ミラクルナイト☆第109話
十二月、水都の商店街は年末の慌ただしさに包まれていた。そんな中、水都中学校三年生の奈理子は自分の前に控えた重要なイベントに思いを馳せていた。年明けには水都女学院高校への願書提出、その後すぐに入学試験と合格発表が続く。受験生としての重圧を感じつつ、奈理子は下校しながら商店街の賑わいを眺め、心に決意を新たにしていた。
「あっ、奈理子さん!」
と声をかけられて振り返ると、そこには小学六年生の寧々が立っていた。ランドセルを背負った彼女は明らかに学校からの帰り道だった。
「寧々ちゃん、今帰り?」
と奈理子が笑顔で尋ねると、寧々は可愛らしく
「はい」
と答えた。隆のガールフレンドである寧々とは何度も会っているが、二人でじっくり話をしたことはなかった。奈理子はふと、姉として寧々が隆にどんな想いを抱いているのか、この機会に確かめてみたいと思い立った。
「寧々ちゃん、時間ある?」
と奈理子が尋ねると、彼女は興味津々の表情を浮かべた。そこで奈理子は寧々を近くのグフグフハンバーガーに誘い、二人は並んでその方向へ歩き始めた。
グフグフハンバーガーの一角で、奈理子と寧々は向かい合って座っていた。店内のざわめきとは対照的に、二人の間には柔らかな空気が流れていた。小学六年生の寧々にとって、奈理子とこうして二人で過ごすのは新鮮な体験だった。奈理子は水都中学のセーラー服姿で、その清楚な外見とは裏腹に、パンツ争奪戦で見せた大胆な姿が寧々の記憶に強く刻まれていた。
奈理子は、寧々が隆のガールフレンドであることを知りつつ、隆のことをどう思っているかを探るように質問した。
「寧々ちゃん、隆のことはどう思ってる?」
と柔らかい口調で尋ねる。
寧々は一瞬たじろぐが、すぐに平静を取り戻し、
「隆くんは面白くて、いつも優しいから…好きです」
と素直に答えた。寧々の目は純粋な感情で輝いていた。しかし内心、寧々は奈理子と自分が共に戦う仲間であることを隠している葛藤に心を痛めていた。
奈理子は寧々の答えに微笑み、隆に対する彼女の純粋な感情を感じ取ることができた。
「よかった。隆も寧々ちゃんのこと、とっても大切に思っているからね」
と優しく応じた。
二人の会話はしばらく続き、お互いに少しずつ心を開いていく。しかし、寧々の心の中では、ドリームキャンディとして正体を明かして奈理子と共に戦う日が来るのを待ち望んでいた。いつかは、奈理子にも自分の秘密を打ち明けられるかもしれないと思いながら、寧々はハンバーガーを一口かじった。
グフグフハンバーガーでの会話は、寧々の一言で少し気まずい空気に包まれた。奈理子が窓の外を見て
「クリスマスツリー待ち遠しいね」
と言ったのに対し、寧々は思わず
「去年、クリスマスツリーに吊るされた奈理子さん、可愛かったですよ」
と返答してしまったのだ。その言葉に奈理子の表情が一瞬曇る。昨年のクリスマス、ミラクルナイトとしてバラ女に捕まり、クリスマスツリーの飾りとして吊るされたのは、奈理子にとって辛い記憶だった。
寧々は自分の言葉に気づき、あわてて話題を変えた。
「でも、パンツ争奪戦の奈理子さんの方がもっと可愛かったですよ。あれだけ市民が熱狂したのは初めてみました」
と言ってしまう。パンツ争奪戦はドリームキャンディとしての寧々にとっても忘れがたい記憶だったが、それは奈理子にとっても同様の思い出だ。しかし、面と向かって言われると複雑だった。
「そう…」
と奈理子は淡い声で応え、深いため息をつく。寧々は心の中で慌てた。隆の姉である奈理子に誤解されるのは避けなければならない。必死に他の話題を探り、
「水都神社の巫女さんに知り合いがいるんですけど、その巫女さんに聞いた話ですが…」
と新しい話を切り出した。寧々の言葉に、奈理子の表情は少し和らぎ、新たな話題に耳を傾け始めた。
