ミラクルナイト☆第111話
水都は新たな危機に直面していた。市民が突如凶暴化するという異常事態が発生しており、水都第一小学校六年3組の学級委員長である寧々は、敵の仕業と確信し、放課後に街をパトロールしていた。
寧々の後ろを勝手についてきた同級生の隆が歩いている。本来であれば、寧々がが頼りとする大学生の凜に相談したいところであるが、凜は今月末期限の卒論提出が危うい状態であり、隆の姉である奈理子は受験勉強の最中で、寧々は自分がこの事件を解決しなければならないと感じていた。
「寧々、正月はどうするんだ?」
隆は寧々に付きまといながら、呑気に正月の予定を尋ねてきた。事件解決に気負っている寧々は
「そんなの隆には関係ないでしょ」
と応える。
「今年は一緒に初詣に行こうぜ」
と隆。いつも強引に寧々を巻き込む隆が普通に寧々を誘ってきたことに驚く寧々。去年は年末年始は家族旅行で寧々は水都にいなかった。寧々は初詣に誘われたことが嬉しいかったが、それを隆に悟られないように何と答えようか考える。寧々が回答する前に、隆はニヤニヤしながら
「あの巫女さん、凜さんだっけ?可愛いもんな」
と口にした。隆の目的が凜と知り、寧々は隆を睨む。隆は
「どうした、寧々?」
と寧々の気持ちを逆撫でる。寧々は少し苛立ちを感じつつも、
「暇だったら、付き合ってあげる」
と隆を見ずに素っ気なく応えた。
その時、突然近くで悲鳴が上がった。一人の女性が奇声を発しながら暴れていたのだ。市民たちは女性をなだめようと試みていたが、女性は救急車で水都中央病院に運ばれることになった。
その夜、病院からの発表で、その女性が新型ウイルスに感染していることが公表された。この事態に、寧々と隆は重大な危機感を抱き、水都市の未来のために行動を起こすことを決意する。事件の背後に何があるのか、二人は真相を探るべく動き出すのだった。
水都市の静かな夜、野宮家では奈理子と隆の姉弟が部屋のコタツで過ごしていた。このコタツは冬の勉強の友で、奈理子が両親に頼んで買ってもらったものだ。奈理子が学習に集中する一方で、隆は寝転んで漫画に夢中になっていた。野宮家にコタツがあるのは奈理子の部屋だけだ。このコタツが二人の絆を深め、普通の思春期の姉弟とは異なり、一緒に過ごす時間が増えていた。
奈理子は勉強から一息ついて、隆にその日の寧々との出来事を尋ねた。
「今日、寧々ちゃんとデートしたの?」
と聞いた。学校帰りに会った果物屋のおじさんがそう言ってたのを奈理子は思い出したのだ。
「たまたま一緒に帰っただけさ」
と隆は答えたが、その目はコタツの中の無防備な奈理子に釘付けだった。気づいた奈理子は慌てて股を閉じ、
「隆!お姉ちゃんのパンツ見て嬉しいの?!」
と怒った。隆は、
「顔を見なければ姉ちゃんとか関係ないし」
と開き直った。
奈理子は隆の様子を見ながら、弟が他の女の子に奪われる寂しさを感じ、愛おしさが湧き上がった。
「隆、今日は一緒に寝ない?」
と提案すると、
「姉ちゃんと一緒に寝るの何年ぶりかな?」
隆も喜んで同意した。
翌朝、奈理子は目を覚ました。隆はすでに起きており、ベッドには彼の姿がなかった。しかし、奈理子は隆の残した温もりを感じながら、弟がいる幸せを噛みしめた。昨夜の出来事は、姉弟だけの秘密として心にしまうことにした。
中学三年生であり、水都の守護神ミラクルナイトである奈理子の新たな一日が始まる。彼女には受験勉強と市民を守るという二重の責任があるが、その日も彼女はそれらを前向きに乗り越えていくのだった。
水都市の平穏な午前が終わり、昼休みはライムと戯れる。そして、午後の授業も終了した。奈理子はいつものように放課後は図書館で勉強し、日が落ちる頃に図書館を後にした。彼女の心には、最近頻発する事件への警戒感があった。事件が起こるのは帰宅途中が多い。奈理子は、今日は無事に終わりますように、と祈りながら歩く。
しかし、平和な帰路は長くは続かなかった。噴水広場から突然聞こえてきた悲鳴に、奈理子の足は自然とその方向へと向かった。広場に着いた奈理子が目にしたのは、奇声を上げて暴れる女性と、彼女に噛みつかれた男性が同じように暴れる光景だった。
市民たちは恐怖に怯えながら逃げ惑い、奈理子はこれは今流行りのウイルスのせいだと悟った。ウイルスという敵はミラクルナイトには対処できないが、ただ見ているわけにもいかない。奈理子はミラクルナイトに変身し、
「止めてください!」
市民と感染者の間に割って入る。しかし、感染者はすでに四人に増えており、彼らはミラクルナイトに襲いかかった。
ミラクルナイトは感染者を一般市民と見なし、力を出すことができず、
「みなさん、落ち着いてください!」
と呼び掛けるが、感染者たちは酔ったように奇声を上げたままミラクルナイトを取り押さえてしまった。そのとき、
「ほぅ、ミラクルナイトか」
という声と共に、怪人カ男が空から舞い降りた。驚くミラクルナイトがカ男に向けて
「ウイルスは貴方の仕業?!」
と叫ぶが、カ男は冷酷に
「そうさ。私はカ男。ミラクルナイトにもウイルスを植え付けてやろうか」
と応じ、ミラクルナイトのスカートを捲り、白いショーツを露わにした。感染者たちに押さえつけられたミラクルナイトは身動きが取れず、カ男の針のような口が彼女の内腿に迫った。
「やめて…」
とミラクルナイトは弱々しく懇願するが、無情にもカ男はウイルスを彼女の体内に注入してしまった。無力に感じる状況の中、ミラクルナイトはウイルスの恐怖と戦うことを余儀なくされるのだった。
夕暮れ時の噴水広場。ふいに騒ぎが起こり、人々が怯えながら逃げ出してくる。寧々と隆は噴水広場の騒ぎを聞き、その原因を突き止めるために急いで現場に向かった。逃げてくる人たちから、ミラクルナイトがカ男に敗れたという話を耳にする。隆は寧々に目を向け、
「寧々、変身だ」
と命じる。寧々はきっとと頷き、近くの女子トイレに駆け込んだ。中で
「キャンディスイーツ、ドリームキャンディ」
と呟き、ドリームキャンディに変身する。女子トイレから出てきた彼女に隆が
「姉ちゃん、頼む」
と声をかける。ドリームキャンディはうなずき、黄色い光とともに噴水広場へと飛び立った。
噴水広場に着いた時、カ男は既にミラクルナイトの内腿から口を離していた。
「奈理子さん!」
叫ぶドリームキャンディ。だが、ミラクルナイトは反応しない。カ男は嘲笑うように、
「水都の守護神ミラクルナイトの血は美味だった」
と呟く。ミラクルナイトの太腿は濡れており、恐怖で失禁してしまったことを示していた。
「奈理子さんをこんな目に合わせて、許せない!」
怒りに燃えるドリームキャンディ。
「お前みたいな子供にやられる私ではないぞ」
カ男は高く飛び上がるが、ドリームキャンディのキャンディチェーンの範囲内だ。キャンディチェーンを振るおうとする瞬間、突然水色の光弾がドリームキャンディを襲う。彼女は吹き飛ばされる。顔を上げると、信じられない光景が目の前に広がっていた。ミラクルナイトがドリームキャンディに向かって水色の光弾、ミラクルシャインブラストを放っていたのだ。
「どうして…」
と呆然とするドリームキャンディ。カ男が言うには、
「ミラクルナイトは私のウイルスに感染したのだ。今のミラクルナイトは水都の守護神ではない。私の忠実な下僕だ」
ということだった。ミラクルナイトと四人の感染者がドリームキャンディに襲いかかろうとしていた。ドリームキャンディは、何をすればいいのか、と混乱の中に立ち尽くしていた。
夕陽が沈む噴水広場に、再び集まった市民たちの視線が集中する。ドリームキャンディはミラクルナイトと四人の感染者に囲まれていた。一般市民である感染者たちを傷つけることはできないが、ミラクルナイトも同じだった。彼女はカ男のウイルスによって操られているだけだ。ドリームキャンディはキャンディチェーンを駆使し、ミラクルナイトを四人の感染者から引き離し、一対一で対峙する。空中からの攻撃がない限り、ミラクルナイトはドリームキャンディの相手ではなかった。
キャンディチェーンで地面に叩きつけられたミラクルナイトが立ち上がる。ドリームキャンディは、敵に操られたミラクルナイトに怒りをぶつける。
「また敵に操られて!どうして奈理子さんはすぐに敵の手に落ちるの!」
