DUGA

ミラクルナイト☆第177話

夏の夕暮れ。
淡い光が運河の水面に反射し、波間がキラキラと揺れている。
水都公園の橋の下、その木陰は外の喧騒から逃れたような穏やかな場所だった。

「ねえ、ライム……誰にも見られてないよね……?」

橋脚に背を預けて座り込んだ奈理子が、心配そうに辺りを見回した。
制服のリボンは少し緩められ、汗で張りついたセーラーの胸元が柔らかく光を反射している。

「見られててもいいだろ。どうせ“水都のアイドル”だろ?見せとけよ、その……彼氏とのラブラブっぷり」

少し離れた石段に腰掛けていた少年――ライムは、無表情にそう言った。
年下とは思えない落ち着いた声色。だがその目だけは、じっと奈理子だけを見つめていた。

「もぉ……そういうこと言わないでよ……」

奈理子はぷくっと頬を膨らませたが、すぐにライムの横にぴったりと体を寄せた。
二人の影が、夕焼けに染まる水面に並ぶ。

「ライムって、ちょっと意地悪だけど……優しいところも、すき……」

「またそうやって調子のいいこと言って」

ライムは小さく笑い、スライムの一部を指先に浮かべた。それは薄く揺れ、奈理子の白い膝にふれて溶けたように馴染む。

「ひゃっ……ちょ、冷たい……くすぐったいよぅ……」

「……戦いの傷、まだ残ってるだろ。癒してやる」

その声は淡々としていたが、どこか優しさが滲んでいた。
奈理子は恥ずかしそうに脚を引こうとしたが、スライムは彼女の太ももに優しく絡みつき、ゆっくりと熱を和らげていく。

