ミラクルナイト☆第154話
凜の部屋では、凜、寧々、隆、そして目を覚ました奈理子がパイナップル男対策を練っていた。
「私が弱いせいで、また寧々ちゃんに迷惑かけてごめんなさい…」
奈理子が寧々に申し訳なさそうに言った。
「初見の相手だから仕方ないよ」
と凜が慰める。
「パイナップルの甘い香りが毒だなんて、誰も気づかなかった。私や凜さんだって同じだったと思います」
と寧々も優しく言った。
「パイナップル男の香りはガストファングで吹き飛ばせるかもしれないね」
と凜が作戦を提案する。
その言葉に、奈理子がふと何かを思い出したように言った。
「そういえば、ドリームキャンディはパイン飴を身につけてなかった?」
「はい、パイン飴はあります。缶入りのドロップもドリームキャンディのポケットに入ってます」
と寧々は応える。
「パイン飴で、パイナップル男の毒を無効化できないかな?」
と奈理子は提案した。
「どうだろう…ドリームキャンディの飴だから、特別な力があるかもしれないけど…」
寧々は今までその飴を試したことがなかった。
「それ、いいかもしれない!」
凜が頷き、
「次にパイナップル男が現れたら、キャンディからパイン飴をもらってみよう。でも、香りを無効にできても、パイナップル男が香りだけの怪人とは思えないのよね…」
「私がもっと強ければ、パイナップル男の能力をもっと引き出せたのに…」
奈理子は悔しげにため息をついた。
既にパイナップル男の姿が映る動画がネット上で拡散されていた。
「この筋肉ムキムキの体は、肉弾戦が得意っぽいね…」
「タックルされたら、痛そう…」
動画を見て、凜と奈理子が思わず呟く。
「この堅そうな装甲にはキャンディチェーンは通用しないな。寧々、次は初めからロリポップハンマーで行ったほうがいいぞ」
と隆が言うと、寧々は彼を見つめながら静かに頷いた。
異形のパイナップル男は、甘い香りだけではなく、圧倒的な肉体の強さも持っている。そして、三人のヒロインたちは、この強敵にどう立ち向かうのか――その戦いは、まだ始まったばかりだった。
翌日、水都女学院の中庭のベンチに腰掛けていた奈理子は、深く考え込んでいた。セイクリッドウインドとドリームキャンディという頼もしい仲間はいるが、いつも一緒に戦えるわけではない。パイナップル男と一人で戦わなければならない状況を考えるたび、奈理子の頭には自分が負けてしまう未来しか浮かばなかった。スカートを脱がされ、無様に敗北する――その映像が何度も蘇る。
「ダメだ…私ではパイナップル男には勝てない…」
と、奈理子は肩を落とした。
その時、
「また無様に負けたみたいね」
と冷たい声が響いた。奈理子が顔を上げると、そこには菜々美が立っていた。
「菜々美さん…」
「何暗い顔してんのよ!アンタはミラクルナイトの力をまだ出し切っていないでしょ?」
菜々美はいつもの鋭い言葉を投げかける。
「そうだけど…」
と、奈理子は口ごもった。昨日の戦いでは、気付かないうちにパイナップルの香りにやられてしまい、力を出し切る間もなく敗北していた。しかし、それでも奈理子にはパイナップル男に勝てる自信がなかった。
「アンタは空を飛べるのよ!空からパイナップル男を狙い撃ちすればいいじゃない」
と、菜々美はあっさりと言い放つ。
「空を飛べない相手を空から攻めるなんて卑怯だよ。私はミラクルナイトとして、正々堂々と敵に勝ちたいの」
と奈理子はきっぱりと答えた。
「アンタ、バカなの?」
と、菜々美は呆れ顔で返す。
その時、二人の前に現れたのは、生徒会長の一花だった。
