘れてきたらしい。寧々は彼の困った顔を見て、自ら財布から必要なお金を出して2人分のチケットを購入した。

観覧車のゴンドラ内は、外の喧騒から隔絶された静かな空間だった。寧々は隆の横顔を盗み見ながら、彼の心の中に何があるのかを知りたいと切望した。隆は窓の外を無邪気に眺めている様子だったが、寧々は勇気を振り絞り、彼に質問を投げかけた。

「隆、好きな女の人いるの?」

その質問は、寧々自身の心の中にある小さな期待と恐れが入り混じったものだった。隆は彼女の方を振り返り、目を合わせた。その瞳の中には、答えが隠されていた。


水都タワーの観覧車の中、観覧車のゴンドラ内で、寧々と隆の距離はいつもより近く、しかし、同時に何か遠く感じられる不思議な空間だった。寧々の緊張した質問に、隆はただじっと寧々を見つめるだけだった。その視線の中には、温かさと驚き、そして少しの好奇心が混ざっているように感じられた。

寧々は隆の視線の強さに耐えられず、自らの選んだワンピースを後悔し始めた。彼女は奈理子の服装を参考に隆の好みを想像して取り入れたかったのだが、いつもはスポーティな格好が多い彼女にとって、この日の格好は大胆な挑戦だった。さらに、いつもの安心感を与えてくれるスパッツやショートパンツを身に着けず、奈理子のスタイルを真似て生パンを選んだことが、ますます自分を不安にさせていた。スース―して落ち着かない。

隆が言葉を紡ぎ出すと、寧々の心はドキドキと高鳴った。

「寧々がいつも今日みたいな格好してると、寧々を好きになるかもしれない」

と彼は言った。その言葉に寧々は驚きながらも、小さな喜びを感じた。しかし、隆の言葉が外見重視なのかという疑問が心の中に浮かび上がった。それでも、彼女は隆の顔を見て、自分の答えを探した。

「できるだけそうする…」

と、少し恥ずかしげに言った。

隆の次の質問は、さらに寧々の頬を赤くさせた。

「ワンピースの下は生パンか?」

と彼が言うと、寧々は頷きながら恥ずかしさで顔を隠した。隆の顔には、純真な好奇心と驚きが交錯しているような表情が浮かんでいた。

寧々は隆の子供っぽい興奮に微笑みながら、男子はなぜ女子のパンツが好きなのか不思議に思いつつ、これからはもう少し自分を磨こうと心に決めた。


観覧車を降りるやいなや、隆は寧々の手を取り、

「水都公園の芝生で語り合おうぜ!」

と誘った。寧々はその提案に一瞬躊躇した。生パンでの芝生は危ない思ったが、

「芝生で寧々の膝枕だ!」

と喜々とする隆を見て

「しょうがないなぁ…」

と隆の純粋な笑顔を前にして、彼女はその疑念を振り払った。

だが、その足を止めさせる出来事が待っていた。水都タワー前広場に、体操服姿の美少女を先頭にした一団が現れた。彼らが掲げているのは「水都大学奈理子私設ファンクラブ」の幟。その中心にいるのは、隆の姉である奈理子だった。

「姉ちゃんだ!」

隆の声が広場に響き渡る。寧々の目は、奈理子の履いている、紺色のショーツ型の衣類に引き寄せられた。ブルマーだ。漫画やアニメでのその存在は知っていたが、現実で見るブルマー姿は彼女にとって初めてだった。しかも、その何十年も前の体操着は、奈理子の手に掛かってしまうと、奈理子の可愛らしさを際立たせるファッションの一部へと変貌を遂げていた。

ブルマー姿の可憐な奈理子を見た寧々の心の中は、これ以上ないほどの感情の渦に巻き込まれていた。この美少女を姉に持つ隆の心を、自分が掴むことはできるのだろうか、という不安。

広場を埋め尽くす水都市民の目は、すべて奈理子に注がれていた。彼女はまるで、水都の女王のように、その場の主役として君臨していた。マイクを手に取ると、彼女のクリアな声が響き渡った。

