DUGA

ミラクルナイト☆第108話

深夜、ワンピースのパジャマに身を包んだ奈理子は、ベッドに横たわりながらも目を閉じることができなかった。隣の部屋で眠る弟の隆の安らかな寝息が、静寂を切り裂く。そんな夜、奈理子はスマートフォンで動画を眺める。水都の守護神ミラクルナイトとしての動画は多く、奈理子自身の動画もある。特に印象的だったのは、モチノキ男によるパンツ争奪戦のシーン。動画には、水都中学のセーラー服を着た奈理子がウズムシ男に抱え上げられ、虚ろな表情でダブルピースをする姿が映っていた。

その動画を見ていると、奈理子の心は複雑な感情で満ちた。恥ずかしさと同時に、自分の姿に喜んでくれる市民の顔が、何故か心地よかった。奈理子の手がショーツのクロッチに伸びる。また、体験したいと奈理子は思う。ショーツが濡れるが、明日の朝に穿き替えればいい。ブラとショーツが一致しなくなるが、構わないと奈理子は思いながら動画の自分の姿に酔っていた。しかし、その時、突然の女性の悲鳴が遠くから聞こえてきた。奈理子はすぐに身を起こし、水都の守護神ミラクルナイトとしての責任を感じた。

迷いながらも、奈理子はアイマスクを手に取り、ミラクルナイトに変身する。まだ逝っていないのにと自分自身に言い聞かせながら、夜の街へと飛び出した。彼女の心には、水都の平和を守るという強い決意があった。静かな夜、奈理子はその暗闇を駆け抜け、事件の現場に向かうのだった。


皆が深い眠りについた静寂な夜、水都の街を見下ろすミラクルナイトが空中を舞っていた。ミラクルウイングを広げて飛行し、悲鳴が聞こえた方向へ向かっていく。やがて目の前に現れたのは、一人のスーツ姿の女性がナマコ男に襲われている光景だった。女性は明らかにキャリアウーマンといった風情で、ピンチに立たされていた。

ミラクルナイトは急降下して、女性とナマコ男の間に割って入る。女性は

「ミラクルナイト!」

と叫び、救いを求める目で見つめる。ミラクルナイトはナマコ男に対峙し、

「水都の平和な夜を乱す者は許しません!」

と宣言する。しかし、ナマコ男は

「平和を乱そうとしているのはこの女だ」

と女性を指差し反論する。女性は猛然と

「どうせ、あの耄碌ジジイの差し金でしょ!」

とナマコ男に叫ぶ。ナマコ男は

「この女は、市民が知らなくてはいいことを公表しようとして水都の政治を混乱に陥れようとしている」

とミラクルナイトに告げた。

「セクハラ政治家は水都にはいらないわ!」

と叫ぶ女性に対し、ナマコ男は

「そのセクハラ政治家を選んだのは水都市民なんだぞ」

と反論する。ミラクルナイトは理由がわからず立ち尽くす。女性は

「私は新聞記者です。水都の政界を牛耳る大物政治家を告発しようとしているんです!」

と反論し、自らが新聞記者であることを明かし、市民に知られるべき真実を公表しようとしていると告白する。

政治のことは分からないミラクルナイトだが、女性を守ることが優先だと考え、

「逃げてください。この怪人は私が止めます」

と女性に告げる。女性は走り去り、ミラクルナイトはナマコ男との対決に臨む。

ナマコ男は、ミラクルナイトの身体を欲望のままに見つめ、

「奈理子の身体を楽しむ許可はもらっている」

と下品な笑みを浮かべる。深夜の住宅街では、町内放送もなく、セイクリッドウインドやドリームキャンディの助けも望めない。

恐怖を抱きつつも、ミラクルナイトは一人でナマコ男に立ち向かうしかなかった。静かな夜空の下で繰り広げられるこの戦いは、ミラクルナイトにとって未知の挑戦だった。


深夜の住宅街に響く、ナマコ男の嗤う声。

「脅える顔も可愛いぞ、奈理子」

とミラクルナイトに向けて不気味な視線を送る。ミラクルナイトは、水都の静かな夜に響き渡る水色の光弾、ミラクルシャインブラストを使うことは控える決心をし、肉弾戦に備える。

