DUGA

ミラクルナイト☆第123話

水都製薬本社の静かな来客ブースに、姫野真衣香と牛島が対峙していた。

「やっと渚がやる気を出してくれたんだ。」

牛島は嬉しそうに報告した。敗北から立ち直ったシオマネキ女、塩田渚が再びミラクルナイトへの挑戦心を燃やし始めたという。

「それが私とどう関わるんですか?」

真衣香は淡々とした口調で問い返した。

「渚がミラクルナイトとしっかり戦えるよう、僕たちがセイクリッドウインドやドリームキャンディを引き受ける。それで、渚はミラクルナイトとの戦いに集中できる。」

牛島は答える。

「私は普通の会社員です。ヒーローやヴィランの世界に巻き込まないでください。」

真衣香は窓の外に目をやりながら言った。

「でも、ここは勅使河原さんの会社だよ。そして姫野さんは勅使河原さんに直々に指名されたのじゃないか。」

牛島が少し焦れた様子で真衣香を見た。

「ここは勅使河原さんの会社ではありません。勅使河原さんは穢川研究所の人。私は水都製薬の社員です。」

真衣香ははっきりと言い切った。

「勅使河原さんは水都製薬の役員でもあるんだけどね。」

牛島は軽く返した。

真衣香の心は重苦しいものでいっぱいになった。勅使河原の意向を追うことに疲れ、その影響力の広がりに恐れを感じていた。

「勅使河原さんの指示には従うべきだと思うよ。」

牛島は柔らかく、しかし断固としてその意見を示した。

「わかりました。ただ、シオマネキ女とミラクルナイトの邪魔をしないようにするだけ。」

真衣香はしぶしぶ同意した。

「でも、これからは私のことは携帯で呼び出して。ここには来ないでください。」

彼女は牛島の場違いなラフな服装を一瞥し、立ち上がった。

「勅使河原さんは、姫野さんには特に大きな期待を寄せているんだ。」

牛島がにこやかに呼び止めたが、真衣香は振り返らずに部屋を出ていった。その背中は、重い決断の重みを背負っているように見えた。


穢川研究所の来客用ブースにて、御祖紗理奈は一人の学生を案内していた。その学生は突如訪れ、勅使河原に直接面会を求めてきたため、真衣香は当惑していた。しかし、学生が

「香丸が来た」

と伝えれば会うはずだと言ったため、その名を勅使河原に伝えると、彼は意外にもすぐに面会を承諾した。その反応から、真衣香には彼がただの学生ではないことが明らかになった。彼の端正な顔立ちからは、彼が相当なイケメンであることがうかがえた。

「サソリ女に案内されるとは光栄ですね。」

学生がさらりとした口調で話すと、真衣香は少し動揺した。

「それをどうして知っているの?」

彼は落ち着いて答えた。

「サソリの薬の開発については、教授と九頭先生からよく聞いています。二人からは熱く語られるその薬の話に、深い感銘を受けました。初期型の薬で、教授の趣味が強く出た薬ですよね」

紗理奈は「教授の趣味」の意味が分からず首を傾げたが、香丸は

「後で九頭先生のとこにも案内してもらえますか?」

と爽やかにと言う。その笑顔に紗理奈は不覚にも引き込まれそうになった。

彼らが社長室に到着すると、紗理奈は香丸を中へと案内した。部屋には勅使河原がおり、その傍らには側近の渦巻、スキンヘッドの氷川、そして巨漢の赤井がいた。普通の学生であれば、その場の圧倒的な雰囲気に圧倒されるはずだが、香丸は何の動じる様子もなく、静かに立っていた。紗理奈は、この青年がただ者ではないと感じた。

