DUGA

ミラクルナイト☆第174話

夏の名残を残す青空のもと、水都女学院では二学期最初の課題テストが行われていた。校内は緊張感と静けさに包まれており、生徒たちは白百合の花のように清楚な制服に身を包み、真剣な面持ちで答案用紙と向き合っていた。

「ふう……これで、今日は最後ね……」

教室の窓際の席で、野宮奈理子は真新しい鉛筆を握り締め、小さく呟いた。彼女の表情には、ほんのりと汗が浮かび、真剣ながらもどこか儚げな美しさが漂っていた。純白のカーテン越しに差し込む日差しが、奈理子の黒髪をやさしく照らしている。

(がんばらなきゃ……ミラクルナイトだからって、勉強をおろそかにはできないもの……)

そんな気合を入れていたその時だった。

「……ふふふ……学業などに励むとは、何たる無駄な努力……」

不気味な笑いと共に、教室の天井が黒く歪み、赤黒い煙が吹き出した。生徒たちがざわめき、教師が悲鳴を上げた瞬間、真紅の体毛とダニのような吸盤を持つ怪人――アカダニ男が天井を破って出現した。

「きゃあああっ!」
「な、なにごとですの!?」

「アハハハ!わたくしが、アカテンムシ――いや、アカダニ男でございますわ!」

アカダニ男は、ふざけたような調子でひらりと黒板の上に舞い降りた。その眼はギラギラと光り、赤点の答案を手にしていた。

「本日は、赤点の恐怖を思い知らせて差し上げますわぁ〜!」

奈理子は驚きのあまり凍りついたように立ち尽くしたが、周囲の混乱のなかで意を決し、席を立った。

「皆さま、お逃げあそばせ!ここは、わたくしにお任せくださいまし!」

その瞳に宿る光は、もはや普段の気弱な奈理子ではなかった。教室を飛び出すと、彼女は人目のない講堂裏の小さな倉庫へと走り込み、鞄からアイマスクを取り出した。

「……水都の平和を乱す者……ミラクルナイトが、許しませんわ!」

水色の光が辺りを包み込み、奈理子の姿は清楚で神秘的な戦士――ミラクルナイトへと変わった。

一方、校舎内ではアカダニ男が次々と答案用紙を赤点に変え、生徒たちを嘆きの淵へと陥れていた。

「赤点を出したら、退学ですのよ……!」
「いやですわ、わたくしの花嫁修業が台無しに……!」

騒ぎが広がるなか、空からふわりと現れた白と水色の光――それは、ミラクルナイトその人だった。

「お行儀の悪い害虫さん……学び舎で暴れるのは、感心いたしませんわね」

「へっ、清純ぶった守護神ミラクルナイトか。だが貴様も……赤点に染め上げてやるでございますわ!」

教室の廊下で戦う訳にはいかない。

「わたくしの相手をしたいのであれば、ついてきなさい」

ミラクルナイトはとっさに窓から飛び降り、学園の裏手にある庭園へと駆け込む。周囲に人影はない。校内で戦うのであれば、絶好の場所だ。ミラクルナイトとアカダニ男の激しい戦いが始まる。


放課後の水都女学院。テスト2日目の終わり、赤く染まった夕空を背に、ミラクルナイトは中庭の庭園に立つ。制服の代わりに身に纏うのは、白と水色の麗しきコスチューム。風にそよぐプリーツスカートが、彼女の気高さと優しさを象徴していた。ミラクルナイトとしての使命、そしてテスト勉強と、休む暇などない。

「はぁ……。本日も赤点の気配がいたしますわね……」

うなだれるミラクルナイトの足元に、ねっとりとした赤い影が忍び寄る。それは不気味な気配をまとった異形の怪人──アカダニ男だった。

「奈理子嬢、血の気配が足りておらんぞ……おまえの疲れきった身体、わしが潤してやろうぞ……!」

「えっ……!?」

アカダニ男は凄まじい跳躍力で奈理子に飛びかかった。ミラクルナイトはとっさに身をかわす。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