「菜々美さんと奈理子さんが仲良しになってくれて、私も嬉しいですわ」
と、微笑みながら言う。
「一花さん、聞いてくださいよ!奈理子は空を飛ぶのが卑怯だって言ってるんですよ!」
と、菜々美は一花に訴える。
「私は、相手と同じ土俵で戦って、正々堂々と勝ちたいだけです」
と奈理子は反論する。
一花はしばらく奈理子を見つめた後、静かに口を開いた。
「セイクリッドウインドにはガストファングがあり、ドリームキャンディにはキャンディチェーンとロリポップハンマーがあります。ミラクルナイトには何がありますか?」
と奈理子に問いかける。
「私の武器…?」
と奈理子は言葉に詰まった。ミラクルナイトには、彼女自身の特別な武器がなかった。
一花は優しく微笑んで続けた。
「ミラクルナイトにはミラクルウイングがあります。空を飛べること、それがあなたの力です。何も恥じることはありませんよ。自分の能力を最大限に生かして戦うこと、それが本当の正々堂々というものです」
その言葉を聞いた奈理子は、ようやく自分の持つ力に対して自信を取り戻し始めた。空を飛べること、それは決して卑怯なことではなく、ミラクルナイトの誇りある力なのだと。
「ありがとう、一花さん…」
放課後、奈理子はいつものように水都公園を歩いていた。ミラクルナイトの力を最大限に活かして戦う――それは一花の言葉が奈理子の胸に刻まれた新たな誓いだった。だが、奈理子にはもう一つ、大切にしている思いがあった。
「ミラクルナイトの一番の魅力は、可憐さだと思うの」
奈理子はつぶやいた。ミラクルナイトは敵を倒すだけではなく、その姿で人々の心を惹きつける存在でありたい。老若男女、すべての市民が彼女を見て微笑むように。そして、どんな時でも、可憐で美しいミラクルナイトであり続けたいと誓いながら、彼女は遊歩道を一歩一歩着実に進んでいった。
道行く人々が、可憐な奈理子に目を留め、振り返る。彼女は笑顔で応え、まるで日常の一部のように微笑んだ。これが奈理子の日常――放課後の水都公園で繰り返される光景だった。
しかし、今日も穏やかに終わるはずがない、という予感が奈理子の胸をよぎる。
突然、公園内に町内放送が響いた。
「噴水広場に強烈な臭いを発する謎の怪人出現!」
「パイナップル男?!」
奈理子は思わず声を上げ、アイマスクを取り出した。しかし、すぐに首を振る。パイナップル男ではない。彼は既に正体が判明している。
「新しい怪人…?」
疑問を感じながらも、奈理子は覚悟を決めてアイマスクを装着する。
その瞬間、水色の光が奈理子を包み込んだ。周りにいた市民たちは、彼女の変身シーンに歓声を上げた。純白のブラウスとスカートが彼女の体に現れ、白いリボンが髪を美しく飾る。奈理子はミラクルナイトへと変身し、いつもの自信に満ちた表情を浮かべた。
「ミラクルウイング!」
と声を上げ、ミラクルナイトの背中には白い翼が広がった。
「奈理子、頑張れ!」
市民たちの応援が響く。
ミラクルナイトはその声援に背を押されるように、大空へと舞い上がった。
「今度こそ…」
ミラクルナイトは心の中で決意を新たにし、未知の敵に立ち向かうため、飛び去っていった。
噴水広場の上空で、ミラクルナイトは思わず鼻を摘んだ。
「何?この臭い…」
何かが腐ったような強烈な悪臭が立ち込めている。いつもなら彼女の登場に歓声を上げる市民たちも、この臭いには耐えきれず、遠くに逃げ去ってしまった。
「臭いの元は…あれね!」
視線を移すと、噴水のそばに立つ、刺々しい果物のような怪人が目に入った。広場一帯を支配する強烈な悪臭の正体は間違いなくそいつだった。
