DUGA

ミラクルナイト☆第156話

土曜日の昼下がり、商店街にあるグフグフハンバーガー。テーブル席でポテトを摘んでいる寧々と凜。二人は先日の戦いを振り返っていた。セイクリッドウインドのアシストでミラクルナイトがドリアン男を倒したものの、ドリームキャンディはパイナップル男に敗北していた。どこか浮かない顔の寧々がふと呟く。

「私たちも、ミラクルナイトみたいに光ることができたらいいのに…」

凜はすぐに答えた。

「いや、光ってるじゃん。変身して移動するとき、ドリームキャンディは黄色く、私は緑色に輝いてる。それに、たまに戦いの中でも光ってることあるでしょ?」

「そうじゃなくって、戦いの中でミラクルナイトは特別に光るじゃないですか。ミラクルチョップのときは腕が光るし、ミラクルキックのときは足が光る。まるでエネルギーが放出されてるみたいに」

と、寧々は少し悔しそうに言う。

「確かに、ヒップストライクのときなんかは奈理子のお股が光るよね」

と凜が茶化すように笑う。

「でも、何でミラクルナイトと私たちってそんなに違うんだろう…」

寧々は深く考え込んでしまった。

凜はそんな寧々に、優しく頭を撫でて言った。

「でも、光ってないときのミラクルナイトは本当に弱いよ。だから、私たちがしっかり守ってあげないとね」

凜が話を振る。

「マンゴー男は正直よく分からなかったけど、パイナップル男は本当に危険だよね」

そのとき、店内がふっと華やかな空気に包まれた。入口から奈理子が姿を見せたのだ。

「ごめん、遅れちゃった。何の話してたの?」

奈理子は寧々の隣に腰を下ろす。

「パイナップル男の話をしてました」

と寧々が答える。

「そうだね。パイナップルスピンアタックは要注意だよ」

と凜が続ける。

「パイナップルブーメランも厄介だから気をつけないといけない。それに、パイナップル男はまだ全力を見せていない気がするのよね」

と奈理子は警戒心を滲ませながら言った。

三人はハンバーガーを頬張りながら、次の戦いに備えて対策を練り始めた。


凜と別れた後、奈理子と寧々は商店街を歩いていた。奈理子は、水都のアイドルとして商店街の住民に親しまれている存在だが、それ以上に、幼い頃から顔見知りという特別な関係があった。

「奈理子ちゃん、今日も可愛いねー!」

果物屋のおじさんが微笑みながら声を掛けた。奈理子は軽く微笑み返す。

「こうして見ると、奈理子ちゃんと寧々ちゃんはまるで姉妹みたいだな」

今度は、蕎麦屋の店主が近づいてきた。

「将来は本当の姉妹になるかもしれないよ。寧々ちゃん、今日は隆と一緒じゃないのかい?」

果物屋のおじさんが寧々に尋ねた。

近頃、奈理子の弟・隆と寧々は頻繁に一緒にいるところを見かけるため、商店街では二人の仲が噂になっていた。

「隆とはそんな仲じゃないですよ〜」

寧々は顔を赤らめながら笑う。

「隆は馬鹿だけど、寧々ちゃんみたいな優等生と恋仲になるなんて、嬉しいよ。隆のこと、よろしく頼むね」

と蕎麦屋の店主が冗談交じりに言う。

「隆は馬鹿じゃないですよ〜」

寧々は照れながらも、少し嬉しそうに答えた。

奈理子は、寧々と商店街の人々の会話を黙って見守っていたが、心の中に複雑な感情が芽生えていた。何故、自分が隆の姉であるにもかかわらず、寧々が隆のことを話すのだろう?もしかすると、奈理子が思っている以上に、隆と寧々は親密な仲なのかもしれない。奈理子だけがそのことに気付いていないのではないかという不安が胸を過った。隆は、奈理子の手の届かないところへ行ってしまったのではないかと感じてしまう。

