DUGA

ミラクルナイト☆第182話

「……帰還、お疲れ様です。ナメクジウオ男」

ひんやりとした空気の中、硝子の壁に囲まれた広い部屋。
そこには、無数の試験管と大型モニター、そして壁一面に貼られた画像――
そのいくつかには、戦闘中のミラクルナイトが写っている。

中でも一際目立つのは、ジャンプの瞬間を捉えたミラクルキックの構図。

その前で椅子を回転させたのは、研究所の頭脳――九頭(ヒドラ男)。
左右の目が異なる色で輝き、まるで異なる人格が共に微笑んでいるようだった。

「今回の“初手”は見事だった。トケイソウ女のように、消えることなく帰ってきた。
それだけで、及第点だよ。ナメクジウオ男くん」

ナメクジウオ男は人型の姿に戻り、コートのような服の内から小さな包みを取り出す。

「――これは、“標本”として採取したものだ。
彼女の象徴にして、皮膚にもっとも近い繊維。
次回の戦闘で使用される可能性が高い、素材と構造の参考になるだろう」

無機質な声でそう言いながら、ナメクジウオ男はそれを机の上に置いた。

九頭は指先で慎重に包みをほどき――

「……ふふふ。これは……これは、これはこれは……!」

口元が、異様に緩む。

「戦闘による損傷……雨による汚れ……香気の消失。
それでも――“彼女が着けていた”という事実が、至高の意味を持つのだよ。

彼の手元には、濡れて少し汚れた一枚の布地。
何かを封じたように、大事に試料袋へと移される。

ナメクジウオ男は、微動だにせずそれを見守っていた。

「次は、どうするつもりだ?」

「彼女を“削る”よ。精神、尊厳、期待、信頼。
その全てを“可視化できるデータ”に変える。
そして――私のコレクションに、新たな記録を加えるのだ」

「……執着とは、進化を歪める毒でもある」

「歪んでいるからこそ、人間は美しい。
“白”が汚れる過程は、どれだけ見ていても飽きないものだよ」

ナメクジウオ男はわずかに目を伏せた。

「……次は、“本番”と考えてよいか?」

「もちろんだとも。
君の“手”で、ゆっくりと……彼女を、“進化の段階”へ導いてやってくれ」

九頭の背後のモニターには、また別のミラクルナイトの映像が映っていた。
“市民に囲まれ、手を振る少女”――その笑顔が、暗い研究室を照らしていた。


「はあぁぁ……」

奈理子はちゃぶ台に突っ伏し、心底から力の抜けた吐息を漏らしていた。
白いTシャツにゆるいスウェット。神社に借りている部屋着姿のまま、うなだれている。

「も~~……なんで私、いつもあんな目に遭うの……!!」

「まあまあ、ミラクルナイトってそういう役割っていうか……そういう宿命っていうか……」

正座してお茶をすするのは、ゆる巻きセミロングの巫女――風間凜。
元ナメコ姫、今はすっかり保護者ポジションで、奈理子と寧々の相談相手。

「でも……完全に手も足も出なかった……。
キックもパンチも吸収されて、当たってるのに意味なくて……しかも……」

奈理子が顔を真っ赤にして、さらにテーブルに沈む。

「パンツ、奪われたし……っ!」

「でも、雨で人がいなかったから誰にも見られていませんよ。そこは運がよかったんじゃないですか?」

寧々が淡々と、お茶の湯気越しに言う。

「そ、それはそうだけど……うぅ……誰にも見られてないのに、なんであんなに恥ずかしかったんだろう……」

「見られてない“のに”恥ずかしいって、それもう相当重症だよ奈理子……」

凜がくすくす笑いながら、茶菓子をつまむ。

「それにしても、ナメクジウオ男……ねぇ。
動きは鈍いのに、異様な吸収性能と粘液の拡散力、そして情緒ゼロの声……」

「はい。攻撃が効いてる感触が一切なくて、戦ってて自分が戦士じゃないみたいでした……」

「ウズムシ男の強化版って感じ?まぁ、ナメクジウオは分裂はしないと思うからウズムシよりマシかな。
……まあ、私のガストファングなら多少は風で飛ばせるけど、倒すのは難しいかも」

