DUGA

ミラクルナイト☆第241話

満員電車の揺れは、規則的で無機質だった。それは、私の心臓の鼓動とシンクロしている。ドアが開き、人波が流れ込む。そして、私の目標が、乗り込んでくる。白銀一花。
6年間、私は、彼女を見守り続けてきた。水都女学院の紺色のプリーツスカート。そのが揺れるたびに、その下に隠された純白の輝きを、私は、想像した。私は、その瞬間をカメラに収め続けた。彼女の知らない、彼女の尊厳を、私は、一人、独占してきた。
しかし、もう、時間はない。彼女は、水都女学院高校を卒業する。彼女は、このセーラー服を脱ぎ、私は、彼女を見失う。この満員電車で、彼女の温もりを感じる、この時間を失う。それだけは、許されない。
私は、そろりろと、彼女の背後に回り込む。そして、私の指を伸ばす。

「…!」

一花は、微動だにしない。彼女は、私の存在を知らない。彼女の尊厳は、無傷のまま。しかし、それは、今、私が、壊すものだった。
私の指先が、彼女のスカートの裾を、くぐり抜ける。

「…んっ…」

彼女の肩が、わずかに震える。しかし、彼女は、声を上げない。白銀一花は、あらゆる、困難に屈しない。だからこそ、私は、彼女を愛している。だからこそ、私は、彼女を汚したい。
私の指先が、彼女の太ももを撫でる。そして、目的地に到達する。その温かさ、その柔らかさ。それは、私が、6年間、夢見てきたものだった。柔らかいシルクの感触。盗撮した動画の中だけでしか見ることができなかった、一花の純白パンティに、今、私の手は触れている。

「…!」

私の指先が、彼女の秘裂をなぞる。股布の柔らかい感触。その奥にある、熱と湿り。私は、息をのむ。

濡れている…一花は、濡れている。

しかし、彼女の表情に、全く変化は無い。彼女は、ただ、凛と窓の外を見つめている。さすが、完全無欠のお嬢様。その気高さに、私は、打ちのめされる。指先に感じる、彼女の温もりと、その、凛とした表情。そのギャップに、私は、不覚にも射精してしまった。

グッ…!

その熱意が、私のズボンを濡らす。

その瞬間。
誰かが、私の、手を、掴んだ。

「あんた、何してんのよ」

見渡せば、そこには、いつも、一花と一緒にいる大柄な女がいた。ブカブカのカーディガンを羽織り、古風清楚な水女のセーラー服を台無しにしている。お嬢様校である水女には似つかわしくない、ガサツそうな女。彼女のような女が、何故、いつも一花と一緒にいるのか、私は、前から不思議に思っていた。

「一花のパンツを盗撮するだけなら笑えるけど、痴漢はヤバいよ」

女は、私の手を持ち上げて、ケラケラと笑って言った。私は、絶望する。この手、振り払って、逃げるべきか。それとも…

「警察に突き出す?」

女が、一花に言う。

「紫さん、許してさしあげましょう。この方にも、家族がいるでしょうから」

一花が、紫と呼んだ女に向かって微笑んだ。さすが、お嬢様は心が広い。今日は、一花の股間の温もりと、盗撮した一花の逆さ撮り動画で、思う存分抜こう!私は、安堵した。


宗教法人、或る或る教団。その、名の通り、この世の万事を、或るか無きかにする、巨大な組織。政財界に強い影響力を持ち、その影は、水都の隅々にまで及ぶ。その水都における一大拠点が、或る或る天国。

或る或る天国の一室。私は、跪いていた。祭壇に捧げられたのは、私の一番大切な宝物だった。白銀一花の、中学時代から今日に至るまでの、大量にある動画。その中でも、今日の動画は特別だ。単なる逆さパンチラだけではない。一花の股間を弄ぶシーンまで、しっかりと、逆さ撮りされていた。

一花に痴漢したあと、手は洗っていない。指に残る、あの温もりと感触、甘い匂い。股間を弄ばれながらも、凛と窓の外を見つめる一花の表情。私は、その記憶を反芻し、今日の痴漢動画に見入っていた。

画面の中の一花は、美しい。だが、世間の連中は、そんなことわかっていない。奴らは、水都女学院高校1年生の野宮奈理子に夢中だ。ミラクルナイトとか、ミコールの専属下着モデルとか。所詮は、大衆に媚びる、庶民派のアイドル。そんな、奈理子など、一花の足元にも及ばない。一花の気高さの前では、ただの小物だ。一花こそ、清純可憐な水都女学院高校の制服を身に纏うに相応しい。

私は、心に決めた。一花が、女子大学生になる前に。女子高生の一花を、我が物にする。そのために、私は、この或る或る教団に属している。私には、特別な力がある。ただの人間の物理的な力ではない。もっと、根源的で、絶対的な力。
その力があれば、女子高生の一花を手に入れることは訳もないはずだ。ミラクルナイトなど、私の計画の前では無力だ。私は、祭壇の前で祈りを捧げた。


水都郊外、或る或る天国。そのドーム状の白い建物は、まるで異世界の基地かと見紛うばかりに、田園風景の中に異様な存在感を放っていた。水都市警の蒼菜とその部下の山田は、少し離れた場所に停めた車の中から、その奇妙な聖域に出入りする者を密かに見張っていた。