「よく来たな、ミラクルナイト。」
不意に別の方向から声が響く。
「パイナップル男!」
ミラクルナイトが身構えた。
「紹介しよう。俺の友達、ドリアン男君だ。」
パイナップル男が刺々しい怪人を指す。ドリアン男と離れた場所に立つパイナップル男を見て、ミラクルナイトはすぐに察した。
「友達って言いながら…彼もドリアンの臭いが嫌いなのね。」
だが、そんなことに気を取られている暇はない。ドリアン男の臭いをなんとかしなければ。
「臭いなんか、水の力で封じてやる!」
ミラクルナイトの周囲に水色のオーラが漂い始めた。
「ミラクルアクアティックラプチャー!」
上空から、ドリアン男に向けて水のオーラを撃ち下ろす。
水のオーラがドリアン男を包み込んだ。
「やった!?」
一瞬の期待がよぎるミラクルナイト。しかし、パイナップル男の嘲笑が響く。
「無駄だ、そんなものではドリアン男の『腐臭の結界』は破れん。」
彼の言葉通り、ドリアン男の姿が水のオーラの中から浮かび上がった。
「生パンヒロインミラクルナイト、この程度の力で俺を封じられると思ったのか?」
と、ドリアン男が不敵に笑う。
「くっ!」
ミラクルナイトはさらに水のオーラを強化しようとしたが、ドリアン男はあっさりとそれを弾き飛ばし、口を大きく開くと、
「ドリアンブレス!」
と強烈な臭気を吹き付けた。
「きゃっ!」
と驚きながら、ミラクルナイトはとっさに
「フェアリーシールド!」
と叫び、水色の防御壁を展開してその攻撃を防ぐ。だが、その強烈な臭いと圧力に、彼女は動揺を隠せなかった。
「なんて強さなの…」
ミラクルアクアティックラプチャーが通じないことに愕然とするミラクルナイト。
「空からじゃ話にならん。降りてきて正々堂々と戦え!」
パイナップル男が輪切りにした巨大なパイナップルのスライスを投げつけてきた。
「パイナップル男にこんな技が…!」
ミラクルナイトは驚きながらも
「当たらないわ!」
と軽やかに飛び回避する。しかし、パイナップル男は嘲笑を浮かべた。
「それで終わりと思うか?」
「何が可笑しいの!」
と言い放った瞬間、背後から迫る音に気付いた時には遅かった。巨大なパイナップルスライスがブーメランのように戻ってきて、ミラクルナイトの背中に激突した。
「きゃあっ!」
制御を失ったミラクルナイトは、そのまま石畳に叩きつけられる。
「あぁ…」
うつ伏せに倒れ、呻き声を漏らす彼女。
「どうだ?パイナップルブーメランの味は?」
勝ち誇ったパイナップル男が再び手に戻ってきたスライスを手に取る。
「奈理子のパンチラ、いい眺めだな。」
スカートの下から覗くミラクルナイトの白いパンツに、ドリアン男は熱い視線を向ける。
噴水広場で相対するパイナップル男とドリアン男、二大怪人を前にして、ミラクルナイトは再び苦しい戦いに追い込まれていた。
「私は、水都の守護神ミラクルナイト。貴方たちには負けないわ!」
ミラクルナイトは、石畳に倒れた身体を震わせながら立ち上がる。強烈なパイナップルブーメランにやられた背中の痛みを押し殺し、立ち向かうその姿は気高く、しかしどこか儚げだった。
「弱いくせに、健気だな。脚が震えているぞ。」
ドリアン男が不敵に笑い、奈理子の美しい生脚にじっと視線を這わせる。まるで全身を這い回るような視線に、ミラクルナイトは身体の芯から寒気を感じた。けれど、彼女の目はまだ鋭く、負ける気は微塵もなかった。
「奈理子に、果実の王様とされるドリアンの味をたっぷり楽しませてやれ。」
