ミラクルナイト☆第150話
水呑町にある糸井探偵事務所。朝、静まり返る事務所のドアを叩いたのは剣崎だった。ドアを開けた糸井は、剣崎の姿を確認して一瞬だけ目を細めた。イカ男の剣崎がわざわざ事務所に訪れるとなれば、それは仕事の依頼ではない。もっと重大な何かを予感させた。
「魔物、ねぇ…」
剣崎の話を聞きながら、糸井は興味なさそうに呟いた。剣崎は魔物に支配された鄙野の町からやって来たと言う。魔界から現れる魔物たちが大規模な水都侵攻を計画しているらしかった。しかし、クモ男である糸井にとって、魔物など取るに足らない存在だと感じていた。水都の混沌とした空気を好む彼にとって、魔物の脅威は特に意に介すものではなかった。
だが、剣崎は糸井の無関心を払拭する一言を口にした。
「魔界の姫の側に、勅使河原の手の者、サソリ女がいる。」
糸井は一瞬、目の奥に鋭い光を宿した。
「勅使河原が魔物を操っているのか?」
「そこまでは分からん。だが、奴は魔物を何かに利用しようとしている。それは確かだ。」
剣崎の声には、ただの憶測以上の確信が滲んでいた。
「ライムはそのことを知っているのか?」
糸井は尋ねた。ライムは魔界の姫との因縁があると耳にしたことがあった。
「俺はライムからは好かれてない。もしライムに伝えたければ、お前から話せ。」
そう言い捨てて、剣崎は席を立った。
「金にならない話を持ってきやがって…で、アンタはどうするつもりだ?」糸井は出て行こうとする剣崎に問いかけた。
「俺は俺のしたいようにやるさ。」
剣崎はそう短く告げると、ドアを閉めて立ち去った。
糸井は薄く笑みを浮かべたまま、カオスと危険が薫る水都の街を思い浮かべた。彼はこの街を愛していた。勅使河原がこの街を支配しようとしていることも、糸井にとっては単なる愉快な出来事の一つに過ぎなかった。しかし、もしその過程で魔物を呼び込もうとしているならば、話は別だ。水都の街に魔物は邪魔な存在だ。糸井が楽しむ余地が減ってしまう。
「魔物退治は本来、ミラクルナイトの仕事だが…奈理子じゃ頼りないな。」
そう独り言を呟きながら、糸井はしばらく考え込んだ。ミラクルナイトの野宮奈理子は、可憐で純粋な存在だが、その実力には心もとないことを糸井はよく理解していた。
「とりあえずライムに伝えておくか…だが、中学生のライムは今、授業中だ。」
糸井は時計を見上げ、午後に金になる仕事の予定が入っていることを思い出した。
「仕方ない、香丸に伝えてもらおうか。」
糸井は淡々と大学生の香丸に電話を掛け、ライムへの伝言を頼むことにした。
鄙野の町では、不穏な空気が漂っていた。
「紗理奈のおかげで仲間も増えたし、いよいよ水都を征服するよ!」
魔界の姫、コマリシャスが嬉しそうに目を輝かせ、隣に立つ紗理奈に声をかけた。彼女の周りには、魔物たちが集まり、今まさに水都侵攻に向けて準備を進めているところだった。
「よっしゃー!今度こそ、水都の守護神をしゃぶり尽くしてやる!」
荒々しく吠えるのはヘビサンダー。さらに、ムカデドリルも興奮したように声を上げる。
「守護神の手下のガキンチョとオバサンもついでに吸い尽くしてやろうぜ!」
彼らが言う「守護神」はミラクルナイト、そして「ガキンチョ」はドリームキャンディ、「オバサン」はセイクリッドウインドを指していた。
コマリシャスは、嬉しそうに紗理奈の顔を覗き込む。
「十三匹の魔物で水都制圧!今度こそ勝てるよね、紗理奈!」
しかし、その浮かない顔に気づくと、少し不安げに笑顔を向けた。
「うん、十三匹もいればミラクルナイトには勝てると思うけど…」
紗理奈は、曖昧な口調で答えた。彼女の心には、どうしても引っかかるものがあった。勅使河原の指示でコマリシャスに付き添っているものの、勅使河原が魔物たちをどのように利用しようとしているのか、まだはっきりと掴めていなかった。
「ミラクルナイトたちを倒したらどうするの?」
紗理奈は疑問を抱えたまま、コマリシャスに問いかける。
「水都の人間たちを奴隷にする。でも、紗理奈は違うよ。紗理奈は人間だけど、コマリシャスの友達だもん!」
コマリシャスは無邪気な笑顔で答えたが、その言葉に紗理奈の胸は微かにざわついた。
「ミラクルナイトを倒したら直ぐに鄙野に帰ろう。水都にはもっと強い人間がいるよ。」