「水都市民のみなさん、こんにちわ。野宮奈理子です!」

その声に、広場は歓声に包まれた。寧々はその光景を見ながら、奈理子には絶対に勝てないと思い知らされた。そして、自分の心の中の葛藤と向き合うことを決意した。


水都タワー前の広場が、一つの声に釘付けとなった。奈理子の、その愁いを帯びた声が各隅へと響き渡っていた。

「先日、私はこのタワー前広場でクワガタ男に屈辱的な敗北を喫しました…」

言葉とともに広場全体が一瞬の静寂へと落ち込む。しかし、その静けさは長く続かなかった。

「このままでは…私はミラクルナイトとしてみなさんの期待に応え、前に進むことができません!」

その宣言を市民達は熱狂の渦に巻き込まれた。

「私は、クワガタ男に再び挑戦したいと思います!クワガタ男、私の声を聞いているのなら、私の挑戦を受けてください!」

盛大な奈理子コールが湧き上がる。

「場所はどこでも構いません。クワガタ男が現れた場所に私が駆けつけます。ただし、これは私個人的な戦いです。水都市民に迷惑をかけることは絶対にしないでください!」

奈理子コールの中、奈理子は続ける。

「もう一つクワガタ男にお願いがあります。二学期が始まると私は学校に行かなければなりません。夏休み中にお願いします!」

奈理子は深々と頭を下げた。

寧々はその奈理子の注文の多い挑戦状を耳にしていた。しかし、彼女の中には疑問も湧いてきた。細く、華奢な奈理子の体つきを見て、果たして彼女が本当にクワガタ男に立ち向かうのか、その意志に疑念を感じた。

隆の視線の先にも奈理子がいた。彼の瞳には、心からの憂いと不安が滲んでいた。その手に、寧々の手がそっと触れて絡み合った。寧々を、身体ごと引き寄せる隆。瞬間、寧々はその温かさの中で、隆の真意に迷いを感じた。本当に彼は自分を求めているのか、それとも姉の奈理子への気持ちを私にぶつけているのか。そして、その疑念は現実となる形で現れた。寧々の胸を触る隆の手の動きは、寧々にとって許容の範囲を超えていた。

「隆!」

寧々は彼を突き放した。彼女の中には、驚きと失望の混在した感情が渦巻いていた。

「なんてことを…」

心の中で、寧々は告白じみたことを口にしてしまったことを後悔していた。彼との関係は、これからどのような道を辿るのか、彼女には分からなかった。


次の日、商店街のほんわかした雰囲気とは裏腹に、グフグフハンバーガーの店内は緊張感が漂っていた。子どもらしい無邪気さを残しつつも、可憐な美しさを身に纏った小学生の寧々は、大学生の凜と向かい合っていた。

凜は寧々のワンピース姿に微笑んで

「今日の寧々、奈理子っぽくて可愛いわね。彼氏でもできたの?」

と言い放った。寧々はそんな自分を隆に見せるため、奈理子のような服装を意識して選んでいた。しかし、まさかそれを凜に指摘されるとは思っていなかった。

「そんなことより、奈理子さんが心配です。奈理子さんがクワガタ男に立てるとは思えません」

と、寧々は顔を紅潮させながら答える。しかし凜は寧々の言葉をスルーし、

「で、誰なの、その彼氏?」

と詰め寄ってきた。寧々は押し問答に負けて、遂には

「同じクラスの男子です…」

と口を滑らせた。

凜の目には、寧々の悩みをじっくりと聞いてやるような優しさが満ちていた。寧々は、隆が奈理子の弟であることを隠しながら、隆についての悩みを凜に打ち明けることにした。可愛すぎる彼の姉の華やかさの陰で、自分が彼の心の中でどれほどの存在なのか、そして彼の手が時折不意に自分の身体を触ることなど、細かい悩みを次々と告白していく。

