ミラクルナイト☆第115話
「うっずまっきさん!」と、渦巻きのような声が空気を切り裂いた。声の主はポインセチア女の赤井緑、彼女の声に応えるのは渦巻、組織の策略家だ。
「何ですか、緑さん?」
と渦巻が問いかけると、緑は朗らかに答えた。
「私、パートナーが欲しいの。シオマネキ女にはウミウシ男がいて、サソリ女にはサボテン男。イチジク女にだってフジツボ男がいたでしょう?」
彼女の眼は期待に満ちていた。
「貴方にはアブラムシ男を付けたではないですか」
と渦巻が冷静に指摘する。だがポインセチア女と共に出撃したアブラムシ男は、呆気なく敗北してしまっていた。緑は不満げに
「もっと強いパートナーがいいの。できればメロン男様みたいなイケメンがいいわ」
と目を輝かせた。
渦巻は苦笑いを浮かべ、
「緑さんは一人では危なっかしいから、相方を考えておきます。しかし、メロン男は危険な男です。あまり近づかないように」
と忠告した。しかし、緑のメロン男様への憧れは強く、
「メロン男様は強くて格好良くて素敵なお方よ。私達の陣営にはメロン男様みたいな素敵な人はいないの?」
と渦巻に迫った。
渦巻は真剣な面持ちで、
「重要な事なのでもう一度言います。メロン男には近づかないように。あのシオマネキ女の塩田渚ですら危うくメロン男に取り込まれそうになったんですよ!」
と警告を強めた。
「あの塩田渚が…」
と緑は呟いた。シオマネキ女の渚は、地味で根暗な女だった。
「あの地味な渚まで惹かれるとは、メロン男様は凄い!」
と、緑はメロン男への思いをより一層強めるのだった。
渦巻はやれやれと溜息をつき、ポインセチア女の次のパートナーとしてガガンボ男を組み合わせてみるかと思案していた。
クリスマスの賑わいが過ぎ去り、新年を迎える準備で水都市は忙しない動きを見せていた。年末年始の過ごし方を計画する人々の中で、凜は巫女として神社の大晦日の大祓いや新年の初詣の準備に奔走していた。同時に、奈理子は受験生としての最後の冬休みを迎え、受験の最終追い込みに集中していた。
このような中、小学六年生の寧々は、地域で開催される「年末の温もりプロジェクト」への参加を決めた。このプロジェクトは、年末を一人で過ごす高齢者の家を訪れ、彼らの話し相手になったり、大掃除を手伝うというものだった。また、プロジェクトの一環として、寧々と町内の子どもたちは公民館でカウントダウンイベントを計画した。手作りの飾りつけで会場を彩り、地域の高齢者や一人暮らしの人々を招待することで、多世代が一緒に年末の寒さを忘れ、温かなひと時を過ごすのだ。
寧々にとって、このイベントは冬休みでも隆と堂々と会える貴重な機会でもあった。一石二鳥の計画に心躍らせていた彼女だが、ガガンボ男とポインセチア女が町内に忍び寄る危険をまだ知らない。奈理子や凜がそれぞれの多忙を極める中、小学六年生の寧々が迫り来る困難にどう立ち向かうかが、この年末の大きな試練となる。
公民館でカウントダウンイベントの準備に追われる隆は、不満を漏らした。
「何で冬休みにこんなことをしなきゃいけないんだよ。大晦日はコタツで紅白を見ながら年越し蕎麦だろ。」
その言葉に、寧々は優しくたしなめる。
「みんながこのイベントで喜んでくれるんだから、ちょっとくらい頑張りましょうよ。」
隆はそれでも納得がいかない様子で、
「俺と一緒に新年を迎えたいなら、こんな回りくどいことせずに、素直に言えばいいのに。」
とつぶやいた。
寧々は少し戸惑いながらも、隆に真っ直ぐな眼差しを向けて尋ねた。
「素直に言ったら、隆は一緒にいてくれるの?」
隆は、苦笑いしながら答えた。
「いや、さすがに小学生が夜中に出かけるのは、親も反対するだろうよ。」
寧々は、それに対して
「それなら、町内会のイベントを口実にするしかないじゃない」
と反論した。隆は得意げに
「やっぱり、俺と一緒に新年を迎えるために、このイベントに俺を巻き込んだんだな。」
と言った。
寧々はその言葉に赤面し、隆との会話に素直に応じたことを少し後悔した。