ParadiseR…」

蒼菜は、唇をかんで呟いた。麻薬密売組織のアジトで目にした、謎のキーワード。彼女の直感が、それが「或る或る天国」を指すものであると鋭く睨んでいた。宗教団体を装い、その慈悲の笑顔の下で、海外マフィアと汚れた取引をする。しかし、手に入れられた証拠は、何もない。或る或る教団の影響力は、市警内部にも静かに及んでいる。いかなる指令も、上層部からは下りてこない。蒼菜は、単独で確かな証拠を掴むしかなかった。

施設の周囲は高塀が巡らされ、信者以外は一切の立入が禁止されている。入口の門には守衛の詰所が設置され、出入りは厳重にチェックされている。正面突破は、不可能だ。
その時、門から、一人の男が出てきた。帽子を深く被り、サングラスにマスク。厚手のコートまで着込んでいる。怪しいの一言に尽きる。

「山田くん」

蒼菜は、隣の運転席に座る山田に告げる。年下の山田は、辛抱強さや根気はまるでない。女の子の前では無駄にカッコつけたがる癖がある。だが、いざという時には頼りになる、蒼菜の相棒だ。彼のその場の空気を読まない明るさが、時に、蒼菜の固い心を溶かすこともあった。
山田は、何も言わずに車を降りる。彼は、蒼菜の隣のドアに顔を寄せた。

「蒼菜さんも、気を付けてくださいよ。こいつら、何してくるか、わかりませんから」

そう言って、彼女にだけ見せる、真剣な眼差しを向けると、男の尾行を始めた。彼の姿が、すっと消えていく。
蒼菜は、再び双眼鏡を覗き込む。山田の無邪気な励ましの言葉が、彼女の心に、少しだけ温かさを灯す。だが、その瞳は、再び、氷のように冷たくなる。


放課後の電車。揺れる車窓の外では、水都の街並みが夕日に染まり、ゆっくりと、後退していく。白銀一花と、彼女の傍らに立つ紫。それほど混んではいないが、座席は埋まっている。吊り革に掴まり、二人は揺られていた。
その時、車両が次の駅で停まる。ドアが開き、一人の男が乗り込んできた。

「アイツだよ。どうする、一花」

紫の、瞳が鋭く細まる。サングラスとマスクで顔は隠されている。だが、そのうつむき加減の佇まいに、紫は間違いないと気づいた。あの、痴漢男だ。

「紫さんにお任せしますわ」

一花は、微動だにせず、静かに告げる。彼女のお嬢様言葉は、この騒がしい車内で、ひときわ清楚に響く。

「じゃ、一花に触ってきたら、捕まえよう」

紫が、拳を握りしめる。その、小気味よい響きが聞こえた。
だが、二人がそう話しているうちに、男は、すっと、一花の隣に立っていた。そして、一花にスマホの画面を向けた。

画面には、駅の階段を登る一花の後ろ姿を、下から撮影したものが映っていた。次に、駅のホームで電車を待つ一花の姿。さらに、電車の中での一花の逆さ撮り。男は、指でスワイプし、動画を次々と出していく。水都女学院中学の吊りスカートの制服姿から、現在の水都女学院高校のセーラー服まで。まるで、一花の成長の記録を、辿るかのように。そのほとんどの動画には、一花のスカートの中が映し出されていた。

「この動画を拡散されたくなければ、大人しくしろ」

男は、一花の耳元で、小声で伝える。

「へ〜、たくさん一花を撮ったんだね。でも、隣にいるはずの私は全然写ってない」

紫が、平然とスマホを覗き込む。その様子は、まるで、珍しい骨董品を見ているかのようだ。

「お前は俺の好みじゃない。一花お嬢様は、中学生の頃から撮り続けた」

男は、得意げに、答える。

「それで、何がお望みですの?」

一花は、ため息を一つついた。その吐息には、呆れと、嫌悪が混じっていた。
男の手が動く。それは、一花の太ももを撫でた。無防備な肌に、その指が触れる。

「…!」

一花の肩が、わずかに震える。しかし、彼女は、声も上げない。男の手は、徐々に上がっていく。紺色のスカートの裾を越え、その中に隠れた。一花のショーツまで、あと、数センチ。
その時、男の手が、何者かに掴まれた。

「…!」

男は、驚いて振り返る。掴んだのは、紫ではない。スーツを着た男だった。

チッ!

一花を触ろうとした男が、舌打ちする。
スーツの男は、痴漢男に警察手帳を、突き出した。

「警察だ。現行犯逮捕だな。動くな」

麻薬事件を追っていたはずが、遭遇したのが痴漢でガッカリだった山田。だが、目の前には、有名な財閥の令嬢、一花お嬢様がいる。ここは、カッコイイ刑事のお兄さんを演じる好機。山田は、思いっきりカッコをつけながら大きな動作で手錠を取り出した。

電車内は、一瞬、凍りついた。次の瞬間、それは騒然とする空気に変わる。乗客たちの間に、ざわめきが走る。ドアが開き、駅のホームの光が差し込むが、誰も降りようとしない。すべての視線が、スーツを着た男、すなわち山田と、手錠をかけられようとしている痴漢男に注がれていた。