「んっ……ライムのスライム、気持ちいい……」

スカートの奥で白い下着がちらりと覗き、奈理子は慌てて裾を押さえた。

「やだっ……見ないでよ……っ」

「見せとけって。俺だけに」

ライムは少し意地悪く笑いながら、スライムで奈理子の足首までをそっと包み込んだ。
汗ばんだ肌と柔らかな粘膜の温度が混ざり合い、奈理子はくすぐったそうに身をよじる。

「やっぱり、放課後にこうして会えるの、しあわせだなぁ……私、ライムとこうしてる時間がいちばん好き……」

「……なら、もうちょっと静かにしとけよ。顔、真っ赤だぞ」

「そ、それは……だってライムが変なとこ触るからぁ!」

橋の上を通り過ぎる自転車の音が響くたびに、奈理子はぴくんと反応してライムの肩にしがみつく。
でも、その瞳はとろけるように緩く、頬には幸福の赤みが差していた。

水の流れる音と、遠くの子どもたちの笑い声。
そのすべてを遠くに感じながら、奈理子は今日も、恋に満たされていた――


「ほんと……もう、ライムは意地悪なんだからぁ……」

そう言いつつも、奈理子の声はどこか甘えていた。
太ももに絡みついていたスライムの感触は、次第に柔らかく、細く、まるで水流のように変化していく。

「ライム……?ちょっと……どこ触ってるの……?」

制服のスカートの奥。
白くて小さな下着の縁に、冷たくてやわらかな感触がふれてくる。
ピクッと肩をすくめた奈理子が、反射的にスカートの前を押さえる。

「やっ、だめっ……そこ、スカートの中……っ」

「声、でかいよ。誰か来たらどうする?」

「だからやめてって言ってるのにぃ……!」

でも、奈理子の声には怒気よりも羞じらいと、とろけるような甘さが混じっていた。

ライムの指先が動いたわけではない。
スライムが自律的に、奈理子の内腿を這うように上り、布越しにぬるりとふれてくる。

「……っあ、ライムぅ……やだ……そんなの、気持ちよすぎて……っ」

水色のセーラーの胸元まで赤く染め上げ、奈理子は細い手でスカートを押さえるが、ふわりと風が吹けば裾はめくれ、その下の純白が覗く。

「ほんとに白の校則はあるんだな。噂通り」

「そんな校則ない…っ見ないでってばぁ……!」

ライムは無表情のまま、ちょっとだけ口の端を上げる。

「かわいいよ、奈理子」

その一言に、奈理子の耳まで真っ赤になる。
胸の奥がぎゅっとなって、うれしくて、恥ずかしくて、でも目をそらせなくて――

「……そんな顔して言うの、ずるいよ……ほんとに……」

力が抜けて、彼の肩にもたれかかる奈理子。
彼女の目には、揺れる光と恋の熱が溶け込んでいた。

「ねぇ、ライム……もっと、してもいいよ……誰にも見つからなければ……」

彼女の声は、橋の下の薄暗い水面に、静かに溶けていった――。


ライムのスライムが、奈理子の太ももを這うように動きながら、白い下着の縁に沿ってそっとぬるりと滑り込む。
布越しのやわらかな感触に、奈理子はびくっと肩を震わせ、小さく喘ぐように声を漏らした。

「んっ……ライム……っ……だ、めだってば……」

スカートの中、冷たくとろける感触が、彼女の奥の熱と交わり、快感となって全身を這い上がっていく。
心臓が跳ねるたびに、制服の胸元も小さく上下し、彼女の顔は恥じらいと陶酔で紅潮していた。

「でも嫌そうじゃないよな」

「そ……そんなの、ライムが……うまくするから……っ」

彼女は言葉の途中で、つい小さく呻いてしまう。
膝を閉じようとしても、スライムが内ももに挟まり、逆により深く奥へと進んでくる。

「ライム……お願い……もっと優しく……包んで……」

その言葉に応えるように、ライムのスライムはじわじわと奈理子の下腹部を温かく満たしていく。
冷たく、でも安心する――まるで彼女の心をも抱きしめるような感触だった。

「気持ちいい……ライムだけ、だよ……こんなの……」

橋の下、ふたりだけの秘密の空間。
スカートの奥で、少女はゆっくりと快感の波に溺れかけていた。

だがそのときだった――

「きゃあっ! な、なにあれーっ!?」

芝生広場の方から、女の子たちの悲鳴と、ガサガサと走る音が聞こえた。

「……っ!?」

ミラクルナイト――野宮奈理子は、弾かれたようにライムから身を離した。
スカートを慌てて直し、乱れたリボンを握りしめる。

「ライム、いまの……音、聞こえたよね……?」

ライムは冷静な顔のまま頷く。

「……ああ。敵かもしれない」

奈理子の表情が一気に緊張に変わる。
でも頬の赤みと、潤んだ瞳だけはまだ、ついさっきまでの幸福を物語っていた。

「……行かなきゃ。私……水都の守護神だもん」

風に揺れるセーラー服の裾。
白いパンツの奥に残る、まだ消えぬ熱を感じながら、奈理子は決意を込めて立ち上がった――。


芝生広場はすでに騒然としていた。

「なんだあれ!?キノコ!?人間!?」
「動いてる……!き、キモッ!」

芝生の中央、ぼこりと盛り上がった地面から生えた、巨大な茶褐色のキノコの傘。
ぬめりのある胞子を撒き散らしながら、ぬらりと姿を現したのは――

「コウ……タケ……男……!」

ぬるついた体表に、ねじれた柄のような四肢。
背には複数のキノコ傘が生え、口元は不気味な胞子で振動していた。

「ブビビィ……!ミラクルナイト、貴様を腐らせてやる……!」

そのすぐ後ろから、白く艶やかなツルを巻きつけるようにして現れる美しい女の怪人。

「奈理子、今度はちょっと臭くて、胞子まみれの部下を連れてきたわ。早くいらっしゃい!」

妖艶に微笑むその女こそ、穢川研究所の中ボス――トケイソウ女。
白い顔に紫のツルが巻きつくように走り、その瞳にはしたたかな光。

「トケイソウ女……またあなた……っ!」

芝生の向こう、観客がざわついたそのとき――

「お待たせしました! 水都の平和を守る、ミラクルナイト参上ですっ!!」

水色と白の光が風に乗って降り立ち、水都女学院の制服姿の少女――野宮奈理子が芝生に駆け込んできた!

「奈理子ちゃん来たぁあああ!」
「我らがミラクルナイト!!」
「パンツ見せてくれーー!!」

観客席はすでに一種のお祭り騒ぎ。奈理子は小さくため息をつきながら、アイマスクを取り出す。

「……やれやれ、スカート脱がされる前提で応援するなんて、ひどいですよ……でもっ!」

アイマスクを目元に装着――!

