DUGA

ミラクルナイト☆第70話

水都神社の静謐な杜で、突如として緑色の光がTシャツとハーフパンツを身に纏う凜を包み込んだ。輝きの中で彼女のTシャツとハーフパンツは一瞬で消え、紺色のブラとショーツのシンプルな姿になった。だが、その次の瞬間、銀色の装飾やアクセサリーが彼女の身に纏わり付くように現れ、一つ一つが完璧にフィットするかのようだった。

頭には銀のヘッドピースが装着され、彼女の首元にはチョーカー、手にはグローブ、足には緑色のニーハイブーツが召喚された。続いて、緑と銀色を基調としたロングスリーブシャツとプリーツスカートが身体を覆い、最後に銀のチョーカーとアームバンドが現れた。

緑の輝きが収束すると、凜は驚きの表情で自身の新たな装束を確認した。

「これが私…」

とつぶやいて、彼女の目の前にはドリームキャンディ同様のゴーグルが装着されていた。

「名前は…ドリームウインド?」

と少し戸惑いを見せながら大谷に問いかけた凜に、彼は静かに答えた。

「セイクリッドウインド。神聖な風だよ。」

「ふーん」

と凜が思わずスカートの中を確認すると、

「スク水?いや、レオタードかな。ドリームキャンディはスパッツだよね。これって、大谷の趣味?」

と戸惑いながらも興味津々に彼に尋ねた。

大谷は苦笑しながら答えた。

「コスチュームについては僕は知らない。君がイメージするヒロインの姿がそれなのかもしれない。でも、ナメコ姫よりは正義のヒロインらしいだろ?」

凜は満足そうに頷き、生パンのミラクルナイトよりも遥かにファッショナブルな彼女の新しい姿を楽しんでいた。

「戦いは嫌いだけど、大谷の実家にはお世話になってるし。正義のヒロイン、やってみようかな」

と明るく宣言した。

「セイクリッドウインドのバイト代は?」

とふと真面目な顔で問いかける凜に、大谷は思考にふけって答えた。

「うーん、ドリームキャンディは子供だから積み立てをしてるけど…」

「まあ、いいや。タダで住まわせてもらってるし」

と凜は軽く笑っていた。そして、セイクリッドウインドとして、勅使河原に見返りをすることを胸に秘めていた。


水都大学のキャンパス内、古びた木のテーブルと椅子が並ぶカフェで、カオリは香丸の到着を待っていた。木陰と適度な日差しが織りなす心地よい日向で、彼女の瞳は何かを考えているかのように遠くを見つめていた。

足早に歩いてきた香丸が、カオリの隣に落ち着くと、彼女の深い瞳を見つめながら冗談めかして言った。

「今日は鉄山さんと一緒じゃないんですか?」

カオリはわずかに眉をひそめて答えた。

「いつもアイツと一緒にいるわけじゃないわよ。」

香丸は楽しげに微笑む。「夏祭りに二人仲良くデートしてたじゃないですか。」

「あれは…」

とカオリは一瞬だけ言葉を悩ませた。

「鉄山が就職が決まったって言うから、お祝いに付き合ってやっただけ。」

「就職のお祝いに浴衣で夏祭りとは、ちょっとロマンチックすぎないですか?」

と香丸はからかうように言った。

カオリは少しイラッとして、

「そんなことより、あなたの能力でシオマネキ女を堕とせない?」と話題を変えた。

香丸は軽く笑いながら答えた。

「あの女なら、正体がわかれば薬を使わなくても手に入れられるでしょう。今まで一度も男と付き合ったことがない一簡単そうなタイプです」

カオリは香丸のその自信に驚きを隠せなかった。カオリは勅使河原配下の正体は知らない。

「今度会ったときは堕としてみせますよ」

香丸はシオマネキ女のこはどうでもいいことのように言う。

「シオマネキ女なんかよりも、あと1回は奈理子と遊んでいいんですよね」

と香丸。

「鉄山がMNSFC(水都大学奈理子私設ファンクラブ)の成好に泣きつかれたみたいなのよ。鉄山の顔を立ててやって」

と彼女は言った。香丸は楽しげに答える。

「成好さんも熱心だなぁ。この間、私が奈理子で遊んでいるときも成好さんは怒っていましたよ。でも、カオリさんって鉄山さんには凄く気を使うんですね」

カオリは深くため息をつきながら、香丸の独特の雰囲気に包まれる中、彼のその後の言葉や行動について考えるのだった。


夏祭りの熱気が静かな住宅街に満ちていたあの夜、ミラクルナイトはウミウシ男とシオマネキ女に敗れた。蒼白い月の光の下、彼女は自宅の玄関前に優しく横たわっていた。気を失っている間、彼女の心は甘く、やさしい夢の中へと飛び込んでいた。