紗理奈は提案するが、その裏には、コマリシャスを長く水都に留めておくことが危険だという勘が働いていた。勅使河原の意図がまだ読めない以上、ここで無闇に深入りさせるべきではない。
「守護神より強い人間なんていないよ!」
コマリシャスは笑い飛ばすように言った。
「攻撃開始は今日の夜十時。十三匹だから、タンポポタイは鄙野で留守番ね!」
コマリシャスは魔物たちに告げ、作戦の最終確認を行った。
「えー、俺も水都に連れて行ってくださいよー」
不満そうに唸るタンポポタイ。しかし、コマリシャスは宥めるように優しく言った。
「タンポポタイはと鄙野攻略のときからの長い付き合いだから、留守を任せられるのはタンポポタイしかいないよ。」
「俺がタンポポタイの分も暴れてくるぜ!」
レンジバエが笑いながらタンポポタイを慰めると、場は和やかな空気に包まれた。
その和気藹々とした様子を見ていた紗理奈は、無言でその場をそっと離れた。彼女の中にある不安が大きくなっていく。それがコマリシャスへの忠誠を揺るがすことになるかどうかは、今はまだ誰にも分からなかった。
穢川研究所の社長室に、一之木多実が静かに入った。勅使河原は窓の外を見つめていたが、彼女の気配を感じると振り返った。
「御祖さんから連絡がありました。今夜、魔界の姫と十三匹の魔物が水都を攻撃するようです」
と多実が報告した。御祖紗理奈は、魔界の姫を監視するために鄙野に派遣された勅使河原の部下だった。
「ほぅ、十三匹か…」
勅使河原が低く呟く。
「十三匹では、さすがに奈理子も苦しいでしょうね」
と、側近の渦巻が考え深げに言葉を付け足した。
「一之木君、何か言いたそうだな?」
勅使河原は、多実の表情に気づいて問いかける。多実は一瞬ためらった後、口を開いた。
「それが…御祖さんの話し方が、まるで魔物側の立場に立っているように感じられるのです。」
「魔物に取り憑かれたとでも?」
渦巻が軽く笑って茶化すように言った。
「いえ、そのようなことではありませんが…」
多実は言葉を選んで答えた。彼女の心には何か引っかかるものがあったが、それをうまく言葉にできないでいた。
「まあ、よい。それだけ魔界の姫の懐に深く入り込んでいるということだろう」
と勅使河原はあまり気にしていない様子で手を振った。そしてすぐに、彼の鋭い目は渦巻に向けられた。
「九頭先生が作った新型の準備はできているな?」
「はい。トンボカマキリの準備は整っています」
と渦巻が自信を持って答える。新型の薬、トンボカマキリは、九頭博士の最新作であった。
「魔物に紛れさせて暴れさせろ。市民には魔物の仕業だと思わせるように」
と勅使河原は淡々と指示を出した。
「はっ!」
と応じ、渦巻は社長室を出て行った。
その後、勅使河原は再び多実に目を向けた。
「多実、君も久しぶりに現場に出てみるか?」
多実は少し驚いた表情を見せたが、すぐに静かに頷いた。
「はい。この目で魔物の力を確かめたいと思っていました。」
勅使河原は満足げに頷き、
「藤津と一緒に行け。彼も久しぶりの実戦だろう」
と告げた。藤津は多実が現場に出ていた頃にコンビを組んでいたベテランの先輩だった。
「藤津さんと…」
多実は思わずつぶやいたが、すぐに顔を引き締め、
「魔物がどれほどの力を持っているのか、しっかりと見極めてきます」
と決意を込めて応じた。
多実も社長室を出て行くと、勅使河原は一人、デスクに腰を下ろした。静かな社長室の中で、彼は微かに笑みを浮かべて呟いた。
「トンボとカマキリ…捕食昆虫同士の組み合わせか。面白くなりそうだな。」
ライムから魔物による水都侵攻の話を聞いた奈理子は、少し緊張した面持ちで水都神社に向かっていた。最近は写真集の発売イベントで忙しい日々を送っていたが、今日は放課後、凜と寧々と共に魔物の対策を練るための会議が予定されていた。
「いつ攻めてくるかわからないよね…。もし授業中に来たら、どうしよう?」
寧々は不安そうに呟いた。奈理子や凜と違い、寧々がドリームキャンディであることは公にはされていない。授業中に抜け出すことは難しい。中学生としての生活を送りながらも、魔物の脅威に備えていた。
「大規模な攻撃があったら、学校なんてすぐに閉鎖されるんじゃない?」
と凜は軽く言い放つ。
