DUGA

ミラクルナイト☆第99話

ライムが教授のアジトに足を踏み入れると、異様な空気に包まれた部屋が彼を出迎えた。ソファーに凭れる教授の左右には二人の白パンツブラックナイトが寄り添っていた。ピンクパンツブラックナイトがライムにお茶を運びながら、緊張感が漂う部屋の中でライムは

「烏賊臭いな…」

とつぶやく。

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、壁からイカ男が姿を現す。

「奈理子に骨抜きにされたと思っていたが、さすがスライム男」

と嘲笑うイカ男。ライムは、先日、奈理子がイカ男に襲われたことを思い出しながら、

「奈理子にちょっかい出したそうだな、剣崎さん」

と言った。

イカ男は剣崎としての姿に変わり、

柏原ほどの男が身を滅ぼすほど入れ込んだ女子中学生を試してみたくなったのさ」

と言う。教授は興味深げに、

「で、奈理子はどうだった?」

と剣崎に尋ねる。

「苛め甲斐のある、柏原好みの娘でしたね。ライムが惚れるのも分かる気がした」

と剣崎はライムに向けて笑いながら答えた。

話題が変わり、ライムは

「剣崎さんが水都に帰っていたということは、いよいよ始まるのか?」

と尋ねた。剣崎は、

「ああ、来年の春までには、奴らは水都にやって来るだろうな。お前の姉では奴らは抑えられん。気になるか、ライム?」

と問いかける。ライムには幼い頃に生き別れた姉がいた。その姉が今、「奴ら」と闘っている。

「俺は生まれてすぐに養子に出された。姉などいない」

とライムが応じる。「奴ら」が姉を倒した後、水都にやって来ることにライムの感情は動かなかった。

教授は、来るべき時を楽しみにしているようだった。

「これからどうなるか楽しみじゃのう。九頭は新しい変身薬の開発に成功したようじゃし、勅使河原はそれを使ってどう奴らに対処するのか…」

と教授が言うと、ライムは奈理子が将来起こり得る困難にどう立ち向かっていくのか、心配しながらも彼女に思いを寄せていた。


勅使河原の執務室では、静かな緊張感が漂っていた。机の上には、水都大学の研究者である九頭によって新しく開発された変身薬の試作品が置かれている。

「九頭先生ほどの天才を腐らせるとは、大学とは愚かな組織だな」

と勅使河原は呟く。彼の声には、学術界の小さな枠を超えた野望が込められていた。九頭は水都大学での地位は単なる講師に過ぎず、今期限りでその立場を離れ、来春からは勅使河原の下で研究所の所長として新たな道を歩み始めることになっていた。

「試薬品ですが、実用には十分耐えうると九頭先生は仰っておりました」

と、渦巻が静かに報告する。勅使河原は頷き、そこで一人の青年を執務室に呼び入れる。

「甲高、入れ」

という言葉に、青年がぎこちなく部屋に入ってくる。

「試作第一号の治験者は君だ。期待している」

と勅使河原は青年、甲高に告げる。甲高は緊張した面持ちで、

「必ずや期待に応えてみせます」

と真剣に応えた。その表情には、未知の力に対する期待と不安が入り混じっているように見えた。

勅使河原はさらに、

「牛島と塩田を護衛に付ける。気負わずミラクルナイトと遊んでこい」

と命じる。その言葉に、甲高の表情にわずかながら闘志が灯る。勅使河原の野望に火をつける新しい変身薬の試験が、いよいよ始まろうとしていた。


潮田渚は仕事を終え、水都市内のファミレスに入った。渚は自分の目的を達成しようと、慣れた足取りで店内に入ったが、そこで牛島とその隣に座る若い男を見つけた。牛島が彼女の存在に気づくと、

「彼女がシオマネキ女の塩田渚さん」

と隣の男、甲高に彼女を紹介する。同時に、渚にも

「水都薬品の甲高くん」

と彼を紹介した。渚は、同年代の甲高にイケメンエリート社員という雰囲気を感じ取り、自分には無縁の人種だと感じた。今回はこの人の護衛か、と思った渚に

「よろしくお願いします」

と甲高が丁寧に頭を下げるが、渚はこの任務に対して内心ではやる気が起きず、うんざりした表情を隠せなかった。牛島が渚に今回の任務について説明する。甲高が新しい変身薬の効果をミラクルナイトを使って試すというものだった。もしセイクリッドウインドやドリームキャンディが介入してきたら、牛島と渚が彼らを阻止することになる。甲高が危険に陥った場合も、彼らがミラクルナイトを排除して甲高を保護する。渚が訝しげに牛島を見ながら、

「新薬ってどんな薬なんですか?」

と尋ねると、牛島は

「それが分からないから試すんだよ」

と答えた。

牛島は甲高に、ミラクルナイトを倒すことが目的ではなく、薬の効果を試すことが重要だと強調した。甲高は理解した様子で頷く。渚に対しても牛島は

「渚も頼んだよ」

と念を押す。

「セイクリッドウインドは倒してもいいんですよね?」

という渚の問いに、

「勅使河原さんは、風間凜にはもう関心無さそうだよ」

と応える。渚は個人的な感情を込めて、

「勅使河原とは関係なく、私、あの人嫌いですから」

と言い放つ。牛島は渚に、甲高が持つ新薬の効果確認が最優先であることを再確認させる。

渚は心の中で、セイクリッドウインドである凜のような、明るく男性に好かれるタイプの女性を嫌っていた。ミラクルナイト、奈理子とは戦えないことは残念だが、凜を苦しめることに闇の喜びを感じていた。こうして、渚の新たな任務が幕を開けるのだった。


夕暮れ時、放課後の家路を歩く奈理子。彼女の存在はもはや水都市内での一大センセーションだった。街を歩く人々は次々と奈理子に声をかけ、彼女をアイドルのように祝福する。水都の守護神ミラクルナイトとして、市民の前で全てをさらけ出し、戦い続ける美少女奈理子は、水都市民にとってのヒロインそのものだった。

水都公園の芝生広場を横目に通り過ぎる奈理子。かつては子供たちの笑い声が響いていたこの場所も、オケラ男やミミズ男との戦いで荒廃し、立入禁止のロープが張られている。

「私がもっと強ければ…」

と、芝生広場を守りきれなかったことに自責の念を抱く奈理子。しかし、市民は彼女を責めるどころか、優しく見守り、励ましの言葉をかけていた。

同じく水都公園の別の場所、噴水広場のそばでは、牛島と渚が新しい変身を遂げた甲高を注視していた。

「では、始めます」

と甲高が宣言すると、彼の身体は輝き、形を変え始める。甲高の変貌を目の当たりにした渚は、

「えっ、カニ?翅がある!何で?!」

と驚愕の声を上げた。姿が変わった甲高は、

「カニカゲロウです」

と応える。

「新しい薬は、二種類の生物の能力を合わせた合成怪人の薬なのか…」

と牛島は独り言のように呟いた。

「カニが飛ぶの?」

と渚はまだ驚きを隠せないでいた。

「渚、私たちも変身しよう」

と牛島が提案すると、彼はウミウシ男に変身し、渚も

「飛べるカニなんてズルい」

と言いながらシオマネキ女に姿を変えた。カニカゲロウに変身した甲高は、市民が楽しく過ごす噴水広場に向かって大声で

「ミラクルナイト、出て来い!」

と叫んだ。水都公園は再び戦いの舞台となりつつあった。


そのころ、商店街にある「グフグフハンバーガー」の店内では、小学六年生の寧々が、大学生の凜に修学旅行のお土産を手渡していた。凜は鄙比田温泉饅頭を受け取り、

「わぁ、鄙比田温泉饅頭だぁ〜」

と嬉しそうに声を上げた。寧々の修学旅行は、一日目が鄙比田温泉、二日目が鄙野の町探索だった。

「鄙野はどうだったの?」

と饅頭に喜ぶ凜が尋ねた。寧々は興奮気味に

「もう、びっくりです!鄙野にも正義のヒロインがいて、奈理子さんみたいに敵と戦っていたんですよ!」

と答えた。凜の目が輝く。

「敵?どんな?」

と凜が興味深げに聞く。寧々は

「ミミズとドローンが合体したような弱い怪人がいました」

と話した。

「ミミズねぇ…」

と凜は思いを巡らせ、

「寧々が修学旅行に行っている間、私と奈理子もミミズ男と戦ったんだ。こっちのミミズは強かったよ」

と付け加えた。

ハンバーガーとポテトを美味しく食べながら、二人は楽しく会話を続けていたが、突然、町内放送が鳴り響き、水都公園にウミウシ男、シオマネキ女、そしてもう一体の正体不明の怪人が現れたと報じられた。