勅使河原が温かく迎えた。

「まさかカオリ君の懐刀が一人で私に会いに来るとはね。」

香丸は微笑みながら答えた。

「カオリさんは実習で忙しいため、最近は会っていませんね。」

「カオリ君は医者を目指していたね。鉄山君はもう卒業か」

勅使河原はそう言いながらも、香丸が来た目的を考えていた。

「香織さんも鉄山さんも、勅使河原さんと敵対するまでの意思はなかったと思いますよ。」

そして香丸は続けた。

「今日は教授からの伝言を持ってきました。『九頭君をよろしく頼む』とのことです。」

勅使河原が少し表情を曇らせながら、

「九頭には彼が望む環境を整えるつもりだ。それを教授に伝えてほしい」

と真摯に頼んだ。

「それと、教授は玩具を欲しがっています」

「玩具?」

勅使河原が怪訝な顔をした。

「勅使河原さんの元には、魅力的な玩具が多くありますからね」

香丸が紗理奈をちらりと見た。勅使河原は教授が求めるものが何か察した。

「教授がそう言うのであれば仕方が無いな。しかし、ここにあるものは困る」

「はい、教授は喜ばれると思います。教授の好みに会い、かつ、勅使河原さんが失くしても困らないものを探します」

香丸は目を輝かせながら応じた。

その後、勅使河原は彼に研究所の詳細な見学を勧め、

「御祖君、彼を案内して、九頭先生にも会わせてあげてなさい。」

と指示した。

紗理奈は初めて彼がメロン男だということを知り、新たな驚きを隠せなかった。彼女は深い思索に耽りながら、彼を案内する準備を始めた。


水都公園は、広大な敷地内に噴水広場、芝生広場、さらにはボート遊びが楽しめる運河と池を備え、水都市民にとって息抜きの場所として親しまれている。この公園は、ミラクルナイトこと野宮奈理子の通学路でもある。放課後、彼女は例外なくこの道を通って家路につくため、水都一の美少女である奈理子を狙う者にとって、絶好の舞台となっていた。ここで何度も繰り返されるミラクルナイトと怪人たちの戦いは、市民の心を掴み、彼女が勝とうが負けようが、その可憐で美しい姿に市民は熱狂し、声援を送り続けていた。

今日も奈理子の姿を待ち構える一人、シオマネキ女こと塩田渚がいた。渚は前回の戦いでミラクルナイトに敗れ、屈辱を味わった上、イチゴ女の姫野真衣香に助けられるという二重の辱を受けた。彼女の背後には牛島と真衣香が控えている。復讐の炎を燃やす渚は、奈理子への怒りを新たにしていた。

「おっ!奈理子がやって来た。」

牛島が遠くに彼女の姿を発見すると声を上げた。真衣香も、水都中学のセーラー服を身にまとった奈理子の姿を目にする。その瞬間、渚は

「奈理子、今日はこれまで以上に恥ずかしい目に遭わせてやるわ」

と呟きながら、シオマネキ女の姿へと変身を遂げた。


噴水広場は突如として緊張感に包まれた。目の前にシオマネキ女が現れた瞬間、野宮奈理子は驚きで口を抑えた。

「奈理子、私と勝負しなさい!」

とシオマネキ女の声が響く。その突然の挑戦に、周囲の市民も騒然とする。

奈理子は震える声で、

「変身中を襲って来ないでよ」

と言いながら、手にしたアイマスクを掲げる。前回、シオマネキ女に初めて勝利したが、彼女が未だミラクルナイトにとって厄介な強敵であることに変わりはない。奈理子の周りで風がスカートを揺らす。

「くだらないこと言ってないで、サッサと変身しなさい!」

とシオマネキ女が苛立ちを露わにする。周囲の市民は

「始まるぞ!」

「奈理子の変身だ!」

と歓声を上げながらカメラを構えた。

奈理子がアイマスクを装着すると、彼女は水色の光に包まれた。光の中で、水都中学のセーラー服が消え、彼女は白いブラショーツだけの姿になる。

「今日もだ!」

と市民から歓声が上がる。続いて、奈理子の身には髪に白いリボン、上半身に白いブラウス、胸には水色のリボン、手足に水色のグローブとブーツが現れる。最後に白いプリーツスカートが彼女の清純の証である白いショーツを包み込む。変身完了と共に、いつものように風がスカートを舞い上げ

「奈理子の生パン最高!」

「奈理子、今日も可愛いぞ!」

と歓声とフラッシュが飛び交う。

「水都の平和を乱す者はミラクルナイトが許しません!」

とミラクルナイトが堂々と宣言し、市民はその言葉に更に熱狂した。その大歓声の中、シオマネキ女はかつてミラクルナイトを辱めた喜びを思い出していた。

「いつものように泣かせてやるわ!」

と宣言し、電磁鋏を振るうシオマネキ女の姿があった。


激しくミラクルナイトの拳とシオマネキ女の電磁鋏が交差する。ミラクルナイトの一撃は躱されるが、同時に彼女もシオマネキ女の攻撃をかわすと確信していた。しかし、その確信はすぐに疑問へと変わる。過去に何度もこの敵に敗れたが、今の自分は違うと自信を持っていたミラクルナイトがシオマネキ女を振り返ると、自分のスカートが電磁鋏に引っ掛かっているのが見えた。