凜はしっかり者で堅物の寧々が、こんな恋の悩みを抱えていることを知り、思わず心の中で微笑んだ。寧々の心の葛藤を知ることで、彼女の成長を優しく見守ることを決意したのだった。


グフグフハンバーガーでのんびりとお茶を楽しむ凜と寧々の日常は、突如として打破される。周囲に響き渡る町内放送が、二人の注意を引いた。

「クワガタ男が水都公園に出現!」

との情報に、彼女たちは急いで席を立ち、公園へ向かった。

遂に実現するミラクルナイトとクワガタ男の決戦に水都全体が熱気に包まれる中、商店街の店舗も次々と閉店の準備をしていた。市民たちは、ミラクルナイトの戦いを見届けるために、足早に公園へと駆け込んでいった。

公園に到着した凜と寧々が目にしたものは、クワガタ男の圧倒的な存在感。その姿は、噴水広場の真ん中に立ち、奈理子の登場を静かに待っていた。周囲は多くの市民で囲まれ、その空気は、一触即発の緊張感に満ちていた。

突如、穏やかに吹き抜ける風が、寧々のキャミソールワンピースの裾を舞い上げた。

「きゃッ」

と。少し恥ずかしそうに、グレーのショーツを隠そうとする寧々。その表情は、下にスパッツを穿いてくればよかった、と後悔しているようだった。

しかし、その微笑ましい一幕も束の間。体操服に身を包んだ奈理子が、人々の間を縫うようにして噴水広場に姿を現わした。彼女の胸の部分には「奈理子」と書かれたゼッケンが、彼女の名前を大声で叫ぶように鮮明に映えていた。そして、紺色のブルマーは、彼女の引き締まった美しい脚を強調していた。彼女の登場に、会場は一瞬の静寂の後、大きな歓声で溢れ返った。

しかし寧々の目には、その可憐な奈理子が、クワガタ男の前で差し出された生贄のように映っていた。その瞬間、彼女の心の中で、奈理子への心配と、彼女を救いたいという気持ちが高まっていった。


公園の真ん中、噴水広場で緊張が高まる中、クワガタ男は奈理子のブルマ姿を見て不敵な笑みを浮かべた。

「何だその格好は。コスプレか?」

彼の声は皮肉に満ちていた。

奈理子は胸を張り、目をキラキラと輝かせて反論する。

「このフィット感…ブルマは動きやすいのよ。そして、ブルマと太腿が生み出す滑らかなライン、紺と白の絶妙のコントラスト…。これはただのコスプレなんかじゃない!これは今の私の決意の証、戦いに臨む私の正装よ!」

彼女の声は自信に満ちていた。

彼女の言葉に、広場の四方から奈理子を称賛する大歓声が湧き起こる。奈理子は更にアイマスクを手にとり、クワガタ男の方を睨みつける。

「今日は絶対に負けない!」

と宣言し、アイマスクを装着する。

その瞬間、奈理子の全身が水色の光で包まれ、一瞬の静寂の後、彼女の体操服は消え、純白のランジェリー姿のみが残る。次の瞬間、頭にはミラクルナイトの象徴、白いリボンが。そして、水色のグローブ、ブーツ、白いブラウス、胸の中心に水色のリボンが順に現れる。そして、純白のショーツを覆うように、水色のラインが入った白いプリーツスカートが現れる。

水色の光が消え去ると、広場の中心にはミラクルナイトとしての奈理子が優雅に立っていた。軽やかな風が彼女のプリーツスカートを持ち上げると、彼女の純白のショーツが垣間見えた。その瞬間、広場に集まった水都市民の興奮と歓声は、ピークに達した。