「隆と関係なく、町のためになることをしようと思っただけよ!」
と強調するが、隆はからかうように
「素直じゃないな、寧々は。なんでいつもすぐ怒るんだ?」
と言う。寧々も負けじと
「隆こそ、なんでいつもそんなに自信満々なのよ?」
と返す。隆は自信満々に
「寧々が俺を好きなことは、寧々の態度を見れば丸わかりだろ」
と言い放った。寧々は怒り心頭に
「バカ!隆なんか嫌いだわ」
とそっぽを向いた。
そんな二人のやり取りも、突如商店街に現れた赤と緑の美しい姿の怪人、ポインセチア女の出現によって中断された。
商店街は突如現れたポインセチア女の美しき光景に騒然となっていたが、彼女自身は内心で溜息をついていた。
「ガガンボって、見た目からしても弱そう…。こんなのが私のパートナーだなんて…」
と思いながら、メロン男の勇ましい姿を思い出していた。メロン男は、メロンの皮のような鎧をまとい、右手には剣、左手には盾を構えた立派な姿。その比べ物にならないほど、ガガンボ男は細身で手足が長く、どこか頼りなさそうだった。
それでも、ポインセチア女は前向きに考え直す。
「クリスマスは終わったけれど、年末年始もこのポインセチア女は健在よ!」
と宣言し、商店街に彩りを添えるために、美しい花を咲かせ始めた。
「街を美しく飾り、清々しい気持ちで年の瀬を迎えましょう」
と、彼女の魔法で一面のポインセチアガーデンが現れる。だが、その美しい花々には見えない毒が含まれており、逃げ惑う人々が次々と倒れていった。
その光景を見て、商店街の占い師である鈴は逡巡する。このままでは商店街が大混乱に陥ってしまう。ヒメバチ女に変身して戦うべきかどうか。ヒメバチ女には特殊な能力はあるものの、戦闘力はそれほど高くなく、正体が知られるリスクもあった。迷いながらも決断を下せずにいる鈴をよそに、
「またポインセチア女?クリスマスはもう終わったんだよ。さっさと帰りなさい!」
と言って、小学生戦士ドリームキャンディが勇敢にも商店街に立ちはだかる。
「あら、キャンディちゃん。今日のあなたの相手は私じゃないわ」
とポインセチア女が微笑みながら言うと、その瞬間、空からガガンボ男が降り立つ。
「ドリームキャンディ、今日はこのガガンボ男様が相手だ」
とガガンボ男が宣言。
「見た目はアレだけど、まだ子供のキャンディちゃんにはぴったりの相手ね」
とポインセチア女が冷ややかに笑う。空を飛ぶ敵には苦手意識を持つドリームキャンディだが、彼女は勇敢にキャンディチェーンを握りしめ、戦いに挑もうとする。
「えい!」
と力強くキャンディチェーンを振り下ろすドリームキャンディ。しかし、その勇ましい一撃も空を舞うガガンボ男には届かず、彼は軽やかにチェーンの射程を避けてさらに高く舞い上がる。地上からは、その動きを捉えることすら困難だった。ドリームキャンディは顔を上げ、空中の敵を追うが、ガガンボ男の攻撃は容赦なく彼女に襲い掛かる。
ガガンボ男は、独特の羽音を響かせながら、ドリームキャンディに向かって超音波を放つ。ドリームキャンディは必死に避けるが、地上にいる彼女には反撃の余地がない。一方で、ポインセチア女はその光景を見て、愉快そうに大笑いする。
「あら、キャンディちゃん、空は飛べないの?ガガンボ男には敵わないわね!」
と彼女は嘲笑い、ドリームキャンディの苦戦を楽しんでいるかのようだ。
ドリームキャンディは、ガガンボ男の超音波と、隙をついて繰り出してくる長い腕脚による打撃攻撃に焦りを感じ始める。戦いの舞台が空である限り、彼女のキャンディチェーンは無力だ。地上で精一杯回避する彼女の姿は、まるで獲物を追い詰めるガガンボ男にとって格好の的だった。
「うまくかわせるかな?」
ガガンボ男は挑発するように更に攻撃の手を強める。ドリームキャンディは何とか回避しながらも、
「このままじゃ…!」
という絶体絶命のピンチを迎えていた。彼女は必死に考えるが、空中の敵にどう対抗すればいいのか、解決策は見えてこない。このままでは、彼女の敗北は時間の問題だった。
商店街はポインセチアガーデンによって覆われ、赤と緑の美しい花の海が広がっていたが、その美しさの裏には危険が潜んでいる。ポインセチア女とガガンボ男の襲撃により、平和だった商店街は一変し、人々の笑顔は不安に変わっていた。その中で、小学生戦士ドリームキャンディが空からの攻撃に苦戦している。
「何やってんのよ、ドリームキャンディ…」
占い師の鈴は、遠くから戦いを見守りながら、心配そうにつぶやいた。ガガンボ男の攻撃は狂ったようにドリームキャンディに襲い掛かるが、彼女は空を飛べないため、彼の攻撃に対抗する術がない。鈴は
「奈理子がいてくれたら…」
と心の中で思う。ミラクルナイトならば、空を飛ぶ相手にも立ち向かうことができたはずだ。
その時、ドリームキャンディから悲鳴が上がる。
「きゃ~!」
鈴の心臓が跳ねる。その声を聞いて、ポインセチア女はさらに高笑いをする。
「キャンディちゃん、頑張って〜」
と嘲笑う彼女の声が、商店街に響き渡る。
鈴は戦いたくはなかった。しかし、彼女もこの商店街の一員だ。もはや見過ごすわけにはいかない。
「私も商店街の住民。やるしかないか。」
と心に決める鈴は、人目を避けるため人気のない路地へと身を移し、ヒメバチ女へと変身するための儀式を始める。鈴の決意が、冷たい冬の空気を切り裂く。
商店街は一瞬の静寂に包まれた。空を支配するガガンボ男の優位が、一転して揺らぐ瞬間だった。
「この姿になるのは久しぶりね。なかなか私って美形よね」
と、舞い上がったヒメバチ女は自身の姿を確認しながらつぶやいた。その姿は、まさに戦いの女神。
一方、ドリームキャンディは、ガガンボ男の長く細い手足に振り回され、苦戦を強いられていた。彼女が反撃しようとする度に、ガガンボ男はその繊細な翅で軽やかに上空へと舞い上がり、容易く回避する。
「貧弱なガガンボのクセに調子に乗らないでよね!」
と、ヒメバチ女は高らかに宣言し、戦場へと舞い降りた。
その突然の登場に、商店街は再びざわめき始める。秘密裏に活動していた占い師鈴がヒメバチ女であることを、知る者は誰もいなかった。ドリームキャンディだけが、その正体を知る唯一の存在。
「あれは奈理子さんの友達の…」
と彼女は驚きと共に一縷の希望を見出した。
「蜂?」
とポインセチア女は困惑し、ヒメバチ女が敵か味方かを見極めかねていた。一方、ガガンボ男は
「お前は、カオリ派の…」
と戸惑いを隠せない。彼ら勅使河原の手下とは異なり、ヒメバチ女は別系統のカオリと繋がる怪人だった。
「アンタ達が何の目的でこんなことするのか知らないけど、商店街を目茶苦茶にされたら迷惑なのよ!」
ヒメバチ女の言葉は、戦いの意志を示していた。ゆっくりとフラフラ舞うガガンボ男とは異なり、彼女の飛行能力は圧倒的で、
「その貧弱なガガンボの体で私に勝てると思う?」
と、挑発するかのようにガガンボ男に迫った。戦いの空気が、商店街に濃厚に漂った。
「ひっ!」
ガガンボ男の逃げ足は速かったが、そのフラフラとした飛行は決して安定しているとは言えず、ヒメバチ女に捕まるのは時間の問題だった。空からの攻撃で一時はドリームキャンディを圧倒していたガガンボ男も、より高い飛翔能力を持つヒメバチ女の前では無力であることが明らかになる。
ポインセチア女は、一瞬だけガガンボ男の活躍に期待を寄せていたが、その期待はすぐに裏切られた。
「しっかりしなさい!」
と彼女が叱咤するも、ヒメバチ女は
「アンタなんか、毒針を使うまでもないわ!」
と叫びながら、ガガンボ男に向かって体当たりを決行する。その一撃で、ガガンボ男の脆い体はバラバラに砕け散った。その光景に、ポインセチア女は
「弱すぎる…」
と呆然とし、見守る商店街の人々は大歓声を上げた。
ヒメバチ女は勝利を確信し、
「ガガンボ男は始末したから、あとは任せたわ!」
とドリームキャンディに声を掛けると、周囲からの歓声に手を振りながら去っていった。
「あ、行っちゃった…」
とドリームキャンディが寂しげに見送る。
ポインセチア女は、ガガンボ男の敗北を受けて、自らがドリームキャンディとの対決を引き受けることに。
