ミラクルナイト☆第167話
夏休みの午後、商店街のグフグフハンバーガー。
水都の陽射しが強く照りつける中、冷房の効いた店内では、セイクリッドウインドこと風間凜と、ドリームキャンディこと寧々が、スマホの画面を覗き込んでいた。
「奈理子、散々な目に遭ったんだね…」
凜がポテトをつまみながら呟く。
画面に映るのは、先日行われた「ミラクルナイト フィギュア完成イベント」。
奈理子ファンによって、多くの動画がSNSにアップされていた。
そこには——
ミラクルナイトが、イベント会場に乱入したガ男に敗れ、さらにエビカイコにも挑んで再び敗北。
自身のファンの目の前で、1日で2度も失神敗北を喫したミラクルナイトの姿が映し出されていた。
「そうでもないですよ。」
寧々が遠くを見つめながら言う。
「無様に負けたことで、逆に奈理子さんとファンの絆は強まったみたいで、最後はハッピーエンドみたいになりました。」
そして、
「散々な目に遭ったのは私の方…」
寧々は溜息をつく。
戦いに負けるたびに市民に愛される奈理子と違い、自分はどうだろう。
—— 奈理子ファンから非難の声を浴びたり、エビカイコに逆さ吊りにされたり。
「正義のヒロインにとって、可愛らしさってそんなに大切なんですか?」
ふと、寧々が呟いた。
「は? 女の子は可愛いに越したことないじゃん。」
凜がコーラでポテトを流し込みながら、軽く答える。
「奈理子さんが、正義のヒロインにとって一番大切なことは『可愛らしさ』って言ってたんですよ。」
「へ〜。」
凜は何気なく聞き流しながらも、奈理子の言葉の意味を考えた。
「でも、私にはよく分かりません。」
寧々は、真剣な眼差しで凜を見つめる。
「奈理子さんにとって一番必要なことは、可愛らしさじゃなくて『強さ』だと思うんです。弱いから、いつも奈理子さんはスカートを脱がされて晒し者にされるのに……。」
寧々の疑問は、戦士として真っ当なものだった。
しかし、凜はポテトを咀嚼しながら、ゆっくりと口を開く。
「寧々。」
ポテトを手にしたまま、真剣な表情に変わる。
「私たちは、戦いの中で様々なものを壊してしまうことがある。それでも市民が私たちに苦情を言わないのは、奈理子に市民に愛される可愛らしさがあるからよ。」
「……可愛らしさ?」
「水都公園の芝生広場や噴水広場、何度も戦いで破壊されてるでしょ? でも、私たちに苦情は来ないじゃない。」
寧々は考え込む。
「でも、それは……市民のために戦っているから、仕方がないことじゃ……」
「壊された人たちにとっては、たまったものじゃないわよ?」
凜はコーラのストローを軽く嚙みながら言った。
「戦いのたびに、水都公園の芝生や石畳を元に戻すのに、どれだけの市民の血税が使われているか考えたことある?」
「……」
寧々は、言葉に詰まる。
そんなこと、考えたこともなかった。
「ほら、見てごらん。」
凜は、スマホの画面を指差した。
「奈理子は、シャインブラストを使ってないでしょ?」
画面には、家電量販店の店内で戦うミラクルナイトの姿。
しかし、水色の光弾「ミラクルシャインブラスト」を一発も撃っていない。
それに対して——
ドリームキャンディは、店内でロリポップハンマーをブンブン振り回している。
「ミラクルナイトは弱いけど、できるだけ周りに被害が及ばないような戦い方を選択している。市民もそれが分かっているから、奈理子を愛しているのよ。」
凜は、その場ので思いついたことを得意気に言った。
寧々は、言葉を失ったまま じっと動画を見つめ続ける。
(私は、戦いに夢中になりすぎていたのかもしれない……。)
「だから、寧々。」
凜が、空になったポテトの袋をテーブルに置き、にっこりと微笑んだ。
「奈理子や私のように、市民に愛される可愛らしさを身に着けなさい。」
「……」
寧々は ようやく顔を上げる。
そして、心の中で呟いた。
(……凜さんは、奈理子さんほど市民に愛されてるかな??)