キラッ……!

水色の光が彼女を包み、制服が溶けるように消えていく。
白いブラとショーツが宙に浮かび、髪にリボン、ノースリーブのブラウス、ブーツ、グローブ、プリーツスカートが次々に形成されていく!

「水都の平和を乱す者は……ミラクルナイトが、許しませんっ!」

光が弾け、変身完了!

観客たちは歓声を上げ、スマホのシャッター音が鳴り響く中、ミラクルナイトはトケイソウ女とコウタケ男に向き直る。

「来なさい。私は逃げない!」

「ブビビィィィ……!」

コウタケ男が突進する!その腕が胞子を撒き散らしながら襲いかかる!

「えい!」

脚を高く振り上げて放たれるキック!スカートが舞い、観客がざわめく!

「キターーー!パンチラキック!!」
「さすがミラクルナイト!!期待を裏切らないッ!」

だが、キックは弾かれる。ぬめった皮膚に足を取られ、ミラクルナイトが体勢を崩す――

「ミラクルシャインブラスト!!」

連射光弾で牽制するが、コウタケ男は胞子で視界を覆い、距離を詰めてくる。

「こ、こいつっ、ぬるぬるして気持ち悪い……!」

「ブビビィィ……!菌糸捕縛!」

ミラクルナイトの脚元に、キノコ状の根が絡みつく!バランスを崩した彼女のスカートに――

「ひゃっ!? うそっ……やっ……!」

シュルッ――!

真っ白なプリーツスカートが、コウタケ男の触手に引き剥がされた!!

「キャアアアアーーーッ!!」

広場が湧いた!!

