ミラクルナイト☆第142話
水都公園近くの雑居ビルの屋上。ライムは事後の奈理子を眺めていた。余韻に浸っているのか、奈理子はうつ伏せで腰を高く上げたままの姿勢でグッタリとしている。
これまでは、金を掛けずに二人きりになるには水都公園内の運河に架かる橋の下を使ってきた。しかし、橋の下では誰が降りてくるか分からないため、ライムにとっては不安だった。座るライムに奈理子が跨り、声を殺して行うしかなかった。奈理子は後ろからの方が好きだ。奈理子の口から直接聞いたわけではないが、奈理子の反応からライムは確信を持ってそう思う。ここなら、存分に奈理子を可愛がってやることができる。いい場所だとライムは思うが、この場所を奈理子に教えたのは香丸らしい。奈理子はここで香丸と何をしていたのか?ライムは良からぬ妄想を膨らませていた。
「じっと見ないでよ」
奈理子が身を起こし、片足だけ脱がした白いパンツを穿き直す。制服は脱がしていない。自分の彼女ながら、改めて奈理子は可愛いとライムは思った。
「魔物とはまだ遭遇していないんだな?」
ライムは話を逸らした。水都の守護神ミラクルナイトの本来の使命は魔物の侵略から水都を守ることだった。
「私はまだだけど、魔物と戦ったキャンディは魔物は弱いって言ってたよ」
奈理子が答える。ドリームキャンディはミラクルナイトよりも強い。ドリームキャンディから見て弱くても、ミラクルナイトにとっては弱いとは限らない。魔物が奈理子の味を知ってしまったら、魔物はこぞって奈理子を襲って来るだろう。奈理子の味を知り尽くしたライムにはそれが分かる。
「奈理子、魔物のことはドリームキャンディとセイクリッドウインドに任せた方がいい」
ライムは奈理子を抱き寄せながら言った。
「ダメだよ。水都の守護神は私なんだから…」
と言う奈理子の口をライムはキスで塞いだ。
「んッ…」
奈理子の鼻息がライムの頬に当たる。ライムは奈理子の鼓動を感じながら、可愛い奈理子を魔物の手から守るためにはどうすればいいのか、思いを巡らせていた。
その日の夜、奈理子の部屋。奈理子は放課後の雑居ビル屋上でのライムとの情事を思い出していた。今日のライムは激しかった。ライムは後ろから奈理子を責めることが好きだ。ライムの口から直接聞いた訳ではないが、ライムの反応から奈理子はそう思う。後ろからされると膝が痛い。だが、後ろからされると、身も心もライムに捧げているという高揚感がある。奈理子は向かい合ってするのが好きだったが、後ろからも嫌いではない。相手がライムであるならばだ。奈理子はベッドに横になり、ショートパンツを脱いだ。ライムの舌と指を思い出し、クロッチ越しに敏感な箇所を撫でる。
ライムは奈理子が魔物と接触することを好まない様子だった。ドリームキャンディの寧々は魔物は弱いと言っているが、奈理子は未知の敵である魔物が怖い。しかし、水都の守護神ミラクルナイトとして、奈理子は逃げることはできない。正体不明の新たな敵への不安を紛らわせるため、四つん這いになった奈理子は自分の指で自分を慰める。
白いパンツを脱ぎ捨て、ベッドに伏せ、ドアに尻を向け、自分の指で中を掻き回す奈理子。
「ライム…好きぃ…」
と奈理子が呟いたときだ。
「姉ちゃん、入るぜ」
突然、バタンとドアが開き、隆が奈理子の部屋に入って来た。あられもない姉奈理子の姿を見て、目が点になる隆。弟に見られてしまい一瞬固まった奈理子だが、その後の反応は早かった。
「またノックせずに入って来て!出て行ってよ!」
奈理子は素早く枕を隆に投げ付けた。
「怖えー」
と言いながら隆は奈理子の部屋を出て行く。奈理子の怒りは収まらない。リビングに駆け込み、