「光線技でも蒸発しきらないなら、バラバラにしても意味ないってことですよね。
どうします?今後また現れたら――」

そのとき、奈理子がぽつりと呟いた。

「次は……パンツ、取られないようにしたいな……」

ふたりは思わず沈黙したあと、吹き出した。

「そこかーい!!」
「そこだけは対策完璧ですね奈理子さん!」

「わ、わたし真面目なのにっ!?」

神社の和室に、笑い声がふわっと響いた。

嵐は過ぎ、まだ情報はなくとも――
ミラクルナイトは、仲間と共に前を向いている。


カツン――
研究所の無機質な床に、ヒールの音が響いた。

「九頭所長、ナメクジウオ男との面談、終了したようですね」

入ってきたのは、助手の絹絵(きぬえ)
手には密封保存された検体――白い布地が慎重に包まれた、標本バッグ。

「分析結果、出ました」

九頭はその報告を聞くなり、くるりと椅子を回して振り向いた。

「ほう……? で、どうだった?」

「ご期待には沿えないかと。検出された体液成分は、ごく一般的な若年女性のそれ
ホルモン濃度、皮膚細胞、pHバランス、どれを取っても異常値はありませんでした」

九頭の笑顔が、ふっと消えた。

「……つまり、“何も特別ではなかった”と?」

「はい。彼女は、構造的にはただの女子高生です。
ですが――」

絹絵の声にわずかな熱が混ざる。

「その“ただの少女”が、空を舞い、光を放ち、何度も私たちの怪人を退けている。
そこに“異常”があるとすれば、それは……構造ではなく、奇跡そのものです」

沈黙。

九頭はしばらく無言のまま、標本バッグを見つめた。

「……野宮奈理子。お前は、何者だ?」

彼の声は静かだったが、その目の奥には抑えがたい探求の炎が揺れていた。

「この街で、最も普通で、最も尊くて、最も汚されやすい存在。
それでいて……神に最も近い構造を持っているのかもしれない。

絹絵がやや距離をとりながら、小さく訊ねた。

「所長。次のサンプル回収、ナメクジウオ男に任せてよろしいでしょうか?」

「任せておけ。あいつは愚直だが、精密だ。
ウズムシ男以外は要らんと言ったが、あれは自分の“実験場”を作ろうとしている」

そして九頭は、再び標本を見つめる。

「だが……雨に打たれ、乾いた布では……香りも記憶も、残らないか」

「…………」

絹絵はその独り言には反応せず、淡々と退出の姿勢を取った。
だが扉の前で、ふと立ち止まり、背中越しに呟く。

「所長。私はあなたを尊敬しています。
でも時々……やっぱり変態だと思います。

扉が静かに閉じた。

九頭は眉をぴくりとも動かさず、ただ、低く笑った。

「……構わんよ。
好奇心とは、誰よりも先に“境界”を越える者の特権だ」

ミラクルナイト=奈理子という存在が、彼の“知”を焼き付けていた。


「奈理子ちゃあああああん!!ようこそいらっしゃいました!!」

「わ、わっ……あ、あの……そんなに騒がないで……っ!」

いつもの水色のセーラー服に身を包み、水都大学のキャンパスに足を踏み入れた野宮奈理子。
迎えたのは、テンションフルスロットルな**水都大学奈理子私設ファンクラブ会長・成好(なりよし)**だった。

学園祭実行委員室の中は、彼女の写真やグッズで彩られており、完全に「奈理子ミュージアム」状態。
机の上にはトークショーの打ち合わせ資料が並べられていた。

「えっと、今日は学園祭の……打ち合わせですよね?」

「そう!去年も大好評だった**“奈理子トークショー in 水都大”**、
今年もステージのメインイベントです!!これはもう、伝説間違いなし!!」

「う、うぅ……メインイベントとか言われると緊張するなあ……」

奈理子が頬を赤らめてうつむくと、成好はニヤリと笑う。

「……でね、今年はもうひとつ、お願いがあるんだ。
お笑いライブへのゲスト出演、どうかな?」

「お、お笑い……!?芸人さんと……一緒に……!?」

「しかも、来るのはあっと驚く超大物芸人を用意しているよ!
“純白の天使”と“爆笑王者”の夢のコラボ、絶対ウケるって!!」

「う、うぇぇぇぇ……でもわたし、ボケもツッコミもできないし……!」

「奈理子ちゃんがいるだけで、もうみんな笑顔だよ!
大丈夫、セリフはこっちで用意するし、変身する必要もない!アイドル奈理子ちゃんでいいんだ!」

成好の目は真剣だった。
隣のスタッフたちも、うんうんと熱い視線で彼女を見ていた。

(……私を、そんなふうに思ってくれる人がいるんだ……)