「結局、キャンディちゃんの相手は私がするのか…。でも、キャンディちゃんはもう、ボロボロね」
と言いながら、明らかにダメージを受けたドリームキャンディを見る。
しかし、ドリームキャンディは負けじと
「まだ、私は戦えるわ!」
と力強く宣言する。ポインセチア女は、その決意を受けて立ち、
「じゃ、キャンディちゃん、始めましょうか」
と言い、二人の戦いが始まる直前、商店街を覆うポインセチアガーデンで、緊張が一層高まる。
商店街にガガンボ男とポインセチア女が出現した報を受け、駆けつけたミラクルナイトは目の前の光景に心を痛めた。かつて彼女が幼い頃から慣れ親しんだ商店街が、毒を持つポインセチアの赤い花と緑の葉で一面に覆われていた。彼女自身はその毒にある程度の耐性があるものの、そうではない多くの市民はポインセチアガーデンの外へと避難していた。
「奈理子ちゃん、なんとかしてくれー!」
「奈理子ちゃん、商店街をもとに戻してくれー!」
商店街の人々は、彼女が現れたことで希望の光を見出し、ミラクルナイトへと声をかける。その声援に応えるように、ミラクルナイトは毒に侵された商店街を一目見て、すぐに行動を開始した。
「キャンディ!」
息絶え絶えのドリームキャンディを見つけた奈理子は、彼女の元へ急ぐ。小学生ながらも、ドリームキャンディは強い戦士だ。ミラクルナイトが思い至ったのは、なぜ彼女がこのように瀕死の状態にあるのか、という疑問だった。
「ガガンボ男は?」
と問うミラクルナイトの問いかけに、ドリームキャンディは
「ガガンボ男はヒメバチ女が倒してくれました…」
と力なく答える。
ミラクルナイトが遠く取り巻く商店街の人々の中から鈴を探すと、鈴はミラクルナイトに向かってVサインをしていた。
「鈴さん、ありがとう」
遠くで見守る鈴に、奈理子は感謝の意を示す。しかし、ドリームキャンディは
「私はその前にガガンボ男にやられたダメージで…」
と言い、崩れ落ちる。ミラクルナイトは彼女の身体を支え、
「私が戦うから、キャンディはその間に回復して」
と励ますが、ドリームキャンディは先日の戦いでポインセチア女に奈理子が敗北したことを思い出す。
「奈理子さん、無理しないで。もうすぐ、セイクリッドウインドが来るかもしれないし…」
とドリームキャンディが声をかけるも、ミラクルナイトは
「ナメコ姫が来るまで時間を稼ぐことくらいは私にもできるわ」
とポインセチア女に向かって歩み出す。そのとき、風が彼女のプリーツスカートをはためかせ、奈理子の水色のショーツが露わになる。ドリームキャンディは、その無防備な姿に弱さを感じつつも、
「奈理子さん、頑張って」
と心の中で彼女を応援する。
ポインセチア女はミラクルナイトの立ち姿に目を留め、
「私の心は燃えているわ。奈理子ちゃんの可愛いスカートも燃やし尽くしそう」
と挑発的に舌を舐め回す。その言葉にも動じないミラクルナイトだが、内心では恐怖と戦っていた。彼女は決意を新たにし、ポインセチア女に立ち向かう準備を整える。
「奈理子ちゃん、ポインセチア女なんかやっつけちゃえー!」
という商店街の人々からの声援が、ミラクルナイトの背中を押す。彼女は深呼吸を一つし、毒に満ちた赤と緑の花々の間を縫うように前進を始める。
対峙するポインセチア女は、その美しい外見とは裏腹に、毒を操る危険な能力を持っていた。しかしミラクルナイトは、彼女が持つ毒に対する耐性と、これまで培ってきた経験を武器に戦いに挑む。
「ポインセチア女、これ以上商店街を荒らすのは許さないわ!」
とミラクルナイトが力強く宣言すると、ポインセチア女はくっと笑い、
「奈理子ちゃん、今日もたっぷり虐めてあげる」
と挑発する。
しかしミラクルナイトは揺るがず、彼女の攻撃を一つ一つかわしながら、ポインセチア女へのカウンターを狙う。戦いは緊迫し、商店街の人々は息をのんで見守る。
その時、不意に奈理子の足元にポインセチアの花が生え、彼女を捕らえようとする。しかし奈理子は機敏に飛び退き、その隙に
