ミラクルナイト☆第83話
水都信用金庫公園前支店の閉店間際の空間に、突如として非日常が訪れた。
「お金を出せ!」
と窓口にサングラスとマスクで姿を隠した男が怒鳴った。窓口で業務をしていた多実が静かにその額を上げると、彼の冷たく狂気じみた眼差しに直接捉えられた。突如として彼女の手首を強く掴んだ男は、鋭い包丁を多美の首筋に突きつけた。
店内の空気が一瞬で凍りつく。そしてもう1人の男が、天井に向けて拳銃を発砲し、緊張感が最高潮に達した。慌てた客たちは、入口に向かって逃げ出した。一方、包丁を持つ男は、カウンターを乗り越え、多実を人質に取りながら、他の職員たちを外へ追い出していった。
静寂。店内には多実、包丁男、拳銃男の三人だけが残された。
「お前、一之木多実…か」包丁男は多実の顔と名札を確認し、彼女のタイトスカートに包まれた臀部をじっと観察する。拳銃を持った男は冷たく袋を差し出した。
多実は怒りに震えながらも機転を利かせ、袋に現金を詰め始めた。心の中では、「誰かがきっと緊急通報のボタンを押している。もうすぐ警察が来るはずだ」と確信していた。しかし、彼女の心にはもう一つの問題が渦巻いていた。
「イチジク女に変身すれば、こんなバカ強盗なんか一瞬で倒せるのに…」と彼女は心の中で嘆いた。だが、もし彼女が変身すれば、その正体がばれてしまう。このフロアに多実以外の職員がいないだけで、2階にも職員がいるはずだ。このフロアと壁一枚隔てた応接室にも誰かが逃げ込んでいるかもしれない。そんな中、多実はどう行動すればいいのかを迷っていた。
彼女の目には冷静さと決意が灯り、多実は包丁男の指示に従うことを決意した。どんな状況でも、彼女は自分の正体を守り、このピンチを乗り越える覚悟を決めていた。
水都信用金庫の密室で、時間は緊迫しつつも、進むとは言えない状況が続いた。
「服を脱げ!」
包丁男が多実に命令した。彼の視線は、多実何か危険なものを身に隠しているのではないかという疑念と同時に、多実を辱めたいという欲望に満ちていた。多実は一瞬、その命令に反抗する気持ちが湧き上がったが、彼女は状況を冷静に判断し、制服のベストとブラウス、スカートをゆっくりと脱いだ。
「これでいいでしょ!」
キャミソールとパンスト、その下のショーツだけの姿になった多実は、挑戦的な目を向けて包丁男に言った。
だが、彼の命令はそこで終わらなかった。
「上も脱げ」
と彼は再び言った。
多実の目には怒りの炎が灯った。入口のシャッターと窓のブラインドは閉じられているが、店内の監視カメラが彼女の姿を捉えている。そんな中で、彼女はキャミソールを脱ぎブラジャーだけの無防備な姿になった。外では警察のサイレンが鳴り響いていた。彼女は、今すぐにでもイチジク女に変身し、この無慈悲な男たちを制裁したい衝動にかられた。
しかし、彼女は慎重に、次の行動を見極めていた。外からは警察の動きが聞こえてきて、2階からの突入を予感させる雰囲気が漂っていた。
だが、包丁男は多実を人質として使うつもりで、外の警察に
「車を用意しろ!」
と高らかに叫んだ。外にこの格好で引きずり出される可能性に、多実の心は凍りついた。
今、彼女の中で戦っているのは、正義感と自己保存の本能。その狭間で、多実は次の一手を慎重に計算していた。
信用金庫の店内、激しい緊張感が漂う中、後ろ手を縛られた多実は勇気を振り絞って強盗を睨みつけた。
「逃げられるはずないでしょ!さっさと投降しなさい!」
彼女の声は怒りと絶望が混じり合ったものだった。
包丁男の表情は一瞬、驚きに変わったが、すぐに不機嫌な顔に戻り、
「煩い!」
と怒鳴り、多実のブラを無慈悲に剥ぎ取った。彼女の美しい胸が露わになる。
「くぅ…」
多実の目には怒りと屈辱、そして一抹の恐怖が浮かんでいた。バカな強盗のせいでこんな目に遭わなければならないとは…その状況の中で、彼女は深い悔しさを感じていた。
外の騒音をバックに、多実は必死に強盗に諭す。
「警察が用意する車って、何か仕掛けがしてあるはずよ。使うのは賢明じゃないわ。」
彼女の目には、強盗に何とか合理的な判断を下させようとする真剣さが宿っていた。
だが、包丁男の顔は冷徹なままで、彼は多実の眼を見据えて言った。
「小細工させないために、お前がここに人質としているんじゃないか。」
多実の心がギュッと締めつけられるような感覚に襲われた。絶望と無力感で、彼女の視界は暗くなっていった。
水都の街並みはいつもとは異なる、どこかざわざわとした空気に覆われていた。明らかに街の雰囲気は一変しており、その変化の中心となる信用金庫の強盗事件が、住民たちの顔にも影を落としていた。