「はっはっはっ、どうせまたすぐボロボロになるのだろう?」

アカダニ男の爪が赤く光る。ミラクルナイトは必死に応戦するが、疲労と試験のストレス、そして実力差から防戦一方となる。

「うぅ……動きが鈍くなっておりますわ……っ」

「今宵、おまえの赤点の血で満たしてやろうぞ!」

爪がミラクルナイトの肩をかすめ、コスチュームが破れる寸前──そのときだった。

「そこまでよ、アカダニ男。品のない振る舞いは女学院の名を穢しますわ」

高貴な声が広場に響き渡る。

夕陽を背に、舞い降りたのは蝶のような優雅な姿。スカートの裾を優雅に翻し、アゲハ女が現れた。

「アゲハ女が……!なぜここに??」

ミラクルナイトが目を見開いたその瞬間、アゲハ女はその華奢な指先から、美しく輝く蝶型の光弾を放った。アカダニ男がたじろぐ。

「ミラクルナイト。あなたの戦い方、見せてもらいましたわ。今のあなたには、まだ伸びしろがたっぷりあるということです」

「アゲハ女……」

「私があなたを助けたのは、あなたにしか守れないものがあると思ったから。さあ、立ちなさい。誇り高き水都の守護者として」

涙を浮かべながら、ミラクルナイトは立ち上がる。

「ええ……わたくし、まだ負けませんわ!」

少女たちの決意が、夕闇の中で静かに燃え上がる──

そして、水都女学院秋の戦いが、今始まろうとしていた。


夕暮れの水都女学院の中庭。ミラクルナイトの白いスカートが風に舞い、その足元でアカダニ男の爪が石畳を裂いた。

「なかなかやるようになったではないか、奈理子……だが」

アカダニ男は、ねっとりとした視線でミラクルナイトとアゲハ女を交互に見据える。

「今宵は、このあたりで退くとしよう……血は、熟すほど美味くなるものだ」

くるりと背を向けたその背には、無数の赤いダニのような文様が蠢いていた。

「逃げるおつもりでして? お止めにはなりませんけれど、次はそうはいきませんわよ」

アゲハ女が冷たい視線を送る。

「フッ……楽しみにしているぞ、奈理子。次こそ、おまえの甘い血を味わってやろう……」

アカダニ男は赤い霞と共に姿を消した。

「……ふぅ。助かりましたわ、アゲハ女先輩」

息を整えながらミラクルナイトは、夕陽に照らされた広場を見渡した。

「礼などいらないわ。私はあなたの成長が見たいだけ。それが……楽しいのよ」

アゲハ女の口元に浮かぶ、どこか意味深な笑み。

「……わたくし、次は一人でも立ち向かえるように……強くなってみせますわ!」

スカートを押さえながら、凜と立つミラクルナイト。夕空には、残暑の風に乗って舞う一枚の銀杏の葉が、その姿を讃えるようにひらひらと落ちていった。


生暖かい風が吹き抜ける水都の空。赤く霞んだ空の下、高層マンションの一室では、アカダニ男がしょんぼりと肩を落としていた。

「おやおや…アカダニ男さん? これはどういうこと?」

艶やかな蔓草のドレスを身にまとった女性――トケイソウ女が、笑みを浮かべながらアカダニ男を見下ろしていた。彼女の体からは、時折ツタのような触手がのたうつように揺れている。

「奈理子を襲えって言うから行ったんだよ!でもまさか、あいつがいるなんて思わないじゃないか!」

アカダニ男が顔を上げると、赤く光る瞳には悔しさが滲んでいた。

「“あいつ”とは?」

「アゲハ女さ…! あの優雅な風貌に油断したら、動きは鋭いし、風で舞うスカートの一瞬の隙に、俺の吸血針を捌くんだ!全くスキがない!」

アカダニ男は自慢の吸血針が砕かれたことを思い出し、歯ぎしりした。

「ふふ…アゲハ女、一花…」

トケイソウ女は艶やかに微笑んだ。

「あのお嬢様は、奈理子などとは格が違う。あなたのような下等生物が、正面から挑んで勝てるわけがないわ。」

「ぐぅ…じゃあどうしろって言うんだよ……!」

トケイソウ女はツタをアカダニ男の肩に巻きつけると、冷たい声で囁いた。

「“格下”を確実に仕留めていらっしゃい。――たとえば、下校途中の“奈理子”とか。正義の味方は、無防備なときほど狙いやすいものよ。」

「……へっへ、そうか。それなら…いただくぜ。ミラクルナイト――いや、“奈理子”の血、ゆっくり吸わせてもらう!」

アカダニ男の赤い舌がいやらしく唇をなぞった。

「次こそは失敗しないように。でないと……このツタ、次は首に巻いてあげるわよ?」

「ヒィッ……わ、わかったって!絶対に仕留めてやるからな……!」

そして、アカダニ男の影が、再び水都の夕闇へと消えていった――。


水都公園の芝生広場は、午後の陽射しに包まれて、学校帰りの生徒たちや親子連れでにぎわっていた。その喧騒のなか、芝生広場に吹いた風が、少女の水色のセーラー服を優しく揺らす。セーラー服姿の少女――野宮奈理子は一人、足早に歩いていた。

「……来た……!」

不意に気配を感じた奈理子が足を止めた瞬間、植え込みの影から現れたのは、赤黒く蠢く異形の怪人。まるでダニのような鋭い爪と無数の吸盤をまとった不気味な存在──アカダニ男だった。

「見つけたぞ、ミラクルナイト……いや、野宮奈理子!」

「くっ……! なんでいつも名前で呼ぶの……!」

奈理子はとっさに辺りを見回す。人目はない。だが、広場の奥にある多目的トイレが目に入った。

(ここしかない……!)

「逃がすかぁッ!」

唸りを上げて突進してくるアカダニ男の気配を背中に受けながら、奈理子は全力で走り、なんとか多目的トイレへと滑り込むように飛び込んだ。

「はぁ、はぁ……!」

鍵をかけ、息を整える間もなく、奈理子はアイマスクを掲げる。

「ミラクルチェンジ!」

次の瞬間、トイレ内がまばゆい水色の光に包まれた。

奈理子の身体が宙に浮かび、光の粒子が彼女を包み込む。制服のセーラー服とスカートが静かに蒸発するように消え、残されたのは白いブラショーツの姿。だが羞恥に染まる間もなく、変身は次の段階へ進む。

白いリボンがふわりと宙を舞い、黒髪のミディアムボブを結ぶように結ばれる。上半身には白いノースリーブのブラウスが現れ、胸元には水色のリボンがふんわりと結ばれた。

続けて、両腕に白のグローブ、足元にはひざ下までのブーツが次々と装着され、最後に、裾に水色のラインが入った真っ白なプリーツスカートがふわりと腰に巻かれるように現れた。

キラキラと舞い降る光の粒子のなか、ミラクルナイトが凜と立ち上がる。

「水都の平和を乱す者、ミラクルナイトが──絶対に許さない!」

鍵を解き、風を纏って扉が開かれた。

光を背に、今まさに変身を終えたミラクルナイトが芝生広場へと舞い戻る。


公園に飛び出したミラクルナイト。しかし――

「待ってたよ、奈理子ちゃん」

アカダニ男の声と同時に、彼の身体から赤黒い霧が広がった。毒霧だ――ミラクルナイトは息を止めて飛び退くが、そこに地面から鋭い棘が突き出してくる。

「きゃっ……!」

跳んで回避するミラクルナイト。だが、空中でもアカダニ男の攻撃は止まらない。背中から生えた毛針が針のように飛び、ミラクルナイトのスカートをかすめる。

「う……っ、スピードが段違い……!」

攻撃をかわしながらも、じわじわと体力を削られていく。放った光弾もアカダニ男の素早い動きに掠ることすらできない。

「どうした?“水都の守護神”っていうから、どれだけ強いのかと思ったのに。がっかりだなぁ」

「……うるさい……まだ……!」

必死に立ち向かうミラクルナイト。しかし、アカダニ男の体からふたたび赤い霧が噴き出す。今度は抗えないほど濃く、体の奥に染みこむような感覚――

「うっ……目が、回る……!」

視界がぐにゃりと歪む。ふらついた足元に棘が伸び、ミラクルナイトの足首を絡めとった。

「捕まえた……!」

そのまま宙へと引き上げられるミラクルナイト。逆さ吊りにされながらも、意識は朦朧とし、スカートを押さえることもできない。

「奈理子さん!!」

風のような声が芝生に響いた。


逆さ吊りのまま宙に舞うミラクルナイトの姿を、落ちゆく夕日が哀しげに照らしていた。アカダニ男の血のように赤い霧が辺りを漂い、市民たちも遠巻きにしか見守れない。

「おい、誰か!ミラクルナイトが危ないぞ!」
「うそ……またやられちゃうの?」
「がんばれ、奈理子ちゃん……!」

弱り切ったミラクルナイトに飛ぶ声援。しかし彼女のまぶたは重く、震える唇から言葉も出てこない――。

アカダニ男が、奈理子の血を吸わんとその無防備な内腿に牙を立てようとしたしたとき、

「奈理子に手を出すな!」

突如、芝生を揺らす風が巻き起こる。

「なにッ!?」

アカダニ男が目を向けたその先から、鋭く飛んできた光が風を切る。それは、“ガストファング”から放たれた風の刃――

セイクリッド・ウインド、参上!風の加護は、この手にあり!

ヒールのついたブーツを芝に響かせ、長い脚と揺れるスカートを翻して凜が降り立った。戦士の姿で風をまとうセイクリッドウインド、その瞳は憤怒と冷静を同時に宿していた。

「奈理子さんを虐めるなんて……絶対、許しません!」

今度は反対側、銀の光に包まれて跳ねるように現れたもう一人の少女。

ドリーム・キャンディ!甘く見ると痛い目見ますよ!

オレンジ色のドレスに黄色のブルマー。キャンディチェーンを構えたその姿は小柄ながら堂々としている。

「チッ……お仲間登場ってわけか」

アカダニ男は渋い顔をしながらも、ミラクルナイトを縛る触手は緩めない。

「お二人とも……!」

朦朧とする意識の中で、奈理子がぽつりとつぶやく。

「奈理子さんは私が助けます!セイクリッドウインドさん、援護をお願いします!」

「了解!」

ドリームキャンディが跳ぶ。アカダニ男の毛針が飛ぶが、それを正面から叩き落とすようにセイクリッドウインドが再び風の刃を放つ。

「そこです!」

キャンディチェーンがしなり、アカダニ男の腕に巻き付く――

「なにっ!?」

すかさずドリームキャンディが跳躍。ミラクルナイトを捕らえていた触手を振りほどき、彼女の身体を抱きかかえるように救出する。

「大丈夫ですか、奈理子さん!この飴を!」

「……うん。ありがと、キャンディ……」

「凜さん、今のうちに!」

「まかせて!」

空へと浮かび上がったセイクリッドウインドの風が、広場全体に広がっていく。彼女の武器ガストファングが再び輝き、アカダニ男に向けて鋭い旋風を放つ。

「さあ、反撃開始ですよ――奈理子さん!」

ミラクルナイトが静かにうなずいた。


セイクリッドウインドのガストファングが放った旋風がアカダニ男の身体を掠め、芝生を裂いた。ミラクルナイトはドリームキャンディに抱えられたまま、まだ震える脚で立ち上がろうとしていた。

「さあ、ここからは反撃です――!」

ドリームキャンディが叫び、キャンディチェーンを手に握るその瞬間だった。

「反撃ぃ?甘いな、甘い甘い……お前たち、ダニの恐ろしさを分かってない!」

アカダニ男の背から伸びる無数の毛針が一斉に逆立ち、全身が不気味に赤く発光した。

「なっ…また来るっ!」

ドリームキャンディが咄嗟にチェーンを構えたが、アカダニ男はそれをも上回るスピードで地を蹴り、跳んだ!

ブラッディ・バースト!!