「三体も現れるなんて珍しいね。正体不明の怪人って何だろう?」

と凜が首を傾げる。

「私、ミミズドローンを見たから、どんな怪人が出てきても驚きませんよ」

と寧々が堂々と答える。

凜は鄙比田温泉饅頭を手に持ったまま席を立ち、

「とにかく行こう。水都公園は奈理子の通学路だから、奈理子が先に戦ってるかもしれない。三対一だと奈理子はボコボコにされちゃうよ」

と言い、寧々に向かって頷く。寧々も凜の言葉に同意し、立ち上がった。二人は水都公園へ向かう準備を整え、奈理子のピンチを救うために急いで店を後にした。


水都公園の噴水広場に、熱い声援を一身に浴びる奈理子はミラクルナイトに変身し、勇ましく噴水広場に舞い降りた。彼女の前には、かつて幾度も苦しめられたウミウシ男とシオマネキ女、そしてカニのような姿をした翼のある未知の怪人が立ちはだかる。ミラクルナイトは心の奥底で

「ドリームキャンディ、セイクリッドウインド、早く来て」

と呼びかけながら、三者と対峙した。

そよ風が彼女のスカートを軽やかに舞わせ、その美しい太腿が市民の視線を惹きつけ、歓声が響き渡る。市民の期待と希望がミラクルナイトに託される中、彼女は冷静に

「今日は三人で何の用?」

と問いかけた。

ウミウシ男が応える。

「我々はただの見物だ。今日奈理子と戦うのは、このカニカゲロウだ」

と言いながら、彼はその怪人を指差した。カニカゲロウは威勢よく

「まずはこの鋏の切れ味を試させてもらうぞ」

と言い、巨大な鋏を鳴らす。その威嚇的な様子に、思わずミラクルナイトは

「ひっ!」

と小さな悲鳴を上げてしまった。

「奈理子、負けるなー!」

「奈理子、頑張れー!」

という声が次々と飛び交う。市民の期待を背負い、ミラクルナイトは勝利への決意を固めた。そして、ミラクルナイトとカニカゲロウの緊迫した戦いの火蓋が遂に切られた。ミラクルナイトは敵の鋏に対する恐怖を抑え込み、戦いに身を投じる準備を整えた。これはただの戦いではない。水都の平和と市民の安全が、ミラクルナイトの肩にかかっているのだ。


水都公園の噴水広場は緊張に満ちていた。市民の熱い声援を背に、ミラクルナイトはカニカゲロウに立ち向かう。水色の光弾を放つが、カニカゲロウの頑丈な甲羅には効かない。ミラクルナイトは敵の鋏の攻撃をかろうじて避け、隙を突て反撃に転じるとカニカゲロウを投げ飛ばす。彼女の素早い動きに市民からは歓声が上がった。しかし、ウミウシ男はその様子を見て冷静に

「鋏に振り回されているな」

と呟いた。

立ち上がったカニカゲロウは余裕の表情を浮かべ、

「ウォーミングアップはここまでだ。ここからは楽しませてもらうぞ、ミラクルナイト」

と宣言する。

「私は負けない!」

とミラクルナイトは避けようとしたが、ブラウスがカニカゲロウの鋏によって裂かれ、純白のブラジャーが露になった。更なる攻撃に続き、ミラクルナイトのコスチュームは次々と切り裂かれていく。ミラクルナイトは

「あぁぁぁ…」

と声を漏らすだけで、避けることができなかった。彼女は下着姿にされてしまう。市民はその美しい姿に魅了され、どよめきが広がった。

カニカゲロウが下から上へ鋏を振るい、ブラが切り裂かれた。奈理子の小さい胸、無駄な肉を削ぎ落としたようなくびれ際立つ細い身体が露わになる。

「あと一枚だ!」

とカニカゲロウが決定的な一撃を狙うが、ミラクルナイトは諦めていなかった。彼女は瞬間的にミラクルウイングを広げ、空高く舞い上がる。その華麗な飛翔に、市民からはさらなる喝采が沸き起こった。奈理子の闘志はまだ燃え盛っており、ショーツ一枚の姿にされたことで逆に戦う意志を新たにしていた。噴水広場の戦いは、まだまだ終わりを見せることはなかった。