「え?」

と声を上げるミラクルナイト。その瞬間、下半身の冷たさを感じ、何が起こったのかを理解し、恐る恐る下を見た。

「そんな…」

と呟くと、頬が熱くなり赤く染まる。風に舞うリボンとフリルの純白のショーツが、人々の前に露わになってしまっていた

「うおぉぉぉー!」

と、ミラクルナイトの窮地を前に市民からは喜びの歓声が上がる。

「奈理子にはその格好がお似合いよ。もっと市民を喜ばせてあげるわ」

とシオマネキ女が皮肉を交えて言う。彼女の言葉に市民は更に熱狂し、

「奈理子、可愛いぞ!」

「今日も奈理子の全てを見せてくれ!」

と叫びながらフラッシュが走る。

前回の敗北から完全に立ち直ったシオマネキ女は、勝ち誇った表情で

「次はどこを見せたい?」

とミラクルナイトに問いかける。その視線には残忍さが滲んでいた。期待と恐怖で奈理子の子宮がキュンと締め付けられる。

市民からの熱い声援を受けて、ミラクルナイトとしての奈理子は彼らの期待に応えたい一心だが、水都の平和を守るヒーローとして、シオマネキ女にこれ以上傍若無人に振る舞われるわけにはいかない。複雑な感情を抱えつつも、ミラクルナイトは堂々とシオマネキ女に立ち向かう構えを見せた。



「えい!」

と力強く叫びながら、ミラクルナイトがシオマネキ女に向けて水色の光弾を放つ。しかし、狙いは外れる。シオマネキ女の姿はすでにそこにはなかった。

「どこ?」

と焦りを隠せないミラクルナイト。

「ここよ」

と、背後から冷たい声がする。振り向きざま、ミラクルナイトは美脚を大きく振り上げ、右ハイキックを繰り出す。だが、シオマネキ女はそれを軽々と受け止め、

パンツが濡れてるじゃないの。呆れた正義のヒロインね」

と、ミラクルナイトのショーツのクロッチを見下ろしながら嘲笑う。

「くッ!」

と悔しさを噛みしめながら、ミラクルナイトは美脚を下ろし、次の攻撃に移ろうとするが、シオマネキ女の姿は再び消えていた。

「簡単に背後を取られちゃって…。まさか、市民を喜ばせるためにわざと負けようとしてるの?」

またも背後からシオマネキ女の声がする。その声に反応する前に、シオマネキ女はミラクルナイトの背後から腰に腕を回してグッと引き寄せた。

「は、離して!」

と後ろから抱え込まれたミラクルナイトがもがくが、抵抗は虚しく、

「望み通り、奈理子の恥ずかしい姿を晒してあげる」

とシオマネキ女は冷たく耳元で囁く。

「いや…やめて…」

と哀願するミラクルナイトを無視し、シオマネキ女は彼女を真後ろへと豪快に反り投げた。見事なジャーマンスープレックスが噴水広場に響き、ゆっくりと立ち上がるシオマネキ女の前で、頭部を地面に叩きつけられたミラクルナイトは、まんぐり返しの姿勢で動かない。失神してしまったのだ。その美しい姿に市民は一斉にフラッシュを浴びせる。