パイナップル男がドリアン男に指示を飛ばす。
「貴方の味なんか、楽しみたくないわ!」
ミラクルナイトは勇気を振り絞り、ドリアン男に飛びかかる。瞬時に右拳を振り上げ、ドリアン男の顔を狙って突き出すが――
ドリアン男の棘々の体に恐怖を感じ、ヘロヘロのパンチになってしまった。
「先ずは、その撫で回したい太股をよく見せてもらおうか!」
ドリアン男はひらりとミラクルナイトのヘロヘロパンチを躱した。交差する二人の間で一瞬の沈黙が生まれる。ミラクルナイトはすぐに体勢を立て直し、次の攻撃に備えようとしたその瞬間――
「きゃあッ!」
ミラクルナイトは短い悲鳴を上げた。視線を下に落とすと、自分の腰から下、つまりスカートが…ない。
「嘘…」
ドリアン男の手には、白いプリーツスカートがひらひらと揺れていた。交差する一瞬で、ドリアン男がスカートを剥ぎ取っていたのだ。奈理子の膝上には、白いショーツが露わになり、羞恥と屈辱が彼女の顔に押し寄せる。
「どうだ、奈理子のパンツ丸出しってのは。可愛らしいもんだな。」
ドリアン男の口元が歪む。ミラクルナイトは心の中で涙を堪え、奮い立たせようとした。だが、震える膝が、自分の弱さを晒してしまう。
「まだ…負けてないわ!」
と、震える声で言葉を紡ぐ。
「そうか、ではドリアンの本当の味を楽しんでもらおうか!」
ドリアン男が声を張り上げ、両手を広げた。ミラクルナイトの身体に再び悪臭がまとわりつくように漂い始める。
「ドリアンブレス!」
と叫び、腐臭の息を吹きかける。
ミラクルナイトは
「フェアリーシールド!」
と叫んで水色の防御壁を展開したが、ドリアン男の攻撃は更に強力だった。次第にシールドが崩れ、悪臭がミラクルナイトを包み込む。
「あぁッ…耐えられない!」
全身が震え、悪臭で意識が朦朧としていく中、ミラクルナイトは視界が歪んでいくのを感じた。
「奈理子…お前はこれで終わりだ!」
とドリアン男が追い詰めるように手を伸ばす。その手が奈理子の白いパンツにかかる寸前――
「キャンディシャワー!」
突如、空から虹色の光が降り注ぎ、ドリアン男の手を弾き飛ばした。
「何だ!?」
ミラクルナイトから飛び退いたドリアン男が驚きの声を上げる。
「遅れてごめんなさい、奈理子さん!」
ドリームキャンディが息を切らしながら駆け寄る。
「寧々ちゃん…助かった…」
ミラクルナイトは力を振り絞って立ち上がる。
「もう大丈夫です。二人で奴らを倒しましょう!」
二人のヒロインが力を合わせ、ドリアン男とパイナップル男に再び立ち向かう。
「二人になったぞ。ドリアン男、どうする?」
パイナップル男が不敵に笑いながらドリアン男に問うた。
「二人まとめて俺が倒してやる。特に奈理子は身包み剥がして、たっぷり楽しませてもらうぜ。」
ドリアン男は自信満々に二人のヒロインを睨みつけた。
一方のドリームキャンディは、いつもの姿にされてしまったミラクルナイトを元気づけようと声を掛けた。
「奈理子さん、今日も可愛いですよ。敵にスカートを脱がされた奈理子さんは、いつ見ても素敵です。」
隣に立つドリームキャンディが、軽口を叩きながら奈理子の白いショーツを軽く撫でるように触れた。
「誂わないで」
ミラクルナイトは顔を赤くし、ドリームキャンディをチラリと睨んだ。照れ隠しなのか、それとも戦いの緊張感のためか。
その時、
「棘乱舞!」
という叫び声と共に、ドリアン男が鋭い棘を飛ばしてきた。ドリアンの硬い殻に生えた無数の棘が、嵐のように二人を襲う。
ドリームキャンディは
「フン!」