水都公園の噴水広場は、ミラクルナイトとカニカゲロウの空中戦に息を呑む市民であふれかえっていた。カニカゲロウは空を飛びながら、鋏を振り下ろしてミラクルナイトを襲う。ミラクルナイトは水色の防御壁、フェアリーシールドを展開して防御するが、カニカゲロウの鋏は容易くその防御を突き破った。ミラクルナイトはなんとか攻撃を避けるが、カニカゲロウは硬い甲羅、強力な鋏、素早い動き、更に空を飛べる。ミラクルナイトは

「カニカゲロウには弱点がない…」

とその強さに絶望的な思いが頭をよぎる。

その時、ようやくセイクリッドウインドとドリームキャンディが到着する。しかし、彼女たちは空を飛ぶことができず、空中戦には参加できない。ドリームキャンディは地上から

「奈理子さん、頑張って〜!」

と声援を送るが、彼女の声は空高く舞うミラクルナイトに届かない。一方、セイクリッドウインドは

「空で戦われたら奈理子を助けられない…」

と呟いたその時、シオマネキ女が彼女の前に現れ、

「アンタの相手は私がするよ」

と宣言した。

空中での戦いが続く中、地上でも新たな戦いが始まろうとしていた。ミラクルナイトは、空を支配するカニカゲロウにどう立ち向かうのか、セイクリッドウインドとシオマネキ女の戦いの行方はどうなるのか、水都市民の視線はミラクルナイトに釘付けだった。


セイクリッドウインドとシオマネキ女の舌戦が激化する。

「ナメコ姫、初めて見たときから、アンタのことは嫌いだったのよ」

シオマネキ女が、過去の風間凜の異名「ナメコ姫」を挑発的に口にし、

「もう勅使河原さんの愛人じゃないから、"姫”じゃないわね。ローション代わりのナメコ女で充分よ!」

と嘲笑する。セイクリッドウインドは、彼女の挑発に冷静な笑みを浮かべ、

「貴方は男と縁がなさそうだから分からないでしょうけど、ローション使うと気持ちいいのよ」

と返す。さらに、シオマネキ女が自分のことをよく知っていると指摘すると、セイクリッドウインドは

「貴方は私のことよく知ってるみたいだけど、私は貴方のこと知らないの。勅使河原は下っ端の怪人のことは私に教えてくれなくて…。ごめんなさいね、青いカニさん」

と余裕の表情で言い放つ。

シオマネキ女はセイクリッドウインドの挑発に怒り狂い、電磁鋏を振るって襲いかかる。ウミウシ男はそんなシオマネキ女に

「カニカゲロウから目を離すなよ」

注意を促すが、彼女は聞く耳を持たず、怒りに任せて戦いを続ける。

セイクリッドウインドはシオマネキ女の電磁鋏をガストファングで受け止めながら、

「私のことより自分の心配をした方がいいわよ。貴方の上位互換のカニの怪人が出ちゃってるじゃない。同じカニとして、貴方の立場は悪くなるんじゃない?」

と皮肉を言い、上空のカニカゲロウを指差す。その空中戦ではカニカゲロウが優勢に見える。

「煩い!」

とシオマネキ女はセイクリッドウインドに蹴りを入れ、彼女を飛ばす。ドリームキャンディが間一髪でセイクリッドウインドを支え、

「どうしてわざわざ敵を怒らせるようなことを言うんですか!」

と呆れた声を漏らす。セイクリッドウインドとシオマネキ女、ドリームキャンディの戦いは、上空のミラクルナイトとカニカゲロウの戦いと共に、水都の運命を左右する激闘へと発展していく。


ミラクルナイトとカニカゲロウの激しい空中戦はクライマックスに達していた。地上のセイクリッドウインドとシオマネキ女の舌戦はもはやミラクルナイトには届かない。

空飛ぶ怪人と言っても、今まで戦ってきたスピード自慢のトンボ男や力強く飛ぶカブトムシ男、バタバタと飛ぶオケラ男などとカニカゲロウは全く違う。アゲハ女モンシロ女に近いヒラヒラとした飛び方で、ミラクルナイトはカニカゲロウを捉えることができない。そして、カニカゲロウには、アゲハ女やモンシロ女にはない力強さがあった。弱々しく飛んでいるように見えて強烈な一撃が飛んでくる。ミラクルナイトは手も足も出ずに、一方的に打たれ続け体力の限界に近づいていた。飛んでいるだけで精一杯の状態だった。全身を痛め、凜々しい姿勢も保つのが難しい中、それでも彼女は立ち向かう勇気を失ってはいなかった。

カニカゲロウの鋏がミラクルナイトの顎を捉えた瞬間、彼女は激痛と恐怖で

「うぅ…」

とうめき声を上げた。怪人の視線が彼女の露わになった身体を這いずり回る。

「無駄な肉を削ぎ落とした見事な身体だ」

とカニカゲロウは唇を舐める。ミラクルナイトは小さい胸を隠そうともせず、カニカゲロウの視線に耐える。カニカゲロウは

「貧乳は感じやすいと言うから試してみるか」

とカニカゲロウがミラクルナイトの貧しい胸に手を伸ばそうとしたとき、

「触らないで!」

と彼女は反射的にカニカゲロウの腹を蹴り反撃する。空中での不意打ちの一撃がカニカゲロウをよろめかせた。

この一瞬の隙を逃すまいと、ミラクルナイトは自身の特技、ミラクルキックの構えに入る。彼女の足が水色の光に包まれ、その輝きは絶望的な状況を一転させる希望の光となった。空中での一瞬の沈黙の後、ミラクルナイトは全力を込めた足を振り下ろす。

「ミラクルキィ〜ック!」

という彼女の力強い叫びが噴水広場に響き渡る。

一方で、カニカゲロウもまた凄まじい反応速度を見せ、体勢を立て直し、ミラクルナイトの決定的な一撃をかわそうとする。しかし、ミラクルナイトの蹴りはその瞬間を待っていたかのように繰り出され、その輝きはカニカゲロウの硬い甲羅をも貫く力を秘めていた。この瞬間、勝敗が決するのかもしれない。ミラクルナイトとカニカゲロウ、二人の戦士の運命が、この一撃に託されていた。


ミラクルキックとカニカゲロウの鋏が激突する。息を呑み空を見上げる水都市民。セイクリッドウインドとシオマネキ女も自分たちの戦いを忘れてミラクルナイトとカニカゲロウの戦いに魅入っていた。

「きゃぁぁぁぁ〜!」

と悲鳴を上げて弾き飛ばされたのはミラクルナイトだった。地面に叩きつけられるミラクルナイト。

「奈理子さん!」

とドリームキャンディが叫ぶが、ミラクルナイトは動かない。ミラクルナイトは失神してしまったのだ。ゆっくりとミラクルナイトのそばに舞い降りるカニカゲロウ。カニカゲロウは

「あれがミラクルキックか。口程にもなかったな」

と呟くと、気を失ったままのミラクルナイトを抱き起こす。ドリームキャンディが

「奈理子さんを離しなさいっ!」

とキャンディチェーンを振るおうとするが、ウミウシ男が

「カニカゲロウに手出しはさせないよ」

と立ちはだかる。ミラクルナイトを見つめるカニカゲロウは、いきなりミラクルナイトにキスした。睨み合っていたドリームキャンディとウミウシ男、他の皆も呆気にとられる。

「奈理子に何してんの!」

とセイクリッドウインドが怒りを露わに叫ぶ。口の中に異物の侵入を感じ

「んっ…」

と目を覚ましたミラクルナイト。キスをされていることに気付き必死にもがくがカニカゲロウは離さない。タップリと奈理子の口の中を楽しんだカニカゲロウはようやくキスをやめ、

「奈理子の寝顔が可愛かったからついキスしてしまった」

と口にする。あまりにもの出来事に呆然とするミラクルナイト。

「奈理子から離れなさい!」

とセイクリッドウインドがカニカゲロウにガストファングを振るうが、カニカゲロウは軽やかに舞い上がり、「せっかくだから、もう少し奈理子と遊んていくよ」

とミラクルナイトを抱いたまま飛び去ってしまった。空を飛べないドリームキャンディ、セイクリッドウインド、ウミウシ男、シオマネキ女は、遠くに飛び去るカニカゲロウとミラクルナイトを見送るしかなかった。