「ママ!隆がノックもせずに勝手に私の部屋に入って来るの!ママから隆を怒って!」
と怒りをぶち撒ける。しかし、ママは
「姉弟なんだから別にいいでしょ。それとも、隆に見られちゃ困ることでもしてたの?」
と冷たく告げる。何も言い返せない奈理子。
「奈理子はお姉ちゃんなんだから、隆を叱りたければ自分で叱りなさい」
とママは逆に奈理子を責める。
「うぅ…」
と怯む奈理子。叱れと言われても、隆が素直に奈理子の言うことを聞くとは思えない。既に腕力では中学生の隆に敵わないことを奈理子は自覚している。掴み合いの喧嘩になれば負けるのは姉の奈理子の方だ。姉が弟に優位に立てるのは、弟が小学校の中学年くらいまで。奈理子は、姉の、女の弱さを噛み締めながら自分の部屋に戻った。
翌日の水都中学一年A組の教室。隆はボンヤリと窓の外を眺め、昨日の奈理子の部屋での出来事を思い出していた。姉である奈理子がライムの名前を呟きながら自分を慰めている場面を目撃してしまったことはショックだった。
「隆、どうしたの?」
寧々が心配そうに声を掛ける。隆は寧々を見て、
「姉ちゃんがアイツと付き合い始めたのはいつ頃からだ?」
と聞いてみた。ドリームキャンディの寧々は隆が知らないことも知っているかもしれないと思ったからだ。
「さぁ…」
寧々は考える。寧々は一昨年の秋頃に奈理子がライムに告白しているのを偶然見たことがある。あの頃は、ライムは敵だった。実際にいつから奈理子がライムと付き合い始めたのかは寧々は知らない。
「少なくとも一年以上は付き合っていると思うけど…。」
もっと前から二人は付き合っているはずだと思ったが、寧々はそう答えた。
「一年か…」
一年も付き合えば仕方が無いかな、と隆は思ったが、姉を他の男に奪われた敗北感は消えない。
「去年の夏休みにプールでデートしてたね。あのときの奈理子さん、可愛かったぁ」
と寧々が努めて明るく言った。去年の夏休みに隆と寧々は二人で、水都市民プールでデートしている奈理子とライムの様子を探りに行ったことがある。
「今年もプール行こうか?」
寧々は隆の顔を覗き込んだ。「あのとき、寧々はスクール水着だったよな」
隆が寧々を見る。あのときの奈理子は水色のビキニだった。寧々は、隆が寧々にビキニを着用することを望んでいると思った。どうしようかと寧々が考えていると、教室が騒然となった。
教室の入口に二年生のライムが立っている。ライムは女子から一番人気の美少年だ。一年A組の女子がキャーキャー言っている。
「アイツ、何の用だ」
隆が姉の彼氏であるライムを睨む。ライムは寧々を見つけると手招きした。
「私に用があるみたい」
寧々は隆に言った。
「姉ちゃんの次は寧々かよ」
隆が毒突く。
「そんなに悪い人じゃないよ。奈理子さんが好きな人なんだから」
と隆に言うと、寧々はライムの方に歩いて行った。
ライムは寧々に何か耳打ちした。寧々は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに頷いた。
「何の話だ?」
隆は苛立ちを感じながらその様子を見守る。寧々が戻ってくると、隆はすぐに問い詰めた。
「何だって言われたんだ?」
寧々は一瞬躊躇ったが、やがて小さな声で答えた。
「ライムが、奈理子さんに危険が迫ってるから、助けを求めてきたの。私たちも協力するべきだって…」
隆の胸に不安が広がる。
「姉ちゃんに危険って、一体何があったんだ?」
寧々は真剣な表情で、
「詳しいことはまだ分からないけど、何か大きな事件が起きる前に、私たちが動かなきゃならないみたい」
と言った。
隆はその言葉を聞いて、姉を守るために自分も何かできることがあるのかもしれないと思い始めた。
「分かった。俺も協力するよ」