水都の守護神、ミラクルナイトの降臨。その瞬間を目の当たりにした市民たちは、その美しさと力強さの前に圧倒されていた。


緊張と興奮が交錯する噴水広場。クワガタ男の目は炎のように赤く輝き、口からは威嚇的な言葉を吐き出した。

「今日も身ぐるみを剥いで瞬殺してやるぜ!」

と彼は宣言し、大顎を鋭く唸らせて突進してきた。

だが、彼の大顎がミラクルナイトに届こうとしたその瞬間、ミラクルナイトの背後に広がるミラクルウイングが輝き、彼女は空高く舞い上がった。その姿はまるで天使のよう。広場に集まった市民たちの間からは、彼女の華麗な動きに感動する歓声が湧き上がった。

空中で、ミラクルナイトは手から水色の光弾を連射。しかし、クワガタ男の硬くて頑丈な外骨格には、彼女の攻撃は通じない。それを見たクワガタ男も、大きな羽根を広げ、空へと舞い上がった。彼の狙いは、もちろん、上空にいるミラクルナイトだった。

しかし、ミラクルナイトは怯むことなく、水色に輝く右脚を高く振り上げながらクワガタ男に急降下。

ミラクルキック!」

その一撃は、クワガタ男の胸部に正確に命中。強烈な衝撃でクワガタ男は地面へと叩きつけられた。

ミラクルナイトは、スカートを舞わせながら、高く空から地上に舞い降りた。彼女の純白のショーツが瞬時に視界に捉えられるも、その純潔さは彼女の力と美しさの証であった。

「私は水都の守護神、ミラクルナイト。この街の平和のため、あなたなんかにはもう二度と負けない!」

その堂々たる宣言に、広場に集まった水都市民たちはさらに大興奮。彼らの心は、ミラクルナイトに向けられた熱い期待と感謝で満たされていた。


広場の緊張感は再びピークに達し、それはあたかも死静かに待ち構える嵐の前の静けさのようだった。クワガタ男が、精神と身体の両方で圧倒的な存在感を放っていた。

「おのれ…身包み剥ぐだけじゃ済まさんぞ、ミラクルナイト!」

と彼は吼えた。

すでにミラクルキックという奈理子の最も得意とする技を受けても、なお立ち上がったクワガタ男。周りの市民の視線の中には、再びミラクルナイトが衣類を剥ぎ取られ無様な敗北を喫する姿が思い浮かび、不安や悲しみ、そして細かい期待が混ざり合っていた。

「奈理子ちゃん!」

と、その中でひときわ高く響いた声は、水都大学奈理子私設ファンクラブ会長の成好のものだった。

ミラクルナイトは彼の方を見た。ミラクルキックだけで倒せる相手ではないことはミラクルナイトも分かっていた。その眼差しには強い決意と希望が宿っていた。彼女はもう一度、クワガタ男に立ち向かう覚悟を固めていた。

瞬時の戦闘が繰り広げられた。クワガタ男の大顎の攻撃、ミラクルナイトの華麗な回避。しかし、その一瞬の隙を突かれ、ミラクルナイトのブラウスが裂けた。裂かれた隙間から奈理子の白いAカップのブラジャーが覗く。そして続くミラクルナイトのハイキック。しかし、これもクワガタ男に阻まれ、蹴り足を掴まれた彼女は噴水の中へと投げ飛ばされた。

水しぶきが広場に舞い散る中、ミラクルナイトは

「まだ、負けていない!」

と叫びながら再び立ち上がった。だが、その勢いもクワガタ男の大顎に捉えられ、彼女は再び窮地に立たされた。

「手古摺らせやがって…お仕置きだ、ミラクルナイト!」

クワガタ男の声が響く中、彼はミラクルナイトのスカートを無慈悲にも剥ぎ取った。そして、次の瞬間、彼はさらに一歩を踏み込んだ。奈理子の清純の証である純白のショーツに手を伸ばす姿に、水都の市民たちは息を呑んだ。

彼らの心の中は、前回の戦闘の記憶と、今、目の前で繰り広げられる戦いの現実との間で揺れ動いていた。ミラクルナイトの次の一手、そして彼女の運命が、この瞬間にどう変わるのか、それを心待ちにする者たちの緊張感が、広場を包んでいた。