と軽やかに跳躍して棘を難なく躱したが、ミラクルナイトは反応が遅れた。
「きゃあ!」
突然の攻撃に声を上げるミラクルナイト。ブラウスが無数の棘でズタズタに斬り裂かれ、彼女の白いショーツだけでなく、白いブラまでもが露わになってしまった。
「奈理子さん、しっかりしてください!」
ドリームキャンディがすぐに駆け寄り、ミラクルナイトを支える。
「大丈夫。棘に当たったのはコスチュームだけ。」
ミラクルナイトは平静を装い、頑張って笑顔を作る。
「当たり前だ。奈理子の身体には傷を付けないように棘を放ったんだからな。」
ドリアン男は、素肌が露わになったミラクルナイトを見てニヤリと笑った。
「どういうこと?」
ドリームキャンディが問い返す。
「奈理子の身体に傷をつけたら、そのスベスベのお肌を楽しむことができないだろう?」
ドリアン男は得意気に語る。彼の目は、もはやミラクルナイトを敵として見ていなかった。単なる玩具としてしか見ていない。
「私は貴方の玩具じゃない!」
ミラクルナイトは怒りを胸にこらえ、ミラクルウイングを広げて舞い上がった。下着姿にされても、心の炎は消えていない。ドリアン男は空を飛べない。空から攻めれば、勝機があるはずだと信じていた。
「空に逃げても無駄だ。ドリアングレネード!」
ドリアン男が上空に向けて無数のドリアンの果実を放つ。
「これは何?」
ミラクルナイトの周囲に、いくつものドリアンが浮かんでいる。その時だった。
突然、ドリアンの果実が次々と爆発を始め、周囲に果肉が飛び散る。強烈な臭いと衝撃が同時に襲いかかる。
「あぁッ!」
ミラクルナイトは、炸裂する果肉の雨を浴びて叫び声を上げた。強烈な臭いが彼女を包み込み、爆発の混乱とダメージで思考が追いつかなくなる。すでに身体も限界だ。
ミラクルナイトは翼を失ったかのように、ふらふらと落下し、再びドリアンの臭気が漂う噴水広場に墜落していった。
「奈理子さん!」
ドリームキャンディは、ドリアンの果肉まみれになって地面に倒れるミラクルナイトに駆け寄った。だが、その瞬間、あまりにも強烈な腐臭が鼻を突き、
「わッ!臭ッ!」
と声を上げてしまった。彼女は一瞬ためらい、抱き起こすことを諦めた。
「寧々ちゃん、酷い…」
ミラクルナイトは涙を流しながら呻く。腐臭まみれにされた自分に悲しみと屈辱を感じていた。
「水都市民のアイドル奈理子さんを、こんなに臭くするなんて許せない!」
ドリームキャンディは怒りで震えながら、キャンディチェーンをミラクルナイトに投げつけ、それで彼女をキャッチすると、噴水へ向かって軽く放り投げた。
「私が相手よ!ロリポップハンマー!」
ドリームキャンディは叫ぶと、手にしたキャンディチェーンを一瞬でロリポップハンマーに変形させ、ドリアン男に立ち向かった。
「お前もドリアンまみれにしてやるよ!ドリアンブレス!」
ドリアン男は腐臭の息を吐き出し、周囲にさらに強烈な悪臭を撒き散らした。
「くっ、臭いッ!でも、負けない!」
ドリームキャンディは気合を入れ、ロリポップハンマーを高く構えて突進していった。
「そりゃッ!」
彼女の声が響き、ロリポップハンマーが勢いよく振り下ろされる。
「ドリアンシールド!」
ドリアン男も瞬時に反応し、硬い外殻でハンマーを受け止めた。激突するハンマーとドリアンの殻の衝撃音が広場に響く。
「うわあぁ~!」
と吹き飛ばされたのはドリームキャンディだった。彼女は地面に転がりながらも、腐臭がさらに濃厚になるのを感じ、ドリアン男が一歩一歩迫ってくるのを目の端で見ていた。
「わわわわわ…凜さん、早く来て…」