と隆は決意を新たにした。これから始まる新たな戦いに備え、彼らの絆は一層強くなっていくのだった。
そのころ、鄙野の町では…。
「コマリシャス様、水都の守護神をやっつけに行こうぜ!」
「守護神の蜜を俺たちも味わいたいぜ!」
ムカデドリルとヘビサンダーがコマリシャスに詰め寄っていた。
「紗理奈、どうしよう?」
コマリシャスは御祖紗理奈に意見を求めた。腕を組み考える紗理奈。魔物の中でも凶悪そうな見た目のムカデドリルとヘビサンダーは魔界軍の主力となることが期待される。水都攻略にはまだまだ戦力が足りないが、ムカデドリルとヘビサンダーの力を試してみるのも悪くはない、と紗理奈は判断した。
「いいわ。ムカデドリルとヘビサンダーに水都の守護神ミラクルナイトを襲わせましょう。ただし、狙いはミラクルナイト一人だけ」
紗理奈は注文を付けた。戦力の逐次投入は避けるべき。本格的な水都攻略はまだ先だと紗理奈は考えている。
「え〜!あの生意気なガキンチョもやっつけようよ」
コマリシャスは不満気だ。コマリシャスには、ガキンチョ=ドリームキャンディにミミズドローンとケムシデンチを倒された恨みがある。
「ムカデドリルとヘビサンダーは初めての戦いになるから、先ずは弱いミラクルナイトからよ」
紗理奈はコマリシャスを宥めた。
「ミラクルナイトって美味いのか?」
ムカデドリルが紗理奈に聞く。
「ミラクルナイトの野宮奈理子は水都一の美少女よ。絶対に良い味がするわ」
紗理奈が答える。
「そいつは楽しみだ。水都一の美少女を俺のサンダーで丸裸にしてやるぜ!」
ヘビサンダーがやる気を見せる。盛り上がるムカデドリルとヘビサンダーを見て、紗理奈は
「面白くなってきた。早速、研究所に報告しなきゃ」
と北叟笑みながら席を外した。
「紗理奈はあんなに言ったけど、ガキンチョもやっつけちゃいなよ」
コマリシャスはムカデドリルとヘビサンダーにコソッと告げた。
そして、穢川研究所の社長室…。
「先程、御祖さんから連絡がありました。二匹の魔物がミラクルナイト攻撃のために水都に向かうようです」
と一之木多実が勅使河原に報告した。
「魔物など何匹来ようが…」
と勅使河原の側近である渦巻が言いかけたが、
「今回は前回よりも強力な魔物とのことです」
と多実が遮った。
「奈理子と魔物か。面白そうだな」
勅使河原が呟く。
水都の守護神ミラクルナイト、野宮奈理子にまたもや危機が迫ろうとしていた。
夕方、学校や仕事帰りの人々で賑わう水都タワー前広場は一瞬でパニックに陥った。
「私の魔物たち、さぁ、好きなだけ暴れなさい」
と楽しげに呪紋を唱えるコマリシャスの声が響き渡る。広場の石畳に突然現れた二つの魔法陣。その中から、右手が電気ドリルである百足の魔物ムカデドリル、左手が電動サンダーである蛇の魔物ヘビサンダーが出現した。
二匹の魔物の出現に逃げ惑う市民たち。ムカデドリルが広場の至る所に穴を開け、ヘビサンダーがあらゆる物を削る。巻き起こる粉塵で視界が揺れる中、タワー前広場は地獄絵図の様相を呈していた。その禍々しい姿に、
「これは想像以上かも」
と紗理奈はワクワクしながら呟く。
「当たり前じゃん。ムカデドリルとヘビサンダーは強いよ!」
とコマリシャスは得意気に答える。
奈理子はすみれと別れ、ライムとの待ち合わせ場所である水都公園に向かう途中だった。すると、町内放送で水都タワー前に謎の化け物が出現したという知らせを聞いた。
「謎の怪人?もしかして、ライムが言っていた魔物??」
と奈理子は思う。
未だ魔物と遭遇していない奈理子にとって、未知の敵である魔物への不安はあった。しかし、水都の守護神ミラクルナイトとして、市民を守る責任を感じていた。
