ミラクルナイト☆第60話
暗い、煙たいアジトの奥で、タコ男の異常な欲望が炸裂していた。ブラックナイトは慚愧の色を顔に浮かべ、四つん這いになっていた。タコ男はブラックナイトを後ろから責める。彼女の左足には、白いショーツが軽やかに絡まっている。アジトの隅には、もう一人のブラックナイトが裸で横たわっており、その姿はまるで1年前の奈理子そのものだった。
カオリは隅でその光景を静かに眺めていたが、心の中ではタコ男の歪んだロリコン趣味に怒りと嫌悪を覚えていた。彼女にとって、研究者としての教授=タコ男は尊敬する部分もあったが、この一連の行動は困ったものだった。
「教授、勅使河原が何か企んでいるようです」
とカオリが告げる。
「彼がの手下たちに指示を出して、ミラクルナイトを執拗に狙っています」
タコ男は一瞬、カオリの顔を見て考えた後、無表情で
「放っておけ」
と答えた。そして、続けて
「勅使河原の手下がミラクルナイトを襲っていることは、臨床実験だ。確かに、今の弱いミラクルナイトは薬の効果を試すには良い相手だろう」
勅使河原からもタコ男に薬の成果の報告が上がっているようだった。
カオリの心の中の不安は消えるどころか、さらに増していった。
タコ男は立ち上がり、伸びをして言った。
「ブラックナイトには飽きた。そろそろ今のミラクルナイトの体を楽しむとしようか」
カオリは驚きの表情を浮かべながら、タコ男の決意を食い止めようとした。
「でも、ライムは教授がミラクルナイトに手を出さないことを条件に、ブラックナイトを教授のものとして差し出しているのです。ライムが怒るかもしれません」
しかし、タコ男はカオリの言葉を無視し、悪しき微笑みを浮かべながら言った。
「1年でミラクルナイトの体がどれほど成長したか、それを確かめるのが楽しみだ」
カオリは深い憂慮を抱えながら、タコ男の背中を眺めていた。彼の欲望はとどまるところを知らない。そして、今後の戦いがどれほど困難になるのかを予感していた。
水都中学の教室は、午後の柔らかな光が窓を通して差し込み、生徒たちの席に温もりを届けていた。校舎の四隅で響く賑やかな声や足音が、あのカブトムシ男との出来事が、もう遠い昔のことであったかのように感じさせた。
奈理子は黒板に目を向けていたが、実際のところ、彼女の心はどこか遠くをさまよっていた。アリ男に敗れた朝、裸で放置された体育倉庫のことなど、体を張ってミラクルナイトとして街の平和をも守り続けていることを実感したクラスメイトたちは、彼女を新しい目で見るようになった。以前の冷たさや遠慮がなくなり、彼女は再びクラスの中心に返り咲いていた。それにもかかわらず、彼女の心の中には一つの影が横たわっていた。それは、ライムとの関係だった。
クラスメイトの間で楽しそうに話す奈理子だが、ライムの姿を学校の廊下や教室で見かけるたび、彼女の心は締め付けられるような感覚に襲われていた。奈理子抱き枕イベントのあの日、ライムは彼女の前に来てくれた。しかし、学校では、彼は奈理子を避けるようになっていた。
奈理子は自分に言い聞かせた。
「期末テストが終わったら、ライムとちゃんと話をしよう」
と。しかし、彼女自身も知っていた。その約束は、奈理子の心の中でしか存在していないものであり、実際には彼女にライムに声を掛ける勇気がまだ足りなかったのだ。
昼休みのチャイムが鳴り響く中、奈理子はただ静かに窓の外を見つめていた。ライムとの関係、未来の戦い、そして自分自身の心の中での戦い。彼女の眼差しの先には、まだ見えない答えが広がっていた。
校舎の一室、3年A組の教室。1日の最後のホームルームが終った。時計の秒針がゆっくりと進む音が静かに響く中で下校の準備をしていた奈理子たが、その静寂は突然、校内放送のチャイムによって打ち破られた。短い前奏の後、アナウンスが流れてくる。
「緊急情報です。現在、商店街にタコ男が出現しています。生徒の皆さんは、絶対に近づかないようにしてください。」
教室の空気が一変する。心地よいアフタースクールのざわつきが、緊張と重苦しさで満ちた。その中心にいた奈理子の顔が、一瞬で真っ青に変わった。彼女の心中を知る者たちは、その苦痛の背景にある彼女の過去と、タコ男との関係を理解していた。彼の触手の冷たさ、そしてその残酷な記憶が、彼女の心を締め付けていく。ミラクルナイトの力ではタコ男には勝てない。