—— 寧々の疑問は、まだ晴れないままだった。
凜と別れた寧々は、ゆっくりと商店街を歩きながら考え事をしていた。
(もともと凜さんは全然売れなかったとはいえ、元アイドル。私と違って奈理子さん側の人なんだ……。)
思えば、奈理子が「学園一の美少女」とすると、凜は「学年で一番くらいには可愛い」。
(私はクラスで何番目くらいかな……)
寧々はぼんやりと呟く。
可愛さでは、奈理子や凜には及ばない。
しかし、それが全てではないはずだ。
(最近、隆に振り回され続けて忘れかけてたけど、私は成績優秀、スポーツ万能、学級委員長の優等生。自分を見失わないようにしないと……。)
そう自分に言い聞かせながら顔を上げると、首にカメラを提げた少年と目が合った。
「……章太郎?」
小学生の頃、三馬鹿トリオの一角として寧々の天敵だった男の一人。
中学に上がってからは写真部に入り、すっかり大人しくなったと思っていたが……。
「寧々じゃないか。今日は隆と一緒じゃないのか?」
「いつも隆と一緒じゃないわ。」
寧々はそっけなく返し、ふと章太郎のカメラに視線を落とす。
「それより、アンタ、可愛い女の子の写真を撮ろうとしてブラブラしてるんでしょ? 私がモデルになってあげよっか。」
言いながら、軽くポーズを取る寧々。
しかし——
「……」
「何よ?」
「……お前、そんなキャラじゃなかっただろ?」
「はッ!」
突然、猛烈な羞恥心に襲われ、寧々はその場に立ち竦む。
「真面目でお硬い学級委員長も、すっかり隆好みの色に染まっちまったな。」
章太郎がニヤニヤしながら、品定めするような目で寧々を眺める。
「そ、そんなことないわ!」
ムキになって反論した瞬間——
パシャリ!
章太郎は素早くシャッターを切ると、笑いながら走り去っていった。
「章太郎め……! 中学生になったら大人しくなったと思ったのに!」
地団駄を踏む寧々。
そのとき——
「好きな人の色に染まることは、女の子にとって悪いことじゃないわ。」
不意に、背後から優しい声がかかった。
振り向くと、そこにいたのは——
「貴女は、奈理子さんの友達の……」
商店街の占い師、鈴。
「隆くんに恋する寧々ちゃんは、十分に可愛いわ。自信を持って、恋する乙女を演じなさい。」
その言葉に、寧々は一瞬息を呑んだ。
(この人、私の心の中を読めるの……?)
そんな疑念を抱いた瞬間——
「水都公園でミラクルナイトとトケイソウ女、ウズムシ男が交戦中です」
町内放送が鳴り響いた。
「トケイソウ女もしつこいわね。そんなに奈理子が気に入ったのかしら?」
鈴が微笑む。
「触手が苦手な奈理子さんじゃ、トケイソウ女には勝てない……。」
寧々は呟くと、即座に水都公園へと駆け出した。
時間は戻って、寧々が凜とグフグフハンバーガーでポテトを摘まんでいたころ…。
夏休みの午後、奈理子は中学時代の友人・綾香たちとカラオケに向かっていた。
目的地へ向かう途中、水都公園を通り抜けようとしたとき——
芝生広場で、騒ぎが起こっていた。
「……まさか、敵?」
奈理子の表情が、一瞬で厳しくなる。
「みんな、先にカラオケ行って。私は様子を見て来る。」
「奈理子、気をつけて。」
綾香の声が背中を押す。
このやりとりを何度繰り返しただろう?
中学時代、こうしてミラクルナイトとして戦いに向かう奈理子を、綾香は何度も送り出してくれた。
懐かしさが胸をよぎる。
だが、今はそれどころではない。
奈理子は人混みをかき分け、芝生広場へと向かった——。
夏休みの水都公園。
憩いの場となるはずの芝生広場は、5体のウズムシ男により蹂躙されていた。
「奈理子、早く出てきなさい。」
広場の中央で、市民の悲鳴を聞きながら、トケイソウ女が不敵に微笑む。
その瞬間——
「アクアティック・ラプチャー!」
水のオーラがウズムシ男を包み込み、一瞬で弾け飛ぶ。
「うわあああっ!」
悲鳴を上げながら、ウズムシ男が消滅する。
そして——
「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」
力強い声が芝生広場に響いた。
「ミラクルナイトだ!」
「奈理子が助けに来てくれたぞ!」
市民たちは安堵し、胸を撫でおろした。
「早く逃げてください!」
ミラクルナイトが叫ぶ。
その時——
「奈理子……貴女のせいで私の評価はガタ落ちよ。」
憎々しげに、トケイソウ女がミラクルナイトを睨みつけた。
「今日は、たっぷりとお仕置きしてあげるわ。」
トケイソウ女が指を鳴らす。
残る4体のウズムシ男たちが、一斉にミラクルナイトを取り囲んだ。
「今日の奈理子のパンツは何色かな?」
「俺は白がいいなぁ。純白の天使、野宮奈理子のパンツと言えば、やっぱり白だよな。」
「でも今は夏休みだから、派手なパンツ穿いてるかもしれないぜ?」
下卑た笑い声を上げながら、ジリジリと距離を詰めるウズムシ男たち。
(……こいつら……!)
ミラクルナイトは唇を噛みしめた。
「いい加減にしなさい!」
ミラクルナイトが構えを取る。
その瞬間、ウズムシ男の一体が飛びかかった——!
ミラクルナイトは素早く跳躍し、宙へと舞い上がった。
「今日はピンクだ!」
下から見上げるウズムシ男たちの歓声が響く。
ミラクルナイトのスカートが翻り、淡いピンクのショーツが太陽の光を浴びて輝いた。
「そんなに私のパンツが見たいなら……」
ミラクルナイトの股間が、青白い輝きを纏う。
「これでも喰らいなさい!ミラクルヒップストライク!!」
ミラクルナイトは回転しながら急降下し、飛びかかってきたウズムシ男に優しいヒップアタックをお見舞いした。奈理子の子宮から湧き出る心地よいオーラがウズムシ男を覆う。
「うわぁぁぁ!」
水色の光に包まれたウズムシ男は、幸せそうな表情を浮かべながら消滅する。
「奈理子のお尻は……良い匂い……」
ぼやきながら、跡形もなく霧散した。
「あと3匹……!」
華麗に着地し、残る敵を睨みつけるミラクルナイト。しかし——
「いきなり大技で来るとは驚いたな。」
「だが、捕まえてしまえばこっちのもんだ。」
ミラクルナイトの両腕を、左右から2体のウズムシ男ががっちりと掴む。
「まずはいつものようにスカートからいくか。」
もう1体のウズムシ男が、ミラクルナイトのプリーツスカートをまじまじと見つめる。
「あぁ……!」
もがくミラクルナイト。しかし、非力な彼女の力ではびくともしない。
「それっ!」
掛け声と共に、ミラクルナイトのスカートが剥ぎ取られた。
白いレースで飾られた淡いピンクのショーツが、真夏の陽光に照らされてさらされる。
「奈理子には、その姿が一番お似合いね。」
トケイソウ女が、ミラクルナイトの無防備な姿を見て嘲笑った。
「くっ……私は負けない……!」
必死に気丈に振る舞おうとするミラクルナイト。しかし——
「ふーん、負けないの?でも、奈理子は今日も無様に負けるのよ。」
トケイソウ女が合図を送ると、左右からミラクルナイトを取り押さえるウズムシ男はミラクルナイトを大きく持ち上げた。
「やめて……!」
ドスン!
「ぎゃん!!」
ミラクルナイトの尾てい骨がもう一体のウズムシ男の膝に直撃。三人がかりの強烈なアトミックドロップをミラクルナイトに浴びせる。
ミラクルナイトの小柄な体が跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられた。
太腿を震わせながら、意識が遠のいていく。
(ダメ……また……負け……)
そう思った瞬間——
意識は闇に沈んだ。
ミラクルナイト、失神——!
広場に倒れるミラクルナイト。
太陽の日差しを受けた淡いピンクのショーツが、まるで輝いているように見えた。
奈理子ファンたちは、その姿に魅せられたように群がり、カメラを向ける。
しかし——
戦いはまだ終わっていない。
「あの黄色い光は……!」
「キャンディだ!キャンディが来てくれたぞ!」
市民の歓喜の声が響く。
黄金の光が、芝生広場に降臨する。
「奈理子さんを虐める者は……」
ドリームキャンディは一呼吸置く。
「中学生戦士ドリームキャンディが許さない!」
ヒラリと舞い降りたドリームキャンディが、冷たい視線でウズムシ男たちを睨みつけた——!
(奈理子さん、またスカートを脱がされちゃって…今日は白じゃなくてピンクパンツなのね)
敗北して気絶したミラクルナイトを冷静に確認したドリームキャンディ。敵はトケイソウ女とウズムシ男のみ。ドリームキャンディにとって手強い相手ではない。
「俺たちはガキンチョには用はねぇよ」
「女子高生の奈理子で楽しみたいんだ」
「ピンクのパンツも似合っているぜ、奈理子」
ウズムシ男たちはドリームキャンディを無視して気絶するミラクルナイトを群がって行った。
「お前たち、奈理子は後でいい!ドリームキャンディを倒せ!!」
トケイソウ女が命じる。しかし、ウズムシ男たちはトケイソウ女の命令も無視して奈理子のピンクのショーツを脱がそうと手を伸ばした。
「上司の言う事はちゃんと聞かない大人にはお仕置きが必要ね」
ドリームキャンディはそう呟き、
「キャンディシャワー!」
と虹色の光線を3人のウズムシ男に放った。
「うわ〜!」
キャンディシャワーを浴びて消滅していくウズムシ男。
ドリームキャンディはミラクルナイトに駆け寄ると、ミラクルナイトの頬にビンタを喰らわした。
「ん…ッ」
呻くミラクルナイト。
「主人公のくせに戦闘員のウズムシ男に負けるなんて…しっかりしてください!」
とミラクルナイトを叱咤した。
「キャンディ…」
己の弱さ恥じて、悔しげに目を伏せるミラクルナイト。
「追加戦士の分際で偉そうなことを言うのね」
2人のヒロインのやり取りを見ていたトケイソウ女が微笑む。そして、
「追加戦士は物語の終盤になるとザコキャラ化してパワーアップした主人公の足元にも及ばなくのがヒーローものの定番でしょ」
とドリームキャンディを嘲る。
「私がザコキャラかどうか、試してみる?」
ドリームキャンディは鋭くキャンディチェーンを手にし、トケイソウ女を睨みつけた。
「……っ」
トケイソウ女は、一瞬怯んだ。
しかし——
「生意気な中学生に、お仕置きしてあげる。」
すぐに余裕を取り戻し、触手のように絡み合う蔓をドリームキャンディに向かって放った!
「無駄よ!」
ドリームキャンディは冷静にキャンディチェーンを振るい、迫り来る蔓を次々と打ち払う。
「なっ!?」
トケイソウ女の顔が歪む。
「キャンディチェーンはただの飴ちゃんじゃないわ。」
ピシンッ!!
鋭い音を立て、一本の蔓が宙を裂かれる。
「飴ちゃんの魔力を宿した私の武器!ただの蔓では捉えられないわよ!」
ドリームキャンディは一歩前へと踏み出し、容赦なくキャンディチェーンを振り下ろした!
「ぐぅっ……!」
鋭い一撃がトケイソウ女の肩を捉え、緑色の液体が飛び散る。
「な、何なの……!?追加戦士の分際で、私の蔓を捌くだなんて……!」
苦々しげにトケイソウ女は顔を歪めた。
「だから言ったでしょ?」
ドリームキャンディは冷たく微笑む。
「私がザコキャラかどうか、試してみるって。」
「調子に乗るなぁぁ!!」
トケイソウ女が叫ぶと、さらに無数の蔓を放った!
「えい!」
ドリームキャンディはすかさず、キャンディチェーンを強く振るう。
七色の輝きを帯びた鎖が、無数の蔓を巻き取り、ねじ切っていく!
「きゃあっ!?」
トケイソウ女が悲鳴を上げる。
「これで終わりよ!」
ドリームキャンディは一気に間合いを詰め、キャンディチェーンをロリポップハンマーに変形させた!