「それに、寧々ちゃんが授業抜けても、隆が上手くフォローしてくれるでしょ?」
と、奈理子は寧々のことを安心させようと微笑む。
「うん、隆がいるから大丈夫だよね」
と寧々が言った瞬間、奈理子の心に小さな違和感が広がった。寧々と隆はいつも仲良くしているが、今の言葉には、なんとも親密な響きがあった。
「寧々と隆君はラブラブだもんね~」
と凜は半ば無意識に茶化した。
「違いますよ〜!」
慌てて否定する寧々を見て、凜が笑い出す。
「寧々と隆君、絶対お似合いだよね~。」
だが、そんな楽しげなやり取りも、奈理子の耳には入っていなかった。彼女の目は、無意識に寧々の制服に注がれていた。水都中学のセーラー服を着た寧々の胸…。奈理子は水都女学院高校のセーラー服を纏いながらも、ふと自分の胸を気にしてしまう。去年あたりから、寧々の方が自分よりも発育が良いかもしれないと薄々感じてはいたが、今、それが現実として突きつけられた瞬間だった。
「最近の子供は、発育が良いんだから…」
奈理子は心の中でそう嘆き、少ししょんぼりとしてしまった。
「奈理子、どうかしたの?」
凜が心配そうに声をかけた。
「えっ、何にもないよ!」
と慌てて取り繕う奈理子。まさか、弟の彼女である寧々よりも胸が小さいことでショックを受けたとは言えない。
「奈理子さん、大丈夫ですよ。私と凜さんが魔物から奈理子さんを護りますから!」
と、寧々は明るく笑顔で励ます。
「そうそう、魔物の狙いは奈理子だし、私たちに任せて」
と凜も続けた。
しかし、奈理子は守護神ミラクルナイトである。護られるばかりではいけない、守護神として水都を守る責任がある。強くなることが自分の使命だと再認識し、決意を固める。
「私も戦うよ。凜さんと寧々ちゃんがいなかった時は、私一人で敵と戦ってたんだから」
と奈理子は決意を込めて言った。
「じゃあ、こうしよう。深夜から日中は私がパトロールして、夕方は寧々、夜は奈理子が担当するってことで。これなら学校があっても大丈夫でしょ?」
と、凜が提案した。
「凜さん、それで大丈夫なんですか?」
と奈理子が心配する。
「私は仕事に融通が効くから大丈夫よ。それに、奈理子たちには学校があるんだから、無理しないで」
と凜は笑顔で答えた。
こうして、奈理子、凜、寧々の三人は、水都を守るための準備を整え、魔物に立ち向かう決意を固めたのだった。
夜の静寂に包まれた水都の街に、コマリシャスと紗理奈が現れた。
「ねぇ、紗理奈。水都で一番偉い人って誰?」
とコマリシャスが楽しげに尋ねる。
「う〜ん…市長かな」
と少し考え込むように答える紗理奈。
「市長ってどこにいるの?」
「普段は市役所にいるけど…」
と紗理奈が言いかけた瞬間、コマリシャスは声を弾ませて叫んだ。
「決めた!市役所を攻める!市役所ってどこ?」
「あっちだけど…」
紗理奈が指を差す方向を見つめるコマリシャス。その瞳は興奮と期待に満ちていた。
夜に市長が市役所にいつとは思わなかったが、紗理奈はそれをわざわざ言うことはしなかった。官庁街は夜になると昼間よりも人が少なくなる。魔物たちが現れたとしても、大きな被害が出ることはないと判断したからだ。
市役所の近くまでやって来た二人。コマリシャスは周囲を見渡し、楽しげに呪文を唱え始める。地面に現れる不気味な魔法陣。それが淡い光を放つと、次々と魔物たちがその中から湧き出してきた。
「凄い…」
紗理奈はその光景に目を見開き、息を呑んだ。地面に並ぶ魔法陣から、十数匹の魔物が姿を現したのだ。
「さぁ、魔物たち!思う存分暴れて、水都の人間たちを恐怖のドン底に突き落としちゃえ!」
と、コマリシャスは嬉々として命令を下す。
一方、夜の水都の街をパトロールしていた奈理子は、突然背筋に走る不気味な気配を感じた。感じる方向は官庁街だ。何かが起きている、そんな予感に駆られた奈理子は、手に持ったアイマスクを静かに取り出し、ミラクルナイトに変身した。
「水都の平和は私が守る!」
奈理子は自分に言い聞かせ、ミラクルウイングを大きく広げ、夜空へと飛び立つ。官庁街に向かう彼女の心には、守らなければならないものがあった。市役所のそばには、市立図書館がある。中学三年生の頃、奈理子は放課後の時間をその図書館で勉強に費やしていた。彼女にとっては大切な思い出の場所だ。
