ミラクルナイト☆第176話・後編
夕暮れの空が朱に染まり、噴水の水音が緊張をはらんで広場に響く。カエル女=ファンユイ・チュンは長い脚を交差させるように踏み出し、黒と緑のチャイナスーツをひらりと揺らした。光沢ある布の隙間から覗く、鋼のように鍛え上げられた肉体が観衆の視線を釘付けにする。カエルを思わせる紅い唇が、にやりと歪んだ。
「貴女の清き心、興味あるネ。でも、情けは力じゃないアル。兄を斃された痛み……その重さ、わかるまい!」
鋭く叫び、彼女は跳躍した。空気が切り裂かれる音とともに、彼女の足がミラクルナイトへと振り下ろされる。ミラクルナイトは一瞬目を見開くも、すぐに身をひるがえし、軽やかにスカートを翻して回避する。その動きはまるで水の精霊のように滑らかで、美しい。
「私は、あなたの痛みを否定しない。でも、憎しみを力に変えたら……きっと、あなたも壊れてしまう!」
ミラクルナイトは両手を広げ、水色の光を集め始める。掌の中で渦巻く光は水の粒子を帯び、旋回する竜巻のように彼女の体を中心に舞い上がる。それは、彼女の感情――街を、笑顔を、人の優しさを守りたいという想いの結晶だった。
「――ミラクル・アクアティック・ラプチャー!」
その叫びとともに、光が弾ける。水の刃のような波動がカエル女へと放たれた。だが、カエル女は笑みを浮かべたまま手を広げ、その身にうねるような緑色の霧を発生させる。
「カエルの皮膚は、少しの水くらい、ヘッチャラネ!」
緑の霧は水のオーラを鈍らせ、衝撃を吸収するように拡散させてしまう。ミラクルナイトの目が見開かれる。
「そんな……!?」
「フフッ、油断しちゃダメネ!」
その瞬間、カエル女の脚がミラクルナイトの腹部へ深く突き刺さるように食い込んだ。空気を押し出す鈍い音とともに、ミラクルナイトの体が弾かれ、噴水の縁にたたきつけられる。
「かはっ……!」
白いリボンが風に舞い、スカートがひるがえる。広場の歓声が悲鳴に変わるなか、ミラクルナイトは必死に起き上がる。唇をかすかに震わせながら、しかしその瞳はまだ、折れていなかった。
「……私は……まだ、終われない。ここで……止まれないの……!」
カエル女の眉がわずかに動く。
「いい目をしてるネ。でも、復讐に燃えるワタシは、止まらないヨ」
二人の瞳がぶつかり合い、再び火花が散る。夕陽が水面を赤く染め、やがて本格的な戦いが始まろうとしていた。これはただの正義と悪の対決ではない。想いと想いがぶつかる、心の衝突――
水都公園・噴水広場。
白と水色の輝きに包まれたミラクルナイトが、胸を張って立っていた。風にひらめくプリーツスカート、その下からのぞく太ももは戦う覚悟を帯び、今や観衆すら静まり返っている。
「水都の平和を乱す者は――ミラクルナイトが許しませんっ!」
ミラクルナイトの高らかな宣言に、観衆の中から歓声があがる。
「奈理子ちゃんがんばれー!」
「白パン最高ーー!」
一方、対峙するカエル女は、まるで水面に映る静かな獣のように、腰を低く構えていた。チャイナ服のスリットから覗く脚が、じわじわと地面をなぞるように動く。
「お前のキレイな姿……そのまま地面に這いつくばらせてやるネ」
「……そうはいかないよ……っ!」
ミラクルナイトが先に動いた。足元から水色のオーラが巻き上がる――
「ミラクルキック!」
風を裂くようなハイキックが、カエル女の仮面に迫る。しかし、
「甘い!」
カエル女が片足で軸を回すと、そのまま地を蹴って背後へ跳び、スカートの内側を風にさらすミラクルナイトを回り込んで一撃!