「私は水都の守護神ミラクルナイト。負けないわ!」

と自らを鼓舞し、勇敢にナマコ男に立ち向かうミラクルナイト。しかし、

「えい!」

と繰り出した右足のハイキックがナマコ男の身体に命中しても、ナマコ男は堅牢な体を持っており、ミラクルナイトの攻撃は跳ね返される。

「ナマコは体を硬化させることができるのだ。奈理子のパンチラキックなど効かん」

とナマコ男が嘲笑う。ミラクルナイト負けじと更にハイキックを繰り出す。ミラクルナイトの純白のショーツが露わになり、ナマコ男はそのクロッチに目をとめた。そして、

濡れてるじゃないか。まさか、ここに来る前に自分で自分を慰めていたのか?」

と嘲り、ミラクルナイトを電柱に投げつける。

「あぁッ」

と背中を電柱に打ち付けられたミラクルナイト。ナマコ男は

「たっぷり楽しませてもらうぞ、奈理子」

と、電柱にもたれるミラクルナイトに毒液を放つ。再び

「いやぁ!」

とミラクルナイトの悲鳴。ナマコ男が放つ毒液によってコスチュームが溶け始める。コスチュームが腐食し、素肌と白い下着が露わになる。恐怖と屈辱に震えるミラクルナイトは、この深夜の住宅街で、援助もなく、絶体絶命の状況に置かれていた。ナマコ男の嘲笑と共に、ミラクルナイトの悲鳴が静かな夜に響き渡る。



「まだ、負けてないわ!」

とミラクルナイトは力強く叫び、ナマコ男に挑む。恐怖で震える足とは裏腹に、その目にはまだ闘志が宿っていた。しかし、ナマコ男はその気概を嘲笑う。

「さすが水都の守護神。弱くても、気高い使命感だな。だが、長くは持たないだろう」

と冷酷に言い放つ。

ミラクルナイトは、自分の全てを懸ける覚悟で、ナマコ男に対峙する。深夜の静寂を破る決意で、ミラクルヒップストライクを繰り出すために飛び上がる。しかし、ミラクルナイトが空中で繰り出そうとしたその瞬間、ナマコ男の口から触手が伸びてきて、彼女を捕らえてしまう。

「いやっ!」

と絶望の叫びを上げるミラクルナイト。しかし、既にナマコ男の触手に捕えられた彼女は、ボロボロになったコスチュームを剥ぎ取られ、純白の下着姿にされてしまう。さらに、

「素顔を見せてもらおうか、奈理子」

とナマコ男によってアイマスクまで剥がされ、彼女の恐怖に震える素顔が露わになる。

身動きが取れないミラクルナイトは、ナマコ男の触手による責め苦に耐え切れず、ついに意識を失ってしまう。ナマコ男は気を失ったミラクルナイトを抱え、深夜の街に姿を消す。

翌朝、水都中学の中庭で気を失ったミラクルナイトの姿が生徒たちによって発見され、無事に救出された。しかし、その夜の出来事は、水都中学に新たな波紋を広げることになる。ミラクルナイト、奈理子は再び試練に直面することになったのだった。


ナマコ男による凌辱の瞬間がネット上に晒されていた。奈理子は、その時の記憶が断片的にしか残っておらず、何度も絶頂に達し、その度に何度も意識を失ったことだけが鮮明に記憶されている。母親が学校に捨てられたミラクルナイト姿の奈理子を迎えに来てくれた日、彼女は学校を休んだ。母は奈理子を抱きしめ、泣いた。

翌日の放課後、図書館での勉強を終えた奈理子は家路に着く途中、あの夜襲われていた女性に商店街で声を掛けられる。

「貴方は…」

と女性を見て、奈理子は思い出す。彼女はナマコ男に襲われていた記者、早狩姫香だった。姫香は奈理子に名刺を渡す。水都新聞の記者と書かれていた。

奈理子は警戒しながらも、

「私の取材ならやめてください」

と言う。姫香は二十代後半くらいに見え、鈴よりも年長かもしれないと奈理子は考える。姫香は深く頭を下げ、

「お礼を言いたかったの。この前は助けてくれてありがとう」

と言う。奈理子はナマコ男に完全に敗れたあの夜を思い出し、苦しくなる。

しかし、姫香は堂々と街を歩き、奈理子はそれを暗に非難する。

「ナマコ男に見つかったら、また襲われますよ」

と言うと、姫香は

「そのことで話があるの。少し話さない?」

と提案する。ミラクルナイトとして、ナマコ男を倒す責務を感じていた奈理子は、姫香との会話から何か手がかりを得られるかもしれないと考え、彼女とともにグフグフハンバーガーへと足を運んだ。


グフグフハンバーガーは学校帰りの女子高生や買い物帰りの親子連れで賑わっていた。奈理子と姫香は空いている席を見つけ、向かい合って座る。姫香は、水都中学のセーラー服姿の奈理子を改めて見つめる。この華奢な身体の持ち主が、水都の平和を守るために凶悪な敵と戦っているのだと、姫香は感心する。

姫香は話し始める。彼女は政治部記者として、水都市議会を牛耳る長老議員山川からセクハラ被害を受けたという。告発しようとしたが上司に止められ、文化部へ異動させられた。しかし、姫香は山川を追及し続けており、そのため山川はナマコ男を使って姫香を抹殺しようとしている。

「ナマコ男から守ってほしいということですか?」

と奈理子が尋ねると、姫香はミラクルナイトとナマコ男の戦いを見ていたことを明かす。奈理子は驚く。姫香を逃がすために自分がナマコ男と戦っている間、姫香は逃げずにミラクルナイトの無様な敗北を見ていたのだ。

内心イライラする奈理子だが、姫香は

「奈理子さんには悪いけど、ミラクルナイトではナマコ男には勝てない。また恥ずかしい動画をアップされるだけよ。セイクリッドウインドとドリームキャンディを紹介してくれない?」

とさらりと言った。

確かに、奈理子はミラクルナイトがセイクリッドウインド、ドリームキャンディよりも弱いことは自覚している。しかし、面と向かって戦力外通知に等しいこと言われたことはショックだった。姫香は

「私には強い力が必要なのよ。お願い、二人を紹介して」

と追い打ちをかける。奈理子は涙を堪えながら

「私も二人のことはよく知らないんです。私のピンチに二人は現れて、私を助けると去って行く。ただそれだけです」

と答える。姫香は

「ミラクルナイトも二人に守らる存在なのね」

と溜息を付く。しかし、奈理子は

「ナマコ男は私が倒します」

と決意を新たにする。一方、姫香の心には、ナマコ男に凌辱されるミラクルナイトの姿が浮かんでいた。


商店街の占い師、鈴のもとを訪れた奈理子は、新聞記者姫香との会話について話す。鈴は奈理子に同情し、彼女の頭を優しく撫でながら

「その新聞記者、助けてもらったくせに酷いこと言う奴だね」

と慰める。奈理子は自分の弱さを認めつつも、

「鈴さん、私、悔しい」

と吐露する。鈴は

「可愛いは正義!奈理子が責められる姿、凄く可愛いよ」

と励ますが、奈理子は

「可愛いだけじゃダメなんです」

と返す。

「商店街の人たちはみんな奈理子が日々トレーニングしていること知ってるし、勉強も頑張ってることも知ってる。そんな奈理子がみんな大好きだし、奈理子の努力は報われるかもしれないよ」

と鈴は告げる。しかし、

「きっと報われるとは言ってくれないんですね…」

と沈む奈理子。

「そりゃ、努力だけではどうにもならないこともあるし…」

と述べる鈴。奈理子に

「鈴さん、私、ナマコ男に勝ちたいです」

という願いに対し、鈴は対策を考える。

「ナマコは体に毒があるから無闇に触っちゃダメよ」

とナマコの毒の危険を説明する。

ヒップストライクハピネスシザーズも使えないんですか?」

「そんなの使えば技が決まる前に触手に捕まるよ。触手を掻い潜って技を決めたとしても、奈理子の大切なところに毒が付いちゃう。ミラクルナイトの強みは空を飛べることだから空から攻めるのはどう?」

鈴は奈理子の技について考え、空から攻めることを提案する。空から攻めるとしたら、水色の光弾シャインブラストだ。しかし、奈理子は

「シャインブラストがナマコ男に通用するとは思えません。牽制には使えると思いますけど…」

と懐疑的である。

「う~ん、ミラクルナイトの技でナマコ男に通用しそうなのは…」

鈴も頭を悩ませる。

「やっぱりリボンストライクだけど、リボンストライクは発動に時間がかかるし…。発動前にナマコ男の触手に捕まるリスクもある」

奈理子と鈴は、ミラクルナイトがナマコ男にどう対処すべきかを真剣に考える。奈理子は、ナマコ男に勝つ方法を見つけ出すことができるのだろうか?


夜の街を勇敢に歩く姫香は、人通りのある場所ではナマコ男が襲ってこないことを知っていた。姫香に騒がれると困るのは山川の方だからだ。ナマコ男が言ったように、山川を選んだのは水都市民で、彼は田舎から来た一代で水都最大の建設会社を築き上げた。山川が会社を息子に譲り、今は会長の地位にあること、関連企業や下請企業に大動員を行う選挙での圧勝は彼の力の大きさを物語っていた。姫香は、山川に逆らえる者がこの街にいないことを痛感していた。しかし、市民が好んで選んだ男ではない。必ず山川に一矢報いてやる。そう姫香は心に決めた。しかし、姫香のセクハラ証言だけでは誰も相手にしてくれない。他にも多くの女性が山川のセクハラ被害にあっているはずだ。

彼女は、山川のセクハラ被害に対する証言を集める決意を固めていた。角を曲がり、人通りの少ない住宅街に入ると、ナマコ男が襲ってくる可能性が高まる。しかし、奈理子ことミラクルナイトは弱く、あの可愛らしい少女が再びナマコ男に凌辱されるのは心苦しいが、姫香には使命があった。彼女は、口を噤むセクハラ被害者の証言を得るために進まなければならない。

その時、影が姫香の前に現れ、

「狙われているのを分かっていながら、一人で夜道を歩くとはいい度胸だな」

と言うナマコ男が姿を現す。姫香は慌ててスマホで奈理子に連絡を取る。ミラクルナイトが到着するまで、どうにか時間を稼がなくてはならない。彼女は勇気を振り絞り、ナマコ男と向き合う準備をする。


奈理子の部屋に響くスマホの着信音。画面には姫香からの着信が表示されている。スマホを取り上げる奈理子の耳に、バックの中から聞こえる雑音と、姫香の息遣いが届く。ナマコ男が姫香を襲っている。奈理子は決意を固め、アイマスクを装着し、ミラクルナイトに変身する。部屋が眩いばかりの光に包まれる。

その異変に気付いた弟の隆が部屋に駆け込んでくる。変身した姉、ミラクルナイトを目の当たりにして、

「姉ちゃん、また犯されに行くのか?」

と心配する隆に、奈理子は勇気を振り絞り

「今日は勝つわ。帰って来たら久しぶりに一緒に寝よっか?」

と軽く冗談を言う。

「気を付けろよ」

と心配する隆に、

「うん。私が出た後、窓閉めといてね」

と言い残し、奈理子はミラクルウイングを広げ、部屋の窓から飛び立つ。

夜空を切り裂きながら飛ぶミラクルナイトは、やがて姫香とナマコ男の姿を発見する。姫香は必死に逃げているようだ。ミラクルナイトは迷わずナマコ男に向けて水色の光弾、ミラクルシャインブラストを放つ。光弾が夜の住宅街の闇を切り裂き、寝静まった市民の安寧を乱すが、今はそれを気にしている場合ではない。ミラクルナイトの目には、ただ一つ、ナマコ男を倒すという目的が焼き付いていた。


夜の住宅街に響き渡るミラクルナイトの水色光弾の音。家々の窓に灯る光の中、市民たちは驚きつつも窓を開けて空を見上げる。そこには、月明かりを背に、白い翼を広げて宙に浮かぶ水との守護神ミラクルナイトの姿があった。清楚で可憐なその姿に、夜の住宅街からは歓声が沸き起こる。