魔物が出現した確証はなかったが、奈理子は確信していた。そこには、何か恐ろしいものが待ち構えていると。
水都の街は夜も眠らない。官庁街を目指し、ミラクルナイトが優雅に夜空を舞う。その可憐な姿を見つけた市民たちから歓声が沸き起こった。そしてすぐに、町内放送が響く。
「官庁街で大量の魔物が出現!」
という緊急放送が水都の街を駆け巡る。ミラクルナイトは一層の決意を胸に、急ぎ飛翔する。水都の平和を守るためなら、どんな困難も乗り越える覚悟は既にできていた。
夜でも灯りが消えることのない官庁街。市役所や庁舎の中では残業に追われる職員たちが働き続け、街の防衛のために奔走する市警本部からは銃声が響いていた。魔物との戦いが始まっている。ミラクルナイトは、市役所の上空で巨大な鳥のような魔物の姿を確認する。
「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」
白い翼であるミラクルウイングを広げ、ミラクルナイトは高らかに宣言する。魔物はニヤリと笑いながら応える。
「お前が噂の水都の守護神か。私はスズメザルだ。お前の味、たっぷりと楽しませてもらおう!」
「雀と猿?」
と訝しげに呟くミラクルナイト。その言葉が終わる間もなく、スズメザルが猛然と突進してくる。彼女の動きは速い。しかし、動きは単純で直線的だ。ミラクルナイトはスズメザルの短く太い嘴を紙一重で躱し、冷静に反撃の態勢に入る。
「えい!」
と放った水色の光弾がスズメザルに向かって飛ぶ。しかし、スズメザルは俊敏に方向を変え、光弾を避けた。「まだまだ!」
とミラクルナイトは次々と光弾を連射し、官庁街の上空を舞いながら攻撃を続ける。スズメザルは光弾をかわし続けていたが、その弾幕によりミラクルナイトに近寄ることができない。
痺れを切らしたスズメザルは突然、笊(ざる)を取り出し、盾のように構える。
「猿じゃなくて笊なの?」
と驚きの声を上げるミラクルナイトだが、攻撃の手は緩めない。光弾が笊に向かって飛ぶが、次の瞬間、驚くべきことに光弾は笊を貫通し、スズメザルの体に直撃する。
「ぎゃー!」
と叫び声を上げながら、スズメザルは無様に墜落していく。
「逃さないわ!」
と、ミラクルナイトは追撃に入ろうとする。しかしその瞬間、背中に鋭い衝撃が走る。
「あぁッ!」
声を上げながら、ミラクルナイトは制御を失い、地面へと急降下していく。
「どうだ?レンジバエ様のマイクロ波砲は!」
高らかに嘲笑を浮かべる声。ミラクルナイトを撃ち落としたのは、飛び回る害虫のような魔物、レンジバエだった。
地面に叩きつけられ、俯せに倒れ込むミラクルナイト。体を震わせながら、彼女は顔を上げた。その目の前には、ムカデの姿をした凶悪な魔物が立ちはだかっていた。右腕に装着された巨大な電気ドリルがギュイーンと機械音を響かせ、不気味に回転している。
「ムカデドリル!」
と、驚きの声を上げるミラクルナイト。ムカデドリルはニヤリと笑い、すぐにドリルをミラクルナイトに向けて打ち下ろしてきた。反射的に転がってその攻撃をかわし、片膝をつきながらなんとか体勢を整えるミラクルナイト。しかし、ムカデドリルの視線は彼女のスカートに向けられていた。
「俺の目の前に落ちてくるなんて、今日はついてるぜ」
と、ムカデドリルが薄笑いを浮かべる。その目はミラクルナイトの純白のパンティを見つめ、街灯の光に照らされ輝くそれに魅入られている。奈理子はその視線に気づき、慌てて座り込むようにしてスカートを押さえる。
「今日こそ、水都の守護神ミラクルナイトの…お汁をたっぷり楽しませてもらうぜ」
と、ムカデドリルはいやらしく笑いながら、彼女の体に視線を這わせる。
「魔物には変態しかいないの?」
と、ミラクルナイトは不快な悪寒を感じながら小さくつぶやいた。
その時、空からゆっくりとレンジバエが降りてきた。
「捨てられた電子レンジも、まだ十分に使える。物を大切にしない人間どもには、お仕置きが必要だな」
と呟きながら、ミラクルナイトに近づいてくる。しかし、地上に降り立ったレンジバエが目にしたのは、すでにムカデドリルとミラクルナイトが睨み合っている姿だった。
「おい、ムカデドリル!ミラクルナイトは俺が撃ち落としたんだぞ。手を出すな!」