水都の広場には、二人の戦士の姿が鮮明に映し出されていた。ミラクルナイト、その美しい容姿とは裏腹に、持ち前のテクニックと決意でクワガタ男に立ち向かうが、純白のショーツをガッチリとクワガタ男に掴まれてしまった。

そしてその瞬間、ミラクルナイトはクワガタ男の顔を太腿で挟み込んだ。

ミラクルハピネスシザーズ!」

ミラクルナイトの渾身の太腿絞め。奈理子の股間が密着する幸せの絞め技を市民の誰もが羨んだ。しかし、それは同時に強烈な絞め技でもあった。

絞められるクワガタ男の表情が歪んでいく。その大顎の力が弱まっていく。しかし、彼の闘志は衰えず、逆に怒りの力となりミラクルナイトを地面に叩きつけた。

ミラクルナイトは疲労と痛みを感じながらも立ち上がる。ミラクルナイトに残された体力は少ない。しかし、クワガタ男にダメージを与えたことは大きな自信になった。ずらされたショーツを直しながら、彼女の瞳は遠くの景色に焦点を合わせた。

「特訓は無駄じゃ無かった」

と低くつぶやき、市民の中から鉄山の姿を探した。しかし、彼の姿は見当たらなかった。

そして、その時、

「奈理子ちゃん!前だ!」

という成好の声。迫り来る大顎を咄嗟の判断で避けるも、ブラウスはもはや破片と化してしまった。もはや純白のブラとショーツの姿しか残っていないミラクルナイト。しかし、その目には揺るぎない闘志が灯っていた。

「鉄山さん、見ててください」

と、そう低く呟きながら、ミラクルナイトは次の一手を繰り出す覚悟を固めた。彼女の勇気に、広場の市民たちは息を呑んで見守っていた。


水都の広場には、激しい闘志と熱意が交差していた。クワガタ男、その大顎を露わにして突進してきた。しかし、ミラクルナイトはその勢いを避け、彼の懐へと巧みに入り込む。

ミラクルヒップストライク!」

と彼女の声が響き渡り、瞬時に彼の顔面に彼女の股間の衝撃が届けられた。

広場に集まった市民たちはその衝撃的な瞬間を目の当たりにし、ミラクルナイトの勝利を確信。しかし、その勝利の瞬間は短かった。クワガタ男は意地と怒りを胸に、そのままミラクルナイト捕まえると地に叩きつけた。その衝撃で、ミラクルナイトの意識が飛ぶ。

クワガタ男は、片手で気を失ったミラクルナイトの頭を掴み持ち上げると。

「お前は股間攻撃しかできないのか!」

と怒りに任せて奈理子の純白のブラジャーを無残にも剥ぎ取った。「ぷるんっ」と揺れない奈理子の小さい胸が露わになる。彼女の意識が遠のく中、広場は震えるような声援の渦となった。

しかし、クワガタ男の次の行動は、さらなる恐怖を市民たちにもたらすこととなる。彼の大きな手が、奈理子の純白のショーツに伸びる。その瞬間、ミラクルナイトを目覚めさせるため、市民による奈理子コールの合唱が広場を覆った。それと同時に、意識を失っていたミラクルナイトの身体全体が、淡い水色の輝きを放ち始めた。クワガタ男は構わず奈理子のショーツを剥ぎ取ろうとする。

ようやく目覚めたミラクルナイトは、純白のショーツに手をかけるクワガタ男の腕を脚で払う。その瞬間のチャンスを逃さなかった。彼女は、身体を全力で前方へと投げ出し、クワガタ男の頭部を両太腿で挟み込んだ。ミラクルナイトの股間が水色の光に包まれる。そして、

ミラクルハピネスホイップ!」

と呼びながら、上体を反らしながら回転しクワガタ男の頭部を地面へ叩きつける。

猛烈な衝撃が広場を揺らす。市民たちの期待と緊張が一気に解放され、歓声が空高く響き渡った。


水都公園の中心、噴水広場は一瞬の静寂に包まれた。

クワガタ男の大顎が弾け飛び、彼の絶叫が空へと昇っていった。真っ白な石畳に水色の光が乱舞する中、ミラクルナイトの美しい姿が輝いていた。水色に輝くミラクルナイトは、両手で光を集めるように舞いながら小さな胸を露に水色に輝く両掌を天に高く掲げ、