「水都の平和を乱す者は私が許さない!」
と自分を奮い立たせる奈理子。アイマスクを掲げ、ミラクルナイトに変身する。
白い翼、ミラクルウイングを広げたミラクルナイトは、急いでタワー前広場に飛び立った。広場に到着すると、目の前に広がる混乱と破壊に一瞬息を呑むが、すぐに覚悟を決める。
「私が来たからにはもう大丈夫。水都の平和を乱す者は、私が許しません!」
ミラクルナイトは声高らかに宣言する。彼女の登場に市民たちは安堵の表情を浮かべ、希望を取り戻す。
「ミラクルナイトが来た!」
「頑張れ、ミラクルナイト!」
市民たちの声援が響く中、ミラクルナイトはムカデドリルとヘビサンダーに立ち向かう。戦いは始まったばかりだったが、奈理子の決意は固かった。水都の平和を守るため、彼女は全力で戦う覚悟を胸に秘めていた。
水都タワー前広場に響き渡るミラクルナイトの高らかな宣言。
「水都の平和を乱す者はミラクルナイトが許しません!」
風に揺れるスカートが、奈理子の美しい太股と白いパンツをチラチラと露わにする。
「奈理子のパンツは今日も白だ!」
「奈理子、今日も可愛いぞ!」
「奈理子のパンチラ最高!」
広場の市民たちは、美しすぎるミラクルナイトの姿に魅了され、声援を送る。
水都の守護神ミラクルナイトの絶大な人気を目の当たりにして闘志を燃やすムカデドリルとヘビサンダー。
「確かに、可愛い。水都の守護神の蜜がどんな味がするのか楽しみだ」
「魅力的なパンツだ。グチョグチョにしてしゃぶり尽くしてやるぜ」
と言いながら、二匹の魔物はミラクルナイトにじりじりと迫る。
太股に注がれる二匹の魔物の視線を感じたミラクルナイトは身の危険を感じ、スカートを押さえた。改めてムカデドリルとヘビサンダーの姿を見て、その異様さに足が竦む。ムカデドリルの右手は回転するドリル。ヘビサンダーの左手は回転する円形の砥石。今まで戦ってきた怪人たちは生物由来の鋏や牙、触手を持っていたが、目の前の二匹は明らかに違う。彼らの武器は機械であり、凶器に為り得るものだった。
「貴方たち、一体何者なの?!」
ミラクルナイトは怯えていることを悟られないように叫ぶ。
「俺たちはコマリシャス様に仕える魔物だ。守護神のクセにそんなことも知らないのか?」
「水都の守護神はバカだな」
と二匹の魔物は嘲笑う。
「これが魔物…」
寧々から魔物は弱いと聞いていたが、本当に弱いののだろうか?ミラクルナイトは泣きたくなった。
「奈理子、頑張れー!」
「魔物なんかやっつけちまえ!」
市民たちは、イチゴ女とドリームキャンディが魔物を簡単に倒したことを知っているため、魔物は弱いと思い込んでいる。
「うぅ……戦うしかない……」
市民の声援に後押しされ、ミラクルナイトは覚悟を決めた。彼女の瞳に決意の光が宿り、ムカデドリルとヘビサンダーに向かって一歩を踏み出す。
「えい!」
ミラクルナイトが水色の光弾を連射する。その風圧で舞い上がるスカート。白いパンツと生脚を露わにしたミラクルナイトの美しい姿に、市民から歓声が沸き起こる。
「うわぁっ!」
光弾の直撃を受け、吹き飛ばされるムカデドリル。
「もしかして、弱い?」
そう思ったミラクルナイトは果敢にムカデドリルに迫る。お得意のハイキックを放とうとするが、
「クソっ!」
ムカデドリルがドリルを回転させた。ウィーン!と恐ろしげな機械音が鳴り響く。
恐怖に駆られたミラクルナイトは、思わず
「ヒャッ!」
と飛び退いてしまった。
「ヘへヘ、ドリルの音が苦手なようだな」
とムカデドリルがニヤリとする。
「怖い…」
青ざめるミラクルナイト。
「苛め甲斐がありそうな守護神だ。ほれ!」
ムカデドリルはフェンシングのように次々とドリルを突き出す。
