ミラクルナイト☆第212話
夏の夕暮れ、町工場の裏口。
カタン、と古びた鉄扉が開き、事務机の匂いを背負った塩田渚が姿を現した。白いブラウスはくたびれ、ベージュのカーディガンは毛玉だらけ。地味なロングスカートの裾を靴で踏みながら、愛用のママチャリを押し出す ...
ミラクルナイト☆第211話
【穢川研究所・最上階、社長室】
分厚い防音扉が閉ざされ、重厚な机の奥に座るのは社長・勅使河原。
その左右には、側近の渦巻と、タイトスカート姿の社長秘書・多実が控えていた。
ソファには白衣姿の研究部門の責任者 ...
ミラクルナイト☆第210話
朝の冷え込みが少しずつ肌にしみるようになった十一月。
まだ陽も登りきらない頃、水都神社の森の木々からは、ひんやりとした朝靄が薄く流れていた。
「……今日も、良い一日にできますように ...
ミラクルナイト☆第209話
🥖魔界パン工房「クネクネベーカリー」――
地鳴りとともに、黒紫の煙が立ちこめる奇怪な空間。
天井から吊られた無数の発酵生地袋が、グルグルと揺れながらふくれ上がっていた。
壁という壁には、小麦粉とバターが ...
ミラクルナイト☆第208話
商店街、老舗蕎麦屋「大黒庵」の座敷に、いつもの面々が顔を揃えていた。
「さーて、今年も秋祭りが近づいてきたぞい!」
蕎麦屋の店主、黒田が威勢よく口火を切る。
「去年はちょっと地味だったからねえ。今年 ...
ミラクルナイト☆第207話
鄙野の冬空はどこか重たく、風も冷たい。枯れた草がざわりと揺れる音が、沈黙の中でやけに耳につく。
鄙辺神社──かつては町の人々に親しまれていた小さな神社。だが、今では参拝客の姿も無く、鳥居は苔むし、鈴の紐は風に吹かれてかすか ...
ミラクルナイト☆第205話
放課後の校舎を、奈理子はひとり歩いていた。
水色のセーラー服の襟を、乾いた風がかすかに撫でる。季節は確かに秋なのに、奈理子の胸の奥には、蒸れたような熱と不安が燻っていた。
「奈理子さーん、バス停まで一緒に帰りま ...
ミラクルナイト☆第203話
穢川研究所・地下実験棟 ――「生誕の間」
青白い蛍光灯の下、密閉された培養槽の中心で、蠢く黒い影。
透明な液体の中でくるくると泳ぐそれは、やがて浮かび上がり、四肢を広げて大きく背を反らした。
「……始ま ...
ミラクルナイト☆第202話
穢川研究所・最上階 社長室
分厚い絨毯に重厚なデスク。豪奢な空間を飾るのは、一枚の絵画――白衣をまとった異形の生物が、街を焼く光景。
その絵を背に、穢川研究所社長・勅使河原が革張りの椅子に沈み、鋭い視線で部下たちを ...
ミラクルナイト☆第201話
■鄙比田温泉・夕暮れの露天風呂
穏やかな夕暮れ。
山間にある鄙比田温泉の湯けむりが、涼やかな風にたなびいている。
遠くでホトトギスが鳴き、風に揺れる湯のれんをくぐって現れたのは、
白いバスタオル ...
ミラクルナイト☆第200話
午後四時過ぎ、水都女学院高校の白壁の校門を抜け、制服の夏服姿の奈理子はいつもの坂道を歩いていた。
白い日傘を差し、軽やかに揺れる水色のプリーツスカート。蝉の鳴き声が、10月とは思えぬ陽射しを強調する。
「うぅ〜暑い ...
ミラクルナイト☆第199話
【水都郊外・穢川研究所 地下第六指令室】
白い花嫁装束の残滓をまだ纏うかのような風情で、柚月は静かに九頭の前に膝を折った。
「……申し訳ありません。『花嫁の罠作戦』は、ミラクルナイトの予想外の根性により失敗しま ...