ドリームキャンディは小さく呟いた。その瞬間、一陣の強い風がドリアンの臭いを吹き飛ばした。
「何奴?!」
ドリアン男が驚いて振り返る。
「凜さん!」
ドリームキャンディは声を上げた。
「お待たせ。」
颯爽と現れたのは、風の戦士セイクリッドウインドだった。彼女は軽やかに地面に降り立ち、ドリアン男に冷たい目を向けた。
「私もいるわ!」
噴水の水しぶきが立ち上がり、その中から白い下着姿のミラクルナイトが現れた。彼女は噴水の水を使って、ドリアンの果肉を洗い流したのだ。下着がびしょ濡れのまま、彼女は毅然とした態度で立ち上がった。
ミラクルナイト、ドリームキャンディ、そしてセイクリッドウインドがドリアン男を囲む。
「これで逃げ場はないわ」
と、ミラクルナイトが決意を込めた眼差しで言い放った。
ドリアン男は余裕の笑みを浮かべながら、
「何人かかってこようと同じだ。俺のドリアン臭を消すことなんてできやしない!」
と豪語し、再び強烈な悪臭を撒き散らし始めた。腐った果実のような刺激的な臭いが周囲に蔓延し、再び広場は悪臭に包まれた。
「この臭い、耐えられないわ!」
ミラクルナイトは思わず顔をしかめる。
「臭いなんか吹き飛ばしてやる!」
セイクリッドウインドが一歩前に出て、ガストファングを大きく振るい、腐臭を吹き飛ばした。悪臭が一瞬消え、空気が澄んだ。
「どう?」
得意げにセイクリッドウインドが笑みを浮かべた。しかし、彼女の自信満々な顔も束の間、悪臭は再び漂い始めた。
「くっ、まだ臭いが…!」
ミラクルナイトは苦しそうに鼻を押さえた。ドリアン男はにやりと笑っていた。
「この俺の臭いは止まらない。いくら風で吹き飛ばそうと、俺は永遠に臭いを撒き散らし続ける!」
「凜さん、手を止めないでください! 私たちで戦うから、ずっと扇ぎ続けて!」
ドリームキャンディが叫んだ。
「え〜?私は扇ぐだけ?」
セイクリッドウインドは渋々といった様子だったが、ガストファングを振り続けるしかなかった。
「棘乱舞!」
ドリアン男が再び攻撃に出た。鋭い棘が彼の身体から飛び出し、ミラクルナイトに向かって飛んでくる。
「二度も同じ手は喰らわないわ!」
ミラクルナイトは瞬時にミラクルウイングを広げ、空高く舞い上がった。彼女は空から見下ろしながら、
「えい!」
と水色の光弾を放った。しかし、光弾はドリアン男の硬い外殻に当たり、ただ弾かれるだけだった。
「そんな…! どうすれば…?」
ミラクルナイトは一瞬困惑するが、すぐにドリームキャンディが飛び込んできた。
「私に任せて!」
ドリームキャンディはロリポップハンマーを高く振り上げると、「ロリポップ凄い突き!」と叫び、ドリアン男に向かって強烈な突きを叩きつけた。大きな衝撃音が響き渡り、ドリアン男の体が揺れた。
「ふん!その程度では俺を倒せん!」
ドリアン男は硬い外殻に守られているため、大きなダメージを受けた様子は無かったが、少しバランスを崩していた。
「まだまだよ!続けるわ!」
ミラクルナイトとドリームキャンディは、互いに頷き合いながら、次の攻撃の準備を進めた。
二人のヒロインは決して諦めない。たとえ相手が強大でも、力を合わせて戦えば勝機は必ずあると信じているのだ。そして、空を飛ぶミラクルナイトと地上で戦うドリームキャンディが繰り広げる激しい戦いは、徐々にドリアン男を追い詰めていく。
「奈理子さん、私たちなら勝てます!」
ドリームキャンディが力強く叫ぶと、ミラクルナイトも
「ええ、負けないわ!」
と笑顔で応えた。
二人は今、真の絆で結ばれ、ドリアン男との最後の決戦に挑むのだった。