「弱すぎる。こんなザコに前回不覚を取ったなんて…」

とシオマネキ女はミラクルナイトの濡れたクロッチを一瞥すると、無理矢理彼女を立たせ、

「目を覚ましなさい!アンタの泣き叫ぶ姿が見たいのに、寝てちゃダメでしょ!」

とミラクルナイトの頬にビンタを喰らわす。目を覚ましたミラクルナイトだが、その怯えた表情には既に戦意は見えなかった。

そのとき、噴水広場に黄色い光と緑色の光が降臨する。ドリームキャンディとセイクリッドウインドの到着だ。

「僕たちも行くか」

と牛島が真衣香に促すが、真衣香は

「私一人で十分です。牛島さんはここにいてください」

と断り、イチゴ女に変身した。


「また奈理子さん、スカート脱がされちゃってる」

とドリームキャンディが捕まったミラクルナイトを見て発言した。セイクリッドウインドがそんな彼女に嗜めるように言った。

「今日のシオマネキ女はいつもと雰囲気が違う。奈理子が危ない」

ドリームキャンディは頷いて、シオマネキ女に力強く宣言した。

「奈理子さんを苛める者は私たちが許しません!奈理子さんを離しなさい!」

その瞬間、彼女たちの足元で複数の小さな爆発が起こった。

「何?」

と後方へ飛び退き、身構えるドリームキャンディとセイクリッドウインド。そこにイチゴ女が姿を現す。爆発は彼女が放った苺苦無によるものだった。

「これはミラクルナイトとシオマネキ女の一対一の戦い。邪魔はさせない」

とイチゴ女が二人の前に立ちはだかる。

「もう、奈理子さんは負けてるでしょ!敗者を晒し者にして何が一対一の戦いよ!」

ドリームキャンディが叫ぶ。イチゴ女は落ち着いた口調で応じる。

「貴方たち、自分の仲間が信じられないの?私は、貴方たちよりもミラクルナイトを信じているわ」

彼女の言葉にドリームキャンディとセイクリッドウインドは無言になる。アイマスクを外され、ショーツを膝まで降ろされたミラクルナイト。その可憐で美しい姿の撮影会が始まっていた。ミラクルナイトは敗北を受け入れてしまったかのように、涙を流しながら撮影に応じている。

「ミラクルナイト!」

とイチゴ女が呼びかける。涙顔のミラクルナイトが彼女を見上げる。

「しっかりしなさい!私と戦ったときのミラクルナイトはもっと強かった。シオマネキ女なんかに負けることは、私は絶対に許さないから!」

イチゴ女がミラクルナイトを怒鳴りつける。シオマネキ女はイチゴ女を睨みつけ、

「アンタ、どっちの味方なのよ!」

と反発する。しかし、イチゴ女は彼女を無視し、ミラクルナイトに向かって言った。

「私は、私と戦ったときの強いミラクルナイトを信じているわ」。

「イチゴ女と戦ったときの私…」

ミラクルナイトは、市民の熱い視線とフラッシュを浴びながら、過去の激闘を思い出す。それが邪魔されたのがシオマネキ女だった。そして、ミラクルナイトはシオマネキ女を撃退した記憶が蘇る。

「私は、シオマネキ女に勝ったことがある。勝てるはず」

とミラクルナイトが自分に言いた。

「撮影されて泣いて喜んでいるマゾっ子が何言ってるの?あのときは油断しただけよ」

とシオマネキ女が高圧的に反論し、ミラクルナイトを高く抱え上げて、その姿を市民に見せつける。しかし、その時ミラクルナイトの身体から水色の光が輝き始めた。

「ミラクルパワー!」

と叫びながら、ミラクルナイトは自らの力を集中させる。その光は次第に強くなり、シオマネキ女の手から滑り落ちるようにして、地面に立ち戻る。シオマネキ女は戸惑いながらも、再び攻撃の構えをとるが、ミラクルナイトは違った。彼女の目には決意が宿っていた。

「もう、怯えたりしない。私はミラクルナイト、市民の期待に応えるためにここにいる!」

と力強く宣言し、ショーツを穿き直すとシオマネキ女に向かって進む。今度は彼女が主導権を握るターンだ。光弾を放つ代わりに、ミラクルナイトは直接的なアプローチを選ぶ。華麗なフットワークで相手の攻撃をかわしながら接近し、シオマネキ女の顎に向けて繊細ながらも強烈なヒップアタックを放つ。

「ミラクルヒップストライク!」

奈理子の体臭を纏った衝撃がシオマネキ女を襲い、彼女は後ろに大きくつまずく。市民からは歓声が上がる。ミラクルナイトはその勢いを保ちながら、さらに攻撃を加える。光り輝く拳が再び空を切るが、今度はシオマネキ女の防御をすり抜け、決定的な一撃を加える。

「私は自分を信じる。そして、私を信じてくれるすべての人たちを裏切らない!」

ミラクルナイトの声が広場に響き渡る。シオマネキ女はついに膝をつき、戦いの終わりを告げる。市民たちはその勇姿に感動し、さらに熱狂的な声援を送る。

イチゴ女は少し離れた場所から静かにこの一連の展開を見守っていた。彼女の口元には満足げな微笑みが浮かび、

「そう、これがあなたの真の力よ。素晴らしい戦いだったわ、ミラクルナイト」

とつぶやく。ミラクルナイトはその言葉を聞き、深い安堵の表情を浮かべる。そして、彼女は立ち上がり、シオマネキ女に手を差し伸べる。

「敵としてではなく、一人の戦士として尊敬を表するわ」

と言いながら。

この日の戦いは、ミラクルナイトが真の勇気と力を見せた日として、市民の心に深く刻まれることになる。そして、彼女の伝説はさらに多くの人々に語り継がれていくのだった。

第124話へつづく)

あとがき