だが、奈理子は心の中で決意を固めた。
「またタコ男に捕まってしまうかもしれない…。でも、市民を守らなきゃ。」
彼女が椅子を引いて立ち上がると、教室中の生徒たちが彼女を見つめた。奈理子の決意を静かに支えるような視線、そして彼女の戦いを心から応援する瞳たち。しかし、彼女の足元には恐怖も混ざっていた。彼女が一度も勝てなかったタコ男に立ち向かうことの重さを、皆が感じていたからだ。
奈理子は深呼吸を一つ。そして、女子トイレへと足を運んだ。その後、空へ舞い上がるミラクルナイトの姿が、教室の窓から見えた。彼女の姿を見送るクラスメイトたちの声援が、校舎中に響き渡る。
「奈理子、頑張れ!」
「負けるなよ、ミラクルナイト!」
しかし、1年C組の教室では、ライムが窓から外を見ていた。彼女の瞳には、他の生徒たちとは異なる、冷めた輝きが宿っていた。
水色の空に映えるミラクルナイトの姿。商店街上空へと現れるや、彼女は言葉もなく、掌から繰り出される水色の光をタコ男に向けて放った。しかし、その光は容易くタコ男の身体を貫通することができず、瞬時に消えてしまった。
商店街の人々は、ミラクルナイトの登場に歓声を上げたが、その中には不安や心配の色も混ざっていた。
「奈理子ちゃん、無理するなよ」
「奈理子ちゃん、危ないぞ」
と、慈しむような声が響き渡った。タコ男との過去の戦いで、彼女がどれほど苦しんだのかを知る商店街の人々の心は、彼女の勝利を祈りながらも、彼女を心から心配していた。
ミラクルナイト自身も、タコ男と真正面から戦えば勝つことは難しいと知っていた。そこで、彼女は新たな策を試すことを決意。上空へと舞い上がり、両手を高々と掲げ、リボンストライクを繰り出そうとした。水色の輝きが彼女の掌を照らし、その輝きが強くなる中、人々の期待も高まっていた。
だが、その瞬間、タコ男がら放出された黒墨がミラクルナイトに直撃。白いコスチュームが黒く染まりながら、彼女は商店街の真ん中に墜落した。煙の中、タコ男の低く冷たい笑い声が響き渡った。
「久しぶりの生のミラクルナイトの体をたっぷり楽しませてもらうとするか」
と言いながら、ミラクルナイトの方へと触手を伸ばしていった。
「いや!」
と声を上げるミラクルナイト。その触手に捕まると、犯されてしまう。彼女は恐怖の中、全力で触手を振り払おうとするものの、触手の吸盤が肌の露出している二の腕と太股にしっかりと吸着してしまった。
「やめて!近寄らないで!」
彼女の涙声が続く。その声が、商店街全体に響き渡る。しかしタコ男は彼女の声を聞く耳を持たず、彼女の四肢を触手で掴んで高々と持ち上げた。ミラクルナイトの抵抗も空しく、彼女の体が開かれ、水色のショーツが露わになると、タコ男は悪意に満ちた目で彼女を観察した。
「見ないで…」
と、ミラクルナイトの声はか細くなっていった。
「美味そうな体に成長したな、ミラクルナイト」
とタコ男が低く笑うと、彼の触手が更にミラクルナイトの体を這いまわり始めた。
「うぅぅ…」
と悲しい喘ぎを漏らすミラクルナイト。
商店街の人々がミラクルナイトを助けるためにタコ男に向かって物を投げ入れていたが、タコ男には何の効果もなかった。彼女の頬を伝う涙、彼女の瞳に映る絶望。
その瞬間、
「奈理子さんを苛めるのはやめなさい!」
という力強い声が響き渡ると、ミラクルナイトの助けとなるべく、ドリームキャンディが現れた。
緊迫感が満ちていた商店街。タコ男に捕らえられたミラクルナイトの姿を見てドリームキャンディは愕然とした。タコ男の触手がミラクルナイト、本名・奈理子の身体を拘束していた。夕日の中、ミラクルナイトの涙が輝き、その悲しむ瞳は人々の心を打つものがあった。彼女のブラウスとショーツに侵入する触手の意図は、目の前の全てを見るドリームキャンディにも理解されていた。
「奈理子さんを離しなさい!」
と叫び、ドリームキャンディは特別な武器、キャンディチェーンを振り上げた。しかし、その瞬間、奈理子の口を責めていた触手が素早く動きドリームキャンディを弾き飛ばした。彼女は電柱に背中を打ちつけることとなった。その衝撃の強さで電柱は半分に裂け、ドリームキャンディは意識を保ったまま、身体のコントロールができずに地面に倒れていた。
タコ男の皮肉っぽい声で
「子供は引っ込んでろ」
