DUGA

ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第17章「牛乳と洗脳とモ~の罠」

 魔界のとある洞窟。

 蝋燭の灯りが揺らめく謁見の間で、プリンセス・コマリシャスは玉座に腰を下ろし、退屈そうに顎を乗せていた。

 「最近、つまんないのよねぇ。ミルキーちゃんが戻ってきたって言ってもさあ、あの子、前よりちょっとはマシになったけど……いまいちパッとしないのよ」

 「モ~! ならばこのミルクビチャビチャーンにお任せを、ですモ~!」

 空気を切り裂くような勢いで現れたのは、四足歩行の巨大な乳牛型魔物だった。

 白黒模様にピンクの乳首(※機械式)。背中にはステンレスのミルクタンクが据え付けられており、細長いホースを肩から垂らしている。

 「ちょっとアンタ、うるさいわよ。で、何するの?」

 「名付けて『ニセ牛乳浸透大作戦』ですモ~!」

 ミルクビチャビチャーンは両腕(乳房)を誇らしげに広げた。

 「人間界に出荷される鄙野特産『鄙野牛乳』に、我が魔界製“ドロドロラクトス”を混入し、市民をミルキストに変えていくんですモ~! 洗脳・依存・恍惚・発情! 最後には全員コマリシャス様LOVEで『モ~!』と叫ぶモ~!」

 「はぁ〜……馬鹿みたい。……でも、面白そう。やってみなさい」

 「モ~感謝!」

 かくして、牛乳が最初の戦場となる奇妙な作戦が動き出した。

 * * *

 鄙野。  町の人々が奇妙な行動を始めていた。

 喫茶店の常連が「モ~カフェラテください」と言い出し、学校では「朝の牛乳瞑想会」が開かれるようになった。

 「モ~モ~体操第一、始めるモ~!」

 その中で胡桃もまた、奇妙な幸福感に包まれ始めていた。

 「……なんか、戦うこととか、どうでもよくなってきたなあ……」

 しかし、ミルクビチャビチャーンの出現で、胡桃は正気に戻る。

 「プリティ・ストーム!!」

 「遅いよ、胡桃!! やっと目が覚めたか!」

 二人のヒロインが町に立つ。

 「ミルクビチャビチャーン! 貴様のセンスは……極悪だっ!!」

 「それな!!」

 * * *

 戦場は町の中央公園。  洗脳牛乳を霧状に散布するタンクが唸りを上げる中、二人の戦士が突撃した。

 「モ~モ~モ~! 甘く見てもらっては困るモ~!」

 「プリスト・テンペストッ!!」

 風の刃が飛ぶ。が、ミルクビチャビチャーンの装甲は濡れた粘膜のように弾力があり、攻撃を吸収する。

 「ドロドロラクトスは全身防御膜にもなるモ~!」

 「くっそ! ぬるぬるしてキモイ!!」

 「ならば私が行く! ミルキーナイト、いっきますっ!!」

 胡桃の蹴りが決まる。だが、その脚がびちゃっと吸着され、ミルクの触手が伸びてくる。

 「おっと、つかまえたモ~♪」

 「イヤッ、きもっ!!」

 すかさずカスミが割って入る。

 「胡桃、あたしの風で一気に飛ばすぞ!」

 「合図を!」

 「いま!」

 二人の息が合う。

 プリティ・ストームの風でミルキーナイトを高く跳ね上げ、空中でミルキー・コンバスターをチャージ。

 「くらえっ!! ミルキー・ツインインパクト!!」

 ミルクビチャビチャーンの頭部に直撃。タンクが破裂し、ドロドロラクトスが空に飛び散る。

 「モ~っ!? わ、我がミルキー帝国がァァァァ!!」

 爆煙の中、魔物は霧散し、角カチューシャをつけた市民たちは「……あれ? なんで私たち、モ~って……」と目を覚ました。

 * * *

 「ふぅ……今回は本当に洒落にならなかったね……」

 「もう牛乳見るだけで汗出る……」

 笑い合う胡桃とカスミ。  だが、魔界の次なる策は、すでに動き出していた。

第18章へつづく)