ナマコ男がミラクルナイトに向けて侮辱の言葉を吐く。

「また種付けされに来たのか、奈理子」

と嘲笑う彼に、ミラクルナイトは

「ナマコ男、私はもう貴方には負けない!」

と力強く叫び、水色の光弾を連射する。しかしナマコ男は体を硬化させ、

「そんなものは効かん!」

と叫び返す。

ミラクルナイトの光弾がナマコ男を取り囲むように着弾し、路面のアスファルトからは煙が上がり始め、地上の視界が一時的に奪われる。しかし、風が煙を吹き飛ばし、視界が再び晴れると、そこには月を背景に水色の光を両手に高く掲げたミラクルナイトの勇壮な姿が映っていた。ナマコ男に向けて、ミラクルナイトはその光を結集し、決定的な一撃を放とうとしていた。


「リボンストライク!」

ミラクルナイトの声が夜空に響く。彼女の振り降ろした水色の光は輝くリボンに変わり、ナマコ男を包み込む。ナマコ男はリボンの光に包まれながら、

「奈理子を孕ませたかったー!」

と絶叫し、光と共に消滅していった。ゆっくりと地面に降り立ったミラクルナイトの前には、姫香が立っていた。

「弱いと言ってゴメン。ミラクルナイトは強かったよ」

と姫香は謝罪し、深夜の住宅街からはミラクルナイトを称える歓声が沸き起こる。

「ナマコ男は倒したけど、別の刺客が来るかもしれないから気を付けて下さい」

とミラクルナイトは姫香に忠告し、再び空に舞い上がっていった。

一方、家では奈理子の弟、隆が彼女の帰りを待っていた。彼の部屋の窓がコンコンと鳴り、開けると、ミラクルナイトの姿をした奈理子がバルコニーの柵に座っていた。

「今日は格好良く勝ってきたよ」

と奈理子が自慢するが、隆は

「姉ちゃん、パンツ見えてるぞ」

と指摘する。奈理子のミニスカートからは水色のショーツが覗いていた。

「隆にパンツ見られたってどうってことないわ」

と言いながら、彼女は隆の部屋に入り、ミラクルナイトから解放され、丈が短いワンピースのパジャマ姿になる。

「一緒に寝る?」

と提案する奈理子に対し、隆は

「寝るはずないだろ。早くシャワー浴びろよ」

と言い、彼女を部屋から追い出そうとする。

「隆を誘惑したら、寧々ちゃんに悪いもんね〜」

と言いながら、奈理子は隆の部屋から出ていった。この日の夜は、久しぶりの完全な勝利に心躍る奈理子の夜だった。


勅使河原の執務室は、政治的策略の影で満ちていた。テレビ画面には、政治資金規正法違反の罪で市議会最大派閥の首領山川逮捕のニュースが映し出されていた。勅使河原は満足げな表情を浮かべる。彼は隣のソファーに座る隣の男に向かって

「これで議会は百地先生のものだ」

と百地と呼ばれた男に握手を求める。市議会最大派閥ナンバーツーの男、百地は勅使河原の提案に応え、

「老害の政治生命は終わった。全てが我々の思い通りに進んでいる。これからもよろしく頼むよ、勅使河原くん」

と応じる。

渦巻が勅使河原と百地に、

「山川に纏わりついていた新聞記者はいかがいますか?」

山川に関連する新聞記者、早狩姫香の件を尋ねる。百地は冷たく

「捨てておけ。セクハラなんかのつまらん罪で山川を潰せるはずがない。馬鹿な女だ」

と一蹴する。百地と勅使河原は、山川失脚のために裏で共謀していた。山川は水都の政界財界に影響力を持つ男だが、その権力を失墜させるには相応の策略が必要だった。山川からの姫香抹殺の依頼は、その計画の最終段階での偶然の出来事に過ぎなかった。

「議会は抑えた。次は市長をやるか?」

と百地が提案するように、勅使河原と百地の野望はまだ終わっていなかった。奈理子やその他の市民が知らない間に、水都は大きな変化の波に飲み込まれようとしていた。

第109話へ続く)

あとがき