「これが最後よ!」

と、公園のすべての命を繋ぐかのような力を放った。

「ミラクルリボンストライク!」

その名の通り、放たれた水色の光のリボンが、クワガタ男を巻き込み、断末魔の叫びを上げえうクワガタ男の存在を優しく包み込むように消滅させた。

クワガタ男の姿が消え去った瞬間、公園にいた市民たちが一斉に動き出した。彼らの顔には感謝と尊敬、そして熱狂が溢れていた。その中心にいたのは、成好ら水都大学の奈理子私設ファンクラブの面々だった。彼らは、彼女を守るように身を前に出し、熱狂する市民の波を押しとどめようとした。

「早く変身を解くんだ、奈理子ちゃん!」

成好の切迫した声が、光の残照とともにミラクルナイトの耳に届いた。勝利の余韻に浸っていた彼女の瞳が現実に戻り、自身の姿を意識する。そう、彼女は純白のショーツ一枚、そして小さな胸を露出した状態だった。彼女は慌てて、変身を解いた。その光景の中、水都のアイドル、ミラクルナイトは、普段の奈理子、体操服姿へと戻った。

だが、熱狂する市民たちの勢いは留まることを知らなかった。彼らは、彼女の手を取り、胴上げを始めた。空高く舞い上がる奈理子の姿、そして

「奈理子、奈理子!」

というコールが、公園全体に響き渡った。水都公園は、彼女の勇気と市民の愛で、一つになった瞬間だった。


市民の歓声と歌声が水都公園を埋め尽くす中、少し離れた場所でカオリ、鉄山、香丸の3人が静かに戦いの余韻を味わっていた。

幸せ絞めに、幸せ投げねぇ…」

カオリは、ミラクルナイトの新技に皮肉を込めた口ぶりで呆れ顔を隠せなかった。

「あなた、奈理子の太腿を楽しみたくてあの技を教えたんじゃないの?」

彼女は、鉄山の方に独特な目線を送った。

鉄山は微笑みながら、

「奈理子のアソコはいい匂いだったぜ」と得意気に答えた。

香丸はやや残念そうな顔で、しみじみと言った。

「私も呼んでくれたら、幸せ締めの練習台になったのに…」

鉄山は手を振り、

「クワガタ男には勝ったんだから文句は無いだろ」

とカオリの方を向いた。

「私たち、奈理子に正体も明かしましたし、奈理子の仲間みたいになっちゃいましたね」

と香丸が楽しげに言った。

「もっと奈理子を苛めて遊びたいし仲間にはなりたくないわね」

とカオリは残念そうな顔をする。

「成好が奈理子を呼んで祝勝会するんだが、お前らも来るか?」

香丸は鉄山を見上げて、ほんのりと笑顔を浮かべた。

「鉄山さんは完全に奈理子の仲間になっちゃってますね。」

カオリが優雅に髪をかきあげ、言った。

「私たちは勅使河原と違ってこの街で悪さしようとしてる訳じゃないから、仲間でも別にいいけどね。」

香丸が一瞬、顔を顰めた。

奈理子をクリスマスツリーの飾りつけにしたのは悪さじゃないんですか?」

去年のクリスマス、カオリはミラクルナイトを捕らえ、商店街のクリスマスツリーに磔したことがあった。

カオリは口元を押さえながら笑った。

「あれはちょっとした悪戯よ。」

彼らの間には特別な絆があった。それは、奈理子を共通の舞台で楽しむ者同士の、深い理解と親近感だった。市民の熱狂を背に、彼らは楽しい思い出を語りながら、ミラクルナイト、いや、奈理子の祝勝会の場所へと足を運んだ。

第80話へつづく)