DUGA

ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第22章「胡桃、奪還のキャンプ」

 ナメクジローとの激戦から数日が経った。

 鄙野に新たな襲撃はなかったが、胡桃の様子はどこかおかしかった。

 「……また、来るかな……あいつ……」

 ミルキーな下着をたたむ手が、ふと止まる。

 ナメクジローの粘液、ぬるぬるとした感覚。

 羞恥の果てに感じたあの奇妙な陶酔感──

 その残滓が、胡桃の心を締めつけていた。

 (わたし……おかしいのかな)

 その夜、ふと独り言を漏らす胡桃の背中を、カスミはじっと見ていた。

 * * *

 翌日。  カスミは胡桃を山へと無理やり連れ出した。

 「キャンプ……?」

 「そう。あんたの脳みそにこびりついたヌルヌルを、全部自然に溶かしてやる」

 強引な言葉に、胡桃は反論もせずついてきた。

 山の中、携帯の電波も届かない場所に、ふたりだけのテントを張る。

 「さ、訓練開始。今日から“五感”を取り戻す特訓だ!」

 「え、ちょ、そんな大げさな……」

 だが始まったのは、泥だらけになって走り回る体力訓練、風の中で構え続ける型の修練、焚き火を囲んでの黙想。

 「風の匂い、土の重さ、木の音……あたしたちが守ってきたのは、こういう“世界”だ」

 「……うん」

 息を切らしながら、胡桃は頷いた。

 その夜、焚き火の灯りの中でふたりは並んで座った。

 「カスミ、わたし……怖かったんだ。あんなのに感じちゃった自分が、もう戦えないんじゃないかって……」

 「それでも、逃げなかった。あんたはそれだけで、十分すげえよ」

 カスミの手が、そっと胡桃の手を包む。

 「……でも、次あいつが来たら、私は──」

 「今度はあたしが一緒に戦う。絶対、あいつに胡桃を渡さない」

 火がぱちりと弾ける。  胡桃は黙って、火の向こうの空を見上げた。

 「……ありがとう。わたし、もう一度……ちゃんと戦いたい」

 「なら、あたしが何度でも叩き直してやる」

 笑い合うふたりの影は、焚き火の光に照らされて、大きく揺れていた。

第23章へつづく)