頻繁に怪人が現れるため治安が良い街とは言えないが、強盗などの凶悪犯罪が起こったことは奈理子の記憶にはなかった。
水都市の市立小中学校は急遽休校となり、奈理子が通う水都中学校も集団下校することになった。水都中学の門は、例外なくその緊張を受けて閉ざされていた。奈理子は、他の生徒たちとともに教室から出てきた。普段の放課後の軽やかな足取りとは異なり、今日の彼らの歩みは重かった。
奈理子の胸中もまた、複雑な思いでいっぱいだった。普段は街の平和を守るミラクルナイトとして、悪を討ち取る彼女だったが、今回の事件は異なっていた。警察の管轄であり、自分が出て行くことはかえって邪魔になるだけだろう。しかし、ただ見ているだけの自分の無力さを感じ、心の中で葛藤が渦巻いていた。
強盗が立て籠もった支店は水都公園の近くにあり、奈理子の普段の通学路にあった。その場所との距離の近さが彼女の不安を増長させていた。
集団下校の仲間たちの話し声や足音が遠くから聞こえてくる中、奈理子は深く考え込んでいた。ミラクルナイトとしての役目と、ただの中学生としての役目。どちらが今、正しいのか。彼女の心の中で、その答えを探る旅が始まっていた。
水都の街は息をのんでいた。夕闇が迫る中、水都信用金庫公園前支店の周囲は異様な緊張感に包まれていた。そして、その中心には、多実がいた。
「そろそろ行くぜ、多実ちゃん。」
と、包丁男が不敵に言いながら彼女の頬を叩く。多実の目は怒りと屈辱で濡れていたが、彼女は意地でも涙は見せなかった。
多実は既にパンストとショーツまでも剥ぎ取られていた。多実をできるだけ目立つ姿にして皆の目を引き付け、その間に逃走用の車に乗り込もうという魂胆だ。多実は、自身の白い肌に目立つ濃い毛を悔やんでいた。
隣では拳銃男が多実から取り上げたスマホを使って警察と交渉を続けている。話が終わると、彼は多実の目の前に立ち、彼女を引き連れて盾として窓の前に立たせた。縛られた多実の姿は、彼らの計略により、弱い状態で見せられていた。ひときわ目立つ彼女の黒い毛が弱々しさを引き立てる。
窓のブラインドが一斉に上がると、その瞬間、信じられないほどの多数のマスコミのカメラと野次馬の群衆。そして、多実の裸体に向けてフラッシュの雨が降り注いだ。群衆の中から、悲鳴や怒号、驚きの声があがっていた。
多実の視界は一瞬、白く閃いた。彼女は目眩を感じ、体を乱れるかと思われたその時、
「しっかりしろよ、多実ちゃん。」
と、包丁男の手が彼女の腰を固く支えた。そして、多実の豊かな毛を撫でながら、
「多実ちゃんはこの街の伝説になるんだぜ。」
包丁男の口から、冷ややかでありながらも狂気を帯びた声が漏れた。彼の言葉の意味を理解するよりも前に、多実の心は深い闇に沈み込んでいった。
勅使河原の執務室の深い闇の中、大型のモニターだけが光を放っていた。それは水都の街を揺るがす信用金庫の立て籠もり事件の生中継。モニターの中心には
『人質 水都信用金庫職員 一之木多実さん(26歳)』
の露わになった姿が映し出されたが、テレビ局側で放送できないと判断され、その映像はわずかな間で遮られた。
髭の大男である赤岩が笑いながら、嘲るように言った。
「これだけ恥をかかされたら、信用金庫の仕事は続けられねぇな。」
テレビだけでなく、多くの野次馬が多実を撮影をしていたはずだ。未成年の奈理子とは違い、強盗の人質にされた多実の動画は容赦なく動画投稿サイトにアップされるだろう。
スキンヘッドの氷川は細い目をさらに細め、悠々とした口調で言った。
「これで多実は勅使河原さんのものだ。」
この強盗事件は氷川と赤岩が仕組んだものだった。渦巻は鼻を鳴らしながら溜息をつき、
「我々の同志であるイチジク女をこんな目に遭わせるなんて、あなたち本当に冷酷ですねぇ。」
赤岩が反論する。
「奈理子以上の恥をかかせてやれ、と指示したのは勅使河原さんだぜ。」
室の片隅で、勅使河原はクロスした手に顎を乗せ、優越感に浸っていた。彼の目は計算し、次の手を考える輝きを放っていた。彼の唇の隅が、満足げに上がった。
「これからの楽しみが増えたな」
と、心の中でほくそ笑んでいた。
多実を人質としたこの強盗事件は、水都の伝説として永遠に語り継がれることとなった。
(第84話へつづく)
(あとがき)













ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません