DUGA

ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第23章「鄙野グルメ祭り事件」

 鄙野の町に、突如として現れたカラフルな横断幕。

 『ようこそ!魔界グルメフェスin鄙野』

 商店街のど真ん中に組まれたステージには、巨大な料理鍋とコック帽をかぶった異様な存在──フンコロガシ・シェフが鎮座していた。

 「ボンジューるモワッ♪ 地上の貴族どもよ、我が“ミシュラン魔界星三つ”の料理を味わうがよいッ!」

 その姿はフンコロガシ型の巨体に、真っ白なコック服、足元には転がされる黄金のフン玉。そして背中の鍋からは何やら芳香……いや、異臭とも言える湯気が立ち上っていた。

 「町おこしに協力いただいて本当にありがとうございます!」

 「すっごく香ばしい~!」

 商店街の人々は、彼を完全に“名シェフ”と信じ込んでいた。

 * * *

 「──は? 町ぐるみで何やってんの!?」

 商店街に到着したカスミは、眉間にしわを寄せながら現状を見渡した。

 「美味しそう……って、ちょっと!? 胡桃、まさか!?」

 屋台の試食コーナーで、ぼーっと突っ立っている胡桃の手には小さなスプーン。

 「これ……ビーフシチューらしいよ……ちょっと……いい匂い、するかも……」

 「それは“魔界糞ビーフ”だァァァァ!!」

 カスミがスプーンを吹き飛ばし、胡桃を抱えてその場から撤退。

 * * *

 その夜、町のあちこちでは異変が起きていた。

 「フンコロガシ・シェフ様の料理で健康になりました!」

 「彼の料理以外、受け付けない体になってしまって……」

 町役場、診療所、学校、すべての給食が“魔界グルメ”に置き換わっていた。

 「どう見てもヤバいでしょコレ!!」

 怒り心頭のカスミは、胡桃と共に広場へと向かう。

 フンコロガシ・シェフはちょうど「第三回!グルメ洗脳試食会」を開催しており、前菜として「ウン・カルパッチョ・パルフェ」が配られていた。

 「君たちも、一皿いかがかね? 世界が変わる味だヨォ……」

 「変わってたまるかっ!!」

 プリティ・ストームが突撃、鍋を吹き飛ばす風の刃が飛ぶ。

 だが、フンコロガシ・シェフは丸まって粘り弾き。

 「オーゥ、雑な風味ですな。私の料理に比べればまるで屋台の焼きそばだ」

 「こいつ……やるな……!」

 ミルキーナイトも加勢するが、漂う香気に意識が揺らぐ。

 「くっ……うっかり……美味しそうに見えてきた……!」

 「駄目だよ胡桃ッ! それ“魔界のうんこ”だってば!!」

 笑うフンコロガシ・シェフ。

 「美とは、味わいとは、香りとは、境界線を超えたその先に生まれるッ!」

 町は今、“糞まみれの美食国家”へと変貌を始めていた──。

(第24章へつづく)