「うおおおお!今日も白だあああ!!」
「純白天使ここに降臨!!」
「ナ・リ・コ!ナ・リ・コ!!」

ミラクルナイトは両手でスカートのあった場所を必死に押さえながら、顔を真っ赤にする。

「や、やめてくださいってばぁぁっ!!」

だが――その足元は、すでに次なる攻撃の気配に包まれていた。

「さあ、ミラクルナイト。あなたの恥ずかしいところ、もっと晒してもらうわよ――!」

トケイソウ女が、艶やかに微笑んだ。


「きゃあっ……見ないでっ……!こっち、見ないでぇぇっ!」

ミラクルナイトが必死に押さえるスカートの下――
いや、すでにスカートは存在しない。

舞い上がる純白のショーツが太ももと共に晒され、観客席は爆発したような騒ぎとなった。

「おおおおっ!白!白ッ!安定の白ッ!!」
「奈理子のパンツぅぅぅーーー!!」
「天使は、やっぱり白ぉぉぉおお!!」
「少し濡れないか??」

そこに、駆けつける男がひとり――
水都大学生であり、ミラクルナイト私設ファンクラブ「MNSFC」を率いる熱き青年。

「奈理子ちゃんッ!!恥じらいの中にこそ、美しさは宿るッッ!!」

彼の名は――成好。

「MNSFC、全力応援隊形!展開ッ!!」

周囲の木陰やベンチから、次々と奈理子Tシャツを着た大学生たちが集まりはじめる。
手には横断幕、メガホン、そして大量の応援うちわ。

《パンツ見せても負けるな奈理子!》
《天使の戦い、応援します!》
《スカートがなくても心は白い!》

「うわあああああああっ……!!やめてくださいぃぃぃぃっ!!」

ミラクルナイトは泣きそうな顔で必死に手で裾を押さえるが、戦闘中のため体勢は崩れ続ける。
ぬめぬめとしたコウタケ男の触手が、再び太ももに絡みついてくる――

「ブビィィ……白い花が咲いた……もっと広げてやるブビ……!」

「やっ……だめっ……や、やめてぇっ!!」

観客の視線が集中する中、ミラクルナイトは身動きできず、膝をついてしまう。

トケイソウ女が艶やかに笑い、うねる蔓を差し出す。

「市民の前で下着姿で這いつくばる守護神……あらあら、あなたの戦い方って、こういうのでしたっけ?」

ミラクルナイトの瞳に、涙が滲む。

「私……こんなつもりじゃなかったのに……なんで、みんな……応援、してくれるの……?こんな姿なのに……」

そのときだった――

「……奈理子さん、またスカート脱がされちゃってるよ……ほんと、もう……」

芝生の端から歩いてきたのは、ポニーテールの少女。
キリッとした眉に冷静な瞳、そして腰に巻いたおなじみのキャンディチェーン。

「ドリームキャンディ……!」

「その声は……キャンディ……!」

ミラクルナイトが顔を上げた瞬間、
ドリームキャンディはすでに一歩を踏み出していた。

「……奈理子さんは、もうちょっとスカートを大切にしたほうがいいと思うけど。
でも、やられてばかりなのも、見てて腹立つんで――ここは、私が助けます」

ポニーテールを翻し、ドレスの裾をなびかせながら、彼女はコウタケ男の前に堂々と立った。

「中学生戦士、ドリームキャンディ――参上です!!」

広場が再び沸く。

「おおお!キャンディきたーー!」

「パンツじゃなくてブルマーだけど安心感!!」

「がんばれキャンディ!奈理子を救ってくれ!!」

地に膝をついたままのミラクルナイトに、彼女は視線だけを向けて言った。

「奈理子さん、立てますよね?“市民の期待”ってやつ、裏切れないんでしょ?」

その言葉に、ミラクルナイトはふっと笑う。

「……うん、もちろん。私、ミラクルナイトだもん」

スカートがなくたって、立ち上がる。

それが、水都の守護神――奈理子=ミラクルナイト。


「奈理子さん、スカートなんて飾りですよ。中身の強さで見せつけましょう」

ドリームキャンディが横に並び、にやりと笑った。

「飾りって……ひどいよ、寧々ちゃん……!私、すごく恥ずかしいんだからっ……」

顔を赤らめるミラクルナイト。
白い下着がむき出しのままなのに、市民の声援は鳴り止まない。

「奈理子ちゃん、今がいちばん輝いてるーー!!」
「がんばれ!羞恥心に負けるな!」
「純白は戦う色!!」

彼女のスレンダーな肢体を彩るのは、光と汗と羞恥、そして――誇り。

「行こう、キャンディ……この街を、守るために!」

「はい!」

二人は同時に駆け出した。
コウタケ男が振り下ろす胞子まみれの腕を、ドリームキャンディのキャンディチェーンが弾く!

「キャンディシャワーッ!」

虹色の光線がコウタケ男の身体を焼くが、キノコの外殻はそれを弾いた。
彼の背中に生えた傘がぷるんと振動し、胞子が再び舞う!

「ブビビィィ……胞子共鳴波!!」

白い煙が舞い、視界が遮られる。
ドリームキャンディが咳き込み、ミラクルナイトの手が見えなくなる。

「っ、苦しいっ……!」

「奈理子さん!?」

そのとき、煙の中から飛び出してきた触手が、ミラクルナイトの腰に絡みついた!

「きゃあっ!? やっ、スカートないのにっ……やめてぇぇっ!」

「ブビビィィ……“清楚”なヒロイン……脱がすほど、価値がある……!」

「な、なんでそんなこと言うのぉぉぉ……!」

悲鳴とともに地面に倒れ込むミラクルナイト。
ショーツがさらに引っ張られ、恥ずかしい毛が露わになる。

「こ、こんなの……戦いじゃない……っ!」

コウタケ男はすかさず上から覆いかぶさるように追撃を仕掛けるが――

「ロリホップ凄い突きッ!!」

横から飛び込んだドリームキャンディのロリホップハンマーが、コウタケ男の脇腹を貫いた!

「奈理子さんのパンツを脱がさないでっ!!」

一撃を入れたが、キノコの傘が防御して決定打にはならない。
コウタケ男の体はぶるぶると震え、胞子の弾幕をさらに拡散する!

「ぐっ……強い……!」

「私、足が……もう力が入らない……っ!」

ミラクルナイトが膝をつき、うつ伏せに崩れ落ちる。
群衆がざわつく中、勝ち誇ったようにコウタケ男の影が覆い被さろうとした、その瞬間――!