と、レンジバエが怒鳴りつける。
「何言ってやがる?ミラクルナイトは俺の前に落ちてきたんだ。俺の獲物だ!」
ムカデドリルも負けじとレンジバエに食ってかかる。
二匹の魔物がミラクルナイトを巡って言い争いを始めた。彼女の前後に立ち塞がる二匹の魔物に、ミラクルナイトは息を呑む。だが、彼女は決して諦めない。ここからどう打開するかを必死に考えながら、冷静に状況を見極めようとしていた。
近くから銃声が響き渡る。市警と魔物が激しく交戦しているのだ。しかし、ミラクルナイトは分かっていた。市警の力では、魔物相手に太刀打ちできない。焦りが奈理子の心を支配する。ここで立ち止まってはいけない。ミラクルナイトは戦場の最前線で戦わなければならないのだ。
ムカデドリルとレンジバエがミラクルナイトを巡って言い争う隙を見逃さなかった。
「今だ!」
とミラクルナイトはミラクルウイングを広げ、華麗に空へと舞い上がった。
「待て、逃げるな!」
レンジバエは翅を振動させ、ミラクルナイトを追いかける。
「クソッ、降りて来い!」
と地上で叫ぶムカデドリル。空を飛べない彼には、ミラクルナイトが高く舞い上がる姿が歯痒く見える。
「逃げたりはしないわ!」
とミラクルナイトは、空中でレンジバエと対峙した。二匹の魔物をうまく分断し、レンジバエと1対1の勝負に持ち込むことに成功したのだ。
「もう一度喰らえ!マイクロ波砲!」
と、レンジバエが腹部の電子レンジの扉を開け、熱線を放つ。だが、ミラクルナイトは冷静にその攻撃をかわした。
「当たらないわ!」
と彼女は軽やかに熱線を躱し、空中での戦いを完全に掌握していた。先ほどは不意を突かれたが、三次元行動が可能な空中では、単発の熱線攻撃など容易に避けることができるのだ。
「えい!」
と水色の光弾を連射するミラクルナイト。レンジバエは飛び回って必死に躱すが、彼女はすでにレンジバエの行動を読んでいた。
レンジバエが躱した先に、ミラクルナイトはすでに回り込んでいたのだ。
「ミラクルキック!」
水色に輝く右脚がレンジバエの電子レンジ部分に炸裂する。
「うわー!コマリシャス様ー!」
と叫びながら、レンジバエは崩れ落ち、消滅していった。
ミラクルナイトは静かに地上へと舞い降りた。だが、待ち構えていたのはムカデドリルだった。
「レンジバエの分まで、お前の本気のお汁を吸い尽くしてやる!」
と叫びながら、ムカデドリルはミラクルナイトに襲いかかる。
「私を止められるものなら、やってみなさい!」
ミラクルナイトの瞳は揺らぐことなく、ムカデドリルの猛攻に立ち向かう決意を示していた。
「俺に舐め回される覚悟で降りてきたことは褒めてやるぜ。」
ムカデドリルは、ミラクルナイトのプリーツスカートから覗く太股に熱い視線を注いだ。
「空を飛べない相手に空から攻めるような卑怯な真似はしないわ。水都の守護神として、正々堂々と水都に害をなす魔物を倒す!」
ミラクルナイトが力強く宣言する。
だが、突然背後から何かが伸びてきた。蔓がミラクルナイトの手足に巻き付く。
「何、触手!?」
驚く間もなく、ミラクルナイトは蔓に持ち上げられ、大の字に拘束された状態で宙に浮いた。蔓にはクリスマス用電飾のような光が点滅し、ミラクルナイトの姿を鮮やかに浮かび上がらせた。
「ムカデドリル、独り占めはダメだよ。水都の守護神ミラクルナイトのお汁は、みんなで楽しむものさ。」
と、声を上げたのは、葛とクリスマス電飾が融合して作られた魔物、クズライトだった。
「チッ、クズライトか。」
ムカデドリルが苛立ちを見せる。
「ミラクルナイト、たっぷり楽しませてもらうよ。」
蔓の触手がミラクルナイトのパンツ越しに敏感な箇所を撫で、クロッチをずらそうとする。
「んんっ…ミラクルパワー!」
ミラクルナイトの身体が水色に輝き、蔓の触手を弾き飛ばした。
「な、何だ、この力は!?」
クズライトは驚愕する。
「一番汁のお楽しみは俺だ!お前は大人しく見ていろ!」
ムカデドリルがドリルを唸らせ、蔓の拘束から解放され着地したミラクルナイトに迫る。ミラクルナイトは何とか躱したが、ムカデドリルの攻撃は次々と襲いかかる。
「まだまだだ!」
ムカデドリルが次々とドリルを繰り出す。
「うぅ…」