「すみません!通ります!通ってください!」

無理やり人波をかき分け、制服姿の中学生が駆け込んできたが、目の前の光景に愕然と立ち尽くす。

「なんだ?観念しろ。悪いことはしちゃいけないんだぞ」

山田は、威厳を込めようと、声を低く振るった。白銀財閥の令嬢の前だ。ここは正義の味方として、完璧に見せつけなければならない。
その時、手錠をかけられようとしていた痴漢男が、突然、笑い出した。低い、腹の底からわき出るような笑い声。

「…フハハハ…フハ、ハハハハ…!」

「なんだ?笑いとるのは!」

山田は、苛立ちを隠せない。
男の笑い声は、ますます、大きくなる。そして、彼の体に異変が起こる。男の皮膚が、ぬめりを帯び、緑色に変色し始める。やがて、その体全体がふくらみ、異様な姿へと変貌していく。

「カ…カエル男…!」

山田の声が、震える。麻薬事件の現場に、たびたび現れる謎の怪人。その名は、カエル男。あの、しつこい痴漢男は、カエル男だったのだ。

「ククッ…これで、俺様の真の姿が、見えるか」

カエル男は、山田を軽く吹き飛ばす。山田は、車内の客席に激突し、悲鳴を上げる。カエル男は、一花を力強く抱き寄せると、電車の窓ガラスを易々と突き破った。

ガシャンン!

「ひゃっ!」
「きゃあああッ!」

乗客たちの悲鳴が響く。カエル男は、一花を抱えたまま、ぴょんぴょんと跳ねながら、夕闇に消えていった。

「あぁ!一花お嬢様が!!」

山田は、よろめきながら立ち上がり、慌てて後を追おうとする。しかし、彼の腕を止めたのは、紫だった。彼女は、楽しげに山田と並んで走り出している。

「一花なら大丈夫だよ」

紫の声は、いつものノリノリだ。

「カエル男は強いんだぞ!人の力ではやっけることはできない!!」

これだから、世間知らずのお嬢様は困ると、山田は思いつつ、必死にスマホを取り出した。市警本部に応援を呼ばねば。が、紫は、それより早く電話をかけていた。

「それなら、奈理子を呼ぼう。怪人の相手はミラクルナイト。まだ、奈理子は学校にいるはずだよ」

紫は、そう言って、電話をつないだ。山田は、呆然と彼女を見つめる。そう言えば、奈理子は彼女たちと同じ、水都女学院の生徒だった。だが、拐われた一花お嬢様も、この子も妙に落ち着いている。この状況を、理解しているのか?


水都タワー前広場の大型ビジョン。その輝く画面に、白銀財閥のご令嬢白銀一花お嬢様が、カエル男に拉致されたことを伝えるニュースが映し出された。速報のテロップが、血のような赤で流れる。街は、たちまち大騒ぎ。人々の足が止まり、誰もが空を仰ぐ。

穢川研究所の社長室。静寂の中、一枚のテレビ画面だけが、人工的な光を放っていた。一花お嬢様拉致事件のニュースを、勅使河原は、苦々しく睨んでいた。彼の指が、贅沢なデスクを軽く叩く。

「…面倒な、ことに、なった」

その隣に立つ、秘書の多実が、静かに口を開いた。

「一花お嬢様であれば、大丈夫でしょう。量産型のカエル男など、束になっても一花お嬢様には敵わないはずですから」

一花は、特殊な能力を持つ。それは、研究所の誰もが知る秘密だ。が、勅使河原は違った。
カエル男は、この穢川研究所が開発し、或る或る教団に提供したものだ。もし、一花に、もしものことがあれば、その怒りの矛先が、研究所に向く可能性がある。水都支配を目論む勅使河原にとって、水都の財界を支配する白銀財閥を敵に回すことは、絶対に避けなければならない。

「…信者を制御できないとはな」

勅使河原は、或る或る教団への怒りを露わにする。彼の瞳が、冷た、燃える。

「私が、一花お嬢様の救出に向かいます」

若手幹部の手黒が、立ち上がった。彼の全身に、闘気が漲る。彼は、将来を期待された研究所の若手幹部だ。


或る或る天国。和室の一室。責任者の天野妙華は、床に座り、テレビを見ていた。突然の臨時ニュースで流れた一花お嬢様拉致事件に、彼女は、口に含んでいたお茶を、勢いよく噴き出した。

「ぶっっ!…なんだ、これは!」

犯人は、カエル男。

「誰が、やったんだ!」

彼女は、側近に怒鳴り散らす。その声は、鋭く響いた。
信者の中に熱烈な一花お嬢様ファンがいる、と、側近の一人が、恐る恐る告げる。妙華は、一息つき、まるで、すべてを悟ったかのように、呟いた。

「白銀の娘は、マズイ…」

彼女は、唖然とする。そして、決意を固めたような声で命令を下した。

「白銀の娘に危害を加える前に、ヤツを始末しろ」


水都女学院生徒会本部。一冊のファイルが、勢いよく閉じられる。

「すみません!お先に、失礼します!」

奈理子が、席を立ち、部屋を飛び出した。放課後、彼女は、生徒会役員とともに、一花たち3年生とのお別れイベントの準備をしていた。その時、菜々美のスマホへ、紫の緊張感がない声で、一花がカエル男に連れて行かれた、と、連絡があったのだ。

