DUGA

ミラクルナイト☆第56話

水都中学の校舎が淡い日の光を受け、その静けさが奈理子の心を余計に痛めつけた。彼女は独り、窓辺に立っていた。学級の笑い声や友達の談笑、それらは遠く遠くから響いてくる音のように感じた。視線を落とし、外の風景を眺めていたが、眼前にはあの日、大観衆の中での一幕が浮かんできた。我慢できずにカブトムシ男にキスをしてしまい、羞恥に染まったその顔、その瞬間が鮮明に蘇っては奈理子の心を苦しめた。

「奈理子とライムが別れたって知ってる?」

「だってあのキス、あんなの見たら誰だって引くよ」

学校の中ではそんな噂が立ち、奈理子はその中心にいながら、まるで自分が外からそれを見ているかのような違和感に包まれていた。罪悪感と悲しみ、そしてライムへの想い。それらが混ざり合い、心は混乱の極みだった。

彼女が横目で見るライムは、いつもと変わらぬ美少年。しかし、その眼差しは彼女を無視するかのようで、それがまた奈理子の心を焦がした。奈理子は何度も口を開こうとしたが、言葉は喉を通らなかった。彼女の心は、深淵に沈み、ずっと底にある希望の灯火だけが頼りだった。

教室で振り分けられたテストの問題用紙。彼女はそれを見つめ、自分が想像もつかないほどの混沌とした現実に打ちのめされていた。心の中で繰り返すのは、

「どうすればいいのかわからない」

という言葉だけだった。

戦いという名のリアリティと、青春の葛藤。その間で揺れる奈理子の心情は、彼女自身にしか理解できない複雑な感情だった。彼女はただ、自分の心が何を望んでいるのか、どう向き合っていくべきなのかを、一生懸命に探し続けていた。


その日、邪悪な影がゆっくりと闇から現れた。勅使河原の前に立つのは、渦輪だった。ミラクルナイト、ドリームキャンディとフジツボ男の戦いの結果を報告する彼の顔には、背筋を凍らせる程の陰気が滲んでいた。

「フジツボ男の活躍は見事だった。」

勅使河原の声は低く、しかし満足げだった。ミラクルナイトの敗戦。それは彼にとって、彼の計画が順調に進んでいる証だった。

だが、渦輪はまだ仕事を終えてはいなかった。彼は次のステップを既に思い描いていた。

「ウミウシ男を出動させてみてはどうでしょうか?ミラクルナイトに対して、さらなる打撃を与えることができます。」

勅使河原は少し思考にふけった後、ゆっくりと頷いた。

「良いだろう、だが、ドリームキャンディが現れたら即座に撤退すること。」

その言葉は、勅使河原が抱くドリームキャンディへの警戒心を示していた。

ウミウシ男。その名前だけで、水都の人々の心に恐怖を植え付ける存在だ。彼の持つウミウシの能力は、戦う者たちに対して猛烈なプレッシャーを与える。

奈理子。その心は、学校生活の困難と、戦いによる心の傷ですでに乱れていた。さらなる敵の出現、それが彼女の心にどれほどの影を落とすのか。彼女の運命は、まるで暗闇の中を彷徨うようだった。

誰も知らない戦いの中で、奈理子は次なる試練に立ち向かうため、自分自身と向き合わなければならない時が迫っていた。


日の高いうちに帰宅の途についた奈理子の心は、乱れた気持ちと日増しに増える敵との戦いに対する恐怖で満たされていた。その日の小テストの結果は思うように出ず、さらなるテストに備えての家路だった。

しかし、その奈理子の前に突如、ウミウシ男が現れた。彼の恐怖を引き立てるように、陽がどんどんと沈み始める。奈理子は、再びあのミラクルナイトとして、待ち構えている闘争に身を投じる決断をする。手にした変身アイテムを掲げ、奈理子はミラクルナイトへと姿を変えた。

ウミウシ男の攻撃は激しく、次々と奇妙な技を使ってくる。彼の身体はウミウシのように軟らかく、どんな攻撃も受け付けない。一方、ミラクルナイトは怯えることなく戦い続けるが、次第に力尽きていく。戦闘の熱気に焦がされた頬、汗でぬれた白いスカートが風に舞う。