「……わかりました。
迷っても、逃げないって決めたから……わたし、出ます。お笑いライブも」

「よっしゃあああああああ!!!!!」

室内に歓声があがる。

奈理子はちょっとだけ恥ずかしそうに笑って、そっと頬に手を当てた。

(ヒロインじゃないわたしも、ちゃんと、誰かの“希望”でいられるように……頑張らなきゃ)


「……ふぅ。なんとか、打ち合わせ終わった……」

水都大学の正門を出た奈理子は、セーラー服の袖をくいっと直しながら、小さく伸びをした。
空は茜色に染まり、街灯がぽつりぽつりと灯り始める時間。

(お笑いライブ、緊張するけど……でも、なんだかんだ、楽しみかも……)

少しだけ弾む足取りで歩き出した奈理子だったが、
ふと、背後に違和感を覚えた。

……ずるっ。
……ぬるりっ。

小さく、濡れたような音。

(えっ……?)

振り返る。
だが、通りには誰もいない。

(気のせい、かな……?)

再び前を向いて歩き出す。
そのとき――

「“白”の守護者よ」

ぬるりとした低音が、耳元に響いた。

「ひっ……!!」

電柱の影――
そこに、うごめく長身の異形が現れる。

ナメクジウオ男。

その後ろから、ぬるりと地面を滑るように、2体のウズムシ男がにじり寄ってくる。

「こんな時間にひとりとは、用心が足りませんね、ミラクルナイト」

「な、なんでここに……!?」

奈理子は反射的に鞄からアイマスクを取り出す。
だが、すぐに変身するには場所が悪すぎる――

目の前は大通りだが、今は通行人も少なく、路地は暗い。

ナメクジウオ男は、逃げ道をふさぐように歩を進める。

「前回の戦闘――貴様の“構造”はある程度、理解した。
だが、“情動”に関するデータが不足している」

「な、何の話っ……!」

「つまり、“恥じる貴様”をもっと観察しなければならない」

ずるずるずる……

粘液を滴らせたウズムシ男たちが、背後から迫る。

奈理子は意を決して、アイマスクを握りしめた。

「や、やめて……っ!私は……私は逃げない!」

──変身の光が、再び水都に瞬く直前。

ナメクジウオ男は静かに囁いた。

「……では、“覚悟”を、もう一度試そう」

粘液触手が制服スカートに向かって伸びる。

「くっ!」

飛び下がりかわすが、制服スカートは粘液触手に絡め取られてしまった

それでも、奈理子は怯まない。

「ミラクルチェンジ!」

奈理子の凜とした声が路地に響いた。


「ミラクルアイマスク――装着っ!」

奈理子がアイマスクを目元に滑らせた瞬間、
その身体を、水色の光が包み込む!

風に舞うセーラー服が光と共に消え、
白いインナー姿を一瞬さらしたあと――

白と水色を基調とした美しき戦闘衣装、ミラクルナイトがそこに立っていた!

「水都の平和を乱す者は――ミラクルナイトが許しませんっ!」

凜としたポーズを決めるが、表情にはまだわずかな震え。
それを見たナメクジウオ男が、ふっと息を漏らす。

「変身は美しい。だが、何度見ても未熟だ。
貴様が“象徴”である理由……まだ納得できぬな」

「だったら、見せてあげる――!私の覚悟を!!」

ミラクルナイトは即座に構え、
右手を突き出して――

「ミラクルシャインブラスト!!」

水色の光弾が、一直線に飛ぶ!

ウズムシ男の一体に直撃――だが、

「ずるっ……ぐるるっ……」
命中した個体は分裂し、2体に!

「うそっ……!」

「学習していないようだな、“白”よ。分裂を誘発しただけだ」

その隙に、ナメクジウオ男が低く滑るように接近!

「きゃっ――!?」

粘液触手が、スカートに絡みつく

ビリッ――!

「やあぁぁぁっ!!」

制服風の白いスカートが、宙を舞い、
一瞬で夕暮れの空に消えていった。

「また……また、スカート脱がされたぁぁ……!!」

太腿を押さえながら後退するミラクルナイト。
だが、今回は泣き崩れない。

(みんなが見てない今なら、まだ耐えられる……!)

「ウズムシ男たち……っ!」

彼女は咄嗟に手を振り上げ、
「ミラクルアクアティックラプチャー!!」

水の波動が路地に広がり、粘液を押し流すように放射!
3体のウズムシ男が、光と共に弾け飛ぶ!

「ぐぬっ……!」

「やった……消えた……!」

そして、残るはナメクジウオ男ひとり。

彼は、ねっとりと顔を上げ、わずかに――笑った。

「予想以上だ。“光”の使い手として、前回よりは対処力がある」

「えっ……?」

「だが、力と尊厳は別だ」

次の瞬間、触手が飛ぶ!
ミラクルナイトはかわす――

だが、もう一本が回り込み、お尻を軽く叩くようにヒット

「きゃあっ!?な、なにその……いやらしいっ……!」

「羞恥こそ、貴様の“最大の出力低下要因”。
私は、そこを――解析する」

粘液の気配が増していく。

しかし、ミラクルナイトはギリギリで後ろ跳びし、構え直した。

「……わたし、もう前みたいに負けないよ。
スカート脱がされても……!恥ずかしくても……!」

「ならば、実験を続ける価値がある」

戦いは、次なる局面へ。


「君の“羞恥反応”……この時間帯、この路地、
そしてスカートを失った状態。
条件は整っている」

ナメクジウオ男の触手がゆっくりと揺れる。
ミラクルナイトは息を乱しながらも、まだ戦闘態勢を崩していなかった。

「そんな……私の気持ちを、研究材料にしないで……!」

「羞恥は、人間という存在を最も“個体差”として表現するもの。
私はその構造に興味がある。貴様が“なぜ恥じるか”を知りたいのだ」

その冷たい声音が、奈理子の心をざらりと撫でた――

だが。

ピー――ン……ピー――ン……

突如として、路地に警報音が鳴り響く。

《市民の皆様にお知らせいたします――
水都第3ブロック裏通りにて、ミラクルナイトと怪人の戦闘が確認されました。
該当地域への立ち入りはご注意ください――》

「っ……!」

ミラクルナイトが、はっと目を見開いた。

(放送……!誰かが通報してくれた……!)

《なお、現在確認されている敵性存在は1体――
体表に粘液を持ち、触手状の構造を有し、過去にウズムシ型怪人と共に行動していたものと一致――》

「……観察条件が変わる。市民の視線、第三者の介入。
今は、最適とは言い難い」

ナメクジウオ男が顔を上げる。
空に、雨上がりの夕焼けが差し始めていた。

「ミラクルナイト。貴様は……“自分が見られている”という条件でこそ、崩れる。
次回は、そこで“実験”を行おう」

ぬるり、と地面を滑るように後退しながら、ナメクジウオ男は闇へと紛れていった。

「ま、待って……まだ……っ!」

ミラクルナイトが手を伸ばすが、空を切るばかりだった。

……静寂が戻る。

残されたのは、変身したまま、スカートを失ったヒロインだけだった。

「ふぅ……助かった……けど……っ、また……!」

夕陽に照らされながら、
ミラクルナイトは真っ赤な顔で太腿を押さえ、小さくうずくまる。

そのとき――

「奈理子さん!?今の放送、聞いて……!」

橙のドレスが、風と共に現れた。

ドリームキャンディ。

「寧々ちゃん……!」

「もう、大丈夫です。すぐ応援呼びますから。
でも……また、脱がされたんですね」

「言わないで……!」


「……じゃあ、変身、解除……」

ミラクルナイトの光が静かにほどけていく。
白と水色の衣装が淡く消え、残されたのは、制服姿――
いや、スカートのない、水色のセーラー服と白いショーツだけの奈理子だった。