「っく!」
脇腹に鈍い衝撃が走り、ミラクルナイトの身体がよろめく。
「えい!」
咄嗟に掌から光弾を連射!しかしカエル女は素早く跳び退きながら、連続宙返りで間合いを詰めると――
「カエル脚烈風脚!」
華奢なミラクルナイトの腹部に蹴りが決まり、彼女の身体がふわりと宙に浮いた。
「ぎゃっ!」
「まだアルよ!」
空中で逃れる暇もなく、カエル女が水辺を蹴って跳躍!空中でミラクルナイトの身体を両脚で締め上げる!
「ミラクル……ハピネス……」
ミラクルナイトも必死に抵抗、太ももで敵の首を挟み込み反転!
「シザースッ!!」
体勢を崩されたカエル女が地面に落ちるが、すぐに体をくねらせて受け身を取る。
「くっ……やるネ……だがワタシの方が格上アル!」
息を荒げるミラクルナイトは、すでに汗ばんだ肌に光を纏いながら、腕を広げて防御態勢に入る。
「私は、みんなを守るって……決めたの!どんなに怖くてもっ!」
水色のリボンがひらりと揺れ、スカートの裾が翻る――
そのとき、観客席から叫び声が。
「ミラクルナイトー!パンチラ最高ー!!」
「しっ……仕方ないでしょ!戦ってるんだからっ!」
顔を赤らめるミラクルナイト。しかしその羞恥の隙を狙って、カエル女がニヤリと笑う。
「お前の可愛いところ、全部晒させてもらうヨ……!」
紫色の気を纏い、カエル女が跳んだ。
――勝負は、これからが本番だった。
水都公園・噴水広場。
上空では月が白く滲み、戦場を静かに照らしていた。
「奈理子さん!!」
広場の向こうから、オレンジと黄色の光が駆け抜けた。
ドリームキャンディが颯爽と現れ、腰に巻いたキャンディチェーンをほどきながら叫ぶ。
「来ないでッ!!」
ミラクルナイトの叫びに、キャンディは思わず足を止めた。続いて風を裂く緑の光――
「遅れてごめんね~。あら、奈理子ヤバそうじゃん。でも、私たちが来たからにはもう安心よ」
セイクリッドウインドも登場したが、ミラクルナイトは二人に背を向け、毅然と立ち塞がった。
「ありがとう、でも……これは私が受けた挑戦状。だから、私一人で立たなきゃ!」
カエル女が笑みを深め、構えを取る。
「いい覚悟ネ。では、始めるアルよ」
――バシュッ!!
跳躍音がした瞬間、ミラクルナイトの視界に黒い影が迫った。
「跳龍腿ッ!!」
高空からカエル女が回転しながら急降下し、踵を振り下ろす。ミラクルナイトは必死に腕を交差して防御!
「ぐぅっ!!」
防ぎきれず、スカートが大きくめくれ上がり、白い下着が月明かりに晒された。
観客からどよめきが走る。
「パンツ見えても……!負けないっ!」
地面に転がりながらも、ミラクルナイトは飛び起きた。
しかし、カエル女はすかさず接近――
「蛙掌破ッ!!」
ヌルリとした掌がミラクルナイトの胸元を叩くと、粘着質な吸着力で服にへばりついた。
「ひゃっ……!?な、なにこれっ……くっ、動けな――!」
「ワタシの掌からは逃げられないネ!」
そのまま引き倒され、地面に押し付けられるミラクルナイト。ドリームキャンディが叫ぶ。
「ミラクルナイト!!もういい、交代して――!」
「ダメっ!これは……私の戦いだから……!」
叫びながら、ミラクルナイトは掌を光らせた。
「ミラクルシャインブラストッ!!」
至近距離からの連射!閃光が炸裂し、カエル女が舌打ちして後退する。
「やるネ……でも次は、これアルよ……!」
カエル女が手を前に突き出した。
「蛇舌拳ッ!!」
エネルギーでできた紫の舌が伸び、ミラクルナイトの腕を絡め取った!