「奈理子さん、私も行く」

菜々美が、後をつけてくる。

「菜々美さんは、危ないから来ないで」

奈理子は、菜々美に言う。が、菜々美は、にっこりと笑って、奈理子の背を押した。

「あの一花さんが、ピンチなのよ。早く、変身しなさいよ」

その、嬉しそうな顔に、奈理子は、もう、何も言えなかった。


カエル男は、一花を連れ、ビルの屋上へと逃げた。夕闇が迫る、屋上。風が冷たく吹き抜ける。一花は、カエル男の腕の中にいた。彼女は、まだ、何も言わない。ただ、静かに、遠くの街の灯りを見つめている。
カエル男は、抵抗しない一花の尻を撫で続けていた。ぬめった指が、セーラー服のスカートの中、滑らかな手触りのシルクショーツの上から、その形をなぞる。

「フハハ…きれいだ、一花お嬢様…これほど、美しい一花お嬢様が、俺の手にあるなんてな…」

男の、吐息が、一花の、耳に、かかる。しかし、一花の、表情には、まだ、何の、変化も、ない。


ビルの屋上。風が、私の髪をなびかせる。カエル男の腕の中。その、ぬめった感触が、不快で、ならない。彼は、制服の上から、私の身体を弄び続けている。

内心では、ウキウキしていた。
温室育ちのお嬢様、白銀一花にとって、こんな、刺激的な出来事は、これまでに経験がない。拉致。下品な怪人。これは、最高に楽しい冒険の始まりだ。
だが、お嬢様は、いつでも、お嬢様であらねばならない。白銀財閥の令嬢という務め。それは、いかなる状況においても、崩れてはならない仮面だ。私は、目を閉じ、立ったまま、黙ってカエル男の愛撫に耐え続ける。

私の人生は、いつも、狭かった。
幼稚園から、ずっと水都女学院。ここは、お嬢様たちが集う世界。父は、白銀財閥の創業者一族。母は、皇族とも血縁が深い、貴族の出。誰もが、私を、特別扱いする。その視線が、ときに、重かった。

ただ、一人、違う子がいた。紫さん。
彼女の家は、父がたまたま事業に成功しただけのもの。家柄は良くない。でも、彼女は、年相応の普通の女の子として、私に接してくれた。私の知らない、世間の様々なことを教えてくれた。アイドルの話、駄菓子屋の味、恋愛のウワサ話。それは、私の灰色の世界に、初めて差し込んだ色彩だった。
水都女学院も、小学校、中学校、高校と進むにつれ、一般の児童生徒が増えていく。その中でも、紫さんは、いつも輝いて見えた。自由奔放で、何も恐れない。私の側には、常に紫さんがいて、私を助けてくれた。小学生の高学年の頃、私は紫に告白した。

「紫さんのことが好きです」

それから、私と紫さんは、女同士で恋人という関係になった。

風が、また、吹く。カエル男の息は、臭い。皮膚のヌルヌルが、気持ち悪い。彼の手が、ショーツに包まれた私の尻を、乱暴に揉む。そして、彼の長い舌が、私の脚を、脹脛から太股に向かって、撫でるように舐め上げる。
その、悍ましい感触に、私の口から、声が漏れた。

「んっ…」

「ククッ…いかがか?俺の粘液には、神経を麻痺させる効果がある。気持ちよくなってきただろう?」

何かを、勘違いしているらしい。
カエル男の粘液など、アゲハ女の能力を持つ私にとっては、どうということもない。だが、彼は、私の反応に喜んでいる。この男、何年も前から私を盗撮していたことに、私は、とっくに気づいていた。駅の階段、電車の中、学校が一般に開放される学園祭の舞台裏。あの視線は、いつも、同じ角度からだった。
彼は、私が中学生の頃から、一途に想い続けていた、らしい。少しくらい、男の想いに、応えてあげてもいいかしら。
私は、彼が触りやすいように、閉じていた脚を、少し広げる。カエル男は、私の反応に満足した、ようだ。彼の指が、ショーツ越しに、私の大切な個所を、摩り始める。ショーツ越しとはいえ、直接的な愛撫に思わず吐息が漏れる。

「へへっ、一花お嬢様は、もう、俺のものだ。どうだ、今の気分は」

得意げに、カエル男が、私の顔を、覗き込む。

「美しいものを、我が物にしたいと思うのは、仕方のないことですわ」

私は、真顔で答える。これは、お嬢様としての正論だ。


水都女学院高校の校門前。夕闇が迫る。菜々美に変身を急かされた奈理子は、ポーチからアイマスクを取り出した。

「でも、一花さんが、どこにいるのか、わからないし…」

奈理子の手が、止まる。

「空から探せば、見つかるでしょ!街中で、大騒ぎしてるんだから!」

菜々美は、呆れたように言った。

「あ、そっか…」

「はあ、本当に、おっちょこちょいなんだから。早くしなさい!一花さんが、待ってるわよ!」

「う、うん…!」

奈理子は、決意を固める。彼女は、高くアイマスクを掲げた。

「ミラクルチェンジ!」

アイマスクが、彼女の顔に装着される。水色の光が、彼女の全身を包む。光の中、水都女学院の制服は消滅し、素肌が現れる。恥ずかしさに、奈理子は思わず目をつぶる。
しかし、それは一瞬。光が変わり、彼女の髪に白いリボンが結ばれる。彼女のAカップを包むブラジャーの上から、白いブラウスが現れ、胸には水色のリボンが輝く。手足にはグローブとブーツが次々と装着される。最後に、彼女のコットンショーツを、白いプリーツスカートが優しく隠した。
ミラクルナイト、変身完了。