寧々が奈理子に伝えた水都神社の巫女凜の話は、水都郊外の森で発見された不思議な植物についてだった。日中は普通の植物のように見えるが、夜になると動き出し、魅力的な光を放つという。この話に興味を引かれた奈理子は、その植物を見に行くことを決意する。
「危ないですよ、奈理子さん」
と寧々は止めるが、
「私はミラクルナイト。水都市民の為にその植物を調べなきゃ」
と奈理子はその気になっている。寧々は「ミラクルナイトが弱すぎるから止めてるのに…」と思ったが口に出すことができず、
「どうしても奈理子さんが行くなら私も行きます」
と一緒に行くことを申し出る。
「どうして寧々ちゃんが?」
と不思議がる奈理子。そして、奈理子は
「寧々ちゃんを危険な場所に連れて行くことはできないよ」
と優しく告げる。寧々は
「私も奈理子さんみたいな強い女の人になりたいんです!」
と心の中とは真逆のことを言った。寧々は内心、奈理子が危険にさらされることを恐れ、ドリームキャンディとしての自分が秘密であることを悔やんだが、奈理子を守るためには一緒に行くしかないと考えた。奈理子は寧々の提案に一瞬躊躇するが、寧々が危険な場所に付いてくるという決意を感じ取り、最終的には二人で出かけることを受け入れる。
「それじゃ、次の土曜日はどう?寧々ちゃんと二人でお出かけするの初めてだね」
と笑顔を見せた。寧々は、「ドリームキャンディとして今まで何度も奈理子さんと二人になってますよ」と心の中で答えながら、奈理子との二人のお出かけに心が踊っていた。
夕暮れ時のバス停で、寧々は奈理子の到着を心待ちにしていた。夜の冒険に出るとはいえ、寧々は奈理子という信頼できる同伴者がいると親に伝えていた。水都市民にとってミラクルナイトとしての奈理子への信頼は厚く、寧々の親も安心して彼女に付き合わせたのだ。
寧々自身も、ドリームキャンディとしてミラクルナイト奈理子とは何度も共に戦っているが、寧々として隆の姉である奈理子との距離を縮めることには少し緊張していた。そんな彼女の前に、
「寧々ちゃん、お待たせ」
と言って奈理子が現れた。その姿は、普段の水と中学のセーラー服とは異なり、パーカーにショートパンツというラフな服装で、何事もない夜の散歩に出かけるかのようだった。
奈理子の自然体の様子を見て、寧々は少し安堵した。しかし、その普段着でも可愛らしい容姿を見て、奈理子を姉に持つ隆が女の子に高い理想を持つのも無理はないと感じた。寧々にとって、この日の目的は二つ。一つは奈理子を危険から守ること、もう一つは隆の姉である奈理子に良い印象を持ってもらうことだった。
二人はバスに乗り、水都郊外の森へと向かう。話す内容は普段の学校生活や将来の夢など、さまざまだった。寧々は時折ドリームキャンディとしての経験を活かしながらも、隆の姉としての奈理子との会話を楽しんだ。夕暮れが深まる中、二人は目的地に近づいていった。森の中に隠された不思議な光る植物を求めて。
夕暮れ時の森を抜けると、急な斜面が奈理子と寧々を迎えた。先を行き、道なき斜面を登る奈理子。
「こんなことならジャージで来ればよかった」
ショートパンツを着用していた奈理子は、山登りには不適切な服装だと後悔していた。寧々は見上げると、奈理子のショートパンツから時折白いショーツがちらりと見えるのが気になった。
辺りが暗くなるにつれて、奈理子は寧々の手を握り、
「寧々ちゃん、大丈夫?」
と声をかけた。その瞬間、寧々は斜面で不思議な光を目にした。
「奈理子さん、あそこ!」
と指を指すと、奈理子は
「危ないから寧々ちゃんはここで待って」
と言い、光の方へ向かった。
「奈理子さん、気を付けて下さいね」
と奈理子を見守る寧々。光のそばに着いた奈理子は
「きれいな花…」
と口にしたが、美しい花を見た瞬間、奈理子は倒れ込んでしまった。
「奈理子さん!」
心配する寧々の呼びかけにも奈理子は反応しない。寧々はすぐさまドリームキャンディに変身して奈理子のそばに駆け寄った。霧の中に微かな毒が混じっていることに気付き、
「奈理子さん、無防備すぎますよ」
と心配しながら奈理子を抱き起こす。
その時、ドリームキャンディの前に現れたのはヒラムシ男だった。
「おっ、子供が二人と思ったら、奈理子とドリームキャンディか。まさか、奈理子が釣れるとは思わなかったぜ」
とヒラムシ男は言い放った。ドリームキャンディは
「何者?」
と問いかけると、ヒラムシ男は
「俺はヒラムシ男だ。奈理子を引き渡してもらおうか」
と言いながらドリームキャンディに襲いかかってきた。
ドリームキャンディは必死に防御しながらも、意識を失っている奈理子を守らなければならないという重圧に直面していた。奈理子を助け、自分もヒラムシ男に立ち向かう必要があったが、一体どうやって戦えばいいのか、迷いながらもドリームキャンディは戦いの準備を始めた。
混乱と恐怖に包まれた森の中、ドリームキャンディはキャンディチェーンを操りヒラムシ男との戦いに挑んでいた。しかし、狭い森の中では自由に動くことができず、戦いは思うように進まない。そんな彼女の隙を突いて、ヒラムシ男が強烈な一撃でドリームキャンディを吹き飛ばした。
気を失っている奈理子のもとへ戻ったヒラムシ男は、奈理子のショートパンツを剥ぎ取り、
「今日の奈理子のパンツは何色だー!」
と叫ぶ。
「なんてことを…」
この狂気じみた行動に、ドリームキャンディは愕然とするが、怒りに任せてキャンディチェーンを振るいヒラムシ男の腕を切り落とした。だが、ヒラムシ男の腕はすぐに再生し、
「ドリームキャンディ、これで勝ったと思うなよ」
と言い放ち、奈理子のショートパンツを奪って姿を消す。
ドリームキャンディは直ちに気を失っている奈理子のもとへ駆け戻り、毒のない場所へ彼女を運んだ。そして、ドリームキャンディから寧々に変身を解き、奈理子の頬を優しく叩きながら、
「しっかりしてください、奈理子さん」
と必死に声をかける。
奈理子はまだ意識を取り戻していない。寧々は奈理子の安全を確保しつつ、自分たちが置かれた状況を把握しようとしていた。しかし、このままでは奈理子の安全は保証されず、また敵が現れる可能性もある。寧々は次に何をすべきかを懸命に考えながら、奈理子を見守り続けた。
光る植物はやはり敵の仕業だった。その目的は何だろう?と考えをめぐらしながら、寧々は奈理子の頬を叩く。ようやく目を覚ました奈理子は
「寧々ちゃん…私…」
と言ったところでショートパンツを穿いていないことに気付く。
「え?どうして??」
と両手でショーツを隠し戸惑う奈理子。寧々はどう説明しようか迷ったが、
「私が奈理子さんのところに駆けつけたときには、ショートパンツが無くなっていたんです」
と誤魔化した。気を失っていた奈理子は全く分からない。
「これからどうします?」
と聞く寧々。奈理子は
「ここまで来たんだから先に行こう。光る植物のことが何が分かるかもしれない」
と奈理子は立ち上がった。
「その格好で行くんですか?」
と心配する寧々。奈理子は
「こんな森の中に他に人はいないし、ショーパンを探さなきゃ」
と先に進む。下がショーツだけではバスにも乗れず帰れないのだ。
月明かりに照らされた森の中、手を繋いで歩く奈理子と寧々。奈理子は上はパーカー、下はショーツの姿で、その土で汚れた純白のショーツが月の光に照らされている。寧々はその姿に
「奈理子さん、本当に白いパンツが好きなんですね」
と軽く口にするが、奈理子は恥ずかしそうに
「あまり見ないで」
と答える。寧々は、
「行きましょう。奈理子さん、光る植物には無闇に近寄らない方がいいですよ」
と奈理子の手をギュッと握った。奈理子は、自分が寧々を守らなければならないという使命感を強く感じていた。
「うん、寧々ちゃんは絶対に私が守るからね」
と力強く言い、寧々の手をしっかり握る。