「きゃっ、やだっ、離して……!」
力なく振りほどこうとするミラクルナイト。その白いリボンが風に揺れ、彼女の弱さと強さが同時に露わになる――
「さあ、どうするネ?もう立てないアルか?」
「……ううん、私は……負けない!」
震える脚で、再び立ち上がるミラクルナイト。その眼は、決して折れていなかった。
ミラクルナイトの細い脚が、震えながらも再び広場の石畳を踏みしめた。
傷だらけの白いグローブ、薄く汚れたプリーツスカート、それでもその瞳は澄んでいた。
「まだ立つのかネ……フン、意地は評価するアル」
カエル女は片脚をゆっくりと上げ、回すように旋回しながら空中へ舞い上がった。
その動きは、まるで踊るように優美だった。
「跳毒舞――!!」
彼女の足裏から、淡い紫の光が滲み出す。
毒を帯びた気の波動が地面に落ち、じわじわと円状に広がっていく。
「っ……足が……動かない……!?」
ミラクルナイトの膝がガクッと落ちる。毒の波動が彼女の神経を麻痺させ、筋肉の制御を奪っていく。
足元からはじまる痺れが、徐々に太ももへ、腰へと這い上がるように――
「可愛い脚、ピクリとも動かせないアルね。せっかくだから、もう一発……!」
くるりと一回転しながら、カエル女が猛然と踵を叩きつける。
「跳龍腿!!」
「きゃあっ!!」
ミラクルナイトの頭上から容赦なく襲いかかる回転踵落とし!
地面に叩きつけられ、白いスカートが宙に舞い、広場には再びどよめきが走る。
「奈理子ちゃん……!」
観客席からも悲鳴のような叫びがあがる中、彼女は倒れたまま、かすかに手を動かす。
「フェアリー……シールド……っ」
掌から展開される、水色の半透明な防御壁――だがそれは、もう十分な力を保てず、きらきらと儚く砕けていった。
「もういいアルね。次で終わらせてやるヨ――」
カエル女が舌をぺろりと出す。舌先に、紫電の光が収束し始める。
「――雷撃舌・電蛙轟破ッ!!」
バチバチと火花が散り、長く伸びた舌状のチャクラが、電撃を帯びて地面を這うように走った!
それは金属のベンチや街灯、観客のスマホまでも反応させながら、広場中に放電していく。
「う、うそ……っ、あああああっ!!」
電撃がミラクルナイトの身体に直撃。細い体が跳ね上がる。
白いコスチュームがスパークを浴びて焦げ、スカートの裾が焼け焦げ、胸のリボンが弾け飛んだ。
「ひっ……、あぁっ……っ!」
苦悶に満ちた声が、静まり返った広場に響く。
市民たちは、もはや悲鳴もあげられず、ただ息を呑んでその姿を見つめるしかなかった。
立ち上がる気配のないミラクルナイトを見下ろしながら、カエル女はゆっくりと歩み寄る。
「ミラクルナイト……野宮奈理子。お前のその力では、ワタシの兄の仇は晴らせないネ」
「……ううん……」
倒れたまま、微かに顔を上げるミラクルナイト。ボロボロの姿で、それでも瞳に光を宿していた。
「それでも……私は……守りたいの……この街を……みんなを……!!」
その瞬間、水面がかすかに光を帯び――彼女の掌に、淡い水色の光が再び灯った。
電撃に焦がされた水色のリボンが、ゆっくりと地面に落ちる。
倒れたままのミラクルナイト。その華奢な肩が小刻みに震えていた。
カエル女はその場に仁王立ちし、腕を組んで見下ろしていた。
「これで終わりネ。やっぱりお前は“見た目だけ”だったアル。もう立ち上がれないアルね……?」
その瞬間だった。
――ざわっ。
静まり返っていた広場に、小さな声が生まれた。
「……奈理子ちゃん……がんばって……!」
それは、制服を着た小さな女の子の声だった。ミラクルナイトのキーホルダーを握りしめながら。
次いで、別の声が重なる。
「負けるな!奈理子!」
「立って!奈理子ちゃん!私たちのミラクルナイトでしょ!」
「水都の守護神に、こんなところで終わってほしくない!」