「よし…!」

彼女は、空に向かい、白い翼、ミラクルウイングを広げようとした。
その時、どこからともなく、現れた菌糸が、ミラクルナイトの四肢を拘束する。

「きゃっ!」

失敗続きのブナシメジ男が、今日こそ、ミラクルナイトを捕獲しようと、校門前で、奈理子が出てくるのを待っていたのだ。

「いやぁ〜!」

ミラクルナイトの抵抗も虚しく、菌糸は、スルスルと彼女のスカートを脱がす。無防備な、下着姿が露わになる。

「ククク…やはり、奈理子には、その姿がお似合いだ」

ブナシメジ男は、満面の笑みで言う。

「…っ!」

しかし、

「なんしてんのよ!邪魔よ、下がりなさい!!」

菜々美の、怒鳴り声が響く。

「なっ、菜々美お嬢様!?」

ブナシメジ男は、驚いてミラクルナイトのスカートを握ったまま、あわてて、退却する。

「しっかり、しなさい!」

菜々美は、ミラクルナイトに、絡まる、菌糸を、手際よく、取り除く。そして、

「さあ、行くわわよ!」

と、ミラクルナイトを、立ち上がらせる。

「私、スカート、穿いてないし…」

パンツ丸出しの姿で、一花救出に向かうことに、ミラクルナイトは、躊躇する。

「一花さんに、さんざん可愛がって、もらったくせに、一花さんを見捨てるの?」

菜々美の言葉に、奈理子は、ハッとする。彼女は、再びミラクルウイングを広げる。

「私も、連れてくのよ」

「菜々美さんは、危ないよ!」

「私は、一花さんに生徒会副会長に指名されたんだから、一花さんのピンチを見届ける義務があるわ。さあ、早く!」

菜々美は、どうやら、この事態を楽しんでいるようだ。ミラクルナイトは、仕方なく、菜々美を抱えて飛び上がった。街の灯りが、足元に広がっていく。


ビルの屋上。風が、私の肌を撫でる。私の腕の中にいる、白銀一花。彼女は、まるで人形のようだ。
私は、彼女のショーツを、脇に寄せた。そして、舌を、彼女の最も恥ずかしい箇所へと添わせる。うむ、十分に濡れている。しかし、彼女は、声を殺し、耐え続けている。乱れてはいない。変わらず、凛とした、お嬢様の威厳を保っている。その、姿がたまらない。

私は、一花を、そっと押し倒した。仰向けになった彼女の両脚を両手で持ち上げ、彼女の頭の方に持っていく。柔軟な彼女の体は、難なく、その姿勢をとる。そして、私は、彼女のショーツを、膝まで下ろす。ムンと漂う甘ったるい一花の体臭に目眩がしそうだ。

彼女の、恥部が、持ち上げられた状態。キュッと萎んだ肛門。湿りを帯びて輝く花弁と可憐な芯芽、その奥の膣口。お嬢様に相応しい繊細な恥毛。その奥には、愛液濡れたクロッチを見せつけるかのように、シルクのショーツが、両膝で左右に広げられている。更に、その奥には、顔を背けて羞恥に耐え、紅潮した一花の表情。
一花のヒクヒクしてる肛門がまでも、我慢汁で輝いている。この、すべてを見下ろせる私が、一番、偉いのだ。
一花の恥ずかしい姿に、私は、思わず射精しそうになる。だが、だめだ。一花を犯すため、このときに備えて、昨夜から撮り貯めた一花の動画で何度も抜いてきたのだ。そう、簡単には射精しない。私は、長い舌を出し、彼女の、秘部を舐めた。
うまい。甘い。一花お嬢様の愛液は、最高に、うまい。
私は、一花の表情を伺いながら、彼女の秘部を舐め続ける。一花の愛液で濡れたショーツの匂いを、嗅ぐ。しかし、彼女の表情に変化はない。舌を、彼女の秘部に挿入する。カエルの長い舌は、彼女の奥まで届く。舌で、奥を突かれた一花の身体が、ビクンと、震えた。

「…!」

あの、凛としたお嬢様が、震えた。私の舌で。
もう、我慢できない。一花を犯すなら、カエル男ではなく人間の男として犯したい。私は、変身を解いた。グリーンでぬめった皮膚は消え、そこにいるのは、ただの男だ。私は、ズボンを脱ぎ捨て、男根を出す。
チラリと、横目で私の男根を見た一花の表情が、変わった。明らかに、驚いている。おそらく、勃起した男のモノを見るのは、初めてなのだろう。彼女が見せた、初めての少女らしい反応に、私は、気をよくした。
膝まで下げた一花のショーツを脚から抜き取り、鼻に押し当てる。シルクの心地よい肌触り。好い匂い。甘酸っぱい女の子の匂いに頭がクラクラする。しかし、ここからが本番だ。スマホを取り出す。一花の処女喪失シーンは、記録に残さねばならない。一花の秘所に指をそっと挿入する。腟が指に吸い付いて締め付けてくる。これは名器だ。
私は、一花の秘部に男根を擦りつけ、彼女の愛液を塗りつける。素股だ。快楽が、脊髄を駆け上る。射精しそうになるのを、私は、撮影に集中することで、必死に耐えた。一発目は、一花の中だと決めていた。
気を静めて、一花の開ききった陰裂に、男根を添える。一花と、一つになるのだ。私の夢が、叶うのだ。
私が、一花に挿入しようとしたとき。
これまで、されるがままだった一花の手が、素早く入口を塞いだ。