ショートパンツを探しながら、二人は森の奥深くへと進んでいく。奈理子のショートパンツがどこにあるのか、光る植物の正体は何なのか、そしてその植物を操る敵の目的は何か。疑問が頭をよぎるが、今は前に進むしかない。
夜の静寂に包まれた森は不気味で、時折鳴り響く小動物の声が奈理子と寧々の心を緊張させる。しかし、奈理子は寧々を守るという強い意志で前を向き続け、寧々は奈理子の勇気に心を寄せていた。そんな中、彼女たちは森の奥へと深く足を踏み入れていった。
開けた土地に出た奈理子と寧々。どこかの宗教法人の所有地だと立て看板が立っている。手を繋ぎ周りを見渡す奈理子と寧々の前に、突如として二人の怪人が姿を現した。一人は先ほどドリームキャンディと対峙したヒラムシ男で、もう一人は花のような姿をした女の怪人、マンダラゲ女だった。ヒラムシ男の手には奈理子の失われたショートパンツが握られている。奈理子が
「あっ、私のショーパン!」
と叫ぶ。
「奈理子とドリームキャンディじゃなかったの?」
とマンダラゲ女がヒラムシ男に尋ねる。ヒラムシ男は寧々を見ながら、
「ドリームキャンディもいたが、まさか、このガキが…」
と口にする。奈理子は寧々に
「寧々ちゃん、ドリームキャンディもいたの?」
と質問するが、寧々は戸惑いながら、
「私は逃げたので見てないですけど、奈理子さんを助けたのはドリームキャンディかも…」
とあやふやに答える。
ヒラムシ男がマンダラゲ女に
「マンダラゲ女、奈理子は俺がやるぜ」
と宣言すると、マンダラゲ女は
「任せるわ」
と応じる。奈理子は寧々に
「寧々ちゃん、少し離れてて。危ないから」
と告げ、アイマスクを装着し始める。寧々は心配そうに
「奈理子さん、無理しないで」
と声をかける。
水色の光の中で、奈理子は「変身中に襲ってきませんように…」と心の中で祈りながらミラクルナイトに変身を遂げた。ヒラムシ男とマンダラゲ女は変身中の奈理子を襲わず、変身が完了するのを静かに待っていた。
変身が完了し、ミラクルナイトは堂々と宣言する。
「水都の平和を乱す者は、このミラクルナイトが許しません!」
と。しかし、ヒラムシ男とマンダラゲ女は、ミラクルナイトの変身中も攻撃することなく、彼女の変身が終わるのをただ静かに待っていた。彼らにとって、変身中を襲うことなど無意味であり、弱いミラクルナイトは簡単に倒せる存在に過ぎないと考えていたのだ。
ミラクルナイトとヒラムシ男が対峙し、緊張が走る。開けた土地に響くミラクルナイトの言葉と、二人の怪人の冷酷な視線が交錯する。寧々は少し離れた場所から、心配そうに見守っていた。
ミラクルナイトは、自身の判断を後悔していた。ショートパンツをあきらめて帰れば、寧々を危険な戦いに巻き込まずに済んだのだ。寧々の安全を最優先にすべきだった。その決意を胸に、
「これでも喰らいなさい!」
ヒラムシ男に向けて水色の光弾を連射し、攻撃の隙を作る。光弾がヒラムシ男に命中し続けるのを確認したミラクルナイトは、すぐさまミラクルウイングを広げて寧々を連れて逃げようと寧々に向かって飛ぼうとした。しかし、その瞬間、
「奈理子さ〜ん、捕まっちゃいました〜」
と寧々の声が聞こえる。
寧々はマンダラゲ女に頭を撫でられて立っていた。
「寧々ちゃん!」
とミラクルナイトが叫ぶ。マンダラゲ女は冷ややかに、
「この子のことよりも、貴方は自分の心配をした方がいいんじゃないの」
とミラクルナイトに言い、ヒラムシ男を指さす。ミラクルナイトの目がヒラムシ男に移ると、水色の光弾によって貫かれた穴が次々と再生していくのが見えた。
「俺様にそんな攻撃は効かんぞ、奈理子」
とヒラムシ男が嘲る。
「それなら…」
とミラクルナイトは空中からの攻撃を試みようとしてミラクルウイングを羽ばたかせる。しかし、その瞬間、
「そうはさせないわ!」
とマンダラゲ女が強烈な毒霧を放ち、ミラクルナイトを地に落とす。
「あぁぁぁ…」
と苦痛に顔を歪めるミラクルナイト。
「奈理子さん!」
と寧々が叫ぶ。
ミラクルナイトは毒に対する耐性を持っているが、マンダラゲ女の毒霧はそれを遥かに上回る強力さであった。四つん這いになり、うなだれるミラクルナイト。そこへ近づくヒラムシ男が、
「奈理子、お楽しみはこれからだ」
と言って迫る。しかし、ミラクルナイトは頭を上げ、
「寧々ちゃんは絶対に守る!」
とヒラムシ男を睨み付ける。彼女の闘志はまだ消えていない。ミラクルナイトと二人の怪人の緊迫した対峙が、静かな夜の森に緊張をもたらしていた。
寧々を守る。その強い思いを胸にミラクルナイトは立ち上がった。しかし、ミラクルナイトの眼の前にヒラムシ男の手が迫る。伸縮自在の体を持つヒラムシ男が腕を伸ばしたのだ。ヒラムシ男はパンパン!とミラクルナイトの頬に平手を喰らわす。更に、よろけるミラクルナイトのスカートを掴み、剥ぎ取ってしまった。
「あぁッ!」
と倒れるミラクルナイト。ヒラムシ男は
「奈理子にはこの格好がお似合いだ!」
と嘲笑う。白いショーツを丸出しにされたミラクルナイトだが、そんなことに構っている場合ではない。直ぐに立ち上がり、ヒラムシ男にハイキックを浴びせる。が、粘液に覆われたヒラムシ男には手応えがない。ヒラムシ男はミラクルナイトの胸のリボンを掴み、更に平手を喰らわせる。そして、怯んだミラクルナイトのブラウスを剥ぎ取った。下着姿にされたミラクルナイトは
「まだ、負けないわ!」
とキックを浴びせるが、ヒラムシ男には全くダメージが無い。ヒラムシ男は更にミラクルナイトに平手を放ち、ブラを剥ぎ取る。そして、
「あっ」
と小さな胸を隠すミラクルナイトの純白のショーツまでも剥ぎ取ってしまった。
裸にされてしまったミラクルナイトは、怒りと恥ずかしさで震えながらも、なお戦う意志を見せる。しかし、ヒラムシ男の無慈悲な攻撃に体力は限界に近づいていた。マンダラゲ女がミラクルナイトの背後から毒霧を吐き出し、戦闘をさらに困難にする。
「ああぁ…」
と喘ぐミラクルナイト。マンダラゲ女の毒霧は強力で、少しでも吸い込むと体が動かなくなる。ヒラムシ男はミラクルナイトに近づき、ミラクルナイトはヒラムシ男に捕らえてしまった。ヒラムシ男はミラクルナイトを弄ぶようにさらなる平手打ちを浴びせる。ミラクルナイトは
「寧々ちゃんは…私が守る…」
と呟くが、ヒラムシ男は
「子供一人も守れないザコのくせに口だけは立派だな」
とミラクルナイトを朝笑う。ミラクルナイトは自分の不甲斐なさに涙を流していた。無慈悲なヒラムシ男は
「弱くて泣き虫の奈理子の顔をよく見せてもらおうか」
と言うと、ミラクルナイトのアイマスクを剥ぎ取ってしまった。
素顔も身体も晒され、恥辱と屈辱に震えるミラクルナイト。
「そろそろ終わらせなさい」
とヒラムシ男に命じる。手も足も出ず完全敗北を受け入れたミラクルナイトが
「寧々ちゃん…守ってあげられなくてごめんね…」
と呟くと、ヒラムシ男がミラクルナイトの頬に強烈な張り手を喰らわす。ミラクルナイトの身体が糸が切れた操り人形のように力が抜けた。ミラクルナイトは失神してしまった。
マンダラゲ女が、
「ミラクルナイトって本当に弱いのね」
と笑ったとき、傍らで黄色い光が輝き始めた。驚いて黄色い光を見るマンダラゲ女とヒラムシ男。黄色い光を放っているのは寧々だった。ヒラムシ男が、
「やはり、このガキがドリームキャンディだったのか!」
と叫ぶ。
「そう、私がドリームキャンディ。奈理子さんが気絶してくれたから、やっと変身できたわ」
ドリームキャンディの変身が完了し、鮮やかな黄色い衣装に身を包む彼女が怪人たちの前に立ちはだかる。彼女の顔には怒りと決意が浮かんでいた。
「奈理子さんに何度もビンタして裸にするなんて、許せない!奈理子さんの悔しさは私が晴らす!」
とドリームキャンディは叫び、キャンディチェーンを手に取り、ヒラムシ男に向かって振り下ろす。しかしヒラムシ男はその攻撃を避け、腕を伸ばしてドリームキャンディを捕らえようとする。しかし、彼女は素早く動き、ヒラムシ男の攻撃をかわすとキャンディシャワーを放つ。虹色の光線を浴びたヒラムシ男は