声が――広がっていく。まるで水面に放たれた一滴のように。
「奈理子!」
「奈理子!」
「奈理子ちゃあああん!!」
群衆が一斉に手を挙げ、声を合わせ、彼女の名を叫んだ。
涙ぐむ主婦たち、スマホを構えていた学生、会社帰りのサラリーマン――
年齢も立場もバラバラな無数の市民たちが、ただひとつの名を叫んでいた。
「ミラクルナイト!がんばれ!!」
その瞬間だった。
ミラクルナイトの胸に宿る水色の宝石が、脈打つように輝き始めた。
掌に集まる水の光。小さな波紋のような輝きが、まるで鼓動と呼応するように広がっていく。
「これは……?」
カエル女が警戒の色を見せた次の瞬間、ミラクルナイトがゆっくりと立ち上がった。
衣装は破れ、足元はふらつき、髪は乱れ――
けれどその姿は、誰よりも清らかで、強かった。
「……私、思い出したの……」
光が彼女の全身に集まり始める。まばゆい水色のオーラが、衣の破れた箇所を包み込み、まるで再生するように輝く。
「私ひとりじゃ、何もできないかもしれない。でも……みんなの声が、私を立たせてくれた!」
両手を開き、スカートをなびかせながらミラクルナイトが跳んだ。
「この力は、みんなの心がくれた奇跡!」
空中で一回転、髪が弧を描き、無数の水のリボンが彼女の周囲に舞う――
「リボンストライク――!!」
水色に輝く無数のリボンが天へと放たれ、流星のようにカエル女へと落ちていく!
そのすべてが優しさと願いを編んだ光の紐――それは、どんな装甲も、毒も、電撃も貫く。
「くっ……!?この力……ッ!」
カエル女の身体が、リボンの光に包まれ――
視界が、白く染まった――。
ミラクルナイトの放ったリボンストライクは、広場の空を埋めるほどの光を放ち、まるで夜空に咲く巨大な水の花のようだった。
その中心にいるカエル女の姿が、まばゆい輝きに飲み込まれていく。
「うおおおおおっ!!」
リボンが巻きつき、腕、脚、身体を縛る。
戦いの中で無数の痛みと屈辱を与えてきたその手足が、まるで“浄化”されるかのように縛られていく。
「これが……市民の想い……!」
ミラクルナイトの声が、広場に響く。
「あなたがどんなに強くても……どんなに怖くても……私はっ、負けないっ!!」
最後の一閃――。
リボンが白く輝き、刃のような光が迫る――その刹那。
「っっ!!」
カエル女の全身が震え、瞬間的に体内のチャクラを爆発させるように解放した。
「――跳毒脱脚!!」
床に広がる毒気がリボンを焼き裂き、毒とカエル脚を絡めた強烈な跳躍でその場から飛び退いた!
「なっ――!」
ミラクルナイトの目の前で、リボンの光が空しく舞う。
煙が立ち込める中、チャイナ服の袖を焼き焦がし、肩で息をするカエル女が姿を現す。
彼女の額には汗が滲み、呼吸は荒い。
だが、口元には――うっすらと笑み。
「……いい技だったネ……ワタシの舌でも受けきれないとは思わなかったヨ」
「カエル女……」
ミラクルナイトが構え直すが、彼女は拳を下ろし、くるりと背を向ける。
「今日は退くアル……だが誤解するな。ワタシは諦めたわけではないネ」
そのまま、水都公園の池の縁へ跳び、カエルのような動きでライトの届かない闇へ消えていく。
「兄の恨みは……必ず果たす。その時までに、もっと強くなっておくネ。奈理子――」
その名を口にした最後の瞬間、闇の中から彼女の姿は消えた。
広場の観衆は、静寂の後、爆発的な歓声を上げた。
「奈理子ちゃん勝ったー!!」
「さすがミラクルナイトー!」
「最高だよー!」
「奈理子ーー!!結婚してくれーー!!」
どよめきと歓声に包まれながら、ミラクルナイトはゆっくりと肩で息をしながら、空を見上げる。
(ファンユイ・チュン……あなたの想いも……きっと、正義に通じてる……でも私は……絶対に譲らない!)
月が、白く澄んだ光で、水都の守護神を静かに照らしていた――
歓声の余韻がまだ残るなか、光の向こうから二つの影が駆け寄ってきた。
「奈理子!」
「奈理子さんっ!」
セイクリッドウインドとドリームキャンディ。
光の戦士たちが、ボロボロになったミラクルナイトを支えるように抱きとめる。
「ったくもう、無理しすぎ。ズタボロじゃん……」
そう言いながらも、セイクリッドウインドの声には心底の安堵が滲んでいた。
彼女はそっと、ミラクルナイトの乱れた髪を手で梳いた。
「ふふ……心配、かけちゃったね……」
ミラクルナイトの声はかすれていたが、そこには微笑があった。
ドリームキャンディがすぐに彼女の腕を握る。
「ひとりで戦うなんて……本当に、バカです……でも……かっこよかったです……っ!」
小さな瞳が潤み、スカートの裾に涙が落ちる。
ミラクルナイトは、そっと彼女の頭を撫でた。
「ありがとう……キャンディ……でも、怖かったよ……本当は……っ」
そう言った瞬間、堰を切ったように涙が溢れ、彼女は二人にしがみついた。
「怖くて……痛くて……でも……でもっ……負けたくなかったの……っ」
「わかってる、わかってるって……よく頑張ったよ、奈理子」
セイクリッドウインドは、優しくその肩を抱きしめながら、かつて自分も怯えながら戦った日のことを思い出していた。
ドリームキャンディも、ミラクルナイトの腰に手を回し、ぎゅっと抱き寄せた。
「もう大丈夫です。次は……三人で戦いましょう。絶対に……守りますから」
月の下、三人のヒロインはそっと抱き合い、静かに夜の幕を閉じた。
静寂に包まれた水都郊外の廃ビル屋上。
ファンユイ・チュンは、湿った夜風の中で膝を抱えて座っていた。
その目は、遠くに煌めく水都の街の灯りを見つめている。
「……バカみたいネ。泣きそうになったアルよ」
風に揺れるチャイナ服の袖。
その目がふと伏せられたとき、彼女の脳裏に一人の男の笑顔が蘇った。
「妹よ、世界とはな、力でねじ伏せるものなんだヨ」
それはかつての兄、フンカー・チュン。
「或る或る教団」の中枢で違法薬物を操り、数多の犯罪に手を染めていた男。
それでも、彼は妹にだけはいつも穏やかな笑顔を向けてくれていた。
「ファンユイ、お前はきっとワシよりも強くなるヨ。いずれ、この腐った世界に自分の正義を刻め」
あの日、兄は敗れた。
ミラクルナイトの奇跡の一撃。
ドリームキャンディの星の閃き。
そして、セイクリッドウインドの風の刃が――兄の野望と命を、断ち切った。
「なのに……あのミラクルナイト、泣きながら戦って……っ」
爪を立てるように拳を握る。
その指先に、いつしか一滴の涙が落ちていた。
「兄上……ワタシは……まだ貴方の仇を取れないヨ……でも……いつか、必ず……」
月に背を向けるように、ファンユイは立ち上がる。
その背には哀しみと執念、そしてまだ消えぬ火が宿っていた。
「次に会う時は……泣いてる暇など与えないネ。ミラクルナイト……!」
チャイナ服の裾を翻し、ファンユイは闇に跳び去った。
再び、夜の静寂だけが、廃ビルの屋上に残された。
(第177話へつづく)











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