「そこまでです」

その声は、静かだったが、私の中に突き刺さるような力があった。凍りついた。なぜだ。お嬢様は、楽しんでいたはずだ。濡れていたし、震えていた。私の舌で。私の指で。なのに、なぜだ。


「そこまでです」

私の声は、静かだった。でも、私の意志は、揺るがなかった。
この男に、悪い感情は持っていない。水都女学院で育った私は、家族や教師以外の男と深く接したことがない。そんな私に、これほど、激しく感情をぶつけてきた男は、初めてだった。
この男を、好きにはなれない。でも、感謝はしている。お嬢様としての私には無い刺激をくれた。できるだけ、この男の好きなように、させてあげるつもりだった。制服の上から弄ばれるのも、舌で舐められるのも、指で濡らされるのも、感謝のつもりだった。
でも、ペニスの挿入だけは、別だ。
私には、紫さんがいる。私のからだは、紫さんのもの。異性のペニスを受け入れることは、紫さんへの裏切り行為だ。それは、許されない。
男に押さえつけられたまま、私は、ふと、思った。
紫さんは、なぜ、来てくれないんだろう。
紫さんのことを考え始めると、この男のことは、どうでもよくなってきた。男の息遣いも、肌のぬめりも、不快にしか感じない。
男が、吠えた。

「なにっ!どうしてだ、一花!俺は、一花を、愛してるんだ!」

彼は、私を強く抱きしめ、キスを迫ってきた。私は、とっさに、唇に手を当てて、キスを防ぐ。
私の唇は、紫さんのだけのもの。そこに、この男が入る、隙間は、ない。この男に奪われてはいけない。
男が、何かを叫んでいる。
面倒臭い。
やはり、男よりも、女がいい。紫さんは、もちろんだけど。奈理子さんは、弱いながらも、ミラクルナイトになって、頑張っているところが可愛い。菜々美さんも、少し生意気なところが、憎い、可愛い。
男が、私に覆いかぶさったまま、また、カエル男に変身した。ああ、もう。
今は、この男から、逃げなきゃ。そう思った。殺すまでもない。
私は、静かに鱗粉を漂わせた。

「ゲホッ!ゲホッ!なっ、なんだ、この、咳は…!」

カエル男が、突然、苦しみだす。アゲハ女に変身しなくても、これくらいはできる。力は、かなり抑えてある。息が、少し苦しくなる程度のもの。
カエル男が私から離れたので、私は立ち上がった。乱れた制服と髪の毛を整えた。カエル男は苦しみながらも、私のショーツをしっかりと握りしめている。野外で制服姿でいるのに、ショーツを身に着けていないのは不思議な感じがした。
カエル男が、驚いて私を見る。目が泳いでいる。ただの、お嬢様ではないことに、気づいたようだ。

「申し訳ありません。私には、好きな人がいます。貴方の、想いに、応えることはできません」

私は、静かに、カエル男に、謝罪した。


紫は、足を止めた。彼女の隣には、刑事の山田がいる。目撃者の証言では、カエル男は、このビルの屋上へ向かって飛び跳ねたという。

「行こう!」

紫が、ビルに乗り込もうとした、その時。

「紫さん、待ってください!すぐに、市警の応援が来るはずです。一花お嬢様は、市警に、任せてください!」

山田が、慌てて彼女の腕を掴む。

「…っ!」

紫は、山田の腕を振り払う。だが、言うことは、もっともだ。彼女は、不満そうに唇を尖らせ、仕方なく従った。彼女がビルを見上げると、空に、二つの影が動いていた。

「あっ、奈理子だ…。ぶら下がってるの、…菜々美??」

ミラクルナイトが、菜々美を抱えて、ビルとビルの間を飛んでいる。地上から、その姿を見つめた。


上空から、一花を探すミラクルナイトと菜々美。両手で菜々美を支えるミラクルナイトは、スカートを穿いていない。しかし、菜々美は、両手で自分のスカートを押さえ、下から中が見えないように、しっかりとガードしている。