しかし、その中で一瞬、ミラクルナイトのスカートが剥がれ落ちた。スカートの下には、無垢な白いパンツが姿を現した。その瞬間、彼女の顔は紅潮し、周囲の視線が彼女に集まった。しかし、ミラクルナイトは身を震わせながらも戦い続けた。

だが、結果は敗北だった。ミラクルナイトは力尽きて倒れ、 意識は闇の中に落ちていった。ウミウシ男の影が、街頭の光を背にして巨大化し、ミラクルナイトの無力な身体を包み込んだ。白いパンツが街頭の光に照らされてひときわ明るく輝き、その光景は奈理子の闘争の象徴となった。


明かりの刺す街頭に映し出されたのは、ミラクルナイトの姿。しかし、一見の価値があるその姿は、ウミウシ男によって再び引き裂かれていた。彼の去り際の残酷な笑い声がまだ耳に残る中、ドリームキャンディがその場に到着した。

「また奈理子さんスカート脱がされちゃって…」

ドリームキャンディのつぶやきが、静寂に満ちた空間を埋めた。街灯の明かりが、ミラクルナイトの無防備な姿を強調し、その場にいた全ての者の目を奈理子に引き付けた。まるで見せつけるかのような彼女の白いパンツは、夜の闇を裂き、照らされた光景はまるで無意識の招待状のようだった。

慌ててドリームキャンディがミラクルナイトの傍らに膝をついた。彼女の手がミラクルナイトの体に触れると、汗に濡れた身体から柔らかい熱が伝わった。特に白い木綿パンツは汗をたっぷり吸って湿っており、奈理子の汗の臭いが辺りに広がった。

それにも関わらず、周りの群衆はひとりとして引き返す者はいなかった。全員が奈理子の白いパンツとそこから伸びる細い脚に目を向けていた。ドリームキャンディはその視線を感じ、奈理子の開かれた股間にを手で隠した。その一瞬、彼女は一瞬、その白いパンツに手を触れる衝動を抑えた。そして、ミラクルナイトが気を失っている間、群衆の視線から彼女の白いパンツに隠された大切な場所を周囲から守った。

奈理子が自分の悩みを克服することを願いながら、ドリームキャンディはその白いパンツにそっと手を添えた。しかし、彼女が密かに疑問に思ったのは、ミラクルナイトが一方的に敗れた理由だった。彼女は弱くはないはずだ、と。奈理子自身に何か問題があるのだろうか、と彼女は考えた。手のひらから伝わる暖かさは、奈理子の苦しみを代弁しているかのようだった。


ドリームキャンディの手は、ミラクルナイト、すなわち奈理子の身体を優しく支える。その無防備な姿を見つめながら、彼は隆の家の玄関先に彼女を静かに置く。隆の部屋からこぼれる暖かい光が、奈理子の肌をほんのりと照らす。ドリームキャンディの心は痛む。彼女の弱々しい姿を見るのは、予想以上に辛い。

彼は心の中で問いかける。

「隆は、スカートを脱がされた、気絶している姉の姿を見たとき、どんな感情を抱くだろうか?」

しかし、答えは出てこない。代わりに、夜の風が冷たく、虫の鳴き声がただ一人の奈理子をさらに孤立させる。

「このままでは虫に刺されてしまう」

と思ったドリームキャンディは、ミラクルナイトの目を覚まさせようかと思った。必要以上に気遣うドリームキャンディの手は奈理子の頬にゆっくりと触れる。触れた瞬間、彼女の微弱なうめき声が聞こえてくる。それは、ドリームキャンディが何もできないという自身の無力感を強める。

結局、ドリームキャンディはそのままミラクルナイトを置いて去ることを選んだ。ドリームキャンディが奈理子にできることは何もないこと、それを彼女は深く理解していた。その思いを胸に秘めて彼女は立ち去る。その手には、まだ奈理子の白いパンツ越しに感じた奈理子の股間からの温もりが残っていた。

「奈理子さん、頑張って……」

彼の心は彼女に向けた祈りで満ちていた。

第57話へつづく)