ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第27章「再起の蹴撃(キックオーバー)」
砕けたコンクリ瓦礫の中、膝をついたミルキーナイトは、呼吸を整える間もなく立ち上がった。
「私……まだ、倒れてる場合じゃない……」
遠くで、プリティ・ストームが鉄球の直撃を受けたのか、建物の壁に叩きつけられ、崩れた瓦礫の下で呻いている。
「カスミ……ッ!!」
コンクリゴーレムは、悠然と振り返る。
「観察完了──戦闘力、適正。今度こそ、捕獲──」
「……ふざけないでっ!!」
胡桃の叫びと共に、白と茶色の光が再び高く舞い上がる。
「真(ネオ)ミルキィィィィ・アップ!!」
彼女の衣装が光に包まれ、より強化されたへそ出し戦闘服に変化。
袖のない上着は布地がしなやかさを増し、スカートのラインは風に靡きながらもブーツと一体化していた。 腰には、鄙野の象徴である風鈴を模したエンブレムが揺れていた。
「私は……もう逃げない。守りたいものがあるから!」
コンクリゴーレムが拳を振り上げる。 ミルキーナイトは恐れず、迎え撃った。
「──ミルキー・ブレイブキック!!」
右足に風のような渦が巻き起こり、彼女の蹴りがコンクリの拳と正面衝突した。
爆発的な衝撃があたりを包み込む!
「動きを──止めた!?」
その一瞬、背後でプリティ・ストームが叫ぶ。
「チャンスよ胡桃、決めて!!」
「これが……“信じる力”の蹴りだあああッ!!」
「ミルキー・ダブルブースト!!」
両脚から光を放ちながら、ミルキーナイトの回し蹴りがコンクリゴーレム男の頭部に炸裂した。
大きな軋み音と共に、巨体が傾き、やがて轟音と共に崩れ落ちる。
──沈黙。
がれきの中、風だけが吹き抜ける。
「……やった、の?」
「うん……」
胡桃は振り返り、傷だらけのプリティ・ストームと頷き合った。
彼女たちの背後には、もう一度立ち上がる町の景色が広がっていた。
「次が来ても……私はもう、負けない」
* * *
その報せは、魔界の玉座にも届いていた。
「えっ、あの筋肉の塊が負けたの? しかも、あのミルキーちゃんに?」
椅子に足をかけながら、コマリシャスがくるりと回転。
「ええ、どうやら“再起の蹴撃”とかいうのが炸裂したみたいで」
と、タンポポタイ。
「うーん……じゃあもう、強さだけで押すのはナシね」
コマリシャスの唇が歪む。
「やっぱ、あの子は心を折って、恥ずかしさでボロボロにしてから捕獲する方が性に合ってるわ!」
「では──呼びましょうか。ナメクジロー将軍」
「よくってよ」
どこからともなくぬるりと現れる銀色の影。
「我が粘液と詩の時代が、再び……!」
* * *
一方、鄙野。
カスミは、早朝の列車に乗って水都へ向かっていた。
「……ミルキーナイトを狙う理由。魔物が、あいつばっか狙うのって、なんかあるはず」
向かう先は、水都神社。
そこで待つのは、風間凜──かつてセイクリッドウインドとして戦った、伝説の巫女戦士。
「聞かせてくれ、あんたの知ってることを」
カスミの眼差しは、静かに決意を帯びていた。
そのころ、鄙野の町に、ぬめる足音が忍び寄っていた。
「ふふふ……待たせたな、我が愛しのへそ……」
ナメクジロー将軍。
ミルキーナイトがたったひとりでいる、今この時を、逃すはずもなかった。
(第28章へつづく)








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