怯みながらも躱し続けるミラクルナイト。しかし、身の毛が弥立つようなドリルの回転音に圧倒され、ミラクルナイトは躓き、尻餅をついてしまった。街灯に照らされ、彼女の白いパンツがムカデドリルの目の前に露わになる。
「俺のドリルでパンツを汁まみれにしてやるぜ!」
ムカデドリルは勝ち誇ったようにドリルを振り下ろす。
「あぁ…」
ミラクルナイト、絶体絶命のピンチ。
その瞬間、一陣の風が吹き、ムカデドリルは悲鳴を上げた。
「ウギャー!」
右腕のドリルが切り落とされている。
「奈理子、立ち上がりなさい。まだ、戦いは始まったばかりよ!」
頭上からの声にミラクルナイトが顔を上げると、文化財である市議会議事堂の屋根に風の戦士、セイクリッドウインドの姿が見えた。彼女が風の刃でムカデドリルのドリルを切り落としたのだ。
「凜さん!」
ミラクルナイトが声を上げる。
「うぅ…お前が噂のコスプレオバサンか……」
とムカデドリルが呻く。
「誰がコスプレオバサンですって!奈理子、トドメを刺しなさい!!」
怒りを露わに叫ぶセイクリッドウインド。
「はい!」
ミラクルナイトは慌てて水のオーラを発生させ、ムカデドリルに向けて放つ。
「ミラクルアクアティックラプチャー!」
水のオーラがムカデドリルを包み込み、彼は
「この俺がミラクルナイトのお汁を舐めずに終わるとは…」
と呟きながら消滅していった。
戦いは終わったが、奈理子の心には、守護神としての使命がさらに強く刻まれたのだった。
銃声が響く夜の官庁街。警察と魔物の戦いが繰り広げられる中、セイクリッドウインドは市議会議事堂の屋根から警官たちに叫んだ。
「魔物は私たちに任せて!警察は市民を安全な場所へ避難させてください!」
そして、彼女は辺りの魔物たちに向けて声を張り上げる。
「魔物たち、水都の守護神、いつも甘いお汁でパンツを濡らす絶世の美少女、ミラクルナイトはここだ!」
魔物たちの注意を一箇所に集める作戦だ。
すると、魔物の一体、蔓に電飾を巻きつけたクズライトが再び現れ、ミラクルナイトに向かって蔓を伸ばしてきた。
「ミラクルナイト、今度こそ私が相手だ!」
ミラクルナイトは身構えるが、触手を受けるのは苦手だ。そんな彼女の前に、キャンディチェーンが現れ、次々と触手を弾き飛ばす。
「キャンディ!」
ミラクルナイトはドリームキャンディの姿を見て安堵の声を上げた。
「奈理子さん、私が来たからにはもう安心ですよ」
と微笑むドリームキャンディ。
その直後、セイクリッドウインドが市議会議事堂の屋根から優雅に飛び降り、二人に語りかける。
「私たち三人が揃えば、どんな魔物が来ても怖くないわ!」
ミラクルナイト、ドリームキャンディ、セイクリッドウインドの三人のヒロインは力強く頷き合った。
そこに現れたのは、檻を背負った鼠の魔物。
「見つけたぞ、ミラクルナイト。ガキンチョとオバチャンも一緒か。」
「私はオバチャンじゃない!」
セイクリッドウインドが即座に抗議する。
「私は中学生よ!ガキンチョじゃない!」
とドリームキャンディも負けじと声を上げた。
「貴方は何と何の魔物?」
ミラクルナイトが尋ねると、魔物は得意げに答えた。
「俺は鼠と鼠捕りの魔物、ネズネズトリだ。」
さらに現れたのは、亀と花火の魔物、カメハナビ。
「俺もいるぜ、カメハナビ様だ!」
カメハナビはミラクルナイトのプリーツスカートから伸びる脚を見つめ、舐め回すような視線を送る。
「舐め回したくなるような良い脚だ。しかし…」
と何か言いかける。
「しかし、何よ?」
ミラクルナイトが問い詰めると、カメハナビはにやりと笑って答えた。
「三人の中で一番胸が小さいな。胸のリボンで誤魔化しているつもりだろうが、ガキンチョ以下だ。」
ミラクルナイトは、その言葉に怒りで震えた。
「許せない…!」
彼女は怒りを爆発させ、一触即発の状況になる。
しかし、その場に割って入ったのはクズライト。
「待て、先にミラクルナイトを見つけたのは私だ。私の蔓でミラクルナイトの小さい胸を揉んで大きくしてやる!」
「いや、ミラクルナイトは俺が気持ちよくチューチューしてやるぜ!」
ネズネズトリも譲らない。
「私たちがいることを忘れないで!」
ドリームキャンディがキャンディチェーンをネズネズトリに放つ。これを合図に、三人のヒロインと三匹の魔物との戦いの火蓋が切って落とされた。
