DUGA

ミルキーナイト~胡桃・21歳~☆第20章「ぬめる執着、燃える決意」

 夕暮れの鄙野・文化センター跡地。  ひび割れたコンクリートの床に、ミルキーナイトはひとり立っていた。

 (また……あいつが来る気がする)

 不意に、粘液を踏むようなぬちゃりという音。  その予感はすぐに的中した。

 「おおおお……やはり、来ましたか……! 美しきミルキーナイト!」

 空から滑るように降り立つナメクジロー将軍。  粘液の雨を撒き散らしながら、仰々しくポーズを決めた。

 「その臍……その太腿……完璧です……! 魔界の戦士としてではなく、粘液の詩人として讃えましょうぞ!!」

 「うわっ! 出たな変態ナメクジ!!」

 ミルキーナイトはすかさず跳び蹴りを放つが、ナメクジローは体をぬらりとひねって回避。

 「おっとっと。君の蹴り、その滑らかな筋肉の動き……今夜の夢に保存です!」

 「キモいッ!!」

 怒りと羞恥を乗せたコンボ攻撃。  しかしすべて、ぬるり、ぬるりと避けられてしまう。

 「だが、そろそろ我が粘液の本領をお見せせねばなりませんな……」

 ナメクジローは背中の触手を広げ、周囲に粘液弾を放った。  地面、壁、空間がすべて滑りやすく変質する。

 ミルキーナイトは足を取られ、バランスを崩す。

 「しまっ──わっ……!」

 その隙に、粘液の鞭が彼女の手足を縛り上げた。

 「はぁ……美しい……拘束されることでこそ、君の肢体は真の輝きを放つ……」

 「やめてっ、離して!!」

 「この粘液は、ただの液体にあらず。魔界特製“ヌルヌルフォールド”。五感を鈍らせ、羞恥を増幅させる機能が……」

 「だからキモいんだよぉおおおおおっ!!」

 粘液に覆われて膝をつくミルキーナイト。  顔を背けても、ナメクジローのぬらぬらとした賛辞は止まらない。

 「このまま、我が粘液のコレクションルームへ──」

 そのとき。

 「吹っ飛べ変態ナメクジ!!」

 風の爆音。  プリティ・ストームの乱入と共に、竜巻の刃がナメクジローの腕を吹き飛ばした。

 「なっ……貴様、またしても邪魔を……!」

 「うるせぇ! へそがどうとか言ってんじゃねぇ!!」

 プリティ・ストームが胡桃をかばい、背中で構える。

 「ふっ……では今宵はこれまでにしておきましょう」

 ナメクジローはぬらりと後退し、闇へと溶けていった。

 * * *

 帰路。  カスミは、変身解除し震える胡桃を抱きしめた。

 「……カスミ、ごめん……私、また……何もできなかった……」

 「……泣くなよ。あいつが異常なだけだ。あんな奴、絶対ブッ潰す」

 その瞳には、怒りと静かな決意が燃えていた。

 「今度は、あたしが絶対、守る」

第21話へつづく)