「ミラクルシャインブラスト!」
と叫び、水色の光弾をポインセチア女に放つ。ポインセチア女はそれをかわすも、ミラクルナイトの攻撃の勢いは増すばかり。
ミラクルナイトの冷静さと決意が、徐々に戦いの流れを彼女に引き寄せ始めていた。商店街の人々の声援も力となり、ミラクルナイトはポインセチア女に対して有効な一撃を放つチャンスをうかがう。そしてついに、ミラクルナイトはポインセチア女の隙を突き、決定的な一撃を加える機会を得る。商店街の平和を守るため、そして友人たちを守るため、ミラクルナイトは全力を込めた攻撃を繰り出す準備を整えた。
「いけー!奈理子ちゃん!!」
商店街は歓声に包まれていた。奈理子、ミラクルナイトとしての壮絶な戦いが、人々の心を揺さぶっていた。しかし、ポインセチア女はただ静かに、余裕綽々の笑みを浮かべていた。
「奈理子ちゃん、覚悟して。ここは私の領域、ポインセチアガーデンよ。逃げ場はないわ。」
ポインセチア女がそう言い放つと、彼女の言葉を証明するかのように、地面から伸びるポインセチアの茎がミラクルナイトの足をぐっと掴んだ。
「あッ!」
という驚きの声を上げるミラクルナイト。まるで生きているかのように動く茎は、彼女の動きを一瞬で封じ込める。
「いや…」
ポインセチアの茎に手足を拘束され怯えるミラクルナイト。
「奈理子ちゃん、今の姿も素敵だけれど、もっと魅力的にしてあげるわ。」
ポインセチア女はそう言いながら、ポインセチアの葉をミラクルナイトのコスチュームに向けて振るった。葉は鋭利な刃と化し、ミラクルナイトの衣服を細切れにした。瞬く間に、彼女はブラとショーツだけにされてしまう。
「見て、奈理子ちゃん。やっぱり、激弱マゾっ子ヒロインの奈理子ちゃんにはその姿がお似合いね」
ポインセチア女の笑い声が、商店街に響き渡る。
ミラクルナイトはドリームキャンディを見る。ドリームキャンディの体力は回復していない。どんなに辱めを受けようと、ミラクルナイトはまだ諦めるわけにはいかなかった。
「まだ終わっていないわ!ミラクルパワー!」
彼女の身体が再び水色の光に包まれ、束縛から解放された。しかし、その自由も束の間だった。ミラクルナイトの足元は覚束ない。体力を消耗するミラクルパワーだが、理由はそれだけではなかった。コスチュームを失ったことで、ミラクルナイトは毒に対する耐性が弱まったのだ。
ポインセチア女は冷静に
「奈理子ちゃん、どんなに頑張っても無駄よ。ここは私の庭ポインセチアガーデン。ポインセチアは無限に生えてくるの。」
と嘲笑う。
「奈理子さん、逃げて!」
ドリームキャンディの励ましも空しく、ミラクルナイトは再び、避けられない運命に直面していた。
「あぁぁ…」
再び捕らえられたミラクルナイトの絶望の声が、ポインセチアガーデンに虚しく響く。
再度、ポインセチアの捕虜となったミラクルナイトは、逃れがたい運命の前に立たされていた。ポインセチア女はゆっくりと近づき、ミラクルナイトの最後の防衛線であるアイマスクに手を伸ばす。
「さあ、奈理子ちゃんの素顔を見せて」
と静かに言葉を紡ぎながら、アイマスクを剥ぎ取る。露わになったのは、苦痛と恐怖で曇った美少女奈理子の顔。彼女の戦いの衣装が失われたことで、毒への抵抗力も著しく弱まっていた。
「苦しむ奈理子ちゃんも可愛いわ。私の毒で気持ち良くトロトロにしてあげる」
とポインセチア女は、ある種の愛情を込めたように言うと、奈理子の唇に自らの唇を重ねる。奈理子が首を振って抵抗するも、口から口へ、ミラクルナイトの体内へポインセチアの毒を直接流し込まれるのを防ぐことはできなかった。瞬く間にその毒液はミラクルナイトの体内を駆け巡り、ミラクルナイトの身体に異変を起こさせる。
「あぅんッ」
ミラクルナイトはビクンと身体を震わせて潮を吹いてしまった。彼女の意識は遠のいていく。
「もうイッたの?奈理子ちゃん、弱すぎ。もっと持ちこたえてよ」
とポインセチア女は残念そうにつぶやく。
その時、ドリームキャンディの怒りが爆発した。
「よくも奈理子さんを…!」