「どうして、私だけ…」

パンツ丸出しの、ミラクルナイトが、嘆く。

「アレ、紫さんじゃない?」

菜々美が、地上から両手を振る紫に気づいた。

「男の人と一緒よ。一花さんが知ったら、怒るわね」

「あの人は、刑事の山田さんだよ。今日は、蒼菜さんはいないのかな?」

「蒼菜さん?」

「山田さんの上司の、カッコイイ女刑事」


紫と山田の前に、軽やかに着地するミラクルナイトと菜々美。

「奈理子は、ミラクルナイトになったときは、いつも、スカート穿いてないね」

紫は、ミラクルナイトの姿を見て、爆笑した。」

「奈理子さん、スカートはどうしたんですか…」

山田は、奈理子の白いコットンショーツが眩しすぎて、目のやり場に困る。

「ブナシメジ男に、襲われて…」

スカートを穿いていない理由を、説明しようとするミラクルナイトだったが、

「一花さんは、どこですか?」

と、菜々美が、遮った。

「このビルの、屋上みたい」

紫が、即答した。
ミラクルナイトは、高層ビルを見上げ、

「行ってきます」

と、ミラクルウイングを広げる。が、

「待ちなさい、私も連れていきなさい!」

と、菜々美。

「え?カエル男がいるんでしょ?危険だよ」

「私も、連れてってよ」

今度は、紫だ。

「紫さんまで…」

ミラクルナイトは、困った顔で山田を見る。

「奈理子さんの言うとり、ここは、奈理子さんと警察に任せてください」

と、山田も、紫と、菜々美を、止めようとするが、

「これは、水女の問題だから、部外者は黙ってなさい!」

菜々美に、怒鳴られる。

「奈理子、先輩の言うことが、きけないの?!」

紫が、睨みつける。

仕方なく、ミラクルナイトは、左右に紫と菜々美を抱え、飛び上がった。

「奈理子さんはカエル男と何度も戦っているから分かるわかるけど…一花お嬢様は、カエル男を見ても平然としていたし、紫さんも菜々美お嬢様も、カエル男を全然恐れていない。この娘たちは、いったい何なんだ…?」

山田は、ただ、呆然と見送ることしかできなかった。


高層ビルを見上げ、うんざりするミラクルナイト。女子とはいえ、二人を抱えると、重い。

「紫さんは、なぜ、一花さんを助けなかったんですか?」

「カエル男は素早かったからね。それより、何で、菜々美がいるの??」

「私に電話したの、紫さんですよ」

「私は、奈理子を呼んでって、言ったの。菜々美がいるから、重くて、奈理子がかわいそう」

「私より、紫さんの方がずっと重いですよ!紫さんこそ、自分で飛んだらどうですか?!」

言い合う、菜々美と紫。二人を抱えて飛ぶミラクルナイトは、

「二人とも、喧嘩しないでください!」

と、叫んだ。


高層ビルの屋上。夜風が、冷たい。カエル男と向かい合う一花。彼女は、乱れた髪を耳にかける。下の方から、賑やかな一団が、近づいていることに気づいた。長年自分を好きでいてくれた見知らぬ男に連れ去られるという、滅多にあり得ない、貴重な時間が、もうすぐ、終わってしまう。
一花は、静かに息を吐いた。そして、素直に、感謝の言葉を述べた。

「楽しかったですわ。今日だけでなく、何年も前から、貴方に、密かに撮影されることが、楽しかった。でも、今日で、終わりです」

カエル男の肩が、少し震えた。

「まだ、間に合います。早く、お逃げください」

一花は、言った。紫と菜々美、奈理子の声が、下から、はっきりと聞こえてきた。
カエル男は、迷った。一花を、手放したくない。だが、このような事件を起こしてしまった男を、教団は許さないだろう。

電車に、あの刑事がいなければ…

カエル男は、忌々しげに、男の手を掴み、得意気な山田の顔を思い出した。

逃げよう。

カエル男は、一花に、背を向ける。

「盗撮は、もう、ダメですよ。痴漢も、犯罪です」

一花は、カエル男の背に向かって、優しく言った。

「その…私の、パンティは、差し上げます」

カエル男の手は、一花の高級シルクショーツを握りしめていた。彼は、何も言わず、そのまま、ビルの屋上から飛び跳ねた。

「行って、しまいましたわ…」
名残惜しそうに呟く一花。だが、あの男の居場所は、この街には、ないだろう。


ミラクルナイトが、屋上に着地する。菜々美と紫を降ろす。

「紫さん!」

「一花!」

一花と紫が、互いの名を呼ぶ。

一花は、紫の胸に飛び込みたかった。だが、一花の髪も、手足も、制服も、カエル男の粘液に塗れている。汚い体で、紫の制服を汚しては、いけない。それに、下級生の奈理子と菜々美の前で、取り乱した姿を見せたくなかった。だが、紫は、汚れた一花の体を、ギュッと抱き締める。