水都公園の噴水広場は緊張と動揺に包まれた。市民たちは恐怖と不安の表情を浮かべ、空に消えていったミラクルナイトの姿にただただ呆然とするしかなかった。セイクリッドウインドとドリームキャンディは力なく肩を落とし、ミラクルナイトを奪われた事実に立ち尽くす。

「奈理子さん!」

とドリームキャンディが叫び、その声は噴水広場に響き渡った。セイクリッドウインドは力なくガストファングを下ろし、

「これからどうすれば…」

とつぶやいた。ウミウシ男とシオマネキ女も戦いの興奮から一転、何をすればいいか分からない様子だった。

一方、市民たちの間ではさまざまな声が上がっていた。不安や心配、そして怒りの声。しかし、彼らにできることは限られていた。彼らはただ、水都のヒロイン、奈理子が無事であることを祈るばかりだった。

この一件は水都全体に大きな影響を与えた。ミラクルナイト、奈理子が突如として敵にさらわれるという前代未聞の事態に、市民たちは不安と恐怖に震え、彼女の安全を心配していた。

この事件はまた、ドリームキャンディ、セイクリッドウインドにとっても大きな試練となった。彼女たちはこれまでにない困難に直面し、ミラクルナイトを取り戻すための行動を迫られることになる。そして、それは同時に、水都の平和を守るために彼女たちがどこまでできるか、その限界を試されることでもあった。


水都郊外の山中。牛島と渚はカニカゲロウと彼にさらわれたミラクルナイトを探していた。渚は怒りを露にしていた。

「何なんですか!あのカニカゲロウ、いきなり奈理子にキスするなんて!」

と彼女は牛島に訴える。

「何で君が怒ってるんだよ?君は凜が嫌いだけど、奈理子も同じ位に嫌いだろ」

牛島は落ち着いた声で応じた。

「嫌いだけどキスはダメでしょ!」

渚は女を軽んじるイケメンが嫌いだった。カニカゲロウ、別名甲高もそのイケメンに該当した。

「カニ仲間なんだから、仲良くしたら?」

牛島は渚をなだめようとした。

その時、笑顔の甲高が近づいてきた。

「先輩方、わざわざこんなところまでお疲れ様です」

彼は白いショーツを指でくるくると回していた。

「それは?」

牛島が問うと、甲高は

「戦利品です。ミラクルナイトの純白パンティですよ。女子中学生の芳しい香りがします」

と得意げに答えた。

「奈理子は?」

渚が急いで尋ねると、

「うるさいので黙らせて川に捨ててきました」

と甲高は冷ややかに応えた。そして彼は、

「まだ試していない能力があるので、後日、またミラクルナイトと戦いたいんですが、いいですか?」

牛島は

「勅使河原さんの許可があればいいけど。奈理子とヤッたのか?」

と関係を探るような質問をした。

「まさか。私はウズムシ男ほど鬼畜ではありません。奈理子が高校生になってから頂きます」

と甲高はご機嫌で答えた。


水都市内を流れる川の上流から、脱力した状態で流されてくるミラクルナイトが市民によって発見された。彼女は無防備な状態で、髪を飾る可愛らしい白いリボン、グローブとブーツ以外は身につけていなかった。その美しい身体に魅了される市民たちだったが、彼らはすぐに奈理子がカニカゲロウに敗れたミラクルナイトであることを思い出し、慌てて救出に動いた。

市民たちは奈理子を優しく岸に引き上げ、心配そうに彼女の安否を確認した。救急車が呼ばれ、意識のない奈理子は病院に搬送されることになった。一部の市民は、ミラクルナイトのコスチュームの残骸を拾い集めていたた。

水都市内の人々はミラクルナイトの身に起こった出来事に心を痛め、彼女が再び立ち上がることを願っていた。奈理子が市民に見せてきた強さと優しさは、多くの人々の心に深く刻まれていた。彼女の回復を待ち望む市民の中には、彼女のために祈りを捧げる人々もいた。

その夜、水都市の至る所でミラクルナイトへの応援の声が聞かれた。市民たちは彼女が再び元気になり、市を守る姿を見せてくれることを切に望んでいた。奈理子、ミラクルナイトの戦いはまだ終わっていない。彼女の勇気ある姿は、水都市民の心に不屈の希望を灯し続けていた。

第100話につづく)