と彼女が立ち上がろうとするその時、突然、ポインセチアガーデンの中に緑の光が降り注ぎ、セイクリッドウインドが姿を現した。ミラクルナイトの意識はほとんどない中で、彼女はかすかに
「セイクリッドウインドが来るまで、時間稼いだよ…」
と呟き、股から液体を垂らしながら完全に意識を失った。
セイクリッドウインドの到着によって、戦いの流れは一変しようとしていた。しかし、ミラクルナイトの勇気ある行動がなければ、この瞬間も訪れなかったのかもしれない。商店街の人々は、彼女たちの絆と勇気に感動しながら、次なる展開を見守るのだった。
風の戦士としての威厳をまとうセイクリッドウインド。その正体は女子大生でありながら、水都神社で巫女として働く風間凜。セイクリッドウインドは、ポインセチアに絡まれ意識を失い倒れているミラクルナイトと、戦いの傷跡に苦しむドリームキャンディの姿を見た。
「遅れてゴメン」
と、セイクリッドウインドはドリームキャンディに謝罪する。しかし、ドリームキャンディは首を振りながら
「来てくれただけでも嬉しいです」
と応えた。今は、それぞれが人生の大切な時期に立ち会っている。ドリームキャンディは、自分の力不足を痛感し、二人を戦いに巻き込んでしまったことを深く悔いていた。
その時、ポインセチア女が嘲るように
「ナメコ姫…」
とセイクリッドウインドに声をかけた。かつて勅使河原の愛人だった凜に対し、彼女ら勅使河原の手下たちは表面上「姫」と称していたが、その実、内心では見下していたのだ。
「男に捨てられ、敵に寝返るなんて、本当に惨めな女ね」
と、ポインセチア女はさらに挑発する。セイクリッドウインドは、その言葉に
「うるさい!」
と反発し、ガストファングで応戦するが、ポインセチア女はあざ笑う。
「今のあなたは、もう私たちのお姫様じゃないわ。ただのナメコ姫…いや、ナメコ女ね」
と、更なる挑発を投げかける。
「今の私はナメコじゃない!」
と、セイクリッドウインドは激昂し、再びガストファングを振るった。勅使河原の手下たちに蔑まれ、失った地位への執着を払拭しようとするセイクリッドインドの声は、ポインセチアガーデンに響き渡る。それは、過去の自分との決別であり、新たな自分への宣言だった。セイクリッドウインドの決意は、ミラクルナイトとドリームキャンディを守り抜くための強い意志を内に秘めていた。
ガストファングで迫りくるポインセチアを切り裂きながらポインセチア女に迫るセイクリッドウインド。
「凜さん、落ち着いて!」
思わず名前で読んでしまったドリームキャンディだが、その声もセイクリッドウインドには聞こえない。セイクリッドウインドはポインセチア女しか見えなかった。勅使河原の愛人だった頃の凜にとっては、存在すら知らなかった下っ端のポインセチア女にコケにされたのだ。怒りに燃えるセイクリッドウインド。
しかし、ポインセチア女は余裕綽々だった。ポインセチア女がさらに挑発する。
「足元もよく見た方がいいわよ、ナメコ姫…じゃなかった、ナメコ女」
と彼女が言葉を紡ぐや否や、逃げる道を塞ぐようにポインセチアの茎が急速に伸び、セイクリッドウインドの足元を縛り付けた。
「あッ!」
驚きの声を上げるセイクリッドウインド。セイクリッドウインドが反応する間もなく、ポインセチアの茎が彼女の手足を確実に捕らえ、身動きを封じた。
「こんなもの…」
ナメコの能力で、容易く脱出できるはず。そう信じていたセイクリッドウインドだが、ポインセチア女の言葉が心をえぐる。
「ナメコのヌルヌルを使えば逃げられるけど、今の貴方はナメコ姫…じゃなくてナメコ女じゃないから、ナメコの能力は使わないのよね」
この言葉に躊躇するセイクリッドウインド。彼女の瞬間の迷いを見逃さないポインセチア女。その隙を突かれ、ポインセチアの鋭い葉がセイクリッドウインドの戦闘服を容赦なく切り裂き、彼女を紺色のレオタード姿に変えてしまう。セイクリッドウインドの姿に、ポインセチア女は嘲笑を浮かべる。
「やっぱり、貴方はつまらない。奈理子ちゃんを見習いなさい」