「奈理子ちゃん、寧々ちゃん、パインジュースでも飲んでいきなよ」

と果物屋のおじさんが、冷たいパインジュースを差し出してきた。

「ありがとうございます!」

と寧々が二つ受け取り、そのうちの一つを奈理子に差し出した。

「はい、奈理子さん」

奈理子は、パインジュースを受け取りながら、ふと心を乱されていたが、寧々の笑顔に気持ちを落ち着けた。寧々はすでに

「美味しい〜」

と至福の表情でジュースを飲んでいる。

奈理子はパインジュースを手にしたまま、じっと見つめていた。そして、突然

「はっ!」

と、ある考えが閃いた。

「これだわ…!」


奈理子は一気にパインジュースを飲み干し、何かを思いついたように、

「寧々ちゃん、ごめん!用事を思い出したから先に帰って!」

と言い残して走り出した。

「おじさん、パインジュース、ありがとうございました!」

と振り返ることなく、奈理子は商店街を駆け抜けていった。

「奈理子さん、どうしたんだろう?」寧々は急に去っていった奈理子の背中を不思議そうに見つめる。

「隆と寧々ちゃんが仲良いことに嫉妬したんじゃないか?」

蕎麦屋の店主が冗談っぽく言う。

「まぁ、あの姉弟は仲良しで有名だったからなぁ。奈理子ちゃんもそろそろ弟離れしなきゃ」

と果物屋のおじさんも頷く。

奈理子は水都公園へとやって来た。芝生広場には家族連れや遊ぶ子供たちが多く見られるが、奈理子は周囲の様子には目もくれず、ただ一つのことに集中していた。パインジュースを見たときに、果物屋のミキサーで回転するパイナップルを思いついたのだ。

ミラクルクロスチョップに回転を加えれば…パイナップル男も粉砕できるかもしれない!」

奈理子は芝生の上で両腕を顔の前で交差させ、ジャンプ。そして、もう一度ジャンプ。さらに捻りを加えて、もう一度ジャンプする。奈理子はその考えを実行に移しながら、自分の動きを試行錯誤していた。

今日の奈理子は、普段の清楚な水都女学院の制服ではなく、休日らしいTシャツショートパンツのラフな格好だ。そんな奈理子が何かを試している姿を見て、周りの市民たちが次第に集まってきた。

「ダメだ…ミキサーのように回れない…」

と奈理子は思い悩んでいる。

「空中ならできるかも…」

奈理子はミラクルナイトに変身してミラクルウイングで空中を飛びながら回転する姿を頭の中でシミュレーションしてみたが、高速回転はできそうにない。

「やっぱり無理かぁ…」

と奈理子はため息をついた。

そのとき、不意に奈理子のショートパンツが足首までずり下げられた

「おー!」

「今日は久しぶりに水色だ!」

と感嘆の声が市民たちから上がる。

「きゃッ!」

と声を上げ、慌てて水色のパンツを隠そうとする奈理子。甘い香りが漂い、奈理子はすぐに何者かが悪戯をしたことに気づいた。

「誰よ?!」

と振り返り睨みつけると、そこにいたのはマンゴー男だった。

「奈理子ちゃん、いつも隙だらけなんだよ。今日は白じゃないんだねー」

とにやりと笑うマンゴー男。

「マンゴー男!」

奈理子は警戒しながら、短パンを引き上げる。

「ドリアン男が奈理子ちゃんなんかに負けるはずがないから、今日は僕が奈理子ちゃんの力を確かめに来たよー」

「変身中は手を出さないでよ!」

と奈理子は苛立ちながら、アイマスクを手にする。

「どうしようかなー?変身前の奈理子ちゃんも可愛いし」

と楽しげなマンゴー男の声に、奈理子は悔しさを募らせる。

「なーんて嘘だよ。ミラクルナイトに変身しないと奈理子ちゃんの力を試せないじゃん」

と、マンゴー男は笑いながら言った。

「おちょくらないで!」

と怒りのこもった声で言い放つと、奈理子はアイマスクを装着し、変身の準備を始めた。


水色の光が放たれる中、奈理子のTシャツとショートパンツが弾け飛び、その瞬間、彼女の体は淡いブルーのブラとショーツだけに包まれた。だが、それも一瞬のこと。リボンが髪を飾り、ブラウスとグローブ、ブーツが次々に現れ、最後には白いレースで縁取られたプリーツスカートが優しくそのショーツを覆った。