光と風が交錯する中、魔物たちとの激しい戦いが始まった――水都の平和を守るために。
ネズネズトリが素早く動き、キャンディチェーンを躱し、次の瞬間にはミラクルナイトの前に迫っていた。両手でミラクルナイトの胸を掴むと、彼女は驚きの悲鳴を上げる。
「きゃっ!」
その声が響くと同時に、ネズネズトリは既に姿を消していた。
「水都の守護神の乳は片手ですっぽり収まるスモールサイズ」
と嘲笑うような声がどこからともなく響く。悔しそうに胸を押さえ、ミラクルナイトは赤面しながら怒りを滲ませた。
「この…!」
ドリームキャンディが再びキャンディチェーンを放つ。しかし、ネズネズトリは素早くそれを躱し、今度はドリームキャンディの周りをぐるぐると回り始めた。
「次はガキンチョだ!」
と挑発するように彼は叫んだ。
「鼠だからすばしっこい…でも、見切った!」
ドリームキャンディの目が輝き、放たれたキャンディチェーンがネズネズトリに直撃する――かと思われた瞬間、彼は背負った檻の中にすばやく入り込んでしまった。檻はまるでネズミ捕りの籠のようだ。キャンディチェーンが金属製の檻を叩くが、ネズネズトリには全くダメージを与えられない。
「へへへ、そんな鞭は俺には効かないぜ」
と、ネズネズトリは籠から出て、得意げに笑う。
「鼠のくせに、鼠捕りから自由に出入りできるの?!」
驚愕するドリームキャンディに、ネズネズトリは不敵に答える。
「鼠の環境適応能力を舐めるなよ!人間なんか目じゃないぜ!」
そう言うと、ネズネズトリはドリームキャンディに飛び掛かる。
「それならこれはどう?」
彼女は素早くジャンプして躱し、次の瞬間、
「キャンディシャワー!」
と虹色の光線をネズネズトリに向けて放つ。
「俺にはどんな攻撃も効かないぜ!」
檻に潜り込むネズネズトリ。しかし、彼の計算外だったのは、檻の目が荒いことだ。キャンディシャワーはその隙間をすり抜け、檻の中に降り注いだ。
「うわ!何だ?!」
困惑するネズネズトリ。彼はそのまま光に包まれ、消滅していった。
「よし!」
ドリームキャンディは勝利を確認したが、その瞬間、ミラクルナイトに危機が迫っていた。
「ミラクルナイト、お前の相手は私だ!」
クズライトが蔓の触手を鞭のように振り下ろし、ミラクルナイトを攻撃する。ミラクルナイトは両手で顔をガードするが、下半身が無防備だ。蔓の触手が下からミラクルナイトの股間を狙い打つ。
「うぅ…」
呻くミラクルナイト。そして、蔓の触手は奈理子のパンツにまで手をかける。
「ダメ!」
ミラクルナイトは必死にパンツを掴み、脱がされないように抵抗するが、力が足りない。
「奈理子!」
その瞬間、セイクリッドウインドが現れ、ガストファングを振るう。鋭い風の刃がクズライトの触手を切り裂き、ミラクルナイトを救った。
「ありがとう、凜さん!」
ミラクルナイトはセイクリッドウインドに感謝の眼差しを向け、再び戦いの決意を固めた。
「電飾雑草は私がやるわ。奈理子はキャンディと亀の魔物をお願い」
とセイクリッドウインドが冷静に指示を出す。ミラクルナイトは一瞬ためらいながらも、スカートの中に手を入れて太腿まで下がったパンツを直し、頷いた。
「雑草なんて…簡単に言ってくれるわね。この国では、葛は古来から人間と深い関わりを持つ神聖な植物なのに」
と、クズライトがセイクリッドウインドを鋭く睨みつけた。
一方、ミラクルナイトとドリームキャンディは亀の魔物、カメハナビに向かう。
「守護神とガキンチョ、二人まとめて吹き飛ばしてやるぜ!」
とカメハナビが身を屈めると、背負った筒から花火が火を吹いた。
「うあ!」
「危ない!」
二人は直撃を避けたものの、その強烈な威力に驚愕した。
「ワハハハ、俺の花火は連射式だ。それ!」
カメハナビは次々と花火を放ち、夜の官庁街に爆発音が轟き渡った。
「これじゃ、近寄れない…」
とドリームキャンディが焦る。
「私が囮になるから、キャンディはその隙に近づいて!」
ミラクルナイトは決意を込めた声で言い、反対方向へ駆け出した。
「カメハナビ、こっちよ!」
と、彼女は挑発的にパンツが見えないぎりぎりまでスカートを捲り上げ、カメハナビに呼びかける。
「よし、まずはミラクルナイトのヒラヒラスカートを吹き飛ばしてやる!」