「ロリポップ凄い突き!!」
ズドンッ!!
巨大なチュッパチャプスのような武器が、トケイソウ女の胴体を真正面から捉えた!
「ぎゃあぁぁぁ!!」
トケイソウ女の体が大きく宙を舞い、芝生広場の隅に叩きつけられる。
「お、おのれ……!」
倒れたトケイソウ女は、悔しそうにドリームキャンディを睨んだ。
「これ以上やっても、私が勝つ未来しか見えないわ。」
ドリームキャンディは余裕の笑みを浮かべ、ロリポップハンマーを肩に乗せる。
「今日はこのくらいで許してあげる!二度と奈理子さんに手を出さないことね!」
トケイソウ女は唇を噛み締めた。
「ふんっ……!今回は引くけど、次は覚悟しなさい!」
そう言い残し、トケイソウ女は姿を消した。
勝負あり——!
「はぁ……はぁ……。さすがに少し疲れた……。」
ドリームキャンディは大きく息を吐き、ゆっくりと振り返る。
そこには——
未だ芝生の上に横たわる、スカートを脱がされたままのミラクルナイトの姿があった。
「奈理子さん……もうちょっと強くなってくださいよ。」
苦笑しながら、ドリームキャンディは彼女の横に腰を下ろした。
「キャンディ、ありがとう。」
ドリームキャンディに支えられながら、ミラクルナイトは弱々しく立ち上がった。
今日もまた敗北した。
芝生広場に横たわっていた間に、スカートを脱がされたままのピンクのショーツは、土や草の汚れで薄汚れてしまっていた。
「奈理子ちゃん、みんなのために戦ってくれてありがとう!」
痛々しい姿のミラクルナイトに、市民たちから大きな拍手が沸き起こる。
「今日も私は負けてしまいました……弱すぎて……ごめんなさい。」
ミラクルナイトはショーツを隠そうともせず、申し訳なさそうに頭を下げた。
しかし——
「ピンクのパンツ、可愛いよ!」
「奈理子ちゃん、こっち向いてー!」
市民たちは、まるでそんなことなど気にしていないかのように、温かい歓声を送る。
ミラクルナイトは決して最強のヒロインではない。
それでも、彼女は市民のために戦い続ける。
だからこそ、市民は彼女を心から愛していた。
「相変わらず凄い人気ですね……。」
ミラクルナイトの横で、ドリームキャンディがぽつりと呟いた。
——敵を撃退したのは私なのに。
そんな思いが、少しだけ込められていた。
「私は、キャンディみたいに強くはなれない。」
ミラクルナイトは静かに答えた。
「だからこそ、私は弱いけど、体を張って市民に愛されるヒロインを目指してるの。」
ドリームキャンディやセイクリッドウインドに比べると、ミラクルナイトは決定的にパワーが足りない。
ドリームキャンディとセイクリッドウインドは、変身することで身体能力が飛躍的に向上する。
だが、ミラクルナイトは違う。
彼女の変身は、あくまで"ミラクルな力"を使えるようになるだけ。
体力や筋力は、変身前の奈理子のままだった。
「キャンディは強いから、王道のヒロインを目指せる。」
ミラクルナイトは、羨ましそうにドリームキャンディを見た。
「……正直、羨ましいと思ったこともあったな……。」
「奈理子さん……。」
ドリームキャンディはしゃがみ込み、ふとミラクルナイトの汚れたショーツに目をやる。
「奈理子さんがもっと可愛く見えるように、ピンクのパンツを綺麗にしてあげますね。」
そう言って、彼女は奈理子のショーツについた土をパンパンと払った。肌触りの良いコットンショーツ。ドリームキャンディは一番柔らかそうな箇所を触ってみたくなった。
「ここも綺麗にしてあげますねー。」
「あっ、そこ触らないで!」
ドリームキャンディの指が敏感な箇所に触れたのか、ミラクルナイトが慌てて跳ねる。
「綺麗にしてあげますよー。あれ?ここ濡れてますよ?」
「やめてってば!それは汗!!」
芝生広場でじゃれ合う二人のヒロイン。
そんな光景を、真夏の太陽が優しく照らしていた。
(第168話へつづく)













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