「うわぁー」
と断末魔の悲鳴を上げながら消滅していった。一瞬の出来事に驚くマンダラゲ女。しかし、マンダラゲ女は
「ヒラムシ男の代わりはいくらでもいるわ」
と落ち着きを取り戻す。
ドリームキャンディはキャンディチェーンを手に取り
「貴方はミラクルナイトは弱いって言ったけど、奈理子さんは弱くないわ!」
と言い放つ。マンダラゲ女は
「このザコのどこが強いのよ」
と裸のまま仰向けに倒れ気を失っているミラクルナイトを嘲笑う。そして、
「ヒラムシ男を倒したからっていい気にならないでよ」
とマンダラゲ女は毒霧を放ちながらドリームキャンディを攻撃する。ドリームキャンディは
「キャンディデフェンス!」
と叫び、キャンディチェーンを螺旋状に回転させて全身を覆い、毒霧から身を守る。毒霧が晴れると、キャンディチェーンをマンダラゲ女に打ち付けた。紙一重で交わしたつもりのマンダラゲ女だが、僅かに頬をキャンディチェーンが傷付けられていた。信じられないといった表情を見せたマンダラゲ女。
「ミラクルナイトは弱いけど、ドリームキャンディは少しは強いことは分かったわ」
と言うと、マンダラゲ女は大きく後ろに飛び退いた。
「逃げるの?!」
とマンダラゲ女を追おうとするドリームキャンディ。マンダラゲ女は
「逃げるのではない。勝負はお預けよ」
と言葉を残し去って行った。立ち尽くすドリームキャンディ。
美しい素顔と裸体を晒したまま気を失って倒れるミラクルナイトを、月明かりが美しく照らしていた。
深い森の中、黄昏時の戦いが静かに幕を閉じた。ドリームキャンディは、ヒラムシ男の消滅の跡と、去っていったマンダラゲ女の方向を深いため息と共に見つめていた。
「奈理子さん…」
そっとドリームキャンディは倒れているミラクルナイトのもとに駆け寄る。そこには、月明かりに照らされて輝くような、裸のミラクルナイトが横たわっていた。地面には奈理子の下着とショートパンツが落ちている。寧々は変身を解き、寧々の姿に戻る。
「風に飛ばされなくてよかった」
と奈理子のブラとショーツを拾い上げ、優しくミラクルナイトを起こす。彼女の細い肩にブラ紐をかけ、小さい胸にブラを当てる。そして、ブーツで汚れないように丁寧にショーツをはかせる。大きな着せ替え人形のようで楽しい作業だ。白いリボンとレースが飾る純白の下着が、奈理子の清楚系美少女的な雰囲気を引き立てていた。
「こんなに弱いはずじゃないのに…」
と寧々は呟く。戦いは弱いが、ミラクルナイト、奈理子は真の勇気と強さを持っていた。今回も、寧々を守るために懸命に戦ってくれたのだ。寧々は、毛がはみ出ないように奈理子のショーツを整える。それが終わると、
「奈理子さん!」
と寧々はミラクルナイトの頬を叩く。呻きながらミラクルナイトが目を覚ますと、まず寧々の安否を気にする。
「寧々ちゃん…敵は…?」
寧々は
「ドリームキャンディが退治してくれました」
と答える。
「よかった…」
奈理子は寧々が無事であることにホッとしたが、
「ごめんね、寧々ちゃん。私は弱すぎて、寧々ちゃんを守ってあげられなかった…」
と涙を流す。奈理子の涙に、寧々も感情がこみ上げる。寧々は奈理子に抱きつき、二人で涙を流す。
寧々の心は新たな決意で満たされていた。次に共に戦う時、ミラクルナイトはもっと強くなっている。そして、その時こそ、彼女たちは本当の勝利を手にするのだ。
月明かりの下、奈理子と寧々はしっかりと手を繋ぎ森を抜ける。その二人の背中には、これからの戦いと未来への希望が映し出されているかのようだった。
(第110話へ続く)
(あとがき)















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