「うッ」
後退しながらドリルを避けるミラクルナイト。ムカデドリルの責めを避けるのが精一杯で、ヘビサンダーの存在を忘れていた。
「俺がいるのを忘れるなよ!」
ヘビサンダーが回転するサンダーを繰り出した。
「きゃぁ~!」
悲鳴を上げながら躱すミラクルナイト。しかし、サンダーはミラクルナイトのスカートを切り裂いてしまった。
スカートを失い、パンツを隠すために座り込むミラクルナイト。
「お楽しみはこれからだぜ、守護神さんよ」
「たっぷりとしゃぶり尽くしてやるぜ」
と二匹の魔物がドリルとサンダーの回転音を唸らせながらニヤリと迫る。
恐怖のあまり腰が抜けたミラクルナイトはただ震えるしかなかった。
そのときだ、黄色い光とともにドリームキャンディが降臨した。
「奈理子さんを苛める者は、中学生戦士ドリームキャンディが許しません!」
ドリームキャンディは高らかに宣言した。
「姉ちゃん!」
隆が駆け寄ってきた。
「魔物は寧々に任せるんだ」
と言いながら、ミラクルナイトの肩を抱き寄せる。
「魔物の狙いは奈理子さんです。隆が言う通り、奈理子さんはそこで見ててください」
とドリームキャンディが告げる。
力強くミラクルナイトの肩を抱く隆。身を委ねるミラクルナイト、奈理子は弟の隆を頼もしく思った。
「隆…」
と隆に目を向け言いかけたが、隆の視線が奈理子の白いパンツに向けられていることに気付き、ハッと顔を背けた。昨夜の出来事が思い出される。
「隆、昨日のことは忘れて…」
恥ずかしげに口にするミラクルナイト。隆は何も言わず、ミラクルナイトのアイマスクを取った。そこにあるのはかか弱い姉、奈理子の素顔だった。
「どうして…?」
隆がアイマスクを取った真意が分からず戸惑うミラクルナイト。
「姉ちゃんの顔とパンツを一緒に見たかったんだ」
と隆が言うと、ミラクルナイトは
「変態!」
と叫びながら隆を突き飛ばした。
「コマリシャス、ドリームキャンディが来たわ。ムカデドリルとヘビサンダーを退かせて」
と紗理奈はコマリシャスに撤退を促す。
「え〜!ムカデドリルとヘビサンダーならガキンチョにも勝てるよ!」
コマリシャスには撤退の意思が無い。
「狙いはミラクルナイトだったでしょ」
「ガキンチョをやっつけて、ミラクルナイトを苛めるの!」
説得を試みる紗理奈だが、コマリシャスは聞く耳を持たない。見た目は幼稚園児か小学校低学年のコマリシャスが、何故中学生のドリームキャンディをガキンチョ呼ばわりするのか、紗理奈は不思議でならなかった。
そのとき、緑色の光とともにセイクリッドウインドがタワー前に降臨した。
「あのオバちゃんもやっつけちゃえ!」
とコマリシャスが叫ぶ。大学を卒業したばかりのセイクリッドウインドをオバちゃん呼ばわりするとは…。
ドリームキャンディとセイクリッドウインドはミラクルナイトよりも強い。
「こりゃダメだ…」
と紗理奈は呟いた。
「何か、コイツらヤバくない?」
セイクリッドウインドがムカデドリルとヘビサンダーの姿を見て、ドリームキャンディに言った。
「今までの魔物とはちょっと違うかも…」
ドリームキャンディも二匹の魔物に少し高まる恐怖を感じていた。ドリルとサンダーは見るからに危険だ。
「こんな奴らには…」
セイクリッドウインドが二匹の魔物の前に出る。
「何だお前は?ガキンチョのことは聞いていたが、コスプレおばさんのことは聞いてないぞ」
「俺たちは水都の守護神とガキンチョに用があるんだ。おばさんにはお引き取り願おう」
二匹の魔物がドリルとサンダーを回転させる。タワー前広場に響き渡る不気味な機械音。しかし、セイクリッドウインドは動じない。
「誰がおばさんですって!」
逆にセイクリッドウインドの怒りに火を付けてしまった。