カメハナビはミラクルナイトに狙いを定め、再び花火を放った。その瞬間、ドリームキャンディは彼の背後に回り込む。甲羅に違和感を覚えたが、
「えい!」
とキャンディチェーンを叩きつけた。
「何だ?」
カメハナビが振り向いた。しかし、ドリームキャンディは嘆くように呟く。
「やっぱり、亀の甲羅にキャンディチェーンは効かない…」
「至近距離から花火を喰らえ!」
と再び身を屈め、花火を放とうとするカメハナビ。その瞬間、ドリームキャンディは気付いた。
「あれ?」
カメハナビが戸惑いの声を上げた。何かがおかしい。花火が出ない。
「どうしてだ…?」
「今よ!」
ドリームキャンディは素早くキャンディチェーンをロリポップハンマーに変形させた。実は、キャンディチェーンが花火の筒を破壊していたのだ。
「ロリポップ凄い突き!」
ドリームキャンディはカメハナビの腹に強烈な突きを叩き込む。衝撃に呻くカメハナビ。
「うわー!ミラクルナイトの汁を吸わずに終わるとは…!」
と嘆きの声を残し、カメハナビは消滅していった。
「やった!」
ミラクルナイトとドリームキャンディは顔を見合わせ、勝利の余韻に浸りながらも、次なる戦いに向けて気を引き締めた。
「やったね!」
カメハナビを倒し、ミラクルナイトとドリームキャンディは満面の笑みでハイタッチを交わす。しかし、次の瞬間、ミラクルナイトは尻に冷たい空気を感じ、思わず
「ひゃっ!」
と悲鳴を上げた。
背後からスカートが捲られ、パンツ越しに敏感な箇所を撫でられたのだ。驚いて振り返るミラクルナイト。
「あ~!奈理子さん、スカートが…」
とドリームキャンディが指摘する。ミラクルナイトのスカートの裾は、洗濯バサミで腰に固定され、白いパンツが無防備に露わになっていた。
「誰がこんなことを…」
ミラクルナイトは慌てて洗濯バサミを外しながら怒る。
「俺はセンタクバサミアリ。さすが水都の守護神、いい匂いだ」
と、名乗りを上げる洗濯バサミと蟻の合成魔物、センタクバサミアリ。
センタクバサミアリは、ミラクルナイトを撫でた手の匂いと味を楽しむように舌を出していた。
「舐めないで!匂い嗅がないで!」
ミラクルナイトは怒りに満ちた声で叫ぶ。
その時、突然ミラクルナイトの両肩が強い力で掴まれた。
「今度は何?」
と驚いて見上げると、そこにはスズメザルが立っていた。
「さっきはよくもやってくれたな、ミラクルナイト!」スズメザルはそのまま彼女を空中に引き上げようとする。非力なミラクルナイトは、必死に足をバタつかせるが抗えない。
「奈理子さん!」
ドリームキャンディがミラクルナイトを助けようと手を伸ばす。しかし、彼女が掴んだのは、奈理子のパンツだった。
「やだっ!キャンディ、手を離して!」
ミラクルナイトが叫ぶと、パンツは太ももまでずり落ちてしまった。
「奈理子さん、ごめんなさい!」
とドリームキャンディは慌てて手を離す。
その頃、セイクリッドウインドはクズライトの攻撃を巧みにかわしながら、上空でスズメザルに連れ去られそうになっているミラクルナイトを見つける。
「よそ見するな!」
とクズライトが蔓の触手を放つが、セイクリッドウインドは冷静に風の刃で触手を撃ち落とし、素早くガストファングを振りかざした。
「奈理子、今助けてあげる!ウィンドサイクロンスラッシュ!」
と竜巻を巻き起こす。
ガストファングが生み出した巨大な竜巻がクズライトを飲み込み、そのまま上空にいるスズメザルに向かって迫る。
「奈理子、逃げて!」
セイクリッドウインドの叫びが耳に届き、ミラクルナイトは反射的にミラクルウイングを広げ、竜巻から素早く離脱した。
竜巻に取り込まれたクズライトとスズメザルは、
「うわぁー!」
と悲鳴を上げながら、跡形もなく消えていった。
ミラクルナイトは、ゆっくりと地上に舞い降りる。
「危なかった…」
と一息つくが、すぐに気を引き締める。次々と魔物たちが現れ、三人のヒロインを狙っているのだ。戦いはまだ終わっていない。ミラクルナイト、ドリームキャンディ、セイクリッドウインド、彼女たちの試練は続いていく。
(第151話へつづく)














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