「ドリアンスマッシュ!」
ドリアン男が怒涛のパンチを繰り出し、ドリームキャンディに襲いかかる。彼女はロリポップハンマーで必死に防いでいたが、ドリアン男の硬い外殻に包まれた拳の一撃一撃は凄まじい破壊力を誇っていた。打撃の衝撃に耐え切れず、ドリームキャンディはハンマーを手から放してしまった。
「あッ…!」
彼女が焦りの声を上げる間もなく、ドリアン男が強烈な頭突きを繰り出し、ドリームキャンディの体に直撃する。
「あああッ!」
と彼女の体が宙に浮き、地面へと激しく吹き飛ばされる。
「もう、見ていられないわ!次は私の番!」
セイクリッドウインドが歯を食いしばりながら立ち上がり、ガストファングを手にドリアン男に突進する。だが、扇いで風を送るのを止めた瞬間、再び辺りにドリアン男の強烈な腐臭が漂い始めた。
「このッ…!」
セイクリッドウインドはガストファングを振りかざし、ドリアン男に何度も叩き付けた。しかし、ドリアン男の堅牢な外殻は攻撃をものともしない。
「凜さん、ドリアン男の動きを止めてください!」
上空からミラクルナイトが光弾を放ち続けながら叫ぶ。セイクリッドウインドがミラクルナイトを見上げ、彼女の意図を察して頷いた。
「ヌルヌル発射!」
セイクリッドウインドは一瞬で後退し、ナメコの粘液をドリアン男に向けて放った。ドリアン男の体が粘液に包まれ、足元を滑らせ、身動きが取れなくなる。
「わっ!何だこれは?!」
ドリアン男が粘液に翻弄される様子に、セイクリッドウインドは得意気に言い放った。
「私がナメコ姫だったことを知らないの?」
一方、上空ではミラクルナイトが水色の光に包まれ、彼女の最大の必殺技「リボンストライク」の準備が整いつつあった。力を集中し、ドリアン男にとどめを刺そうとしたその瞬間――
「きゃあ!」
突如、パインスライスが飛んできてミラクルナイトを襲った。彼女は衝撃により墜落し、再び石畳に激しく叩きつけられる。
「奈理子!」
と叫ぶセイクリッドウインドの足元に、小さなパイナップルが幾つも転がり始めた。
「何これ…?」
彼女がそれに気づいた瞬間、パイナップルが次々と爆発し始めた。
「くっ…!」
爆発に巻き込まれ、セイクリッドウインドは体を守るために力を振り絞るが、コスチュームが裂け、痛みに顔を歪める。
「俺の存在を忘れていたようだな」
爆発の煙が消えると、勝ち誇った声が響き渡り、そこにはパイナップルブーメランを手にしたパイナップル男が立っていた。
「ふぅ~、助かったぜ」
とドリアン男が噴水の中から現れた。パイナップル爆弾の爆発の間に、パイナップル男がドリアン男を噴水に投げ込み、ナメコの粘液を洗い流させていたのだ。
「パイナップル男…」
痛みでヨロヨロと立ち上がるミラクルナイトが呟く。セイクリッドウインドも爆発によってボロボロになり、ドリームキャンディは未だ地面に倒れ込んだままだった。
「今日はこの辺にしといてやる」
パイナップル男は満身創痍のヒロインたちを見下しながら冷笑を浮かべる。
「俺はもっとやれるぜ!」
とドリアン男はなおも戦闘意欲を燃やしていたが、パイナップル男は
「楽しみは取っておくものさ。奈理子ちゃん、今日も可愛かったよ」
と静かに告げると、ドリアン男を連れてその場を去っていった。
静寂が戻った噴水広場には、激戦の末に力尽きた三人のヒロインが横たわるのみであった。
(第155話へつづく)












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