「ヌルヌル発射!」
セイクリッドウインドの掌からナメコの粘液が放たれる。ドリルとサンダーに絡みつく粘液。ウィ…ィ…ィン……と鈍い音を残し、ドリルとサンダーの回転が止まった。
「うわぁ!どうしたんだ?!」
「バッテリー切れか??」
二匹の魔物が慌てだす。セイクリッドウインドがガストファングを構える。
「水都から立ち去りなさい!」
ガストファングを振るうと、発生した竜巻が二匹の魔物を遥か遠くに吹き飛ばしてしまった。
「凜さん、お見事!」
ドリームキャンディが称賛の声を上げる。市民たちも拍手喝采し、タワー前広場は一気に明るい雰囲気に包まれた。セイクリッドウインドは微笑みを浮かべ、満足げにガストファングを納めた。
「奈理子さん、大丈夫ですか?」
ドリームキャンディがミラクルナイトに駆け寄る。
「うん、ありがとう。セイクリッドウインドが来てくれて助かったわ」
ミラクルナイトは弱々しく笑った。
「私たちがいる限り、水都の平和は守られるわ」
セイクリッドウインドが力強く宣言した。
「そうだね。これからも一緒に戦いましょう」
ミラクルナイトは仲間たちと手を取り合い、再び立ち上がる決意を新たにした。
手を取り合い、勝利を称え合う三人のヒロイン。その中で唯一ミラクルナイトだけがスカートを穿いていなかった。ドリームキャンディとセイクリッドウインドは奈理子の純白のリブ編みショーツに目を向けた。汗や埃で少し汚れているが、激しく濡れたり乱されてたりはしていない。セイクリッドウインドはミラクルナイトが無事であることにホッとして、
「奈理子が無事で良かった」
と微笑んだ。
「奈理子さん、魔物は奈理子さんの愛の蜜が好物みたいだから気を付けてくださいね」
とドリームキャンディも微笑んだ。
「蜜?」
首を傾げるミラクルナイト。しかし、
「あれ?隆はどこ?」
ドリームキャンディは隆が見当たらないことに気付く。
「あんなバカのことは知らないわ」
とミラクルナイトが忌々しげに口にする。
「隆くんならあそこ」
セイクリッドウインドがミラクルナイトに突き飛ばされ、伸びている隆を指す。隆はライムに介抱されていた。
「しっかりしろ」
とライムが隆を揺する。
「う…姉ちゃんの奴、本気で突き飛ばしやがった……」
「お前、奈理子に何を言った?奈理子の怒りっぷりは尋常じゃなかったぞ」
ライムは奈理子と隆の間で何があったのか知る由もなかった。
「あ~っ、あの男どっかで見たことある!」
コマリシャスがライムを指差し紗理奈に言った。
「彼は奈理子の彼氏のライムだよ。水都では知らない人はいない程のラブラブカップル」
説明する紗理奈。
「へ〜、守護神のクセに特定の彼氏がいるんだ。守護神は守るべき人々全てを愛さなきゃいけないんじゃないの?」
「コマリシャスって、見かけによらずマトモなことも言うのね」
コマリシャスの意外な反応に紗理奈は驚いた。そして、
「ムカデドリルとヘビサンダーもいなくなったし、長居は無用よ。鄙野に帰ろう、コマリシャス」
紗理奈はコマリシャスの手を引いた。
「あの男、何だったかなぁ…」
ライムを振り返り、何かを思い出そうとするコマリシャスだが、思い出すことはできなかった。
「まぁ、いいや。ムカデドリルとヘビサンダーは大丈夫かな?」
「吹き飛ばされただけだから消滅はしていないと思うけど…」
打倒ミラクルナイト、ドリームキャンディを果たせなかったコマリシャスと紗理奈は手を繋ぎ水都を後にした。次こそは水都のヒロインを倒すことを夢見て…。
(第143話へつづく)












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