ミラクルナイト☆第214話
穢川研究所・社長室。
重厚な黒革の椅子に腰かけた社長・勅使河原が、窓の外の夜景を見下ろしていた。壁には時計の針が静かに回り、重苦しい沈黙を刻む。
会議卓を囲むのは、社長側近の渦巻、秘書の多実、研究部門責任者の九頭、 ...
ミラクルナイト☆第213話
水都女学院の朝の廊下は、まだ始業前のざわめきと華やかな香りに満ちていた。奈理子は1年2組の教室前で、菜々美の姿を見つけると、勇気を振り絞って声を掛けた。
「菜々美さん、昨日はありがとう……」
けれど、菜々美はプ ...
ミラクルナイト☆第212話
夏の夕暮れ、町工場の裏口。
カタン、と古びた鉄扉が開き、事務机の匂いを背負った塩田渚が姿を現した。白いブラウスはくたびれ、ベージュのカーディガンは毛玉だらけ。地味なロングスカートの裾を靴で踏みながら、愛用のママチャリを押し出す ...
ミラクルナイト☆第210話
朝の冷え込みが少しずつ肌にしみるようになった十一月。
まだ陽も登りきらない頃、水都神社の森の木々からは、ひんやりとした朝靄が薄く流れていた。
「……今日も、良い一日にできますように ...
ミラクルナイト☆第209話
🥖魔界パン工房「クネクネベーカリー」――
地鳴りとともに、黒紫の煙が立ちこめる奇怪な空間。
天井から吊られた無数の発酵生地袋が、グルグルと揺れながらふくれ上がっていた。
壁という壁には、小麦粉とバターが ...
ミラクルナイト☆第207話
鄙野の冬空はどこか重たく、風も冷たい。枯れた草がざわりと揺れる音が、沈黙の中でやけに耳につく。
鄙辺神社──かつては町の人々に親しまれていた小さな神社。だが、今では参拝客の姿も無く、鳥居は苔むし、鈴の紐は風に吹かれてかすか ...
ミラクルナイト☆第205話
放課後の校舎を、奈理子はひとり歩いていた。
水色のセーラー服の襟を、乾いた風がかすかに撫でる。季節は確かに秋なのに、奈理子の胸の奥には、蒸れたような熱と不安が燻っていた。
「奈理子さーん、バス停まで一緒に帰りま ...
ミラクルナイト☆第204話
水都女学院高校──十月の昼下がり
秋風の匂いを含んだ風が、教室のカーテンを柔らかく揺らしていた。
昼休みの教室は、明るく、穏やかで、そして、静かだった。
「……」
窓際の席に座る野宮奈理 ...
ミラクルナイト☆第203話
穢川研究所・地下実験棟 ――「生誕の間」
青白い蛍光灯の下、密閉された培養槽の中心で、蠢く黒い影。
透明な液体の中でくるくると泳ぐそれは、やがて浮かび上がり、四肢を広げて大きく背を反らした。
「……始ま ...
ミラクルナイト☆第201話
■鄙比田温泉・夕暮れの露天風呂
穏やかな夕暮れ。
山間にある鄙比田温泉の湯けむりが、涼やかな風にたなびいている。
遠くでホトトギスが鳴き、風に揺れる湯のれんをくぐって現れたのは、
白いバスタオル ...
ミラクルナイト☆第200話
午後四時過ぎ、水都女学院高校の白壁の校門を抜け、制服の夏服姿の奈理子はいつもの坂道を歩いていた。
白い日傘を差し、軽やかに揺れる水色のプリーツスカート。蝉の鳴き声が、10月とは思えぬ陽射しを強調する。
「うぅ〜暑い ...
ミラクルナイト☆第199話
【水都郊外・穢川研究所 地下第六指令室】
白い花嫁装束の残滓をまだ纏うかのような風情で、柚月は静かに九頭の前に膝を折った。
「……申し訳ありません。『花嫁の罠作戦』は、ミラクルナイトの予想外の根性により失敗しま ...