夢の中で、奈理子は自らを温かく抱きしめてくれるカブトムシ男の強くて頼りがいのある腕の中にいた。その前の夏祭りでの出会い、美女と野獣のような浴衣姿の二人が奈理子とライムの前に現れた瞬間、奈理子は確信していた。その美女はバラ女、そしてその隣の逞しい野獣は…カブトムシ男だったのだ。

目を覚ましたとき、家の前にいたミラクルナイトは、自分をここまで運んでくれたのは、そのカブトムシ男かもしれないと心の中で思っていた。しかし、ライムは何も教えてくれない。奈理子の心はもやもやとした疑問で満ちていた。

そこで、奈理子は古い商店街の路地裏に佇む占師、鈴の店を訪れることにした。しかし、鈴も奈理子にカブトムシ男ことを教えることなく、ただ彼女の手を見つめるだけだった。

ライムへの深い愛情とは裏腹に、奈理子の中でカブトムシ男への思いは再燃しようとしていた。彼の温かさ、その存在全てが、彼女の心を掴んで離さなかったのだ。


商店街の陽射しの下、鈴は奈理子を優しく見つめ、

「昼ごはん一緒に食べない?」

と申し出た。その言葉の裏には、少女の心を慰めたいという気持ちが隠れていた。

「奢るわよ」

と、彼女は気軽に付け加えた。

鈴が導く先は、馴染みの蕎麦屋。その店の前に立つと、店主はにっこりと笑って

「よう、奈理子ちゃん」

と声をかけた。奈理子は驚いて彼の方を見た。

「ごはんってここ?」

と、彼女は少し驚いた表情を浮かべた。

「知ってると思うけど、ここの蕎麦、美味しいわよ」

と鈴はニッコリと笑い、メニューから冷たいとろろ蕎麦を指定した。奈理子にとって、この店は子供のころからの思い出の場所。家族との大切な時間をこの蕎麦屋で過ごしてきた。今も出前をとるときはここの蕎麦屋で、毎年大晦日はここの蕎麦屋で蕎麦を買う。玉子丼を注文する奈理子の姿を見て、鈴は

「気を使わずにカツ丼を頼めばいいのに」

と軽く突っ込んだ。

そして、店内の賑やかな音の中、鈴は深呼吸を一つして、真剣な顔で奈理子を見つめた。

「カブトムシ男は大学生4年生よ。年齢的に中学生3年生の奈理子と恋愛は…難しいわ。それでもカブトムシ男が気になるなら、ライムと別れることを考えなさい。でも、ライムを手放す気がないのなら、カブトムシ男のことは忘れて」

と、鈴は深い情感を込めて静かにアドバイスした。


商店街の蕎麦屋で、奈理子と鈴は心地よい満足感を抱えながら食事を終えていた。鈴が紙幣を取り出そうとした瞬間、店主が手を振って微笑みながら言った。

「奈理子ちゃんの分は俺の奢りだ。鈴ちゃんはちゃんと払ってよ」。

「ありがとうございます!」

奈理子は素直に感謝の気持ちを表現し、両手を胸の前で組んで軽くお辞儀をした。奈理子の分を奢るはずだった鈴は得した気分で微笑んでいる。

店主の視線はしみじみとしたものになり、奈理子の瞳に触れた。

「奈理子ちゃん、若い頃の貴子ちゃんに似てきたね」。

その言葉に、奈理子の背筋がピンと伸びた。貴子は奈理子の母の名前だった。

「おじさん、ママの若い頃を知ってるの?」

奈理子の声には驚きと興味が混ざっていた。店主は遠い日のことを思い起こすように目を閉じ、

「奈理子ちゃんみたいに可愛い女の子だったよ」

と言いながら、柔らかな笑顔を浮かべた。

と、その時、外から騒がしい声とともに何かが起こる音が聞こえてきた。急に、高い声で

「ミラクルナイト!」

と叫ぶ女の声。三人は顔を見合わせ、店の出入り口に向かった。

外に出ると、目の前には信じられない光景が広がっていた。商店街の中央には、奇抜な衣装を纏ったイチジク女が暴れ回っている姿が。彼女の目は熱く、その周りの人々は驚きと恐怖に包まれていた。


