ドリームキャンディ、心の翼☆後編
快晴の空に、白い雲がゆっくり流れていた。
けれど、平和なはずの水都の空気が、今日はどこかザワついていた。
「──未確認の怪人出現!市民の皆さんは直ちに避難を!」
街のスピーカーから緊急放送が流れる。
寧々は登校中だった。
その声を聞くなり、制服のスカートを翻して駆け出した。
「隆っ……!」
学校に向かっていた隆も、放送を聞いて立ち止まった。
目が合う二人。
頷き合ったその瞬間──
寧々の中で、"ドリームキャンディ"としての使命が目覚めた。
「行くわよ、隆!」
「おう、寧々!」
ふたりは人目を避け、路地裏へ飛び込んだ。
「──キャンディスイーツ・ドリームキャンディ!」
寧々が変身アイテムをかざすと、
鮮やかな黄色の光が彼女を包み込んだ。
セーラー服が光に溶け、
代わりに現れるのは──
オレンジ色に輝く、重厚なドレス!
腰には大きなリボン。足には黄色いブーツ。
手にはキャンディーチェーンと、ロリポップハンマー。
ドリームキャンディ、ここに見参!
「行くわよ、隆! 水都の平和は私たちが守るんだから!」
「おうっ!」
現れた怪人は、異様な姿をしていた。
その体は粘液に覆われ、
大きな腕には鋭いツメ。
顔は不気味なトカゲ……!
「ヤモリ男、参上だぁ〜!」
ニタニタと笑う怪人は、
壁を這い、天井を這い、自由自在に跳ね回った。
「ドリームキャンディかぁ。お前をボコボコにするために作られたんだよ、俺はなぁ!」
ヤモリ男の声は、ねっとりと、どこか不気味だった。
(またヤモリ男なのに、新しいタイプの怪人……私に特化して作られた?)
ドリームキャンディは構える。
「どんな敵でも、私は負けない!──行くわよ!」
隆は背後で見守る。
(寧々なら──きっと勝てる!)
彼の拳は、しっかりと握り締められていた。
──新たな戦いの火蓋は、今、切って落とされた!
「はぁッ!!」
ドリームキャンディが駆け出す。
オレンジのドレスを翻し、キャンディチェーンを振るう!
「甘いぜ!」
ヤモリ男が壁を蹴り、宙を舞った。
ドリームキャンディの一撃をかわし、ぬるりと背後に着地する。
「うわッ!」
振り返ったドリームキャンディの顔に、ぬるりと冷たい手が伸びた。
「──っと!」
彼女は身を捻って回避。
すかさずロリポップハンマーを構えた!
「ロリポップ凄い突き!!」
轟音とともに、突進するドリームキャンディ!
だが──
「壁走りィッ!!」
ヤモリ男は地面に這いつくばると、ズザザッと壁を這い登り、攻撃をかわす!
「チッ……小賢しい!」
ドリームキャンディは歯噛みした。
(素早い……地上戦がメインの私にとって、この機動力は厄介!)
高い位置からヤモリ男が跳躍!
「このっ!!」
ドリームキャンディが振り上げたハンマーに向かって、ヤモリ男が粘液を吹き付けた!
「くっ!」
ドリームキャンディのロリポップハンマーが粘液で滑り、力が逃げる!
その隙を突いて──
ヤモリ男の飛び蹴りがドリームキャンディを直撃した!
「きゃああっ!」
ドレスの裾がめくれ、ドリームキャンディは芝生の上を転がる。
だが、すぐに起き上がり、ドレスの埃を払った。
(痛い……でも負けられない!)
「キャンディーッ!!」
隆の叫ぶ声が、風に乗って届く。
その声に、ドリームキャンディはぐっと拳を握りしめた。
「ありがとう、隆──!」
立ち上がったドリームキャンディの目が、力強く輝く。
(私は、奈理子さんみたいに天使じゃない。
でも……
私は、私なりに水都を守るために戦うんだ!)
ヤモリ男が舌打ちした。
「まだ立つのかよ、しぶといな!」
「しぶといのが……ドリームキャンディなんだからッ!!」
ドリームキャンディは、再び突撃した!
「行くよ、隆!」
ドリームキャンディが駆けながら叫んだ。
「ああッ!」
隆はポケットから取り出した水鉄砲を掲げた。
──普通の子どものオモチャではない。
隆が姉・奈理子のために作った、特製の高圧水鉄砲だ!
「くらえぇぇぇぇっ!!」
隆が渾身の力で引き金を引く!
ビシャァァァァッ!!
強烈な水流がヤモリ男に直撃!
「ぐわぁっ!?」
水に弱いヤモリ男が悲鳴を上げる!
その鱗のような肌が水圧で逆立った!
「今だぁッ、寧々!!」
隆が叫ぶ。
「うんッ!!」
ドリームキャンディはロリポップハンマーを大きく振りかぶった。
ハンマーの先端に、虹色の光が収束していく。
「──ロリポップスターバースト!!」
ドリームキャンディの渾身の必殺技が放たれた!
巨大な虹色のエネルギー弾がヤモリ男を貫く!!
「ギギャァァァッ!!」
ヤモリ男の体がまばゆい光に包まれ、消滅していく。
最後に悔しそうな声を残し、ヤモリ男は完全に消えた──。
──静寂。
「よっしゃあぁぁぁぁ!!」
隆が拳を突き上げた。
「ふぅ……」
ドリームキャンディは、ハンマーを肩に担ぎながら微笑んだ。
二人はゆっくりと顔を見合わせ、そして──
「ありがとう、隆!」
ドリームキャンディはニカッと笑った。
隆も照れくさそうに笑い返す。
「俺、寧々のこと……すごいって、ずっと思ってたよ」
「──っ!」
ドリームキャンディの胸が熱くなった。
彼女は一瞬、言葉に詰まったが──
でも、今は素直に。
「私も、隆のこと……頼もしいって思ってるよ!」
夕焼けに染まる広場に、二人の笑顔が輝いた。
──水都の守護者たちは、今日も無事だった。













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