「紫さん…」

「キモ男に誘拐された気分はどう?」

紫は、カエルの粘液でベタつく一花のスカートの上から、さりげなく一花の尻を撫でる。一花が、ショーツを穿いていないことに気付いた。

「なかなか楽しい冒険でしたわ」

一花は強がって微笑んだ。

「世の中には、悪い奴らがたくさんいるから、これからは気をつけるんだよ、一花お嬢様」

紫が、一花の髪を撫でた。そして、

「好きでもない人に、パンツあげちゃダメだよ」

と真顔で言った。

「あげたのではありません。取られたのです」

「一花が?カエル男なんかにパンツ取られたの?」

紫は、信じられないといった表情だ。

「本当は、怖かった…」

紫の胸に、一花は、顔を埋めた。一花の肩は、震えている。

「奈理子さん、カエルが、逃げる!」

「分かってる!」

菜々美が叫び、ミラクルナイトは、再び、飛び上がり、カエル男を追おうとする。

「一花さんを、粘液まみれにするなんて、許せない!」

ミラクルナイトが、屋上の床を蹴って飛び出そうとした、とき。

「奈理子さん、もう、いいのです。私は、大丈夫ですから」

一花が、静かに、彼女の背中にむかって言った。

「でも…」
と、足を止める、ミラクルナイト。

「これだけ大騒ぎになったんだから、カエル男は、敵の組織が始末してくれるよ」

紫が、呟くように言った。

「そうなんですか??」

ミラクルナイトは、不思議そうに、首を、傾げる。

「あれ?一花さん、泣いている、んですか?泣くほど、怖かったんですかぁ~」

菜々美が、ニヤニヤと唇を撫でる。

「泣いていません。風が、強いですから…」

一花が、言い終わる、前に、

「紫さんも、いつまで、一花さんのお尻を触ってるんですか。奈理子が、見てますよ」
一花を抱き締める紫に向かって、菜々美が言う。

「風が強いから、一花のスカートを抑えてやってるの」

紫が、平然と答える。

「菜々美さんの意地悪なところは、子供の頃から変わりませんね」

一花は、紫から、そっと、離れた。その声には、呆れと、それでいて、どこか、親しみも含まれていた。
ミラクルナイトは、三人のやりとりを、黙って聞いていた。奈理子は、高校から水都女学院に入学したが、一花、紫、菜々美は、幼稚園からこの学校にいる。普段の菜々美は、一花と、紫を、避けているようだが、一花と紫から見れば、菜々美は生意気な妹みたいな、ものなのかもしれない。そんな関係が、見て取れた。

「そんなことよりも、奈理子さんは、どうして、スカートを穿いていないのですか?」

一花が、不思議そうに、ミラクルナイトに、目を、向けた。

「それは…」

ミラクルナイトは、急に、恥ずかしくなって、両手で、白いショーツを隠した。

「私のとこに来たときから、パンツ一丁だったよ」

紫が、腹を抱えて笑った。

「カエル男は、いなくなったんだから、早く、変身解除しなさいよ」

菜々美は、呆れたようにミラクルナイトに言った。光の粒が、ミラクルナイトの体を包み、解けていく。そこには、先ほどと同じ、水都女学院高校の制服姿の奈理子が立っていた。
紫は、一花の汚れた制服を嘆き、自分のハンカチで、一花の顔についた粘液を拭こうとする。
一花は、紫の高価なハンカチを汚したくないと、それを、そっと、拒む。

そのとき。

「一花お嬢様、ご無事ですか!」

山田が、大勢の警官隊とともに、屋上になだれ込んできた。彼の額には、汗が光っていた。
山田の目の映ったのは、和やかな雰囲気でお喋りをしていた水都女学院高校のセーラー服を身に纏った4人の少女。

「山田さん、シャワー浴びたい。一花も私も、カエルのせいで、びちゃびちゃだよ」

紫が、不満そうに言う。

「私も、汗かいたし、シャワー浴びたい、かな…」

「私は、お風呂が、いいわ」

奈理子と菜々美も、次々と口にした。

「わかった…女子寮の風呂を使わせてもらえないか、交渉してみよう」

山田は、大事件に巻き込まれたにも関わらず、緊張感の全く無い4人の様子に、すっかり、拍子抜けしていた。


夜の水都の街。ネオンが濡れたアスファルトに滲み、不気味な光を投げかけている。カエル男は、警官隊の追跡を何とか振り切り、路地裏で一息ついていた。粗末な呼吸が、ビルの壁に反響する。今日は、もう逃げるしかない。
そのとき、彼の影が、不自然に伸びた。影の上から、別の影が、滑るように降りてくる。教団のヤモリ男だった。その玉虫色の瞳は、感情のないレンズのように、カエル男を映し込んでいた。

「妙華様の命により、お前を抹殺する」

ヤモリ男の声は、乾いていた。

「死ねない…!一花は逃げろと行ったんだ、どんな手を使っても、逃げ切ってみせる…!」

カエル男は、叫び、襲い掛かった。だが、その動きは、ヤモリ男に読まれていた。ヤモリ男は、鋭い爪で、カエル男の、喉をかき切った。ぐしゃり、と、湿った音が、路地裏に響いた。
ヤモリ男は、何事も、なかったかのように、影に溶けていった。静寂が、戻る。

カエル男は、人間の姿に戻った。血が、路地裏のコンクリートを濡らす。瀕死の状態だ。しかし、まだ、彼の舌には、一花の腟内の感触と、愛液の余韻が残っていた。右手に掴む、一花のシルクショーツを鼻に押し付ける。一花を感じながら死ねる。彼は、神に感謝した。
その時、路地の奥から、軽やかな足音が近づいてくる。研究所の手黒だった。彼は、男の傍らに落ちているスマートフォンを、静かに拾い上げる。

「お疲れ様でした」

手黒は、そう言って、動画を再生した。画面には、カエル男の舌が、一花の腟内を犯す映像が流れていた。一花の小さな喘ぎ声も、聞こえる。手黒は、その映像に、深く満足した。
白銀財閥のご令嬢の痴態の動画は、何かの、使い道があるかもしれない。

「私の手下になるなら、お助けしましょう」

手黒は、瀕死の男に問いかける。教団から捨てられた男には、他に居場所は、ない。男は、手黒に従うしかなかった。彼の力なく震える指が、承諾の印として、地面を一度だけ叩いた。

(第242話へつづく)