と下着姿のミラクルナイトに目を遣る。そして、彼女はさらに冷たく言い放つ。
「貴方達はコスチュームがないと、私の毒に対して耐性が弱まるみたいだから、ナメコ女は奈理子ちゃんと仲良く毒にやられてくたばってなさい」
ミラクルナイトに続いてセイクリッドウインドもポインセチアガーデンに捕らえられる様子を目の当たりにしたドリームキャンディは、その場に立ち尽くす。ポインセチア女は、さらに彼女に向かって微笑みかけ、
「さぁ、キャンディちゃん、さっきの続きをしましょう」
と挑発する。しかし、ドリームキャンディは決意を新たにし、キャンディチェーンを握り締め、赤と緑の美しい悪魔との戦いへと踏み出すのだった。
敗北の痕跡をその姿に刻み込んだミラクルナイトとセイクリッドウインドが、ポインセチア女の圧倒的な力の前で無力感を露にしていた。ポインセチア女は、ドリームキャンディに向けて軽口を叩く。
「キャンディちゃん、私が強すぎて戸惑ってる?」
確かに、ドリームキャンディはその力の差に驚愕していた。かつてクリスマスツリーの点灯式で戦った際のポインセチア女は、ここまでの強さを見せつけてはいなかった。「何が違うの?」と心の中で疑問を抱くドリームキャンディに、ポインセチア女は明かす。
「あの時はね、メロン男様がキャンディちゃんと少しだけ遊んでいて欲しいと頼んできたの。私、本気を出してなかったのよ。」
その言葉にドリームキャンディは愕然としながらも、戦う決意を固める。
「私も、あの時は全力を出してなかったの!」
と強がりを言って、ポインセチア女に立ち向かう。しかし、彼女を取り囲むポインセチアの花、葉、茎が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
キャンディチェーンを振るうたびに、ポインセチアを斬り裂き、切り口からは白い液体が噴出する。毒である。特にこの白い液体は、濃厚な毒を含んでいる。ドリームキャンディのコスチュームはある程度毒から守ってくれるが、この液体には特に注意が必要だ。注意深く、しかし果敢にキャンディチェーンを振り続けるドリームキャンディ。
「キャンディちゃん、どれだけ持つかしら?」
ポインセチア女は、彼女の戦いぶりを妖しく楽しんでいた。ドリームキャンディには明白だった。ミラクルナイト、セイクリッドウインド、そして自分、三人の力を合わせなければ、この戦いに勝利することは叶わない。だが今、彼女は一人、絶望的な戦いを強いられていた。
商店街の隅から、
「ドリームキャンディ頑張れー!」
という声援が響き渡る中、鈴はひっそりと人々の輪を抜け出していた。ポインセチア女の圧倒的な強さに、鈴は予期せぬ驚きを感じていた。ドリームキャンディがこのまま敗れるのは時間の問題だろうと彼女は悟る。人目を避けて、
「毒を以て毒を制す。私の可愛いヒメバチちゃん、行きなさい!」
とささやき、無数のヒメバチをポインセチアガーデンへと放った。
ポインセチア女は優しげにドリームキャンディを挑発する。
「キャンディちゃん、しっかりして。このままじゃ、奈理子やナメコ女のように惨めな姿を晒すことになっちゃうよ」
ドリームキャンディは悔しさの中で体力が尽きかけていた。そして遂に、ポインセチアに捕まってしまう。だがその瞬間、空から現れたヒメバチの大群がポインセチアに襲い掛かり、ポインセチアはみるみる枯れていく。
ポインセチア女は周囲を見渡し、
「またヒメバチ女?」
とつぶやくが、ヒメバチ女の姿はどこにもない。ヒメバチを発生させたのであれば、彼女は必ず商店街のどこかにいるはずだ。しかし、この戦いを見守る女性は一人ではない。ヒメバチ女が誰かは見当もつかず、ポインセチア女は焦燥を隠せない。
その隙を見逃さなかったドリームキャンディは、
「ロリポップハンマー!」
と叫び、手にしていたキャンディチェーンをロリポップハンマーへと変化させた。ポインセチア女の目前で、ドリームキャンディは新たなる決意で立ち向かう準備を整える。この一撃が、戦況を変えることになるかもしれないと、ドリームキャンディは信じていた。
商店街は一瞬の静寂に包まれた後、ドリームキャンディの力強い声が響き渡る。
「えい!」
という彼女の叫び声と共に、ロリポップハンマーが輝き、ミラクルナイトとセイクリッドウインドを束縛していたポインセチアを一掃した。ヒメバチによって弱らされたポインセチアは、もはや毒を放つ力を失っていた。周囲には枯れ果てたポインセチアの残骸が散乱し、ヒメバチの群れも役目を終えると静かに去っていった。
「大きなチュッパチャプス。キャンディちゃんにお似合いの可愛い武器ね」
とポインセチア女が顔を引きつらせながら言葉を紡ぐが、ドリームキャンディの決意には揺るぎがない。ポインセチア女が背を向け、
「今日はこれくらいにしてあげる」
と言おうとしたその時、
「逃がさない!」
とドリームキャンディは敏速に彼女の背後に回り込んだ。
セイクリッドウインドは、解放されるやいなや怒りを露にして立ち上がる。
「下っ端の分際で私をコケにしたことを後悔するといいわ」
と言い放ち、ガストファングを構える。
「ウィンドサイクロンスラッシュ!」
と叫びながら、ガストファングを高速で回転させ、巨大な竜巻を生み出してポインセチア女をその中心に引き込んだ。竜巻の中で、風の刃がポインセチア女を容赦なく襲う。
「いやぁ~!」
とポインセチア女が悲鳴を上げるも、竜巻の轟音にその声はかき消された。やがて竜巻が収まり、地上には全身を傷だらけにされたポインセチア女が落下する。そこにドリームキャンディが迅速に近づき、
「キャンディスターバースト!」
とロリポップハンマーから放たれた色とりどりの光がポインセチア女を包み込む。
「これはオーバーキル…やりすぎよ…」
と彼女が消滅するまでの最後の言葉。
この壮絶な戦いに勝利したドリームキャンディとセイクリッドウインドを見て、商店街の人々は大歓声を上げた。ポインセチア女を倒した英雄たちへの感謝の声が、商店街に響き渡るのだった。
ポインセチア女の消滅を確認した瞬間、鈴は迅速にミラクルナイトのもとへと駆け寄った。口から直接体内に毒を流し込まれたミラクルナイトは、まだ気を失ったままだった。
「奈理子!」
彼女の声に力を込め、ミラクルナイトの頬を軽くたたいた。その場にいたドリームキャンディ、セイクリッドウインド、そして心配そうに見守る商店街の住民たちも、意識を失っているミラクルナイトの周りに集まった。僅かに瞼を開いたミラクルナイトは、やがて意識を取り戻し、戸惑いながらも
「ポインセチア女は?」
と辺りを見回した。
「ヒメバチ女…鈴さんのお陰で、ポインセチア女を倒すことができましたよ」
とドリームキャンディが説明した。ミラクルナイトはその言葉に安堵の息をつき、一方で敗北の悔しさに胸が締め付けられた。鈴は励ますように
「奈理子には最後の仕上げをしてもらわないとね」
と周囲の景色を示した。奈理子が幼い頃から親しんだ商店街は、枯れたポインセチアの残骸で覆われていた。セイクリッドウインドも声をかけた。
「これを片付けられるのは奈理子だけだよ」
ミラクルナイトはうなずき、鈴に支えられながらゆっくりと立ち上がった。目を閉じ、下腹に両手を当てると、奈理子の内から聖なる力が水色の光となって溢れ出した。セイクリッドウインドウが後ろからミラクルナイトを抱え上げる。
「ミラクルウームシャインシャワー!」
ミラクルナイトの股間から広がる水色の光が商店街全体を優しく包み込むと、光が消えた瞬間、商店街はもとの賑やかな姿に戻った。
「さすが奈理子ちゃん!商店街が元に戻ったぞ」
と蕎麦屋の店主が声を上げる。
「奈理子ちゃん、ありがとう!」
と果物屋のおじさんも感謝の言葉を贈った。商店街の人々は一様にミラクルナイト、奈理子に感謝の声を掛けた。この日、三人のヒロインの活躍によって、商店街は年末の活気を取り戻したのだった。
(第116話へ続く)
(あとがき)












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