真昼の商店街。突如の混乱の中、奈理子は蕎麦屋の店主の方を見て、

「おじさんのお店で変身させて!」

と心を決めて言った。店主は驚きの中でうなずき、彼女を店内へと誘導した。

店内の落ち着いた照明の下、奈理子は彼女の秘密の力となるアイマスクを高々と掲げた。その瞬間、部屋全体が水色の光に包まれ、奈理子の姿が次第に変わり始めた。彼女のシャツワンピースは霧のように消え、代わりに水色の下着が露わとなる。その後、一つ一つのアイテムが彼女の体に浮かび上がり、一瞬のうちに、ミラクルナイトとしての姿が完成した。

蕎麦屋の入口近くで、鈴が期待に満ちた目でミラクルナイトを見つめていた。

「イチジク女の正体は誰ですか?」

とミラクルナイトは緊迫した声で問い詰めた。鈴は両掌を上に向けて肩をすくめて誠実に答えた。

「クラゲ男の手下のことは私はよく知らないわ」

と。彼女の答えを聞いたミラクルナイトは、強い決意を持って店の外へと歩みだした。外に立つと、目の前にはイチジク女の挑戦的な姿が。彼女は笑みを浮かべ、

「怖じ気付かずに出てきことは褒めてやる、ミラクルナイト。しかし、フジツボ男の敵だ。覚悟しな!」

と宣言した。

周りの人々は息を呑み、その場が凍りつくような静寂が広がった。商店街の中心で、運命の戦いが始まる兆しを感じさせる空気が漂っていた。


商店街の中心、炎天下の夏の空の下でミラクルナイトとイチジク女の戦いが始まった。

イチジク女はその名の通り、イチジクの能力を駆使する戦士だった。彼女の指先から、鈍く光るイチジクの果実が飛び出し、それが触れると物を縛り付ける強力な粘液を放つ。

「さてさて、ミラクルナイト。私のイチジクの力、味わってみる?」

イチジク女は嘲笑しながら果実を数個放った。

ミラクルナイトは機敏にそれを避けるが、その数、そして粘液の力は予想以上だった。数回の交戦で彼女のスカートに粘液が付着し、動きが鈍ってしまった。

「これが最後よ!」

とイチジク女が叫び、強力な粘液の結束をミラクルナイトのスカートに放った。その力でスカートは一瞬で引き裂かれ、ミラクルナイトは水色のパンツ一枚になってしまった。

「あら、こんなパンツ丸出しの姿で大丈夫かしら?」

イチジク女は嘲笑しつつ言った。

ミラクルナイトは恥ずかしさよりも、戦いを制する決意で立ち上がった。

「私のスカートは脱がせても、私の勇気は奪えないわ!」

しかし、劣勢は明らかだった。イチジク女の果実は次第にミラクルナイトを追い詰めていった。

その時、遠くで町内放送が聞こえた。

「注意!商店街にイチジク女出現。近づかないようにしてください。」

続いて、風のように速い足音。イチジク女とミラクルナイトの間に、キャンディの鞭を持つ新たな戦士、ドリームキャンディが立った。

「奈理子さん、今日のパンツもイイ感じですね!」

ドリームキャンディはミラクルナイトに微笑みながら言った。

イチジク女は警戒した顔を見せ、

「二対一か、面白くなってきたわ。」

真夏の昼間の商店街で、運命の戦いが新たな局面を迎えようとしていた。


商店街の石畳が、ミラクルナイトの水色の光弾とドリームキャンディのキャンディチェーンの舞う戦闘の光景で照り返されていた。それでも、力の差は明らかになってきていた。イチジク女、流石に二対一では力を発揮できず、瞬時の決断で後退を選んだ。

「ミラクルナイト、今日はこの辺で許してあげるわ。」

捨て台詞を吐き、風のように商店街を後にした。

その後の商店街は、まるでお祭りのような賑わいに。人々が喝采と声援を送り、ミラクルナイトは水色のパンツ姿のまま、その声援に答えていた。あの戦士たちの勝利が、商店街の平和を取り戻したのだ。

ドリームキャンディは、そんなミラクルナイトを一瞥し、少しだけ呆れた表情を浮かべた。しかし、その瞬間、何とも言えない甘い香りが空気を包んだ。

「この香りは…」

ドリームキャンディの顔色が変わる。彼女の表情は、戦闘直後の余韻を一掃するほどの真剣さを持っていた。

「やっと邪魔者は去ってくれたか。ここからは私と奈理子の二人だけの時間だ。」

声の方向に目を向けると、そこには緑を基調としたコスチュームの男が立っていた。甘い香りを纏い、商店街の中心に佇んでいる。

「メロン男!」

ドリームキャンディの声は震えていた。彼女の最も恐れていた天敵、メロン男の登場に、商店街の雰囲気は一変。戦いの火蓋は、再び切られた。

第71話につづく)