赤い衝撃波が弾け、3人を襲う!

「っく……!」

セイクリッドウインドが素早く風の防壁を張るも、間に合わず衝撃に巻き込まれて倒れ込む。

「うわっ……!」

ドリームキャンディも地面にたたきつけられ、キャンディチェーンが手から離れ、芝に転がった。

「皆、危ないっ!」

ミラクルナイトもよろけながら身を挺して立ちふさがるが、アカダニ男のもう一本の触手が唸りを上げる。

「このまま全員まとめて潰してやるよぉ!!」

黒い影のように迫るその一撃──!

だが、ぎりぎりでミラクルナイトの足元に風が巻き上がる。セイクリッドウインドが風で体勢を立て直したのだ。

「まだ終わってないわよ、ダニ男!」

「そっちこそ油断しないでくださいっ!」

キャンディチェーンが地を這い、再びドリームキャンディの手元へ。反撃の構えが整う。

ミラクルナイトも、深く息を吸い込んだ。

「……私だって、やられてばかりじゃない!」

彼女の背に、ミラクルウイングが再び広がる。

空に舞い上がるミラクルナイト。下から赤い閃光が彼女を追う。アカダニ男はなおも止まらない。

「さあ……決着をつけようかぁ、ミラクルナイト!」


粘るアカダニ男だったが、三人のヒロインが相手では徐々に押されていく。

「三人がかりとは卑怯な……」

キャンディチェーンの直撃を受け、アカダニ男がよろめいた。

「女の子を逆さ吊りにするアンタの方が卑怯でしょ!」

セイクリッドウインドがガストファングをハリセンのようにしてアカダニ男を打つ。

芝生広場にミラクルナイトが舞い降り、三人のヒロインが肩を並べた。

「奈理子さん、今です!」

ドリームキャンディの鋭い声に、ミラクルナイトが頷く。

「うん…!もう負けない!」

風が唸る。セイクリッドウインドが大扇《ガストファング》を振ると、空間にねじれた風の渦が生まれた。

「竜巻、展開!」

渦巻く風に飛び込むように、ミラクルナイトがミラクルウイングを広げる。彼女の小柄な体は、竜巻に吸い込まれるように高速で回転を始めた。光の粒子が放たれ、髪の白いリボンが宙を舞う。

「ミラクル――スピン!」

ミラクルナイトの両腕が鋭く交差する。

「クロスチョップ!!!」

轟音とともに、錐揉み回転のままアカダニ男へ突っ込んでいくミラクルナイト。その回転力と風の勢いに乗ったクロスチョップは、超高速でアカダニ男の胸元を斬り裂いた。

「がはっ……!」

巨大な赤ダニのような体が吹き飛ばされ、空中で身をよじる。そこへ、すかさずキャンディチェーンを振るうドリームキャンディが続いた。

「キャンディシャワーッ!」

虹色の光が雨のようにアカダニ男に降り注ぎ、彼の体表を焼き尽くしていく。そして、トドメとばかりにセイクリッドウインドが風を纏い、空中を駆けた。

「これで終わりよ。風裂牙《ふうれつが》!」

横一閃、ガストファングが風刃と共にアカダニ男を切り裂いた。

「うわあああああ――ッ!!」

アカダニ男の体が光の粒子となって霧散した。静寂が戻った水都公園に、拍手と歓声が湧き上がる。

「やったー!ミラクルナイト!」
「さすが純白の天使ー!」
「三人とも、かっこよかった!」

ミラクルナイトは地上に降り立ち、はぁ…と息を吐いて振り返った。

「ありがと、ふたりとも……私、一人じゃ絶対に勝てなかった」

「ふふ、今日はちょっと頑張ったじゃないですか、奈理子さん」

ドリームキャンディが小さく笑う。

「見直したわよ、いつもの奈理子なら逆さ吊りにされた時点で終わってた」

セイクリッドウインドも、やれやれと肩をすくめる。

夕焼けの下、水都の空に三人のシルエットが並ぶ――。こうして、またひとつ、水都の平和が守られた。

第175話へつづく)

あとがき