「うぅぅぅ……スカート……また……」

ドリームキャンディも変身を解き、
紺色のセーラー服に戻った寧々が呆れ顔で奈理子の白いショーツを見る。

「変身前も脱がされていたんですか?」

「うん……そうだった……」

奈理子は弱々しく微笑む。
だが、その唇は小さく震えていた。落ちていた制服スカートを拾い、身に着ける。

歩き出してすぐ、人気の少ない商店街を通る。

静かな夜風がふたりの髪を揺らす中、
奈理子はぽつりと呟いた。

「また、私……何もできなかったなぁ……
スカート脱がされて、見られて、ピンチになって……寧々ちゃんに助けられて……
ほんと、守護神のくせに、こんなのばっかりだよね……」

「でも……」

寧々は少しだけ口調を強くして、言った。

「でも、逃げませんでしたよね、奈理子さん」

奈理子がはっと顔を上げる。

「変身して、立ち向かって、光弾も技も使って、ちゃんとウズムシ男は消した。
ナメクジウオ男だって、今回は逃げました。
それって、前よりずっと前進してるってことじゃないですか?」

「寧々ちゃん……」

「恥ずかしいのは、まあ……奈理子さんだから、しかたないとして」

「ちょっ、どういう意味それっ!?」

ふたりは顔を見合わせ、くすっと笑った。

「でも、ひとつだけ思ったんです。
やっぱり、ミラクルナイトは、奈理子さんじゃなきゃダメなんです」

「……え?」

「たとえスカート脱がされても、最後にちゃんと“立ち上がる”から。
それって、私には……きっとできないから」

奈理子は静かに立ち止まり、
少しだけ、寧々の腕を握った。

「ありがとう……寧々ちゃん。
私、ちょっとだけ、勇気もらえた」

「それ、明日にはまた忘れてそうですけどね。
次の戦いでもスカート脱がされるでしょうし」

「やめてぇぇぇぇえええっ!!」

ふたりの笑い声が、静かな水都の夜にふわりと溶けていく。


@suijo_fanclub
【速報】本日18:42頃、水都第3ブロック裏通りにてミラクルナイトが怪人と交戦!
戦闘中スカートを剥ぎ取られた模様!現場写真(光加工済)→ #ミラナイ #奈理子ちゃん #白の守護神

@uwasa_suito
なんで毎回スカート脱がされてるの!?!?!?!?!?!?
ミラクルナイトかわいそう可愛い最高!!!! #パンチラヒロイン

@nariko_love27
これガチで奈理子ちゃんだよね!?スカートないのに戦ってるとか天使かよ……

@nariko_shrine
白い純真がまた街を救ってしまった……この街に生まれてよかった……

@風間の巫女ファン
セイクリッドウインド姐さんはいつ出てくるんですか!?そろそろ風の刃で全部吹っ飛ばして!

@Nene_only
最後に助けに入った中学生の子、あれがドリームキャンディ?マジかっこいい……

SNSは今夜も大盛り上がり。
“水都の守護神”というより“水都のアイドル”として、奈理子=ミラクルナイトの評価は天井知らずに高まっていた。

「興味深い反応だ」

仄暗い排水路の奥。
雨水の滴る天井の下、ナメクジウオ男はモニターに映るSNSのコメント群を淡々とスクロールしていた。

「羞恥に対する耐性……よりも、市民の反応が対象の精神構造にどう作用するか
観察対象を“偶像”とみなす集団心理……これは、実験に利用できる」

彼は無機質な声で呟きながら、次の行動を記録端末に打ち込む。

【次回実験地:水都中央広場 噴水エリア】

「人通りが多く、夜間も照明あり。
イベントの予定なし。“注目される場”としては最適。
加えて、地形に高低差あり。拘束と視線誘導が容易……」

粘液の滴る指が、静かに画面を閉じる。

「白き偶像よ。
次こそ、貴様が最も“壊れやすい環境”で――
羞恥と歓声に包まれながら、心の構造を露わにしてもらおう」

闇の中で、うねるような影が蠢いた。

第183話へつづく)