「水都の平和を乱す者は、ミラクルナイトが許しません!」

と凜々しい声で宣言するミラクルナイト。

風が吹き、スカートが揺れる。奈理子の太もも生パンツが一瞬だけ露わになり、その清楚な姿に、芝生広場に集まる市民たちは歓声を上げる。

「奈理子ちゃん、可愛い!」

「ミラクルナイト、かっこいい!」

「奈理子、今日も可愛いぞ!」

子供たちも大人たちも、熱い声援を送っている。

「さすがパンチラクイーンの奈理子ちゃん。凄い人気だねー」

マンゴー男がミラクルナイトに舐めるような視線を浴びせる。ミラクルナイトはその視線に怯まず、

「ミラクルウイング!」

と白い翼を広げ舞い上がる。

「空に逃げちゃダメだよ。下からパンツ丸見えだってば」

とマンゴー男は冗談めかして見上げるが、ミラクルナイトは冷静に応じる。

「逃げてないわ!」

水色の光弾を放とうとしたその瞬間、突然、背後からの鋭い一撃が彼女を襲う。

「きゃあ!」

ミラクルナイトは思わず叫び、ウイングを傷つけられたまま地面に墜落した。

「だから言ったのに、空に逃げちゃダメだって」

とマンゴー男が冷笑しながら倒れたミラクルナイトを見下ろす。その視線は奈理子のスカートの隙間から覗くショーツに釘付けだ。

「くぅ…」

悔しさに震えるミラクルナイトは、ふと空を見上げた。そこにはトンボの羽根とカマキリの鎌を持つ異形の怪人が浮かび上がっていた。

「空に逃げられると面倒だから、トンボカマキリに来てもらったんだ。今日はゆっくりと君を可愛がってあげるよ」

とマンゴー男は無邪気な笑みを浮かべ、楽しそうにミラクルナイトに近づいてきた。


ミラクルナイトの前に立つマンゴー男。その上空にはトンボカマキリが不気味に見下ろしている。

「トンボカマキリは見てるだけさ。奈理子ちゃんの遊び相手は僕だよ」

とマンゴー男がゆっくりと歩み寄る。その甘いマンゴーの香りが辺りに漂い、フェロモンのように奈理子を包み込む。突然、奈理子の身体に違和感が走った。子宮が疼き、足元がふらつく。

「この匂い…まさか…」

奈理子はハッと我に返り、スカートを押さえる。

「今、奈理子ちゃんのパンツはぐっしょり濡れてるんじゃない?」

と笑いながらマンゴー男は言い放つ。

「マンゴーの匂いなんかに負けない…!」

ミラクルナイトは強がりを言いながらも、マンゴー男の香りが自分の心と身体に浸透していくのを感じていた。前回はドリームキャンディの飴がこの香りを無効化していたが、今はその助けもない。

「寧々ちゃん、助けて…」

心の中で叫びながら、ミラクルナイトは渾身の右ハイキックをマンゴー男に向けて放った。しかし、マンゴー男の弾力のある体はその衝撃を簡単に吸収してしまう。

「何それ?濡れたパンツを見せつけてるの?白よりも水色は染みが目立つねー!」

と余裕の表情でマンゴー男は奈理子の右足を掴み、そのままアイマスクを剥ぎ取った。

「奈理子ちゃん、可愛いのに顔を隠しちゃ勿体無いよ」

とマンゴー男が笑う。奈理子の悔しげな表情が浮かび上がり、その瞳には焦りが見え隠れする。

「泣きそうな顔も可愛いね。でも、すぐに気持ち良くしてあげるから泣かないで」

と優しい口調で言いながら、マンゴー男はミラクルナイトを抱き寄せた。その香りはさらに濃く、奈理子の戦意を奪い取っていく。

「早くしないとドリームキャンディとセイクリッドウインドが来るぞ」

とトンボカマキリが地上に降り立ち、マンゴー男に言う。

「大勢の市民の前で奈理子ちゃんを可愛がってあげたいけど、邪魔が入るのは嫌だから連れて帰るよ」

と、マンゴー男はミラクルナイトを持ち上げる。駅弁スタイルで抱えられたミラクルナイトは、完全に力を失い、抵抗することもできず、ただしがみつくことしかできない。

「ドリアン男を倒したくせに、奈理子ちゃんはまだまだ弱いね」

とマンゴー男は無邪気に笑う。

その時、ドリームキャンディは町内放送でマンゴー男の出現を聞き、急いで芝生広場に駆けつけた。しかし、そこにはすでにミラクルナイトの姿は無かった。