と叫びながら、キャンディチェーンを繰り出す。次々とミラクルナイトのコスチュームが破れ、ついに彼女は下着姿にされてしまった。夕陽に照らされた奈理子の白い肌と白い下着は、その場にいる市民を息をのませるほどの美しさを放っていた。ドリームキャンディは挑発するように言い放った。
「いつものように下着姿にしてやったわ!まだやる気、奈理子さん!」
しかし、下着姿のミラクルナイトは恥じらいもなくドリームキャンディに立ち向かう。ドリームキャンディはミラクルナイトのハイキックを軽やかにかわし、彼女の頬に強烈な平手打ちを見舞った。その一撃でミラクルナイトは意識を失い、膝から崩れ落ちる。
「受験まで大人しくしておけばいいのに…」
とドリームキャンディは呟いた。
カ男は高みの見物をしていた。
「さすが小学生戦士ドリームキャンディ。中学生のミラクルナイトでは相手にならんな」
と笑う。しかし、ドリームキャンディにとっての問題は、感染者たちだった。彼らを傷つけることなくどう対処すればいいのか。逃げることしかできなかったドリームキャンディは、カ男を倒せば元に戻るのか、ワクチンが存在するのか、様々な可能性を考えながら逃走を続けた。彼女の苦悩はまだまだ続く。
噴水広場に緑色の光と共に現れたセイクリッドウインドの目に飛び込んだのは、下着姿で倒れているミラクルナイトの姿だった。
「奈理子!」
と声を上げ、慌てて駆け寄るセイクリッドウインド。奈理子の濡れたクロッチと太腿を見て、彼女は深い同情を感じた。
「またお漏らししちゃったのね…」
と呟くと、怒りの炎が彼女の目に灯る。
「カ男!奈理子をこんな目に合わせてタダでは済まさないわ!」
と彼女はカ男に対して怒りを露わにする。
しかし、カ男は嘲笑いながら
「ミラクルナイトを苛めたのは私じゃなくてドリームキャンディだ」
と告げた。セイクリッドウインドが混乱しながら
「キャンディ、どういうこと?」
と尋ねると、ドリームキャンディは
「奈理子さんはウイルスに感染してカ男に操られていたんですよッ!」
と叫んだ。しかし、ドリームキャンディの注意は感染者たちに向けられていた。彼女は執拗に襲い掛かる四人の感染者から逃げ回っていた。
セイクリッドウインドはカ男を睨みつけるが、その瞬間、目を覚ましたミラクルナイトがセイクリッドウインドの腕に噛み付いた。
「痛たたた…」
と悲鳴を上げるセイクリッドウインドが突然、がっくりと首を垂れる。カ男は
「ミラクルナイトとセイクリッドウインド。ドリームキャンディを倒せ」
と命じた。
「セイクリッドウインドまで…」
ドリームキャンディは絶望の淵に立たされた。
「大学卒業が危ないくせに何で来るのよ!二人とも何で勉強に専念しないのよ!」
と彼女は怒りを露わにするが、ミラクルナイトとセイクリッドウインドはすでにカ男の操り人形になっていた。ミラクルナイト、セイクリッドウインド、そして四人の感染者に囲まれたドリームキャンディ。事態は一層悪化し、彼女の前には絶望的な状況が広がっていた。
ミラクルナイトが水色の光弾をドリームキャンディに向けて放つ。素早い動きで躱すドリームキャンディは、反撃のためにキャンディチェーンを振るおうとしたが、ミラクルナイトのすぐ横にいる感染者を見て思わず手を止める。その瞬間、セイクリッドウインドが彼女にガストファングを繰り出し、ドリームキャンディは強烈な一撃を受けて吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「このままでは…」
と思ったドリームキャンディは、助けを求めるように噴水広場に駆けつけた隆の姿を見つけた。
「隆…」
と力なく呟くドリームキャンディ。しかし、隆の焦点は完全に姉であるミラクルナイトに向けられていた。寧々であるドリームキャンディを見ていない。
「姉ちゃん!」
と叫ぶ隆の声に、ドリームキャンディは深く傷ついた。
「私より奈理子さんが大事なんだ…」
と心の中でつぶやくが、すぐに彼女は自分を戒めた。隆にとって姉の奈理子が大切なのは当然のことだった。
「隆、奈理子さんはウイルスに感染してるの!近付いちゃダメ!」
ドリームキャンディが叫ぶが、その叫びも虚しく、セイクリッドウインドの蹴りが彼女の後頭部に直撃する。その衝撃で一瞬にして意識が薄れていき、ドリームキャンディの世界は暗闇に包まれた。
周囲の騒ぎ、市民の悲鳴、そして隆の呼びかけも、もはや遠い世界のことのように感じられた。ドリームキャンディが無力感と共に意識を失った瞬間、噴水広場にはミラクルナイト、セイクリッドウインド、そしてカ男の姿があり、ドリームキャンディの運命は不透明なままだった。
意識を取り戻したドリームキャンディは、隆に抱き起こされていることに気付いた。彼女の目の前には、ミラクルナイトが迫っていた。
「姉ちゃん、目を覚ませ!」
と叫ぶ隆に、ドリームキャンディは彼にしっかりと抱き締められていた。気を失っていたのは僅かな間だったと気づくドリームキャンディ。彼女と隆はミラクルナイト、セイクリッドウインド、そして四人の感染者に取り囲まれていた。
「隆、逃げて!敵の狙いは私だけだから」
とドリームキャンディが言ったが、隆は
「寧々を残して逃げられるか!」
と力強くドリームキャンディを抱きしめた。カ男が彼らを嘲笑う中、ドリームキャンディは隆を守る強い思いで集中した。そのとき、彼女の手にするキャンディチェーンが黄色く輝き始め、驚くミラクルナイトたちの目の前で巨大なチュッパチャプス、ロリポップハンマーに変形した。
「隆、私に力を貸して」
とドリームキャンディが頼み、隆は彼女と一緒にロリポップハンマーを握った。二人はハンマーを高く振り上げ、
「キャンディスターピュリフィケーション!」
と叫びながら、色とりどりの星のような光を放ち、ミラクルナイト、セイクリッドウインド、感染者たちに降り注がせた。その光によりウイルスは浄化され、彼らは倒れた。
「バカな!?私のウイルスが…」
信じられない様子のカ男に、ドリームキャンディは
「ウイルスは浄化したわ!次はカ男、貴方の番よ」
と宣言し、ロリポップハンマーをカ男に向けた。そして、
「消え去りなさい。キャンディスターバースト!」
と叫び、虹色の光線をカ男に放つ。彼は
「この私が、こんな子供に…」
と呟きながら消滅した。
ドリームキャンディの勇気と隆の支えが水都の危機を救い、光と平和が街に戻ったのだった。
「姉ちゃん!」
と叫びながら、気を失っていたミラクルナイトのもとへ駆け寄る隆。その様子を見ていたドリームキャンディも、倒れているセイクリッドウインドを優しく抱き起こしていた。目を覚ましたミラクルナイトとセイクリッドウインドは少し混乱しているようだったが、ドリームキャンディがカ男を倒したことは何となく理解していた。
「隆のおかげでカ男に勝てたんですよ!」
と嬉しそうに語るドリームキャンディは、隆の腕を掴んでいた。セイクリッドウインドはドリームキャンディにからかい混じりに
「へ〜、隆くんの前ではそんな顔をするんだ」
と言った。ドリームキャンディの正体を知らないミラクルナイトは驚いた表情で
「隆とドリームキャンディは知り合いなの?」
と尋ねた。隆は
「さっき知り合ったんだ。姉ちゃんがドリームキャンディを襲うから間に入ったんだよ」
と誤魔化した。
「奈理子さん、隆、かっこよかったですよ」
と笑顔で話すドリームキャンディに、隆は素直な寧々に戸惑いながらも、大切なことをミラクルナイトに伝えた。
「姉ちゃん、恥ずかしいから早く変身を解けよ
ミラクルナイトはそのときまで、失禁したことで濡れたショーツと太ももが露わになっていたことに気づいていなかった。慌てて変身を解いたミラクルナイトは、水都中学の制服姿の奈理子に戻り、市民からの歓声がさらに大きくなった。
「変身を解いても臭うな」
と隆がぽつりと言った。
「パンツはそのままだからね」
とセイクリッドウインドがフォローする。
「隆のバカ!ナメコ姫もそんなこと言わないで」
と恥ずかしがる奈理子。
「ナメコ姫じゃないって」
とセイクリッドウインドが軽く笑う。その会話を聞きながら、水都の平和を守るというドリームキャンディの決意はさらに強くなっていた。
(第112話へつづく)
(あとがき)













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