という言葉が響く。タコ男の許容範囲には小学生が入っていなかったことが明らかにされた。その後、ミラクルナイトはさらに激しく責められ、彼女の姿は人々の心を苦しめていた。
泣きながらもミラクルナイトを守ることができないドリームキャンディ。そこに、ぬるりとした音を立てて、全身緑色の怪人、スライム男が現れた。彼がこの場面にどんな影響をもたらすのか、それはまだ誰にもわからない。
商店街は通常、日々の喧騒に包まれる場所。しかし、その日の空気は異なっていた。突如、街の中心にスライム男が姿を現すと、人々のざわめきが高まった。
その中には、美しい少女ミラクルナイトの姿も。彼女は瞳をわずかに開き、スライム男の方を向いて
「ライム…」
と小さく呟くと、そのまま意識を失ってしまった。
スライム男はその場面に激怒し、
「話が違う」
と声を荒げてタコ男に詰め寄った。
「奈理子に手を出さないという条件で、ブラックナイトを差し出したはずだ。」
タコ男はにこやかに答えた。
「ブラックナイトの魅力には少しだけ飽きてきた。たまには、本物のミラクルナイトと遊んでようと思ってな。」
「今のミラクルナイトで作ったブラックナイトを差し出す。奈理子を返してくれ。」とスライム男は切実に迫った。
タコ男は一瞬の沈黙の後、考え込んだ。そして、
「1年前の前のミラクルナイトで作ったブラックナイトと、今のミラクルナイトで作ったブラックナイトを並べた楽しむのも面白そうだな」
と独り言のように呟き、
「いいだろう、ミラクルナイトを返してやる」
と、彼女の身体をスライム男の方へと放り投げた。
スライム男は素早く彼女を受け止めた。ミラクルナイトの姿は乱れ、そしてその弱々しい姿に、スライム男の心は切なくなった。
「ミラクルナイトがそんなに気に入ったのか?」
と、タコ男は挑発するように言った。しかし、スライム男は無言で、ミラクルナイトを抱え、その場を去った。
商店街は再び静寂に包まれ、残された人々はただ驚きと戸惑いの中で立ち尽くしていた。その中にいたドリームキャンディもまた、事件の全容を知らずに困惑していた。しかし、一つだけ明確だったことがあった。それは、スライム男、つまりライムが、奈理子の彼氏であり、彼女を助けたという事実だった。
水都公園の森の奥深く、夢のような静寂の中で、奇妙な一幕が繰り広げられていた。ミラクルナイトの意識は遠く、彼女の裸体は緑色のスライムに包まれ、まるで別の世界へと誘われるかのようだった。スライム男が彼女を優しく包み込んでいた。
その裸の姿は、奈理子とミラクルナイトとの識別がつかない。しかし、彼女の髪にミラクルナイトの白いリボンが付いているためミラクルナイトだと分かる。
で彼女の身体は時折ビクンと小さな動きを見せていた。懐かしいスライムの感触により、ミラクルナイトの目がゆっくりと開いた。恥ずかしい裸の状態よりも、彼女はスライム男に守られている安心感に包まれていた。
しかし、その目が側に置かれた彼女の変身時のコスチュームやその他のアイテム、そして木の枝に干された水色のジュニアブラとショーツにに留まった時、その安心は瞬く間に恥ずかしさへと変わってしまった。
「ライム…、これ…恥ずかしいよ」
彼女は微かに赤らんだ顔でスライム男に呼びかけた。
そして、彼の優しい声が響いた。
「もう大丈夫か?」
「うん」
と彼女は答え、やがてスライムから放たれると、変身を解除し、セーラー服姿の奈理子として再び姿を現した。
「ライム、君も元の姿に戻って…」
彼女の願いに応えて、スライム男はライムの姿へと変わった。
「ありがとう、ライム…」
と奈理子は感謝の言葉を述べ、彼女は木の枝からブラとショーツを取り、ショーツがまだ湿っていることに気づく。替えのショーツが入ったカバンは学校に置いたままだった。ショーツを穿くかどうかの迷いを感じながら、
「私、ライムのことが好きだよ」
と告げた。ライムは瞳を奈理子に落とし、
「俺もだ」
と深く返した。突然、奈理子の顔に影が落ちた。
「カブトムシ男のこと、ごめんなさい」
ブラとショーツを手にしたまま彼女は頭を深く下げた。しかし、ライムは言葉を交わさず彼女を力強く抱きしめ、その唇に熱いキスを落とした。
(第61話へつづく)
(あとがき)













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