「あーあ、派手にやられてんね、あんたたち」

風が吹いた。

草をなびかせ、リボンを揺らし、空を裂いて舞い降りる影。

「――風の戦士、セイクリッドウインド!遅れて登場ッ!!」

緑と銀のコスチュームが夕日を浴びて煌めく。
ミラクルナイトとドリームキャンディの間に割って入るように降り立ち、鉄扇ガストファングを構える。

「またパンツ丸出しで倒れてるとか……どんだけサービス精神旺盛なの、奈理子。キャンデイも、アンタがついていながら、なんでこんなことになってんのよ」

「り、凜さん……!」

涙目のミラクルナイトに、セイクリッドウインドはウィンクしてみせる。

「さあ、逆転といこうじゃない。風が味方してる今のうちにね!」

そして、三人が揃った。

水都を守る、三つの光。
今、反撃の風が吹き始める――!


「”マイナー茸”のくせに、奈理子にちょっかい出さないで!!」

芝生に風を巻き起こして立ち上がったセイクリッドウインドが、ガストファングをバシンと開きながら叱り飛ばす。

「ひっ!ナ、ナメコ姫ぇ……!」

コウタケ男の触手がビクッと震えた。
背中のキノコ傘が縮こまり、全身から白い胞子をまき散らして後退する。

「ちょっ……!ナメコ姫じゃなくて、セイクリッドウインドでしょ!」

トケイソウ女が唇をつり上げ、苛立ちを隠さず叫ぶ。

だがセイクリッドウインドは、にやりと笑った。

「……でもいいわ。みんな大好き“メジャー茸”、ナメコ姫の新しい力、見せてあげるッ!」

ビュウウッ!!

鉄扇を一閃、地を這うような突風がコウタケ男を包み、その巨体が仰け反る!

「がはっ……胞子が……風にっ……!」

その隙に、立ち上がったミラクルナイトが叫ぶ!

「ミラクルキックッ!!」

白いショーツを隠す間もなく、高々と脚を振り上げる。
「キャーー!」という市民の大歓声とともに、純白が風に舞う――

ぱんっ!
キノコの笠に一撃を叩き込む!

「続いていきますよ! ロリホップ三弾突きッ!!」

ドリームキャンディが駆け込み、ハンマーを三度連続で突き出す!

ドン!ドン!ドンッ!

キノコの外殻が軋み、ひびが走る!

「奈理子さん、仕上げお願いします!!」

「うんっ!」

ミラクルナイトが天を仰ぐと、髪が水色に煌めいた。
掌に光が集まり、水色のオーラがリボンのように広がっていく。

「リボンストライク――!!」

空へと放たれた無数の水色のリボンが、風に乗って舞い落ち、コウタケ男の身体を包み込む!
痙攣するように傘が縮み、胞子の煙が爆発的に吹き飛んだ!

「ブビィィィィイイイイッッ!!」

その悲鳴とともに、キノコの化け物が光の中へと溶けるように消えていった。

……

静寂。

そして――

「やったーーーっ!!」

「奈理子ちゃん最高ーーー!!」

「純白の逆襲!!泣いたッ!!」

市民の歓声が芝生広場を埋め尽くす。
立ち尽くすミラクルナイトの頬に、風がやさしく吹きつけた。

セイクリッドウインドが鉄扇を畳み、肩をすくめて笑う。

「全く……奈理子がパンツ晒してる間にどれだけ胞子吸ったか……次はちゃんと対処してよね」

「そ、それは……!わ、私だって……!」

ミラクルナイトは顔を真っ赤にしながら、ショーツを気にしてスカートの代わりに両手で隠した。

「でも、ありがとう、凜さん……助けてくれて……!」

「別に奈理子のパンツ守るために来たんじゃないわよ?……ま、少し中が見えたけど」

「なっ……!?」

「……奈理子さん。次こそ、最初からちゃんとスカート、守ってください」

ドリームキャンディがため息をつきながらも、優しく手を差し出す。

「うぅぅ……っ……うん、がんばる……っ!」

笑いと拍手の中、水都の三人の戦士たちは、共に並び立った。

夕陽の下、風が芝生を撫でる。
この街の守護神たちは、今日も美しく、そして――ちょっぴり恥ずかしく、勝利を手にした。


キノコの残骸が風に散った芝生の中央。
紫の蔓を優雅に揺らしながら、トケイソウ女はゆっくりと後ろを振り返った。

「……いいわ。今日はこのへんで引いてあげる。せっかくの奈理子のパンツショーも、十分堪能したし」

コツコツとヒールの音を響かせ、トケイソウ女はすれ違いざまに、ミラクルナイトをちらりと見る。

「次はもっと、あなたの“花”を開かせてあげるわ。楽しみにしてて」

「なっ……!? そ、そんなことさせないもんっ!」

顔を真っ赤にして反論するミラクルナイトに、トケイソウ女はふっと笑った。

「ふふ、反応も可愛いのよねぇ、あなた……」

そのまま芝生の端に消えるように、姿を霧のように散らして消えていく。
残されたのは、やけに騒がしく盛り上がる市民と、茫然と立ち尽くすミラクルナイト――スカートなし。

「…………帰りたい……」

騒ぎから離れ、水都公園の橋の下。
日が暮れ、川面に灯りが揺れる静かな場所。

変身を解除し、セーラー服姿でそろそろと歩いてくる少女――奈理子。
戦いを終えた彼女の表情は、まだ恥ずかしさと疲労が残っていたが、心は少し落ち着いていた。

「……ライム……?」

そこには、待っていたかのように、影の中でじっと座っている少年の姿。
涼しい目元に淡い月光を受け、ライムが無言で彼女を見つめていた。

「見てた……よね、やっぱり……」

奈理子がポツリとつぶやくと、ライムはすっと手を伸ばし、彼女の手首を引き寄せた。

「……よく、頑張ったな。パンチラヒロイン、いやパンモロヒロインか?」

「もぉ……やめてよぅ……」

奈理子は顔を伏せながらも、ライムの肩にもたれた。
その肩はいつものように冷たくて、でも心地よかった。

「みんなの前で……また脱がされて……パンツ見せちゃって……でも、立たなきゃって思って……すごく、怖かったのに……」

「……でも、立ったんだろ。自分で」

ライムの言葉は淡々としているのに、奈理子の胸にやさしく染み込む。

「……うん。だって、私、守らなきゃいけないんだもん……水都を……ライムも……全部」

「……じゃあ、今は守られてろ。ここでは、俺が包んでやるから」

言うが早いか、ライムの体からとろりと溢れ出したスライムが、奈理子の足元から優しく包み込んだ。

「ひゃっ……あったかい……ライム……」

川のせせらぎと街の音が遠くなる中、
ミラクルナイトはただの少女・奈理子に戻り、
ライムのスライムに抱かれながら、安らぎの息を吐いた。


◆次回予告:

『ドリームキャンディ、きらめきの選抜戦!』

静かな放課後の水都中学校。
教室の窓から見える空は、いつもより少しだけ蒼くて高い。

「隆……どうして、そんなに協力してくれるの?」

キャンディチェーンを手にしながら、杉原寧々は心のどこかで答えを求めていた。
それは、幼馴染としての好意なのか、
それとも――姉・奈理子を守るための代行者としての責任なのか。

そんな中、水都の南地区で連続して目撃される「生物に擬態する白い泡状の怪人」。
正体不明の敵が、市民に笑顔で近づきながら記憶を吸い取り、心を溶かしていく。

「ドリームキャンディ、私たちのアイドルにしようぜ。……姉貴なんかより、もっとすごく」

そう言って、寧々のポスターを掲げ、拡声器を片手に市内を走る隆。
その勇敢な姿に、寧々の心は揺れる。

「……バカ。ほんと、あんたってバカ」

でも、少しだけ――嬉しい。

そんな時、敵の触手が、ドリームキャンディの心の隙間を狙ってくる。

「ほら……あなたの“本当の想い”を、教えて?」

襲いかかるのは、記憶喰い怪人・ニセモノクラゲ男。
その触手は相手の記憶と感情を吸い取り、作り変えてしまう忌まわしき力。

「私は……本当に強くなりたいだけなの?それとも、あの子に……」

答えの出ないモヤモヤと戦いながら、
ドリームキャンディは今日も、ミラクルナイトの隣ではなく、自分だけの場所で戦おうとする。

だけど――
「寧々、オレは……お前を信じてる。ずっと、子どもの頃から」

隆の一言が、寧々の胸に火を灯す。

(第178話へつづく)

(あとがき)